巻き込まれ召喚娘の大逆転！？ ～転移者柚奈は、超絶理不尽な扱いを受けました～

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35 王女の帰還

　数日後・・・。
　今日は満月。暗くなって月が出て、戻れないかなと期待に満ちた目でその月を眺めているヘレーナとチェリル様です。

　2人は体を寄せ合っています。召喚されるのは王女チェリル様ですからね。王女様の近くにいないと、ヘレーナが帰れないのです。
　ただ、１ヶ月くらいの短い期間で、向こうの状況は改善されるものでしょうか？
　ヘタに早く帰ると、また向こうでチェリル様は命を狙われてしまう。今日、呼び戻されるなんてのは・・・、多分難しいんじゃないかと思いますよ。
　それでも期待を込めて、2人は体を寄せ合って満月を見詰めています。

　私は・・・。
　こっちの世界で、これからどうすれば・・・。

　家族はもういません。伝染病を治す御役目からも、解放されたところ。2人が居なくなってしまえば、ヒトリボッチ・・・。

　寂しいのは嫌だな。
　私も・・・、一緒に連れて行ってもらえないかなあ。

　……いや、待て待て。それってどうなのかな。
　そんなことしたって、向こうに戻れば、また奴隷。毎日体を切り刻まれるだけ。
　それは嫌ですよ。

　じゃあ、その心配がなければ、どうなのかな？
　チェリル様は王女様。彼女が、もうそんな扱いはしないといってくれれば、大丈夫なはず。ちょっと訊いてみても良いかな？
　だって、ヒトリボッチは寂しいし……。

　普通なら、また異世界へなんて、絶対ありえないコト。これは、ちょっとした気の迷いだったのです。寂しいのは嫌という・・・。

　チェリル様にお伺い立てようと近づいたその時！
　目の前が真っ白になりました。

　これ、既に2度経験した・・・、異世界転移！！


　・・・・。


「王女様！　よ、よかった上手くゆきましたね！」

　跪いて迎えているのはアルマ神官。大神官も涙目で立っています。
　感動のお出迎えですね。

　し、しか～し！！

　ああ、私、またこの世界に戻っちゃった。待遇改善の約束もないままに・・・。

「柚奈！　なんであなたも着いてきたのです。折角返してあげたのに」

　と言うヘレーナは、怒り顔？
　いや、呆れ顔？

　そんなこと言われましてもですね…。不可抗力です。
　ちょっと条件交渉しようかなと思っただけだったのに、まさか、ホントに１ヶ月での再召喚だなんて。
　そして、それに再度巻き込まれるだなんて・・・。

　ところで、こっちの世界の状況はどうなっているの？
　状況は良くなっているの？

「王女殿下、こちらは大変なことになっているのです。一刻も早く、王位にお就きください」

　跪いて言う、ちょっとカッコイイ若い男性は・・・、誰？？

「あなたは？」

　あら、チェリル様も知らないんだ。いったい誰なの？

「申し遅れました。私はダミン・アールン伯爵が嫡男、カール・アールンと申します」

「え？誰」

という更なる私の呟きに、ヘレーナが耳打ちしてくれました。
　あの、謀略に加担していた巫女ラーラの、お兄様みたいです。

「王位とは、どういうことです？父上は？」

　これは、チェリル様の問い。

「先王陛下は、崩御なされました。王女殿下が異世界に行かれて間もなくのことです」

「な、なんですって！？　父上が？　で、でもそれなら兄のどちらかが・・・」

「いえ、王子殿下お２人は、その前に亡くなられています」

「は、はああ？？」