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33 感染
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さてと、こんなことで、私たちは小学校での生活を許されることになりました。
ですが・・・。
ここも完全に安心できる場所ではなかったのです。
それは、襲撃犯を皆殺しにした3日後のこと。ついに、感染の疑いがある人が出てしまったのですよ。それも、複数。一挙に6人…。
1人が熱っぽいと訴えて体温を測ったところ、37.1度。慌てて全員を測り、37度以上の者は疑いのある者として体育館に隔離されたのでした。
間違いであって欲しい。単なる風邪かなんかで…。
そんな願いもむなしく、翌日には、6人とも咳の症状も。どうも間違いなさそうな雰囲気。・・・感染です。
そして、さらに追加で7人が発熱。総勢25人ですので、これで疑いがある人の方が多くなってしまいました。この中には、このコミュニティーの中心人物であるお医者様までも…。
さらに、です。この数に含められていない客分扱いである私たちの内の2人、チェリル様にヘレーナまでもが!
この2人の発熱が最初に症状の出た人より遅いというコトは、ウイルスを私たちが持ち込んだというコトで無いのは明らかですよね。だからといって、コミュニティー内の誰かに2人がうつされたというコトも考えにくい。
恐らく、何度か襲撃してきた略奪団からなんでしょう。直接接触しなくても空気感染するみたいですから…。
全滅後も他人に迷惑かけるって、もう、なんて質の悪い奴らだよ!
私に関しては、熱はありませんが、感染が疑われるチェリル様とヘレーナと一緒に体育館へ行きました。
あ、私、元々体が強い方ではありません。すぐに風邪をひいたりする弱い人間でした。が、異世界に転移して、毎日裸にされて解剖され続けても、それ以降は風邪一つひいていません。つまり、伝染病にもかからなくなったのです。
ということで、どんなところに居ても全然平気なんですよ。
このままでは、残念ながら、このコミュニティーも崩壊してしまうでしょう。
それより何より、私の大切なお客様の2人ですよ。この2人を守って無事に異世界に帰すのは、私の責務のようなものです。
自分がというより、王女が感染したことに絶望のあまり呆然としているヘレーナと、死にたくないと顔を両手で覆って泣き出してしまったチェリル様・・・。
大丈夫ですよ。私が助けます! 私には助ける心当たりがあるのです。
それは、私の血液です。
ヘレーナにも内緒にしていたけど、怪我をした鳥に塗ったら即座に傷が治ってしまった私の血。そして私は伝染病にも掛からない。
ならば、私の血を輸血すれば・・・、伝染病も治るはず!
たぶんだけど・・・。
一緒に隔離状態となったお医者さんのところへ。この方法を話して協力を要請しました。
しかし、彼は賛成してくれませんでした。何の検査もしていない血液を輸血するなんてありえないと…。
これは、医者としての常識的な判断でしょう。
でも今は非常時ですよ。このままではみんな死んでしまうのです。それならば、試す価値はあるはずです。
必死に訴える私に、彼は、条件付きでの同意をくれました。
「私が、まず実験台になる。それで安全が確認されれば、他の皆にも…」
と。
これも医者の立場としての発言ですね。ご立派です。
通常、血液型が違う血液を輸血したりすると血が固まってしまい、死んでしまいます。
しかし、私の血液型はO型。
O型血液に関しては、A型B型AB型O型のどの型にも輸血が可能。タイプの違う血液と反応して凝固する因子を持たない「ゼロ型」が名前の由来である、万能な血なんですね。
オマケに伝染病にも掛からない特殊体質の私。だから、他の感染症の心配もないはずです。
危険は無い・・・はず!
チェリル様とヘレーナに間近で見守られながら腕にゴムチューブを巻かれ、針が挿されて私の血が抜かれます…。
ああ、針が挿されるくらい、全然平気ですよ。毎日惨殺されていた私ですからね。
針から透明な管を通して抜かれた赤黒い色の私の血液。お医者さんは、それを自分の左腕の血管に、ゆっくり注射。
「先生、どうですか? 気分悪くはない?」
私の問いに先生は…
「い、いや、気分悪いどころか、こ、これは・・・」
「これは?」
「う、いや、体が楽になってゆく気がする」
「じゃあ、大丈夫なのよね。直ぐにチェリル様とヘレーナにも!」
「いや、待って。少なくとも、30分は様子を見なければ…」
う~ん、メンドクサイな。でもお医者様のいうことです。仕方ありません。
30分後、やはり彼は何ともない様子。いや、それどころか熱も下がってしまった。治ったのですよ!
これで彼も、やっと納得してくれました。直ぐに追加の採血で、チェリル様とヘレーナにも私の血液を注射です。
チェリル様、凄い表情…。針を刺されるのを痛がって、涙ぐんでます。これくらい我慢しなさいよ。死にたくないでしょ。
ヘレーナも痛そうね。刺されるのを見ないように顔背けてる…。ああそうか。転移の時に矢で射られまくったからね。刺さるのがトラウマになってるかもしれないけど、我慢してね。
そして、2人の症状も速攻で改善してきます。
さあ、それじゃあ、遠巻きに見ている他の人たちにもと言うと…。
「待ってよ。そんなに血を採ったら、君が…」
あら先生、私のことも心配してもらえるなんて嬉しいな。
「大丈夫ですよ。私は不死身です。これくらいの人数分なら、全然平気です」
他の人たち、体育館の離れたところから私たちの様子をずっと見詰めていました。何がどうなっているか良く分からない様子。
この恐怖の伝染病が治る??
しかしまさか、バケモノの血を注射されるなんて、気味が悪い!
でも、このままなら、死ぬのは確実…。どうにでもなれ!!
・・・そんな心境でしょうかね。
それでもですね、全員の注射が終わった約30分後には、私は伏し拝まれる立場に大出世したのでありました。
熱が下がって、みんな、隔離からの解放です!
体育館を出ると、症状が出ていなかったはずの人たちの暗い顔。なんと、残りの人たち皆発熱してしまったとのこと。絶望で項垂れていたのです。
いや、大丈夫ですよ。私の血で治りますからね。私に任せなさ~い。
さあ、どんどん血を抜いて!
私の血は次々に、症状が出てきている人へ注射されました。注射された人は直ぐに体調が良くなって熱が引いて行きます。
あれ? これで終わり?
抜かれる血の回数数えていたんだけど、1人分、足りなくない?
私の数え間違いかな…。まあ、いっか。
いや~、みんなから神の如く拝まれて気分良いな。チェリル様が医療に専念したがる気持ち、分かるかも!
ああ、でも、ちょっとシンドイな。血を抜かれ過ぎたかな。何か食べさせて~!
ですが・・・。
ここも完全に安心できる場所ではなかったのです。
それは、襲撃犯を皆殺しにした3日後のこと。ついに、感染の疑いがある人が出てしまったのですよ。それも、複数。一挙に6人…。
1人が熱っぽいと訴えて体温を測ったところ、37.1度。慌てて全員を測り、37度以上の者は疑いのある者として体育館に隔離されたのでした。
間違いであって欲しい。単なる風邪かなんかで…。
そんな願いもむなしく、翌日には、6人とも咳の症状も。どうも間違いなさそうな雰囲気。・・・感染です。
そして、さらに追加で7人が発熱。総勢25人ですので、これで疑いがある人の方が多くなってしまいました。この中には、このコミュニティーの中心人物であるお医者様までも…。
さらに、です。この数に含められていない客分扱いである私たちの内の2人、チェリル様にヘレーナまでもが!
この2人の発熱が最初に症状の出た人より遅いというコトは、ウイルスを私たちが持ち込んだというコトで無いのは明らかですよね。だからといって、コミュニティー内の誰かに2人がうつされたというコトも考えにくい。
恐らく、何度か襲撃してきた略奪団からなんでしょう。直接接触しなくても空気感染するみたいですから…。
全滅後も他人に迷惑かけるって、もう、なんて質の悪い奴らだよ!
私に関しては、熱はありませんが、感染が疑われるチェリル様とヘレーナと一緒に体育館へ行きました。
あ、私、元々体が強い方ではありません。すぐに風邪をひいたりする弱い人間でした。が、異世界に転移して、毎日裸にされて解剖され続けても、それ以降は風邪一つひいていません。つまり、伝染病にもかからなくなったのです。
ということで、どんなところに居ても全然平気なんですよ。
このままでは、残念ながら、このコミュニティーも崩壊してしまうでしょう。
それより何より、私の大切なお客様の2人ですよ。この2人を守って無事に異世界に帰すのは、私の責務のようなものです。
自分がというより、王女が感染したことに絶望のあまり呆然としているヘレーナと、死にたくないと顔を両手で覆って泣き出してしまったチェリル様・・・。
大丈夫ですよ。私が助けます! 私には助ける心当たりがあるのです。
それは、私の血液です。
ヘレーナにも内緒にしていたけど、怪我をした鳥に塗ったら即座に傷が治ってしまった私の血。そして私は伝染病にも掛からない。
ならば、私の血を輸血すれば・・・、伝染病も治るはず!
たぶんだけど・・・。
一緒に隔離状態となったお医者さんのところへ。この方法を話して協力を要請しました。
しかし、彼は賛成してくれませんでした。何の検査もしていない血液を輸血するなんてありえないと…。
これは、医者としての常識的な判断でしょう。
でも今は非常時ですよ。このままではみんな死んでしまうのです。それならば、試す価値はあるはずです。
必死に訴える私に、彼は、条件付きでの同意をくれました。
「私が、まず実験台になる。それで安全が確認されれば、他の皆にも…」
と。
これも医者の立場としての発言ですね。ご立派です。
通常、血液型が違う血液を輸血したりすると血が固まってしまい、死んでしまいます。
しかし、私の血液型はO型。
O型血液に関しては、A型B型AB型O型のどの型にも輸血が可能。タイプの違う血液と反応して凝固する因子を持たない「ゼロ型」が名前の由来である、万能な血なんですね。
オマケに伝染病にも掛からない特殊体質の私。だから、他の感染症の心配もないはずです。
危険は無い・・・はず!
チェリル様とヘレーナに間近で見守られながら腕にゴムチューブを巻かれ、針が挿されて私の血が抜かれます…。
ああ、針が挿されるくらい、全然平気ですよ。毎日惨殺されていた私ですからね。
針から透明な管を通して抜かれた赤黒い色の私の血液。お医者さんは、それを自分の左腕の血管に、ゆっくり注射。
「先生、どうですか? 気分悪くはない?」
私の問いに先生は…
「い、いや、気分悪いどころか、こ、これは・・・」
「これは?」
「う、いや、体が楽になってゆく気がする」
「じゃあ、大丈夫なのよね。直ぐにチェリル様とヘレーナにも!」
「いや、待って。少なくとも、30分は様子を見なければ…」
う~ん、メンドクサイな。でもお医者様のいうことです。仕方ありません。
30分後、やはり彼は何ともない様子。いや、それどころか熱も下がってしまった。治ったのですよ!
これで彼も、やっと納得してくれました。直ぐに追加の採血で、チェリル様とヘレーナにも私の血液を注射です。
チェリル様、凄い表情…。針を刺されるのを痛がって、涙ぐんでます。これくらい我慢しなさいよ。死にたくないでしょ。
ヘレーナも痛そうね。刺されるのを見ないように顔背けてる…。ああそうか。転移の時に矢で射られまくったからね。刺さるのがトラウマになってるかもしれないけど、我慢してね。
そして、2人の症状も速攻で改善してきます。
さあ、それじゃあ、遠巻きに見ている他の人たちにもと言うと…。
「待ってよ。そんなに血を採ったら、君が…」
あら先生、私のことも心配してもらえるなんて嬉しいな。
「大丈夫ですよ。私は不死身です。これくらいの人数分なら、全然平気です」
他の人たち、体育館の離れたところから私たちの様子をずっと見詰めていました。何がどうなっているか良く分からない様子。
この恐怖の伝染病が治る??
しかしまさか、バケモノの血を注射されるなんて、気味が悪い!
でも、このままなら、死ぬのは確実…。どうにでもなれ!!
・・・そんな心境でしょうかね。
それでもですね、全員の注射が終わった約30分後には、私は伏し拝まれる立場に大出世したのでありました。
熱が下がって、みんな、隔離からの解放です!
体育館を出ると、症状が出ていなかったはずの人たちの暗い顔。なんと、残りの人たち皆発熱してしまったとのこと。絶望で項垂れていたのです。
いや、大丈夫ですよ。私の血で治りますからね。私に任せなさ~い。
さあ、どんどん血を抜いて!
私の血は次々に、症状が出てきている人へ注射されました。注射された人は直ぐに体調が良くなって熱が引いて行きます。
あれ? これで終わり?
抜かれる血の回数数えていたんだけど、1人分、足りなくない?
私の数え間違いかな…。まあ、いっか。
いや~、みんなから神の如く拝まれて気分良いな。チェリル様が医療に専念したがる気持ち、分かるかも!
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