真の敵は愛にあり

Emi 松原

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明かされていくもの

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休暇に入ってから、アマナはずっと机から動かない。心配になって声をかけても、曖昧な返事しか返ってこないから、俺は諦めてアマナの手伝いをしていた。
 そんな時、アマナに文が届いた。
「私に文?誰からかしら」
 アマナは不思議そうに、文を読み始めた。
 徐々に、アマナの口元が緩んでいく。そして『ふふふ』と笑った。
「アマナ、誰からだい?」
 俺の言葉に、アマナはいつもの笑顔で、
「内緒よ。でも、この調べ物が終わったら、みんなで行きたい場所があるの。その時に、この文の相手に会えるわよ」
 と言った。
「もう、そんな難しい顔しないで。浮気じゃないわよ」
 アマナがわざと茶化して言った。
 俺は、少しムスッとして頷いた。

 ブランとモカが戻ってきたのは、その日の夜だった。
 まだ休暇は残っているのに、二人とも予定を合わせて戻ってきてくれたらしい。
 二人とも、アマナの部屋で座っていたが、いつもよりどこか真剣な顔をしていた。
 俺も、アマナが必死で頑張ってくれていたのを側で見ていたから、アマナが何を言うのか、気になっていた。
「二人とも、休暇を満喫させられなくてごめんなさいね」
 アマナが、二人に向かって申し訳なさそうに言った。
 二人は、同時に首を横に振った。
「私の今の夢はっ、コルと、ブランの夢を応援することですっ!そのお手伝いが少しでもできるのであればっ、私は嬉しいのですっ!」
 モカが笑って言った。
「そうだ。俺は、コルのおかげで、少しずつだが、兄が見ていた世界が分かってきた気がする。コルは、そんな俺とチームになりたいと言ってくれた。できることをするのは当然のことだ。計算の内さ」
 ブランも頷きながら言ってくれた。
「じゃあ、まずはモカちゃん。私が調べて欲しいって言ったこと……分かった範囲で良いから、教えてもらえるかしら?」
「はいっ!!」
 アマナの言葉に、モカが元気良く答えたけれど、そういえば、アマナはモカに何を調べてもらったんだろう?
「重要とメモされていたものは後に回しますねっ。まず、エミルさんとシルクさんについてですっ!!あの二人は、昔、確かに恋人同士でしたっ。だけれど、戦争が始まって、エミルさんの地位は一気に落とされましたっ……。その時、上流貴族という地位にこだわっているシルクさんのご両親が、二人を別れさせたらしいですっ……。当時、レッド王国に関わりがある者、それを手助けする者に厳しい時代だったらしくてっ、それを恐れていたのだとも考えられますっ!」
 モカの言葉に、アマナが頷きながら、もの凄い早さでメモをとっていく。
「特別騎士団ができたときにはっ、エミルさんはっ、正式にヨネルさんと付き合っていたらしいですっ。ここからが真面目な話になるのですがっ……。ヨネルさんのご両親は、今でも幽閉されているらしいですっ。元々地位のある方ですから、不当な扱いは受けていないと思いたいですがっ……。エミルさんのご両親は……戦争が始まって地位が落とされ、しばらく幽閉されていたらしいのですが、亡くなったと聞きましたっ。お姉さんのミリさんは地位の落とされた人たちが住んでいる場所に住んでいるみたいですっ」
 モカの言葉に、俺はうつむくことしかできなかった。
「そして、覚悟の魔法についてっ、調べることもできましたっ!」
 モカの言葉に、アマナが、驚いて顔を上げた。
「モカちゃん、本当に!?これだけは絶対に分からないと思っていたのに!!」
 アマナの言葉に、モカがペロッと下を出した。
「実はっ……上流貴族のある古い方にっ、私、気に入られているんですっ!騎士団に入ったからには、知りたいと言ったら、こっそりと教えてくれたのですっ!!」
 モカは、天然のようでちゃっかりしている……俺は、少し驚いた。
 だけれど、モカは暗い顔になった。
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