6 / 80
美雪と早紀
5 ラブホテル!
しおりを挟む
五日後、金曜日。
美雪は、あの日以来、早紀の様子が少し変だと感じていた。
避けられているわけでは無い。ただ、自分の前に立とうとしない・・・。
早紀は高身長で、自分は逆に低身長。よって、元々早紀は、美雪の前に立ちはだかるようなことはしない。横か後ろに居ることが多いのだ。
だが、それがちょっと極端になったように思える。
横に並んで肩に手を回してくれるのだから、嫌われているということは無いと思う。が、それも、自分の後ろへ回り込むような仕草に感じられ、違和感が拭えない。
その他には、特に不審なことは無い。いつも通り、他愛もない話もする。
………
まだ、早紀の生理不順が続いていて、それで、少し行動が変なのかな…。
いや、私の気の所為なのかもしれない。
特に、今、私も生理中だ。この期間は、いつも、何でもない事にイライラしてしまう。
そうだ。きっと、私の気の所為だ。
………
大学の講義が終わり、早紀と別れて美雪は神社へ向かった。
早紀は今、慎也所有アパートの一室を借りて(もちろん、格安で…)独り暮らし中。いつもは途中まで一緒に帰ることが多いが、買い物をして帰るということだったので、今日は学校で別れた。
明日は土曜日。通常なら、美雪は神社のバイトに入るはずだが、曾祖父の法事の為、休みを貰っていた。
ご奉仕出来ないお詫びを神様にしておこうと、美雪は学校帰りに神社へ寄ったのだった。
この殊勝な心がけは、流石は総代の孫といったところか。
お参りをして、社務所に行くと、受付には誰もいない。が、中の部屋から話し声が漏れてくる。慎也と祥子の声のようだ。
ちょっと、悪戯心が芽生えた美雪は、新たに得た透視の異能力で、中を覗いてみた。
中に居るのは、やはり、慎也と祥子の二人。舞衣は居ない。
二人は、並んで机の前に坐っている。それも、肩をくっつけ合って。
(舞衣さんが居ないのを良いことに、二人きりで何やってるのよ!)
美雪は唇を尖らせて、目を凝らした。
二人は、一枚の紙を一緒に見ている。
紙には、何が書かれているのか…。
更に目を凝らす。
(何か、煌びやかな建物の画像。…え? …ラ、ラブホテル?!)
見えたのは、美雪も見覚えがある、駅近くのラブホテルの情報をプリントアウトしたモノ…。だが、見覚えがあると言っても、もちろん美雪は、そんな所へ入ったことは無い。彼女は、「見た目通り」のバージンだ。
美雪は、そっと足を忍ばせて受付に近寄り、中の声に聞き耳を立てた。
「じゃあ、ここに行こうか」
「よいぞよ。まかせた」
「明日は雨みたいだからね、神社も暇だろうし」
「美雪がおらぬのも、都合良いかもな。あやつは変なところに感付くし、色々口うるさい」
「まあね…。早紀ちゃんが来てくれるから、神社の方は大丈夫だよね」
「正妻殿には悪いが、明日は初めての二人きりでのマグワイということになるかの」
「そうだね。じゃあ、明日の午後一時に出発するからね」
(え~! どういうこと? 二人きりでラブホテルへ? 「正妻殿には悪い」って、つまり、舞衣さんに内緒で逢引きをする?!)
「どうしたの、美雪ちゃん」
不意に後ろの方から声を掛けられ、美雪は心臓が止まる思いをした。
この声は、舞衣・・・。
ゆっくり振り返り、声の主を確認…。やはり、舞衣だ。
美雪は、慌てて舞衣の近くまで走り寄った。
「い、いえ、何でもありません。今日はお参りに来ただけです。明日は来れなくてごめんなさい。また、明後日来ます」
中の二人に聞こえない様、少し声を抑えて早口でそれだけ言い、頭を下げて駆けて行ってしまった。
舞衣は、その後ろ姿を、首を傾げ乍ら見送った。
祥子のリクエストの、ラブホテル行き。慎也が調べたところ、三人でも追加料金を払えば大丈夫なところもあるということが判明した。
そこで「三人で行こう」と提案したが、舞衣は遠慮を申し出た。
何と言っても、舞衣は元有名芸能人…トップアイドルだったのだ。
今は引退して一般人だが、広く顔が知られていることには違いない。ラブホテルに行くのを目撃されては、外聞が悪いというのが理由…。
それに、ああいうところは、防犯カメラなども設置されているだろう。舞衣の姿が、そのカメラに録画されるのも、よろしくないのだ。
三人で行くのであれば、夜にゆっくり「宿泊」というのも有りだった。
だが、舞衣が行かないのであれば、祥子と二人でそれをするのは、気が引ける。正妻様に留守番をさせておいて、ラブホでゆっくりお泊りなどとは、気の小さい慎也には無理……。
という理由で、美雪・早紀がバイトに来てくれる土曜か日曜で、暇な雨の日に「休憩」で、ということになったのだ。
祥子は「二人きり」というのには拘らないということだったが、結果的に「二人きり」ということになった。
……このような事情。
であるのだから、このラブホ行きは、舞衣も承知のことである。
だが、慎也と祥子も悪かったのだ。神社の社務所でするような話では無かった…。
二人で話していた、「早紀が来てくれるから神社は大丈夫」というのは、なにも早紀一人に任せるという意味ではない。
舞衣が居るのは当然のこと。つい先日、体調を崩して倒れかけた早紀一人に神社を任せるなどということを、するはずもない。
そして、「正妻殿に悪い」というのは舞衣に内緒という意味では無い。
舞衣に仕事をさせておいて、自分たちはラブホテルというのが申し訳ないという意味だ。
そうなのであるが、事情を知らない美雪は、完全に勘違いしてしまった。
(慎也と祥子は、舞衣に内緒で明日ラブホへ行く…。舞衣には何か別の用事があって出かける、その隙に…)と。
美雪は、いきなり舞衣に後方から声を掛けられて、驚いて逃げ帰って来てしまった。
しかし・・・。
あんなこと、許されるのだろうか…。あれは、舞衣に対する裏切り行為だ。
妾も同居という変な家族。夫婦間の「行為」は皆一緒にというのが、あの家族のルールだったはず…。
そのルールも超絶変ではあるが、ルールはルールであり、それを破って舞衣に内緒で×××などとは言語道断の裏切りだ。
舞衣に対する裏切り……。正妻に対する裏切り……。それはつまり、「不倫」!!
・・・。
考えれば考えるほど、怒りが込み上げてきた。
自分は明日、法事に出なければならない。だが、午後一時なら、自分だけ先に抜け出しても問題ない。場所は分かっている。駅の近くの立派なホテルだ。
とにかく、明日、二人の行動を確認しなければならない。
もしかすると、何か聞き間違いだったのかもしれない。聞き間違いであれば、良いのだ。それが確認出来れば……。
美雪は明日、現場に、「確認」しに行くことを決めた。
美雪は、あの日以来、早紀の様子が少し変だと感じていた。
避けられているわけでは無い。ただ、自分の前に立とうとしない・・・。
早紀は高身長で、自分は逆に低身長。よって、元々早紀は、美雪の前に立ちはだかるようなことはしない。横か後ろに居ることが多いのだ。
だが、それがちょっと極端になったように思える。
横に並んで肩に手を回してくれるのだから、嫌われているということは無いと思う。が、それも、自分の後ろへ回り込むような仕草に感じられ、違和感が拭えない。
その他には、特に不審なことは無い。いつも通り、他愛もない話もする。
………
まだ、早紀の生理不順が続いていて、それで、少し行動が変なのかな…。
いや、私の気の所為なのかもしれない。
特に、今、私も生理中だ。この期間は、いつも、何でもない事にイライラしてしまう。
そうだ。きっと、私の気の所為だ。
………
大学の講義が終わり、早紀と別れて美雪は神社へ向かった。
早紀は今、慎也所有アパートの一室を借りて(もちろん、格安で…)独り暮らし中。いつもは途中まで一緒に帰ることが多いが、買い物をして帰るということだったので、今日は学校で別れた。
明日は土曜日。通常なら、美雪は神社のバイトに入るはずだが、曾祖父の法事の為、休みを貰っていた。
ご奉仕出来ないお詫びを神様にしておこうと、美雪は学校帰りに神社へ寄ったのだった。
この殊勝な心がけは、流石は総代の孫といったところか。
お参りをして、社務所に行くと、受付には誰もいない。が、中の部屋から話し声が漏れてくる。慎也と祥子の声のようだ。
ちょっと、悪戯心が芽生えた美雪は、新たに得た透視の異能力で、中を覗いてみた。
中に居るのは、やはり、慎也と祥子の二人。舞衣は居ない。
二人は、並んで机の前に坐っている。それも、肩をくっつけ合って。
(舞衣さんが居ないのを良いことに、二人きりで何やってるのよ!)
美雪は唇を尖らせて、目を凝らした。
二人は、一枚の紙を一緒に見ている。
紙には、何が書かれているのか…。
更に目を凝らす。
(何か、煌びやかな建物の画像。…え? …ラ、ラブホテル?!)
見えたのは、美雪も見覚えがある、駅近くのラブホテルの情報をプリントアウトしたモノ…。だが、見覚えがあると言っても、もちろん美雪は、そんな所へ入ったことは無い。彼女は、「見た目通り」のバージンだ。
美雪は、そっと足を忍ばせて受付に近寄り、中の声に聞き耳を立てた。
「じゃあ、ここに行こうか」
「よいぞよ。まかせた」
「明日は雨みたいだからね、神社も暇だろうし」
「美雪がおらぬのも、都合良いかもな。あやつは変なところに感付くし、色々口うるさい」
「まあね…。早紀ちゃんが来てくれるから、神社の方は大丈夫だよね」
「正妻殿には悪いが、明日は初めての二人きりでのマグワイということになるかの」
「そうだね。じゃあ、明日の午後一時に出発するからね」
(え~! どういうこと? 二人きりでラブホテルへ? 「正妻殿には悪い」って、つまり、舞衣さんに内緒で逢引きをする?!)
「どうしたの、美雪ちゃん」
不意に後ろの方から声を掛けられ、美雪は心臓が止まる思いをした。
この声は、舞衣・・・。
ゆっくり振り返り、声の主を確認…。やはり、舞衣だ。
美雪は、慌てて舞衣の近くまで走り寄った。
「い、いえ、何でもありません。今日はお参りに来ただけです。明日は来れなくてごめんなさい。また、明後日来ます」
中の二人に聞こえない様、少し声を抑えて早口でそれだけ言い、頭を下げて駆けて行ってしまった。
舞衣は、その後ろ姿を、首を傾げ乍ら見送った。
祥子のリクエストの、ラブホテル行き。慎也が調べたところ、三人でも追加料金を払えば大丈夫なところもあるということが判明した。
そこで「三人で行こう」と提案したが、舞衣は遠慮を申し出た。
何と言っても、舞衣は元有名芸能人…トップアイドルだったのだ。
今は引退して一般人だが、広く顔が知られていることには違いない。ラブホテルに行くのを目撃されては、外聞が悪いというのが理由…。
それに、ああいうところは、防犯カメラなども設置されているだろう。舞衣の姿が、そのカメラに録画されるのも、よろしくないのだ。
三人で行くのであれば、夜にゆっくり「宿泊」というのも有りだった。
だが、舞衣が行かないのであれば、祥子と二人でそれをするのは、気が引ける。正妻様に留守番をさせておいて、ラブホでゆっくりお泊りなどとは、気の小さい慎也には無理……。
という理由で、美雪・早紀がバイトに来てくれる土曜か日曜で、暇な雨の日に「休憩」で、ということになったのだ。
祥子は「二人きり」というのには拘らないということだったが、結果的に「二人きり」ということになった。
……このような事情。
であるのだから、このラブホ行きは、舞衣も承知のことである。
だが、慎也と祥子も悪かったのだ。神社の社務所でするような話では無かった…。
二人で話していた、「早紀が来てくれるから神社は大丈夫」というのは、なにも早紀一人に任せるという意味ではない。
舞衣が居るのは当然のこと。つい先日、体調を崩して倒れかけた早紀一人に神社を任せるなどということを、するはずもない。
そして、「正妻殿に悪い」というのは舞衣に内緒という意味では無い。
舞衣に仕事をさせておいて、自分たちはラブホテルというのが申し訳ないという意味だ。
そうなのであるが、事情を知らない美雪は、完全に勘違いしてしまった。
(慎也と祥子は、舞衣に内緒で明日ラブホへ行く…。舞衣には何か別の用事があって出かける、その隙に…)と。
美雪は、いきなり舞衣に後方から声を掛けられて、驚いて逃げ帰って来てしまった。
しかし・・・。
あんなこと、許されるのだろうか…。あれは、舞衣に対する裏切り行為だ。
妾も同居という変な家族。夫婦間の「行為」は皆一緒にというのが、あの家族のルールだったはず…。
そのルールも超絶変ではあるが、ルールはルールであり、それを破って舞衣に内緒で×××などとは言語道断の裏切りだ。
舞衣に対する裏切り……。正妻に対する裏切り……。それはつまり、「不倫」!!
・・・。
考えれば考えるほど、怒りが込み上げてきた。
自分は明日、法事に出なければならない。だが、午後一時なら、自分だけ先に抜け出しても問題ない。場所は分かっている。駅の近くの立派なホテルだ。
とにかく、明日、二人の行動を確認しなければならない。
もしかすると、何か聞き間違いだったのかもしれない。聞き間違いであれば、良いのだ。それが確認出来れば……。
美雪は明日、現場に、「確認」しに行くことを決めた。
1
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる