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覚悟の時
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「……無事、たどり着いてくれたようだな……」
大きなダイヤモンドとブラックダイヤモンドの石の前で、苦しそうに座って胸を押さえているシークが言った。
「……そうだねー。さぁ、賭けの時間だよー……。お兄ちゃん……」
ユークは、息絶え絶えに、シークの隣で倒れている。
シークが、少し笑った。
「お前が俺のことをお兄ちゃんと呼ぶときは、俺のことを優先的に考えている時だ。こんな時なんだ。自分のことを考えろ」
「……ほんと、俺たちって、創造神と破壊神が逆になった感じだよねー……」
ユークも、苦しそうに笑う。
エミリィ達の魔力が、どんどん近づいてくる。
いつだって、死ぬ覚悟はできていた。
世界の為なら、国民の為なら、友の為なら。そして、愛する人の為なら。
それなのに、自分達が生きることが復讐だと言ったヒトがいた。
そしてそのヒトは、《受け継ぐ者》となった。
「ねぇ……シークお兄ちゃんー……?」
初めて呼ばれたその呼び方に、シークは驚いてユークを見た。
ユークは、苦しい中で、どこか清々しく、穏やかに微笑んでいた。そしてシークに手を伸ばす。
シークは、その手をしっかりと握った。
「俺たちにさー……本当に足りなかったものが分かった気がするんだー……」
「さすが双子だな、俺もだよ……」
二人は、しっかりと手を握り合うと、たった一人の双子の兄弟を見た。
「俺たちは、運命に従うだけで、抗おうとする力が欠けていたな」
「うんー。俺たちにきっと一番足りなかったのは……生きる覚悟だったんだねー……」
「だからこそ、今、生き抜いてやろう。抗おう。それが、償いになるのならば。……あの子の復讐になるのならば」
「そうだねー……」
二人は、手に力を込めて精一杯笑った。
それと同時に、扉が開いた。
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