きらめきの星の奇跡

Emi 松原

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憎しみの弟子入り

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「いいよ。面白そうだから」
 少し間を置いて、エミリィ姫様がその笑顔のまま言った。
「エミリィ……!!」
 何かを言おうとしたエリィ姫様を、エミリィ姫様は無言で見た。
 エリィ姫様は、その目を見ると、何も言わずに頷いた。
「その代わり、私の命令は絶対だ。少しでも気にくわなかったら、いくらあんたが先生の孫でも、一瞬で消えて貰う。それで良いな?」
「はい。よろしくお願いします」
 俺は、エミリィ姫様に頭を下げた。

「あのっ!!エリィ姫様!!私を弟子にして下さい!!」

 突然、隣で、リルが大きな声で叫んだ。
 俺は、驚いてリルを見た。いきなり、何を言い出すんだ!?
 でも、リルは、今までに見たことのない真剣な目で、エリィ姫様を見ていた。
 エリィ姫様と、エミリィ姫様が、顔を見合わせた。そして、二人は軽く頷いた。
「えぇ。リルさん。ぜひ、私の弟子になって下さい。私、弟子を取るのは初めてなんです。初めての弟子が、先生のお孫様で嬉しいです」
 エリィ姫様が、優しく、ニッコリと笑った。
「そうですね、リルさん、その姫様というのをまずやめましょう!エミリィのことは、これから、マスターと呼ばないといけないですから、私のことは、師匠と呼んで下さい!お洋服も、道具も、私の弟子に相応しいものを用意させます。お父様には……この国の国王には、私が話を通しておきますわ」
 空気を変える明るい笑顔で、エリィ姫様が言った。
「は、はい!!」
 リルが、慌てて返事をした。
「ルト、あんたは、私のことは、エミリィ様って呼びな。弟子なんだ。呼び方から、他の人間と違うってことを示さないとな。私の格が落ちても困る」
 エミリィ姫様の言葉に、俺は黙って頷いた。
 これが、俺の選んだ生きる道だ。俺は、必ず、グリーンクウォーツ王国の国王に復讐してみせる。
「では、お二人の詳しいことは、明日また改めてお話しましょう!お二人の部屋を用意してあります。明日から忙しくなりますよ」
 エリィ姫様の言葉に、俺とリルは、黙って頭を下げた。
 でも、リルは……どうして創造神様のエリィ姫様に弟子入りしたんだろう……?
 今日はもう聞けそうにないから、明日聞いてみよう。
 
 こうして俺たちは、お互いに双子神様の化身の姫様に弟子入りし、お城の従者さんに連れられて、隣同士の部屋に通された。
 従者さんが、明日必要なものを持って、ブルーローズのギルドの拠点に移り住むと教えてくれた。
 一人っきりになった部屋で、俺は、ずっと炎に包まれていく村を思い浮かべていた。
 みんなの敵討ちは、必ず俺が……。
 そう思いながら、拳をギュッと握りしめた。
 そして、窓の外の星を見ながら、祈った。
 そういえば……エミリィ様は、最後にじいちゃんが憎いと笑っていた。それに対して、じいちゃんは、嬉しそうな顔をしていた。一体、どういうことだったんだろう……。




※※※




「穏便に済むとは思いませんでしたが、まさか、エミリィに弟子入りするとは……」
 エリィが、エミリィと向き合ってソファに座り、深いため息をつきながら言った。
「良いんじゃない?勝手なことされるよりは」
 エミリィが、軽い口調で言う。
「エミリィ、あの子に何を想いましたか?」
「それ、わざわざ聞く?」
「確認です」
 エミリィが、ため息をついた。
「あいつには、今、強い憎しみと復讐心しかない。逆に言えば、そこに向かって進む強い決意がある。だけれど、知る覚悟、決断する覚悟、実行する覚悟……何もかも、覚悟が足りない」
 エミリィの言葉に、エリィが頷いた。
「リルさんは、その逆です。あの子には、全てを受け入れる覚悟、ルトさんと歩む覚悟がある。だけれど、自分の心、進む道の決意は足りない状態です。……私たちとは形が違っても、相反する二人がお互いにどういう影響を与え合って、どう進むのか……。責任は重大ですね」
「そんな深く考える?側に置いておく方が、近くで見れて面白いじゃん。それに……いざとなったら、この世界ごと、私が消してやるよ」
 暗く笑って、エミリィが言った。
 エリィは少し笑うと、窓の外を見た。
 空では、静かに星が輝いていた。
「あ、そういえば、ラネンのこと紹介するの忘れてた」
 エミリィが、ラネンを見ながら言った。
「あんた、影薄すぎ!」
 エミリィの言葉に、ラネンは何も言わなかった。
 ただ、ラネンも黙って、窓の外の星を見つめて祈っていた。

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