真の敵は愛にあり

Emi 松原

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戦いの終わり・絆の魔法

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※※※


「作戦は終了、無事に終わったよ」
 エミルさんの声が、ピアスから聞こえた。
 ラオンにも聞こえたのだろう。俺たちは、顔を見合わせて頷き合った。
 それと同時に、グリーン王国の騎士団が撤退を始めた。当たり前だ。戦おうにも、魔力の泉を奪われてしまったのだから。
 俺とラオンは、その場に座り込んだ。
「アマナ、無事かい!?」
「えぇ、コル!!こっちは大丈夫よ。皆が頑張ってくれたから」
 アマナの嬉しそうな声が聞こえてきた。
 終わったんだ……これで、本当に終わったんだ……。
 俺もラオンも、ぼぅっとしていたら、突然、辺りがざわついた。
 なんだと思ってみ見たら、なんと、ブルー王国からは国王カナト様とエリノア姫が、レッド王国からは国王アルト様とユウト王子が歩いてきたのだ。
 俺も、ラオンも、ブランも、他の騎士団も慌ててお辞儀をした。
 俺は小さな声で、アマナに状況を伝えた。
 国王二人は、向かい合って止まった。
「カナト。教えてくれ。最後の晩餐の夜、姉様に何を言われたのか」
 アルト様が、カナト様に聞いた。
「俺の力では、魔獣を操ることなどできないと。だから、一番弱くて必要のない国に俺が任されたとお前が言っていたと言われたんだ」
 カナト様が答えた。
「アルト、教えてくれ。最後の晩餐の夜、姉様に何を言われたのか」
 カナト様が、アルト様に聞いた。
「魔獣の力を使わないといけないなど、弱い者がするものだと。自身で戦う勇気のない国を俺が任されたのだとお前が言っていたと言われたんだ」
「俺は、そんなこと言っていない」
 アルト様の言葉の後、二人が同時に言った。
「……カナト、俺たちは、姉様の言葉に踊らされ、自分達の意地の為に、戦争を始めてしまった」
「あぁ、アルト。その通りだ」
 二人の王は、下を向いた。
「だからこそ、王族は償う義務があるのです」
 エリノア姫が、ハッキリと言った。
「その通り。我らが王族は、お互いの国で手と手を取り合い、上手く新しい魔力の泉を使っていかなくてはならないのです」
 ユウト王子が続けた。
 どこからともなく、騎士団員達の拍手が沸き起こった。
 俺とラオンも、拍手をしていた。
 これで本当に、戦争は終わったんだ。


 翼が羽ばたく音がした。
 空を見上げると、大きな魔獣が着地した。
 エミルさん、ヨネルさん、タツさんが無事に帰ってきたんだ!
「エミルさん!!」
 エリノア姫が、走り出した。
 そして、エミルさんに飛びついた。驚いて受け止めるエミルさん。
「本当に、本当にお疲れ様でした」
 エリノア姫が、泣きながら言った。
 エミルさんは、目に涙を溜めて、黙ってエリノア姫を抱きしめた。
「お疲れ」
 シルクさんが、ヨネルさんの隣に行った。
「お前もな」
 ヨネルさんが、シルクさんに答える。
 拍手は、しばらく鳴り止まなかった。
 
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