Thread of fate

さくら

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1 朔夜

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『僕は生まれて来てはいけなかったのかな?』





この世界には、絶対的な存在のαと、普通の人のβ、そして、僕のように貧弱で家族からも奴隷のように扱われるΩがいる。


僕の名前は三日月  朔夜(みかづき  さくや)  十三歳。αの両親から産まれたΩ。
僕の後に産まれた双子の弟逹はαだから、本当に僕だけが出来損ないなんだ。
両親はΩに性的行為を斡旋する会社を経営してるらしく、βよりは裕福な生活をしているみたい。だけど、僕が両親の仕事に関する事を聞いたのは、もう少し先の話。


元々小さい頃から出来の悪い僕は、両親に嫌われており、幼稚園や小・中学校にも行ったことがなく、窓のない鍵の掛かった地下室で一人で過ごしていた。食事は一日一回食べれたら良い方で、二~三日貰えないことも普通だった。

去年、初めて病院で診察してもらい、Ωと判定されてから、αの両親は双子の弟のみを自分の子供として育て、僕は空気のような扱いをされるようになった。
僕の部屋は、それまで生活していた地下室から庭にある物置小屋になり、掛ける物は毛布一枚のみ。服は買って貰えないから小さい頃の服を無理矢理着ている。髪も切れないので、今では背中あたりまで延びている。
物置小屋には鍵が掛かっており、外に出ることは許されていない。
食事は毎回同じで、1日分の茶碗一杯の冷たいご飯とコップ一杯の水のみ。コップの水を飲んでしまったら、シャワーから水を汲む。
簡易トイレとシャワーブースは物置小屋の隅に新しく造ってくれたが、出るのは水だけなので、寒い時期は水浴びもせずにそのまま眠ることが多かった。

何もせず、誰にも会うことなく過ごしていた日々に終止符が打たれたのは、僕が十五歳になった日だった。
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