きらめきの星の奇跡

Emi 松原

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終わりの時

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 俺たちは、シーク王子様を筆頭に国王の間に入った。
 また争いが起きるのかと思ったけれど、とても静かな空間だった。
 王座に、国王様だと思われる人物が座っていて、その隣には、王妃様だと思われる人物が、静かに目を閉じて座っていた。
 他にいるはずの人達は、誰もいなかった。
「父上様……。全てを終わらせに来ました」
「他の皆はどこに行ったんですー?」
 シーク王子様と、ユーク様が言った。
「……城の前で、エミリィ姫が問うた時に、ほとんどの者がここから去った。残った数名も、アーサがこの城を制圧した時点で逃がしたよ。終わるのは、私たち二人で良い」
 ゆっくりと、グリーンクウォーツ王国の国王様が言った。
 俺は、ずっとこいつに復讐したかった。今でも、絶対に許すことはできないし、多分一生許すことはないだろう。
 だけれど、俺は自分の復讐を自分で決めた。俺は、この許せないという気持ちや、怒りの気持ちを持ったまま、幸せになるために前に進む。
「安全だと思って良いか?」
 エミリィ様が、シーク王子様に言った。シーク王子様が、無言で頷いた。
 それを確認したエミリィ様が、生誕指輪に手を触れた。
 それと同時に、エミリィ様の隣にエリィ姫様が転送してくる。俺はびっくりしたけれど、平静を装った。
「師匠……」
「リルさん、皆さん、無事で本当に良かった。よく頑張りましたね」
 エリィ姫様は、俺たちに笑いかけると、真剣な顔で国王様を見た。
「降伏して下さいますね?」
 エリィ姫様の強い問いかけに、国王様は、静かに頷いた。
 どうしてだろう。あんなに残虐なことを行い続けた人だ。こんなにあっさりと認めるなんて思わなかった。
 エリィ姫様が、魔法石を取り出した。シーク王子様が、その隣に並んで、二人で顔を合わせて頷き合う。
「ホワイトクウォーツ王国の創造神、最高指揮官のエリィです。ホワイトクウォーツ王国と、グリーンクウォーツ王国の全国民に告ぎます。グリーンクウォーツ王国の国王が、降伏しました。シーク王子とユーク王子も、エミリィ達の手で救出され、無事です。よって、この戦争は、これで終わりです。ホワイトクウォーツ王国の方々は、兵を下げ、次の指示を待って下さい」
 そのまま、魔法石をシーク王子様に渡した。
「グリーンクウォーツ王国の創造神、シークだ。グリーンクウォーツ王国の兵に告ぐ。国王はこの場を持って我ら双子神が処刑する。武器を置いて、撤退せよ」
 シーク王子様の言葉に、俺は小さく息をのんだ。
 やっぱり、この場で国王様は処刑されるんだ。……当たり前だ。村の人間の命を無残に奪い、実の子供であるシーク王子様とユーク様をはじめとして多くの人を苦しめてきたのだから。

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