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ll:夢の景色はかくも素敵なのか
ミヤビキタザワ学園
しおりを挟むワーーーーーー!!キャーーーーーー!!
「今年のURAを制したのは…キブミマキア!!!数なる強豪を抑え、見事に1着でゴールしました!!」
あぁ…これは夢じゃないのか…?私は勝ったのか……
はは…トレーナーがなにか叫んでやがる…ははは…待ってよ…もうちょい余韻に浸らせてくれよ…
マキア…!マキア……!!
「起きんかいキブミマキアァァ!!!!!」
「ふぁいいいいぃぃぃ!!!!!!!!」
目が覚めると私はベッドの上で情けない声と共に飛び起きた。そして声がする方へ向くと、そこには先程の男性が立っていた…
「うぁ…トレーナー…?」
「誰がトレーナーじゃ、お前まだノラ(トレーナーのいないウマ娘)じゃろぉが。それよりヨダレ吹けヨダレ」
あぁ思い出した。このデリカシーもプライバシーの欠片もない男性は、私の中等部の時の担任、広来陣一郎(ひろきじんいちろう)だ。
「ん~広いさん(デコがちょっと広いから)じゃないですか…どうしたんですか…ここウマ娘専用寮ですよ…鍵はちゃんとかけたはずなんですが…」
「広来だ広来!広いじゃねぇよ!!どうしたもこうしたもねぇよ、お前が入学式初日から来てねぇから呼びにわざわざ学校から来たんだよ!部屋の鍵は寮の管理人さんに鍵借りた!というより早く起きろ!!!」
なるほど…そういう事か…と思い、ふと時計をチラリと見やると…
「…えっと…昼じゃないっすか…」
壁にかけておいたデジタル時計は13時を示していた。
「だから起こしに来たんだろうが…とりあえずはよォに着替えて学校行くぞ。」
まじっすか…こんな時間から学校行くんですか…
「俺は部屋の外居るからな。着替え終わったらはよ行くぞ」
そう言い終わると、それ以外はもう何も無いかのように速攻で部屋を出ていった。
広来「はぁ…ったく…初日から寝坊するかね普通…」
ゴソ…タッタタタッタッ俺は服の内ポケットからスマホを取り出し、学校へ電話をし始めた。
「広来です。あぁ~はい…その件です…ふっつーに寝坊でした…いえ、寮の管理人さんに事情説明して、鍵借りましたわ…いやいや…申し訳ないっすわ…はい、今から戻ります。…はい、ではまた後ほど。はい、失礼します。」タッ
通話終了。通話時間30秒ジャスト…これはいい予感がするn…いや、悪い予感か…今この瞬間が悪い状態だわ…
ー 数分後 ー
…なっげぇ…!!!!
さすがに長すぎるので、とりあえず呼び出してみるか…
そう思い、扉をノックしようとした途端…
ガチャ!!ガン!!!痛っつぅ…
勢いよく開かれた扉に俺は手と顔をぶつけてしまった…
「わっとと!大丈夫ッスか!!広いさん!?」
「あぁもぉ…手ェ打った程度だから俺は大丈夫だ!早く行くぞ!!って言うかお前先行った方が絶対早いから先行っとけ!!」
あ、確かに...分かりました!と言う本当に寝起きかと疑うぐらい元気な返事と共に、俺は先に行くキブミマキアを見送った。はぁ…今日は厄日か…俺はぶつけた右手で同じくぶつけた額をさすりながら後を追う。その出入口で管理人さんに借りたマスターキーを返した後、車でキブミマキアを追いかけるように学園へ向かった。。。
…にしてもさすがウマ娘…もう影も見えねぇ…早すぎる…
ー 数時間前 ー
ウマ娘養成機関「日本ウマ娘トレーニングセンター学園」通称トレセン学園。数多くのウマ娘を育成している学園…
なんて夢のまた夢のようなちっぽけな学園、ミヤビキタザワ学園。全生徒十数人の学園がそこにある。数十人ではなく十数人だ。しかも全校生徒が。
俺、広来陣一郎はそこで講師をしている。いや…任されたの方が正しいか…
学長「えぇ…という事で、貴女共々一丸となり…がんばって良い学園生活を……」
学長のジィさん話長ぇ…これ毎年話終わるの待たされる俺達の身にもなってくれ…等と考えていると、ウチの理事長が遂に横から止めに入った。
理事長「はい、学園長さんありがとうございました。」
「え、ちょっとまだ...」と学長が割ってはいろうとするが、無理やり強引にそれを阻止。理事長さん…マジ感謝…お疲れ様ですわ…
理事長「ではえぇ~新入生5名ですね~。え?5名?」
まてまて、今ここに4人しかおらんぞ…?っていうより最初から名簿見て確認してくださいよ…
理事長「えっと…とっとりあえず現時点では4名ですね!!ご入学、おめでとうございます!!」
その後…教室にて……
広来「はい、皆さんご入学おめでとうございます。えぇ~さっき聞いてわかったと思うが…本来は5人のクラスなんだが、1人無断欠席してるわけだ…初日にもかかわらず…まぁとりあえず自己紹介しましょうか」
俺は黒板に自分の名前を書き出そうと…書きだ…あれ……
「チョークねぇじゃん…あぁまぁいいや、俺の名前は広来陣一郎。漢字で、広く来る陣営の一郎って書くぞ。」
俺は持って来ていた紙とペンで自分の名前を書いて見せた。
「分からん所あったら、一応おしえれる範囲では教えるぞ~っていっても、去年までは中等部で先生やってたもんだから、もしかしたら俺よりみんなの方がここのこと物知りかもしんない…」
俺のちょっとしたジョークで生徒達は少し笑ってくれた。
時計を見ると、時間は既に12時を指していた。今日の下校時間は確か12時半だったはず…
広来「時間が時間だし、みんなの自己紹介は明日にしようか。これからは、一応下校時間になるんだが、一応先輩達は授業だったり部活時間だったりするからな~見学するもよし。図書室行って時間潰すもよし。さてまたは帰るもよし。好きなようにしなよ。正し、先輩方の邪魔はしないように!!ちなみに、明日早速実力テストがあるから、しっかり休んでおくんだぞ~」
えぇーと残念そうにする娘もいれば、 やった!早速走れる!と、嬉しそうにしている娘もいる。やっぱウマ娘も十人十色なんだな…
以上!解散!っと…とりあえず今日一日はこんなもんかねぇ…
あとは…この見た事ある名前…はぁ…と、俺はため息をついた後、この学園のウマ娘専用寮へと向かった。
そして現在に至る……
~職員室~
車を降りて駆け足で戻った俺は疲れ果てながらも、職員室のドアを開ける…
ガラガラ…ガラ…バン…!
広来「広来陣一郎只今戻りました!!ゼェハァ…」
理事長「あ、広来さんお疲れ様です。キブミマキアさんが先程私の元に挨拶しに来ましたよ。」
良かった…キブミマキアもあの後きちんと来たようだ。
「了解です。」と簡易な返答をした後、自分の席の椅子にドカッ!と座り込んだ。
はぁぁ…疲れた…初日からめちゃくちゃ疲れた…えっと…この後は職員会議やら書類整理…
?「おぅ陣(じん)~、勤務初日からお疲れさまやねぇ~」
俺が今後にやる事を脳内整理していた途端に、左から聞き慣れた声、この呼び捨てする人は俺の数ある友人の中で、あの人しかいない…
広来「禅(ぜん)か…ほんとつかれたわ…って言ってもこの後まぁた学長の長々話やけぇの…」
はぁ…と、またひとつ大きいため息をついた。
こいつは橋田禅(はしだ ぜん)名前と見た目とは全く違い、表裏の激しい性格をしている。言いたいことはキッパリ言うタイプである。関係ないが、高校時代の先輩だ。
理事長「はい…えっと…広来さんが帰って来たので、職員会議をはじめます!」
広来「え、俺待ちだったんですか!皆さんすみませんありがとうございます!」
さすがに申し訳なく思い、その場に立ち皆に向かってお辞儀をした。
すると周りから、「大丈夫だぞ新人!」「そんなかしこまらんでえぇでー」等、声をかけてくれた。
理事長「えっと、事情は入学生が1人足らなかったし、ウマ娘寮から連絡してくれて事情は把握してますから仕方ないことですよ。ただ、行くなら行くと1度声掛けてくださいね…?」
ニコッと顔では笑っている様に見えるが怒っているのが目に見えている…
広来「あ…はい、ありがとうございました。すみません…」
こんなやり取りがありながらも、職員会議が始められた。
ー 同時間第2校舎にて ー
ーキブミマキアは迷っていたー
いや、どう考えても自分が寝坊していたから悪いのだが…自分の教室がどこか分からない。というか学校に来たもののどうすればいいんだ…?
あいにく、下駄箱の上に学年らしき数字のプレートが置かれていたので、1年と書かれた所が私たちがこれから使う下駄箱なのはわかった。
そこで、とりあえず使われていないであろう場所に靴を入れ、実は寮で忘れそうになってた上履きに履き替えた後、校舎に入ってすぐ右に[職員室]と書かれたプレートがかかった扉があったので、そこにこれからの高校生活でお世話になる先生方へ挨拶へする為に、入室した。
そこで初日から寝坊した事を入学案内の時に見かけた人(理事長)に謝り職員室を出たのだが…これからどうすれば…とりあえず校内探検でもしてみようか…
…で…迷った……どこココ…校内広すぎる……
ここ、ミヤキタ学園はトレセンよりは遥かにちっぽけだが、一応はウマ娘育成機関である。校舎はボロいが割と広い。
迷走している内に学食に行き着いた。そういえば何も食べていないからか、いい匂いにつられ、お腹が鳴ってしまった。時間は丁度昼時だし、なにかお腹に入れておこうか…
マキア「すみませーん注文いいですかー?」
…返事がない…あらぁ?…誰も居ないのか…なぁ…
中をのぞいてみると、数個ある大きな鍋には蓋がしてあり、火はついてないようだ。所々に脚立らしきものが点々と置いてあった。が、人は…
「誰もいない…?」
おかしいな…昼だし、誰かいてもおかしくないのに…私は
すると…調理室の奥の部屋から声がした
?「ごめんね!もうちょっと待ってねー!!あ、どこでもいいから席座っててー!!」
マキア「あ…えっと、はーい!」
良かったぁ人いたぁ…私はとりあえず持っている手荷物を下ろし、空かせたお腹をさすりながカウンター席に座った。
目の前にメニュー表(と言っても、2枚の紙)が置いてあったので、手に取ってそれを見る。
1枚はウマ娘専用メニュー。もう1枚は人間用メニュー。
確かに教職員もこの食堂を使う訳だから、ウマ娘用と人間用で別れてるのは当然か…
私はウマ娘用のメニュー表を上から目で読んでみた。
AセットからCセットまであり、メニュー表に記載されてある写真を見るに、
ーAセットは主に日本食がメインになっているようだ。
ーBセットは基本は洋食かな…?
ーCセットに関しては画像がないが…なんだこれ…
「日替わりミラクルオリジナルセット……?」
よくわからない文字列がそこにはあり、つい口に出してしまった…
「お!ミラクルオリジナルセットだね!!あなた中々チャレンジャーですねぇ」
いつの間にか厨房に、帽子を被った身長150あるかどうかのショートヘアーで、黒髪と赤髪のメッシュのちっちゃな子がそこにはいた。エプロンの下に制服を着ていた為、この学園の生徒だという事はすぐにわかった。
いやその前にちょっとまって…今この子なんて言った?チャレンジャー?私が…?私一体今から何を食べさせられるの…?
突然現れたその子は注文を受け取ったと勘違いし、料理を始めた。
まぁ値段も他のと比べ、格段と安いしまぁこれでいいか…
ー 数分後 ー
そこに出された物を見て私は背筋が凍りついた。反射的にヒエッと声が漏れる…
そこにはゲテモノとしか言いようがない異様な光景をした何かが盛り付けられてあった…所々に見えるこれの正体をつい反射的に聞いてしまった…
マキア「あの…これは…」
?「はいよ!今日のオリジナルはねぇ…野菜と“虫”を使ったとある地方の郷土料理のドンブリになってるぞ!!!」
…え…今虫って言った…?言ったよね……私はそこにある…というか刺さってる虫を指さしながら次々と訪ねた。(ガクガクブルブル)
マキア「こ…これは…?」
「コオロギだ!」
マキア「これは…」
「イナゴだぞ!!」
マキア「この幼虫に見えるちっちゃいのは…」
「テッポウムシ(カミキリムシ)の幼虫だ!全部本物だぞ!!ちゃんと食えるよう下処理は済ませてっから安心しなって~」
ハハハハーと笑いながらふんぞり返ってるその姿はもう煽っている風にしか見えなかった…
「デザートもあるぞ!!」
やめてください…と、声に出す気力はもう私にはなかった…
ただ、どれだけゲテモノ料理でもこれだけは言わないとね…
私は2.3度大きく深呼吸をし、両手を勢いよく合わせ、この料理の戦いの合図がてら…気合いを入れる為に…強く…言った。。。
マキア「いただきます…!!」
その目は、完全に去年のレース中の最終直線最前線を狙っているような目をしていた…
ー 十数分後 ー
既に料理は冷めてしまっている。残りは後2.3口で食べきれそうなほど食い切った…
ここで残しては作ってくれた人に申し訳ない…そんな事を無理矢理思いながら、無我夢中で食べ進んだ。が…見た目が見た目のせいで、身体が拒否反応を起こしていた…味は…悔しいが、悪くなかった。
最後、お米を口へとかき込み…パンッ!!
マキア「ごちそうさまでした!!!」
?「オォォォ!!凄ーーい!!!私の虫料理食べきったの君で2人目だぞ!!!!私でさえ途中でギブしたのに!!」
まてまて、自分で食べれなかったものをメニューに入れるな…というより…2人目!?これ食べきった人がいるの!?私は渡された口直しの人参を食べながら、恐る恐る聞いてみた。
マキア「ちなみに1人目は…?」
?「学園長だぞ!!」
学園長…?学長…学長……と私は学園長が誰か思い出そうとしていた…
?「ん?お前新入生だよな?今日入学式でなっがい話聞かなかったのか?」
マキア「あっはは~私寝坊しちゃいまして、さっき来たばっかりなんですよー。」
?「あぁなるほど、お寝坊さんなんだなー?それじゃ学園長の顔も思い浮かばないわけだな?」
学食の先生がうんうんと頷いた。
?「ミヤビキタザワ学園のホームページ見た事あるか?」
私は縦に頷いた。当然だ、来る学校の事を調べない訳が無い。ただあのページって更新日は…
?「HOMEのページのいっちゃん上に、割とでかめな椅子に座ってた白髪のじいさん覚えてるか?」
あぁ~いましたねそんなおじいさん…なんて思い出しながら、適当にあいづちを打った。
?「あの人だよ」
マキア「え!?あの人ですか!?あのホームページみたいなブログ最終更新7.8年前ですよ!?」
そう、ミヤキタ学園のホームページは8年ほど前から更新が止まっているのだ。
?「今年で何歳言ってたかなぁ…確か九十…何歳だっけな…?」
マジスカ…そんなおじいちゃんがここの学長なのか…
?「ちなみに理事長も一緒にチャレンジしたが、量が多くて断念してたなぁ?」
うっそでしょ…そんなにこれ食べてる人いるの…
マキア「え~っと…お名前聞いてませんでしたね…」
クラブミラクル「私か?私の名前はクラブミラクルだぞ!好きなように呼ぶといいんだぞ!はいこれ、デザートだぞ~」
忘れてた…デザートがあるんだった…頼みます…デザートだけはまともであってください…
間もなくコトっとカウンターに置かれたそれは、薄黄色で…プルプルした…
マキア(プリンだァァァァァ!!!)
危うく叫びそうになったのを全力で抑え、心の中でガッツポーズをしながら、私はすぐさまスプーンを手に取り、それを口の中へ入れた…
ー職員会議終了後廊下にてー
帰り支度を済ませた橋田禅と広来陣一郎2人は、下駄箱へ歩いていた。
職員会議の内容は、自己紹介や各学年でその日に使う場所決め等の相談のみで終わったし、案外すぐに終わったので気が楽であった。
橋田「な~陣、お前、この缶の中身なにかわかるか?」
いきなりそんな事を言い出しす禅の方を向くと、恋恋(濃い濃い)抹茶と書かれた巻をチャプチャプ振って見せた。
なんだよいきなり…というふうな怪訝そうな顔を見せるが、まぁまぁと、それを阻止した。
広来「は…?抹茶じゃねぇの…?」
ん。とそれを渡された。えぇ飲めと…まぁいいや、俺は抹茶は好きだし、ありがたい。
とそれを飲んだ。と同時にブッフォッ!!と吐いた…というよりは、吹いた。
広来「お前!!ゴホッゴハッ!!!マズッ!!なんだこれ!!え!?スポドリか!!!!!」
俺はアッハハと笑う橋田を睨みながら、それを投げ返した。
橋田「ほんと脳がバグるよなwww」
投げてやったペットボトルを器用にキャッチして、変な事を言っている橋田を無視し、俺はとりあえずモップを探した。
ー 同時刻 食堂 ー
ブハァァァァァ!!!!!女の子とは思えぬ奇声とともに、先程食べた物を吐き出した…マッズ!!!プリンじゃない!!全然違う!!!
なんだこれは…!とりあえず差し出されたそれの匂いを、恐る恐る嗅いでみた。
マキア「カニさん…これ…バナナですか…」
少し食べたそれを再度プルンプルンと揺らしながら、それを差し出してきた娘に向かって問う。
どこから取り出したのか、広く透明なプレートで飛沫を防いでいた彼女は腹を抱え笑っていた。
クラブ「アッハッハッハッ!!よくわかったな!!正解だぞ!!バナナゼリーだ!!それより、カニさんかぁ!それは初めて呼ばれたぞ!!」
アッハッハッと彼女は再度笑った。
クラブ「ハァ…お腹痛いフフッ私は1回もプリンとは言ってないぞ~フハッキミはせっかちさんだな~」
私もいい加減恥ずかしいんで、小刻みに笑うのやめてくれませんかねぇ…
そんなことを思いながら差し出されたバナナプリンを食べだした。
…めちゃくちゃバナナ味…普通に美味しい…
クラブ「それより、私に何か聞きたいことがあったんじゃないのか?」
あぁそうだった!!珍妙なご飯等に夢中になって本題を忘れていた。
マキア「ちょっと聞きたい事があって、1年の教室を探してるんですよ…」
クラブ「外の下駄箱から、校舎に入ってすぐ左だぞ?1年ってパネルあったはずだぞ…?」
え?そんなパネルあったか…?後でまた戻ってみるか…
私はお礼をした後、バナナゼリーを完食し、会計を済ませ、食堂から去ろうかと思い、立ち上がったときにふと気になった事があった。
マキア「そういえばカニさん、なんで私が新入生だってわかったんですか?」
そう、私は新入生だとは一言も言っていない。まぁそもそもここの学園は生徒数が少ないのもあるだろうけど、それより何か違和感があった。
問われたクラブミラクルはキョトンとした目でこちらを見て、あぁ!と何か思い出したかのように答えてくれた。
クラブ「キミ寝坊してたから知らないのか!ほら、ここの部分だよ!」
クラブミラクルは、自分の制服の襟を部分を指さして見せた。指を指した、襟の部分には、赤い2本線の刺繍が施されていた。
キブミマキアは今一度、自分の襟をつかんで、自分でも見える位置まで引っ張った。すると、自分の制服に、自分の視界にギリギリ見える、黒い線が1本引いてあることに気づいた。
マキア「なるほど!この線が学年を示し…て…」
と、ここまで言った所で、私はカニさんの襟元を見て…あれ…?
私の制服には1本線この人の制服には2本線刺繍がはいっているってことは…
マキア「カ…カニさ…じゃなかった!!クラブさん先輩じゃないですか!!ごめんなさい!!あ、です!!」
デス?とクラブミラクルは首を傾げた。
クラブ「あはは、いいよカニさんで、私はその方が嬉しいからね!それにぃ、タメ口でいいよぉ~?」
マキア「で、でも…先輩には…」
クラブ「私がいいって言ってるからいいんだぞ!そんなに無理してかしこまったら、私が逆に申し訳なくなるだろ?」
そんものですかねぇ…
マキア「で…では…じゃなかった、じゃあ、カニさんで…」
クラブ「うむ、よろしい~」
マキアとクラブはフッと吹き出し、2人で笑った。
その後キブミマキアはクラブミラクルにお礼と別れの挨拶をした後、1度教室下駄箱の方へ向かった。
ああ、これからの生活は、いい予感がする。教室へ向かう足は、自然と早くなっていった。
続く…
トレセン学園、?????部屋
そこにいた人は何やら苛立ちを感じており、白い陶器に入ったコーヒーを飲み干し…
???「クッソがぁぁ!!!」ガシャァァン!!
そのまま飲み終えたコーヒーカップを投げ、壁に叩きつけた
「また最初からだ…大丈夫…いつも通り…だ…表情を崩すな…今度は……」ブツブツブッ…
続く……
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