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予想しなかった敵
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しおりを挟む俺は、何か考える暇もなく、短剣をスピアで受け止めた。
重い金属音が走る。
レッド王国の人間がニヤリと笑った。
こいつは……誰なんだ……?昨日の説明では、一切出てこなかった。
俺たちは一騎打ちになっていた。ブランが援護してくれようとしてくれていたけれど、相手の動きが速すぎるので、周りの魔獣を倒して貰って、一騎打ちに集中できるようにした。特別騎士団の人と同じように……。
エミルさんとタツさんがぶつかり合っている、それが肌で分かるくらい地面が揺れて、風が舞っていた。
俺は、目の前のレッド王国の人間に集中した。
今までの訓練で経験したことがないほど、相手は早くて、短剣なのに威力もあった。
俺は負けじと、エミルさんを見て訓練し続けたスピアを回す。
どちらも引かず、俺たちは睨み合って戦った。
その時、エミルさんとタツさんが、またあの魔方陣をぶつけ合ったようだ。俺たちは、同じ方向に吹き飛ばされた。
エミルさんとタツさんがあの魔方陣のぶつけ合い……大将戦を始めると、周りの騎士団は黙って見守ることしかできない。
俺は、レッド王国の人間を見た。向こうもニヤリと笑って俺を見ている。
「さすが、個人能力に優れたブルー王国ってことか。お前、名前は?」
「……コル……」
「そうか。俺はレッド王国、タツさんの一番弟子ラオンだ。覚えておけ。俺がブルー王国を倒して……お前を殺して、この戦争を終わらせてやる」
俺が何か言う前に、ラオンは笑い声を上げると、後方へと引き上げていった。
その瞬間、戦闘の終了を告げる鐘が鳴り響いた。
俺の側に、ブランとモカが走ってきた。
「コル、大丈夫か。いきなりこんな計算外のことが起きて」
ブランが心配そうに俺を見る。
俺は、大丈夫という意味を込めて頷いた。
第一騎士団団長がやってきた。
「想定外の事態に、よく対応してくれた。さすが、勧誘者だ」
俺は、頷くことしかできなかった。何か……ラオンの言葉に、引っかかるところがあったからかもしれない。
その日の夜、俺はみんなにラオンのことを話した。そして、ブランとモカが自分の部屋に戻った後、俺はアマナの膝に、崩れるように抱きついた。
「あら、コル。甘えんぼさんね。そんなに今日の戦闘で思うところがあったの?」
アマナが優しく頭を撫でてくれる。
「アマナ……ラオンってやつ……俺を殺して、戦争を終わらせるって言ったんだ」
「そう。それで、あなたは何を感じたの?」
「こんなこと言ったらいけないのは分かっているんだけれど……ラオンも、戦争を終わらせようとしているのかなって……。レッド王国の人間に、改めて目の前で殺すって言われてショックだったのもあるけれど……」
「コル……。あなたが夢の為に最前線に立つと言うことは、必ずそのジレンマで苦しむわ。大丈夫、いつでも私が側にいる。今、私、後方支援部隊にある資料を片っ端から読んで、あのエミルさん達が使っている魔方陣を解読しているから。コルの力になれることなら、なんでもするから。だから、コルは自分の夢に向かって歩いて」
アマナの優しい言葉に、俺は頷いた。
そう、俺は今、目の前のやるべきことをやるしかないんだ。
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