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43 セトリバ公爵の亡命
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次にラーラのお兄さんを呼び出します。
あ、彼はあの後、女王から許しを貰って、父の爵位を正式に継ぎました。ですので、アールン伯爵です。
本人は奴隷身分でも構わないなんて言っていましたが、まあ、そんな事にはなりませんよね。…私は今だに奴隷身分のままなのにね。
(但し、奴隷でありながら女王代理って訳分かんないことになってますけども・・・)
伯爵には、セトリバ公爵の味方のフリをしてもらって公爵邸に入ってもらいます。そして敵国へ亡命するように進言してもらいます。
安全な逃げ道を用意させ、伯爵も国境まで同行し、公爵を誘導してもらうのです。
その際、ウイルスをどうやって公爵に感染させるか。また、そのタイミングも難しいところ。
早くうつし過ぎてもいけません。
この辺りは伯爵にお任せです。
伯爵は、国境の村、最終の宿で、感染させることにしました。魔法を使って隔離していた感染者を、世話係として食事の給仕等させたのです。
その子は、黒髪褐色肌で18歳の女の子、ユーリ。
平民ですが、伯爵のお屋敷に奉公している子なので、貴族相手の作法もバッチリです。
実は、彼女の実家は国境近くの町で、最初に侵攻を受けたところ。敵兵に、両親と兄弟を殺されてしまっています。
これは、彼女にとっても敵討ち。計画を知ると自ら志願し、即座に殺人ウイルスを吸い込み、感染者となったのです。
一つ間違えば自分も命を落とす危険な仕事ですが、家族を殺された悲しく悔しい気持ちは、よく分かります。
大丈夫。あなたは私の血液で治せますからね。安心して良いよ。
ユーリは既に発症3日目で、治療しなければあと2日の命。咳の症状が強く出ていますが、セトリバ公爵に気付かれない様、鎮咳薬と気合で一時的に咳を止めました。
この世界の鎮咳薬は、それほど強い効き目はありません。つまり、ほとんど気合で咳を止めたようなもの…。
咳を我慢って、辛いですよ。でも家族の敵討ちだと思うからこそ出来たことでしょう。
そして、症状を止めたところで感染者であることには変わりありません。手なんかにはウイルスが付いてますよね。唾液の飛沫からだって感染しますよ。
勿論、食器や料理には、事前にタップリ咳をかけさせてます。当然です!
感染力の強いウイルスですから、これで間違いないでしょう。
公爵は、敵国への貢ぎ物として自領名産の生ハムやチーズなんかを用意して、馬車に大量に積み込んでいました。亡命するのですから、手ぶらでは……ってことですかね。
夜の内…。それらにもユーリに咳をかけさせ、ウイルスをシッカリ付着させる・・・。
公爵が上手く敵王に謁見できなくても、この貢ぎ物から感染させることもできるかもしれません。
翌日、朝早く…。
伯爵、お弁当を手渡し、御見送りはここまでと、国境から敵領へ公爵一家を送り出しました。
一家からは伏し拝まれ、物凄く感謝されたようです。
あ、伯爵が手渡したお弁当は、ユーリ手作りの愛情(?)サンドウィッチで~す。言うまでもなく、ウイルスてんこ盛りですよ~ん!
で、ここまでは伯爵が部下を使って事細かに報告を入れてきてくれたことです。
しかし、以後の敵国内のこととなると、情報が届きません。
この後の様子は、もう分からなくなってしまう。後はなるようになれですかね。
・・・と、思っていたところ、ヘレーナが……。
「柚奈は、知っている人物なら知人遠隔視の力を行使できますよね」
「ええ、出来ますよ」
「それなら、この後のセトリバ公爵一家の様子も監視できるかもしれませんよ」
「へ? どういうこと??」
「前に医学生たちに、あなたが解剖された時・・・」
えええ~、なんで、こんな時にそんな嫌なコトを思い出させるかなあ。
「あなたのお腹の中身を『グロい』とか『臭い』とか騒いでいた銀髪の女子がいたでしょ。あなた凄い顔して彼女を睨んでいたけど、覚えてない?」
銀髪・・・。
グロい・・・。
臭い・・・。
覚えてますよ。忘れるはず無いじゃない!
神の手の医師フロア先生執刀での、医学生対象、私の解剖実習でのことですよ。
フロア先生の手によって全摘出された、大切で麗しき私の大腸。それをよりによって「きったないウンコ袋」なんてホザイテマシタ。
切開調査した貴重で尊崇な私の内臓断片を、汚物を放るように処分箱に摘まみ捨てていました。
私は、呪ってやる、祟ってやるって思ってました!
思い出すと、今でもムカつきます。
「彼女、セトリバ公爵の孫よ」
は?! アイツが公爵の孫・・・。
なるほど、なるほど。バカ公爵の孫は、やっぱり救いようのないバカ孫ってことですね~。
これは面白いよ。あの憎き銀髪女に復讐できるんですよ!!
出来れば磔に、いや、串刺しにしてやりたいくらいだけど、まあイイや。と、ほくそ笑みました。
私って悪い女です・・・。
これで、銀髪女(=公爵の孫)が居る範囲の景色を見ることが出来ます。計画が上手く進んでいるか分かるのです。
そして……、その性悪銀髪女の末路がどんなになるかなって、興味津々ですよ!
あ、彼はあの後、女王から許しを貰って、父の爵位を正式に継ぎました。ですので、アールン伯爵です。
本人は奴隷身分でも構わないなんて言っていましたが、まあ、そんな事にはなりませんよね。…私は今だに奴隷身分のままなのにね。
(但し、奴隷でありながら女王代理って訳分かんないことになってますけども・・・)
伯爵には、セトリバ公爵の味方のフリをしてもらって公爵邸に入ってもらいます。そして敵国へ亡命するように進言してもらいます。
安全な逃げ道を用意させ、伯爵も国境まで同行し、公爵を誘導してもらうのです。
その際、ウイルスをどうやって公爵に感染させるか。また、そのタイミングも難しいところ。
早くうつし過ぎてもいけません。
この辺りは伯爵にお任せです。
伯爵は、国境の村、最終の宿で、感染させることにしました。魔法を使って隔離していた感染者を、世話係として食事の給仕等させたのです。
その子は、黒髪褐色肌で18歳の女の子、ユーリ。
平民ですが、伯爵のお屋敷に奉公している子なので、貴族相手の作法もバッチリです。
実は、彼女の実家は国境近くの町で、最初に侵攻を受けたところ。敵兵に、両親と兄弟を殺されてしまっています。
これは、彼女にとっても敵討ち。計画を知ると自ら志願し、即座に殺人ウイルスを吸い込み、感染者となったのです。
一つ間違えば自分も命を落とす危険な仕事ですが、家族を殺された悲しく悔しい気持ちは、よく分かります。
大丈夫。あなたは私の血液で治せますからね。安心して良いよ。
ユーリは既に発症3日目で、治療しなければあと2日の命。咳の症状が強く出ていますが、セトリバ公爵に気付かれない様、鎮咳薬と気合で一時的に咳を止めました。
この世界の鎮咳薬は、それほど強い効き目はありません。つまり、ほとんど気合で咳を止めたようなもの…。
咳を我慢って、辛いですよ。でも家族の敵討ちだと思うからこそ出来たことでしょう。
そして、症状を止めたところで感染者であることには変わりありません。手なんかにはウイルスが付いてますよね。唾液の飛沫からだって感染しますよ。
勿論、食器や料理には、事前にタップリ咳をかけさせてます。当然です!
感染力の強いウイルスですから、これで間違いないでしょう。
公爵は、敵国への貢ぎ物として自領名産の生ハムやチーズなんかを用意して、馬車に大量に積み込んでいました。亡命するのですから、手ぶらでは……ってことですかね。
夜の内…。それらにもユーリに咳をかけさせ、ウイルスをシッカリ付着させる・・・。
公爵が上手く敵王に謁見できなくても、この貢ぎ物から感染させることもできるかもしれません。
翌日、朝早く…。
伯爵、お弁当を手渡し、御見送りはここまでと、国境から敵領へ公爵一家を送り出しました。
一家からは伏し拝まれ、物凄く感謝されたようです。
あ、伯爵が手渡したお弁当は、ユーリ手作りの愛情(?)サンドウィッチで~す。言うまでもなく、ウイルスてんこ盛りですよ~ん!
で、ここまでは伯爵が部下を使って事細かに報告を入れてきてくれたことです。
しかし、以後の敵国内のこととなると、情報が届きません。
この後の様子は、もう分からなくなってしまう。後はなるようになれですかね。
・・・と、思っていたところ、ヘレーナが……。
「柚奈は、知っている人物なら知人遠隔視の力を行使できますよね」
「ええ、出来ますよ」
「それなら、この後のセトリバ公爵一家の様子も監視できるかもしれませんよ」
「へ? どういうこと??」
「前に医学生たちに、あなたが解剖された時・・・」
えええ~、なんで、こんな時にそんな嫌なコトを思い出させるかなあ。
「あなたのお腹の中身を『グロい』とか『臭い』とか騒いでいた銀髪の女子がいたでしょ。あなた凄い顔して彼女を睨んでいたけど、覚えてない?」
銀髪・・・。
グロい・・・。
臭い・・・。
覚えてますよ。忘れるはず無いじゃない!
神の手の医師フロア先生執刀での、医学生対象、私の解剖実習でのことですよ。
フロア先生の手によって全摘出された、大切で麗しき私の大腸。それをよりによって「きったないウンコ袋」なんてホザイテマシタ。
切開調査した貴重で尊崇な私の内臓断片を、汚物を放るように処分箱に摘まみ捨てていました。
私は、呪ってやる、祟ってやるって思ってました!
思い出すと、今でもムカつきます。
「彼女、セトリバ公爵の孫よ」
は?! アイツが公爵の孫・・・。
なるほど、なるほど。バカ公爵の孫は、やっぱり救いようのないバカ孫ってことですね~。
これは面白いよ。あの憎き銀髪女に復讐できるんですよ!!
出来れば磔に、いや、串刺しにしてやりたいくらいだけど、まあイイや。と、ほくそ笑みました。
私って悪い女です・・・。
これで、銀髪女(=公爵の孫)が居る範囲の景色を見ることが出来ます。計画が上手く進んでいるか分かるのです。
そして……、その性悪銀髪女の末路がどんなになるかなって、興味津々ですよ!
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