僕らの高校生活

雪解月

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悠人の苦悩

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 翌朝、俺は決意した通り早く起きることができた。夕日を起こし、身支度を済ませ、志津の家の前まで行く。

「おはよう志津。家あがるぞー。」

 インターホンを押し挨拶をする。

「志津ちゃん!ゆうくんと夕日ちゃん来たよー。」 

 どうやら千春までいるようだ。聞こえてきた千春の声に、夕日は今にも飛び上がりそうなほど喜んでいる。うん、今日も夕日は可愛い。そんなことを考えつつリビングまで行き、四人で朝食を食べ始めた。今日の朝ごはんは焼き鮭、シジミの味噌汁と白米だった。朝ご飯を食べ終たところで千春が弁当を手渡してきた。

「昨日とのお礼です。昨日別れてから弁当箱と材料を買っていたんだよ。」

 照れくさそうに微笑んでいる。正直ありがたい。夕日は給食があるので昼は校内にある食堂で済まそうと思っていたのだ。

「ありがとう千春。助かるよ。」

 前もって貰っていたらしい志津とともに礼を述べた。その後家を出て、四人で一緒に学校へ向かう。途中で夕日と別れ、学校にたどり着いた。少し早く着いてしまったのでしばらくケータイゲームでもして時間をつぶす。

 しばらくゲームをしていると、前の方から椅子を引く音が聞こえた。携帯から顔を上げ音のした方を見るとそこには柊がいた。

「聞いてくれよ柊、こんなことがあったんだぜ。」

 登校して来た柊を見つけるなり昨日と、今朝起こった出来事を半ば愚痴のようななりながら話す。

「いや、なにそれどんな小説?」

 冗談めかして言われてしまった。実際、俺もそう思うが事実なのだから仕方ない。

「いや実際に起こったことなんだって。初めて事実は小説よりも奇なりって言葉を実感したよ……。」

「役得じゃんかそれ、結構羨ましいかも。」

 そう茶化す柊に、如何に憂鬱だったかを懇々と語っていく。

「お、おう。大変だったんだな……。」

 苦笑いしながら言われてしまう。とりあえずわかってくれたようで何よりだ。
 柊が実は悠がヘタレなだけではと感じていた事を悠斗はまだ知らない。




 四時間目が終わり四人で中庭で弁当を食べることにした。教室でも良かったのだが三人とも同じ弁当だとひと悶着ありそうなのでこの場所にした。
桜の木の下に座り、思い思いに食べ始める。千春が作ってくれた弁当を開け、中にあったパプリカの肉詰めに口をつける、

「かっらっい!は?なにこれ⁉」

 余りの辛さに涙目になりながら絶叫する。本当に辛い、というより痛い。

「え?ゆうちゃんって辛いの駄目だっけ?それよりパプリカは辛くないでしょ?」

 不思議そうな顔を浮かべながら志津は、それを食べようとしている。

「やめろ志津っ!死ぬほど辛いからっ!今までにないくらいだから!」

 全力で止めようとする俺をきょとんとした顔を浮かべながら見ている。

「ゆうちゃんがそこまで言うなら……。」

 志津は渋々とそれを置く。

「千春っ!お前もだぞ!これ本当にやばいから絶対パプリカじゃない!」

 食べようとしていた千春に向かって叫ぶ。千春は、急な叫び声に驚きつつ言い返す。

「いや、これパプリカだよ!昨日みんなで行ったスーパに置いてあったし。確か、ブート何とかだったはず。」

「もしかして、ブート・ジョロキアかそれ?」

 唖然としながら聞く。

「ゆうくんよくわかったね。確かそんな名前」

 何故そんなものがスーパーに……。

「それ、世界一辛い唐辛子だから……。調べればわかる。」

 未だに続く痛みに耐えつつ答えた。本当に痛い、あのスーパーなんてものを売ってるんだ……。

「えぇ?本当に?ごめんねゆうくん。」

 慌てながら謝る千春。とりあえず、犠牲が一人で済んで良かった。心からそう思えた。他料理も、あまりの痛さに食べることは出来なかった。空腹のまま残りの授業を済ませひたすらに千春の謝罪を受けながら帰宅した。

今度あのスーパーに苦情の一つでも入れてやろう。今日の出来事を受けてそう心に決めるのであった。
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