真の敵は愛にあり

Emi 松原

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告げられた計画・最後の覚悟の呪文

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「はい……」
 俺は、そう返事することしかできなかった。シルクさんの言っていることが痛いほど伝わってきたから。この、俺にとって最悪のパターンにはなって欲しくない。だけれど、このパターンになった時も、必ずやり遂げられるとシルクさんは信じているんだ。だったら俺も、信じないといけなんだ。
「じゃあ、最後に、コル。そのパターンを、今日の戦闘で、もう一つの覚悟の魔法を使ってラオンと共有しろ。そして、今日を最後に、もう一つの覚悟の魔法は禁忌魔法とする。明日から、最後の戦いの日まで、体を休めて、しっかりと回復させておけ」
 エミルさんが、俺を見ながら言った。
 俺は、黙って頷いた。
「じゃあ、質問はあるかい?」
 シルクさんの言葉に、アマナが手をあげた。
「あの……この最後のパターンの、絆の魔法というものを見たことがないんですが……」
 アマナが聞いた。
「あぁ、それね。テルが見つけ出したんだよ。もう一つの覚悟の魔法と一緒に」
 エミルさんが、笑いながら言った。
 テルさんが、苦笑いをしている。
 もう一つの覚悟の魔法を見つけたのは、テルさんだったのか……。
「俺は、昔から古代魔法が好きでね。出来もしないのに、本を見ながら色々とやっていたんだよ。その時に……見つけ出したというか、作り出してしまったのが、この二つの魔法なんだ」
 テルさんが、アマナに優しく言った。
 黙って頷くアマナ。
 そして、話し合いが終わったときには、俺たちが戦闘に向かう時間になっていた。

 騎士団はざわついていた。
 当たり前だ。色々と聞かされていた俺たちだって驚いたのだから。
 だけれど、今俺がやらなくてはいけないことは、一つ。
 タツさんとラオンが乗り込んでくるという通信が入った。
 俺とブランは、一気に前線に出る。
 そして、ラオンと刃を交えた。
 ラオンの顔が、いつもと違った。多分、俺もそうだったのだろう。
 一度だけ刃を交えた俺たちは、お互いに顔を見合わせると、すぐに武器を捨てた。
 そして二人同時に魔方陣を作り、同時にぶつけ合った。


 ふわふわした世界の中で、俺は集中して今日見た資料の内容をラオンに流し込んでいた。ラオンが驚いているのが流れ込んでくるけれど、今は最後まで流すことに集中しないといけない。
【成る程な。これで俺たちの戦いも終わるってか。タツさんの言っていた意味が分かったよ。俺、お前の気持ちがわかるぜ。アマナの場所に、こっちはリーシャが入るんだから】
(そんな……)
【驚くことねぇだろ。リーシャが魔獣を操る能力に長けてるのは知ってんだろ】
 ラオンの声と同時に、ラオンが慌ててリーシャに会いに帰った映像が流れてきた。素直じゃないな。ラオンだって、俺と同じ想いなんじゃないか。
【ちっ……めんどくせぇ魔法だな】
 そう言いながらも、ラオンがリーシャを想う気持ちが伝わってくる。
 そして、驚くべき映像と言葉が流れてきた。
(ラオン……この映像は……)
【あぁ。この通りだよ。戦争が終わったら、リーシャがお前に会ってみたいって言うからよ。だから、頼んだんだ】
(戦争が終わった後……)
【当たり前だろ。戦争が終わってからが、俺たちの本当の人生の始まりだろ。だから、その初めとして、丁度良いだろ】
(戦争が終わった後……考えたことなかった。だけれど……ラオンとリーシャがコレをくれるのなら、見つけていけそうな気がする) 
【リーシャがつくるコレは、レッド王国でも評判なんだぜ。……楽しみにしてろよ】
 俺たちは、うなずき合うと魔法を終わらせた。
 後ろに吹き飛んだ俺の体を、いつものようにブランが抱えてくれる。
 俺は、ブランに頷いてから、眠りに落ちたのだった。

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