たとえ地球が滅びても

Emi 松原

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たとえ地球が滅びても

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健人の涙~自主訓練の始まり~

 救護室で過ごして二日目。俺はこの間の訓練のことを何度も何度も考えていた。アース・ライトの本質、健人のこと、桜と智の新しいイノセントの出現・・・。でもどれだけ考えても答えはでない。そんな俺の所へ、夕方になって栄喜たち三人が来てくれた。栄喜は、収容された機体を調べたりするのに忙しかったみたいだし、智はサポート部隊の通常訓練があった。桜は、一人で第一研究所の図書館へ行っていたらしい。
「どうだ?調子は。」
「まぁまぁかな。もう大分自分で動ける。明日の夜には、自分の部屋に帰っていいらしいから。」
「そうか、よかった。」
 栄喜の言葉に、うなずく俺。
「明さん・・・なんで泉に救護機を使わせなかったんだろう・・・。そうすれば、すぐに治ったのに・・・・。」
 桜が心配そうに言った。
「体の痛みを知るためって言っていたからな。・・・泉にかなり厳しかったのはなんでか分からないけれど、俺たちの戦闘服は明さん達の頃と比べてかなり進化しているみたいだから、あまり痛みを感じることがない。体の痛みを知らないと分からない何かがあるのかもな。」
「・・・アース・ライトの本質って、なんなんだ?」
 俺がぽつりと言った。智と桜が顔を見合わせる。
「あのね、泉・・・意地悪してるわけじゃないから、怒らないで聞いてほしいんだけれど・・・。私と桜、この間の訓練で新しいイノセントが出現したでしょ?それで、桜と二人で色々話し合ったの。そしたら、私たち、なんとなく明さんのいうここの本質が分かった気がするんだ。だけどね、それは、口で説明できるものじゃないの。それに、自分で気が付かなきゃいけないことだから、明さんもあえて何も言わなかったんだと思うんだ。」
「・・・・・・。」
「そんなに黙るなよ。お前らしくない。じゃあ、これは俺たちからの裏話。お前を守るために桜が飛び出したすぐ後、俺たちも行こうとしたんだよ。でも、照さんに止められた。明さんは本気で泉を二度と動けない体にはしないからって。・・・まぁ、俺的に一番気になってるのは、その後すぐ照さんが言った、そもそもコントロールされていない黒いイノセントの攻撃を受けたら一瞬で気を失ってもおかしくないからって言葉だけどな。」
「黒いイノセント・・・。なんだか分からないけれど、俺、あれを見たとき物凄くぞっとしたんだ。」
「私も!」
 智が言った。桜もうなずく。
「俺も、黒と白のイノセントについて、第二研究所の二階で時間があるときはずっと調べているんだよ。でも、何も収穫なし。桜も、第一研究所で調べていたんだろ?」
「うん・・・。だけど・・・第二研究所で分からないことだから、第一研究所では何も出てこなかったよ・・・。」
「俺は、健人は何か知っている気がするんだけれどな。明さんの健人への態度は皆見ただろ?でも今健人は第二研究所にも来ないし、健人はなぜか一人部屋。たぶん俺は同い年のなかでは健人と一番話をするけれど、部屋まで行くほど親密でもない。無理矢理聞くのもおかしいし、もしかしたら聞かれるのを避けているのかもしれないしな。質問は?」
「質問はないけれど、明さん、健人くんのことだけは名前で呼んでいたし、健人くんと昔からの知り合いっていうより、それ以上の感じがしたよね。」
「・・・健人は、戦闘部隊にくるのかな・・・?」
 俺が思わずそうつぶやくと、みんな黙った。
「来ても来なくても、お前はいつも通り頑張ればいいんだって。気にするなよ。」
 しばらくして、栄喜が言った。

幸多のラボ
「最初の訓練で、二人も戦闘服に新しいイノセントが出現するとは思わなかったよ。さすが明。」
 照が椅子に座って、笑いながら言った。幸多はパソコンに向かっていて、明は仮眠用ベットで横になっている。
「あの桜って子は、まだまだ鍛えたら色が出そうな気がするけれどね。どう?幸多。」
「明の言う通り。桜は元々のイノセントが緑で、戦闘ではいつも周りを見ていた。泉を守っていることが目立っているけれど、他の戦闘員も大分助けられている。けれども桜は戦闘が嫌いだ。だから、戦闘服には出ていないけれど黄色いイノセントを元々パソコンで確認できている。それに、最初の訓練の時は、赤いイノセントも確認できた。戦闘服に出るまでの強いイノセントはピンクだったけれどな。あれだけ本格的に脅せばそうもなる。」
「それだけ、あいつへの愛が強いってことか。」
 明が不機嫌そうに言った。
「後は、俺の所のハイパーナンバー1の栄喜。あいつからは、明が泉に攻撃をしたとき、赤のイノセントが確認できている。少し集中的に訓練したら、戦闘服にも出現するかもな。それにあいつは性格が優しい。場合によっては、緑も出る可能性が高い。」
「後々は、研究に専念させたいんでしょ。その子。」
 明は幸多の言葉を聞きながら、目をつぶっている。
「まぁな。でも今は、戦闘隊員としても色々学んでほしい。本人も分かっているようだし。いずれ時が来たら、研究に専念させる。」
「俺のところの智もすごかっただろ?あのミッションを、見事にクリアしたんだ。それに、桜に怪我をさせないため、戦闘服に緑のイノセントが出現してスピードが一気に上がった。まっ、それも明の考えのおかげだけれどね。」
 照は笑ったままだ。
「智からは、泉の訓練時にも緑のイノセントが確認できている。あと、試験中には青のイノセントも確認済み。サポート隊員としてはかなり期待できるな。鍛え方によっては、ピンクが出てもおかしくはない。」
「さすが俺の所の期待の新人。」
 照は一人でうなずいている。
「他には、明が戻ってくる前から健人に紫のイノセントが確認できている。でも、あいつは明が訓練しなくても、自分で色を出せる時が来ると思うけど。それと・・・二人も気が付いていただろうけれど、桜が泉を守るために飛び出す前に、すでに泉をかばう準備はしていたな。あいつらしい。後は、特に目立って新しいイノセントの出現をしそうな奴はいないな。俺のパソコンで確認できるイノセントを出している奴は何人もいるけれど、戦闘服に新しいイノセントを出現させるには、戦闘服が反応するくらい強いイノセントが必要だからな。これだけだと、政府を納得させるのは厳しいな。」
 幸多がパソコンを操作しながら言った。
「政府なんて知ったことじゃない。ただ・・・あいつがキーパーソンになるのは間違いなさそうだけれどね。あいつ、あたしがかなりの絶望を与えても、赤いイノセントが最後まで消えなった。そりゃ、消えかけたら幸多に止めてもらう予定だったにしても、消えるどころか強くなったのは分かった。そしてあいつのために、あいつの友達は強いイノセントを確認できるまでに出している。・・・・けれど、あたしはあいつを認めることはできない。」
 明が目をつぶったまま言った。
「泉も、これから色んな経験をして、ここの本質を理解できる時がくると思うよ。きっとその時は、泉は誰よりも強くなってると思けどね。ただ、今明が認める必要はないよ。俺たちから見ても、泉は褒めて伸ばせるタイプじゃないからね。」
「あいつがここの本質に気が付くまでに、地球がもてばの話だけれどね。もしくは、ここが陥落するか。」
 照の言葉に、布団に潜りながら明が言った。照は何も言わずに、笑って明を見た。
「問題はここからだ。対象者には個人訓練と言ったけれど、それはあくまでも自主訓練のことで、イノセントの状況を見ながらチームで鍛え上げるんだろ。それも今回と違ってさらに本格的に。・・・泉、栄喜、桜の順位変動は健人が戦闘部隊に入らない限りはないと思うし、サポート部隊で智を超えそうな奴も今の所いない。けれど、他の奴らでここを去る人間は確実に出るだろうな。」
「中途半端な気持ちでここにいるより、出て行った方がそいつらの人生のため。そもそも、今の現役隊員のほとんどはここに憧れて入ってきている。まるで、新人類を倒すことが誇りのように。戦闘服も進化して、痛みを感じることすら知らない奴も多い。新人類の攻撃も機械のみになって、ますます戦争というものがどんなものか実感していない奴が増えてる。」
「そうだな。明の言う通りだ。ここは憧れで入る所ではない。だけど、人の夢や目標が憧れから生まれるのも事実だ。だろ?」
 幸多が手を止めて明を見た。明は布団から出てこない。
「夢に、目標か・・・・。あたしの一番の夢は、もうどうやっても叶わないもん。」
「明・・・・。」
 照の顔から笑顔が消えて、明の潜っている布団を見つめた。その時、三人のインカムに通信が入った。
「わかった。じゃあ、明日。」
「俺も問題ない。」
「ごめんね、俺は、サポート部隊の訓練に行かないといけないから、後から二人に聞くよ。」
 三人が言った。通信が切れる。
「さてと、今日はこのくらいで問題ないな?個人用の自主訓練プログラムは、俺が作って一人一人にメールしておく。次の訓練をどうするかは、明の気分だな。新人類の攻撃が来たら、今は俺たちが何とかしないといけないわけだし。」
「肯定しました。幸多にばかり頼って申し訳ないね。じゃあ、俺はそろそろ行くよ。また次の話し合いで。」
 そう言うと、照はラボから出て行った。
「・・・・機嫌直せよ。」
 幸多が明に向けて言った。
「お姫様は、王子様の愛のキスがないと目が覚めません。」
 布団の中から明が言った。
「はいはい。お姫様、あと少し待ってくれ。これだけ片づけるから。あと、泉に対して、よく黒いイノセントをあれだけコントロールできたと思うぞ。お前はすごいよ。」
「幸多の開発してくれた制御つきイノセントアームのおかげだよ。あれがなかったらあたし・・・誰か殺していても、おかしくないから。」
「今のお前なら大丈夫だよ。それに俺がいつでもそばにいる。心配するな。」
「・・・・お姫様は王子様の愛のキスがないと起きられないんです!」
 幸多は少し笑うと、パソコンに向き直った。

 やっと今日の夕方、救護室から出られる。もう体に痛みはないし、暇でしょうがなかったんだ。栄喜と智と桜は、朝から顔を出してくれている。三人とも忙しいのに、笑顔で傍にいてくれる。ちょうど四人でいるときに、四人同時にメールが来た。幸多さんからだ。タイトルは、「次の訓練までに一人一人に行ってほしい自主訓練プログラム」となっている。俺たちはしばらく無言でメールを読んだ。
「私は、動体視力を重点的にトレーニングして、シミュレーションで今までより高いレベルのロボの操縦を覚えるようにだって。」
 智が一番に言った。
「私は・・・持久力をつけるためのトレーニングで、持久力と体力をつけることと、反射神経のトレーニングも継続すること・・・・って書いてある。」
 桜もメールを読み返しながら言った。
「俺は・・・体力以外のトレーニングで今よりマシになれって・・・。あと、知識を少しでも増やせ。」
 俺は、智や桜との違いに、少し戸惑った。でも、それを隠すように栄喜を見た。いつもなら一番に栄喜が何か言いそうだけれど、栄喜は黙って何度も読み返している。
「栄喜には、なんて書いてあるんだよ。」
「・・・泉、智、桜のトレーニングをできれば直接見ながら分析して、適切なアドバイスをすること。それに加えて、三人に足りないと思う所を自分で考えて、自分のトレーニングを決めてそれを伸ばすこと・・・だって。」
「なにそれ!?レベルが高いよ!」
 智が驚きの声を上げた。
「・・・幸多さんって、本当に分析・研究部隊に厳しいんだな・・・。」
 戸惑っている栄喜を見ることは滅多にないから、俺はそんな言葉しか出せなかった。
「あぁ、でも、やりがいはありそうだな。幸多さんは、前にも言ったけれどできないことは絶対に言わないから。このプログラムをきちんと実行したら、戦闘にも研究でも役立つと思う。」
「栄喜が今まで以上にアドバイスをしてくれるなら、俺も少しは強くなれる気がする。」
 俺は心が少し軽くなった気がした。俺一人でこのメールを見ていたら、きっとショックでやり場がなかったと思うから。
 三人は、それからすぐに自分たちのやることをやるために救護室から出て行った。俺は特に何もするわけでもなく、ベットの上からぼーっと窓の外を見ていた。第一研究所と第二研究所の間の庭には、休戦になる前に殉職した人たちの名前が彫ってある慰霊碑がある。殉職した人たちが少しでも気分が安らぐように、芝生になっていて、周りには木が沢山ある。あと、慰霊碑から少し離れた木の中に、なんのためにあるのか分からない石の四角い棒が立っている。これにも都市伝説が多い。普段は見ることのないその景色を眺めていると、ふいに慰霊碑に近づく健人の姿が見えた。
俺は、考える前に体が動いていた。健人にばれないように、裏口からこっそりと外に出て、木に隠れながら少しずつ近づく。俺は一番大きな木に隠れて、健人の様子を見ていた。でも、俺はなんで隠れてるんだろう?普通に話しかければいいんだろうけれど、今の俺にはそれができなかった。黙って健人を見ていると、健人が第二研究所の方を見た。俺もつられてそっちを見ると、第二研究所から花束を二つ持った明さんと幸多さんが出てきた。二人は無言で歩いてきて、健人も無言で頭を下げた。幸多さんはうなずいたけれど、明さんは何も言わず慰霊碑の前に一つ花束を置き、あの四角い棒の前まで歩いて行くと、そこにも花束を置いた。俺は動くことができなくなって、そのままばれないように息をこらした。
「結論、出したんだってね。」
 明さんが四角い棒を見つめたまま、健人に言った。幸多さんは二人から少し離れた場所で聞いている。
「出しました。わざわざここに呼んですみません。でも、ここで言いたかったんです。」
 健人が明さんを見ながら言った。明さんはそのままだ。
「じゃあ、結論から聞こうか。」
「俺は・・・戦闘部隊には入りません。このまま、オペレーターとして分析・研究部隊にいたいと思っています。」
「・・・理由を聞いてもいいか?」
「俺・・・俺は・・・」
 俺は健人を見て驚いた。健人の目には、今にも溢れそうなくらい涙がたまっていたのだ。
「俺はずっと、戦闘部隊には入らない方が俺のためだと言われていました。その理由は分かっています。でも・・・今までは戦闘部隊に入りたいのが本音でした。」
 明さんと幸多さんは黙って聞いている。
「だから・・・明さんが俺を戦闘部隊として認めてくれたと思ったら、本当に嬉しかったんです。あの場にいるときは、戦闘部隊に入ることを本気で考えました。だけど・・・だけど・・・・俺はやっぱり、戦闘部隊には入らない方が良いと・・・いや、入りたくないと思いました。」
「それは・・・思い出すのが辛いからか?」
「違います。俺は、今のハイパーの中で・・・誰よりもここの本質を分かっているつもりです。だけど・・・戦闘部隊に入ったら、俺はきっとそれを見失います。」
「・・・・・・。」
「だからこそ・・・・ここで・・・父さんと母さんの前で・・・はっきりと決意を新たにしたかったんです・・・。俺は、誰もが信頼してくれて、俺の言うことだったら絶対に大丈夫だと思えるような・・・皆を守れる、そんな、幸多さんのような・・・母さんのようなオペレーターになりたいです。」
 健人の目からは、涙が溢れていた。健人は涙を拭おうともせず、明さんに向かって話している。俺は、物凄い衝撃を受けていたし、どういうことか全く分からなかったけれど、その場で隠れたまま聞いていた。
「・・・オペレーターの立場は、実は一番辛い。実際に戦場に出るわけじゃないのに、オペレーターの言葉が戦場を左右する。そして・・・怪我人や死人が出たら一番に責められる・・・。お前はそれをよく知っている。それでも、あえてその道を選ぶんだな?」
「はい・・・。明さんが帰ってくる前の俺のオペレーションは最低でした。泉を見ていたら、昔の俺を見ているようで・・・私情を挟んだ結果、怪我人を出しました。でも・・・明さんのこの間の訓練に参加して、少し心が軽くなって、ちゃんと考えたら・・・今のアース・ライトに必要なのは、今以上のオペレーションができるハイパーだと・・・・。」
 健人が言葉を詰まらせた。少しの間、沈黙が続いた。
「・・・あたしは、お前から最愛の両親を奪った。今でもはっきりと覚えている。お前の両親は、本当に尊敬できる人だった。それなのにあたしはお前の父親を助けられなかった。その上・・・母親を自殺に追い込んだ・・・。それでも、お前はここの本質を今まで見失わなかった。それどころか・・・あたしが何も変わっていないと言ってくれた。それがどれだけすごいことか・・・・」
「俺は・・・!!父さんと母さんが死んだのは明さんのせいじゃないとはっきり言えます!!明さんは、全てを背負っています。休戦になる前の戦争の事も・・・休戦になった日のことも・・・・。黒いイノセントの事も、俺は見ていました!そもそも俺をここでずっと見ていてくれたのは・・・ここの本質を実感させてくれたのは・・・明さんです!」
「・・・・そうか。健人、お前はしばらく会わないうちに成長したんだなぁ・・・。」
 明さんの言葉に、健人は泣きながら首を振った。
「俺・・・成長なんか・・・。今でも、上手く人付き合いができなくて・・・何度自分がオペレーターをしたときの録音を聞いても・・・全然皆が信頼してくれるような・・・安心できるような言い方もできなくて・・・。怪我人が出たときにも・・・自分のせいだと分かっていながら、泉のせいにしました・・・・・。」
「でも、最初の訓練の時、お前は桜が飛び出す前にあいつをかばう準備をしてた。・・・ばれないようにしていたつもりなんだろうけれど、分かってるよ。お前は自分の辛さのやり場がなくて、昔の自分と似ているあいつに突っかかっている。それでもあいつを庇おうとした。・・・お前のことは、誰よりもあたしが認めてる。」
 健人は、明さんの言葉に声を上げて泣き出した。明さんが、健人の方を向いた。俺は驚いた。明さんは、とても優しい顔をしていた。マスターのような・・・いや、マスターより、明るく笑っていた。
「ただ、やると決めたからには、幸多に手加減はさせないよ。今日、特別訓練の該当者に自主訓練のプログラムを幸多に送ってもらった。これから、チーム制を導入して本格的に訓練するつもりだ。あたしは、今、もしここを去る人間がいても止めるほど優しくない。本気の覚悟がない奴、ここの本質を理解できない奴はここに必要ないと思ってる。今日から、特別訓練をするときは常に幸多の傍について勉強しな。それ以外の時間は、分析・研究に力を入れて、どんな時でも最高の決断を下せるオペレーターになるため力を尽くせ。それから、今まで通りの自主訓練も続けること。・・・幸多以上になりたいなら、そのくらい軽いよな?」
「はい・・・。もちろんです・・・。」
「それとな・・・。」
 明さんが泣き続けている健人の両肩に手を置いた。
「これはあくまでもあたしの個人的な意見だ。健人、お前自身を受け入れてくれる奴はちゃんとハイパーの中にいる。それが誰なのか、お前は心の奥で分かっているはずだ。お前とあたしが特別な関係だと、みんな分かっている。そのせいで、あたしによく見られようとお前に近づく奴らも多くいるだろう。だからこそ分かるはずだ。誰が本当に自分にとって信頼できる人間なのか。・・・あたしのせいで苦労かけることは謝るよ。ごめんな。」
 明さんの言葉に健人は黙ってうなずいた。
「じゃあ、泣いてる暇なんてないよ。さっさと顔洗って、第二研究所で新型戦闘機の分析と研究に加わりな。お前が閉じこもっていた間を埋めてくれている奴らがいるんだから。分かったな。」
 明さんは、いつもの・・・俺たちが知っている明さんに戻っていた。健人はうなずと、第二研究所に向かっていき中に入っていった。その様子を、明さんと幸多さんは黙って見守っていた。俺は、頭が混乱していた。こんなに物事を深く考えたことはない。俺はその場から動けずに、その混乱と戦っていた。
「盗み聞きなんて、趣味が悪いな。」
 明さんの声に、俺は硬直した。俺がここにいたことは、とっくにばれていた・・・?明さんはこっちを見ていない。第二研究所に戻ろうとしている。
「今見聞きしたこと、お前と相部屋の奴以外には絶対に言うなよ。」
 明さんはそう言うと、幸多さんと第二研究所に戻って行った。俺は一気に体の力が抜けるのを感じた。

 その日の夜。
部屋に帰った俺は、いつものように四人で消灯まで話をしていたけれど、早く栄喜に話がしたくてたまらなかった。自分の中で抱え込むのには、きっと重たすぎて・・・。栄喜が言ったように、容量オーバーだと思った。
そしていつもより遅く感じた消灯の時間がきて、俺と栄喜は二人きりになった。
「何があったんだ?」
 ベットの上から栄喜の声がした。
「顔に書いてあるよ。どうしようもないくらい話したいって。」
「栄喜・・・・あのさ・・・絶対に絶対に内緒話なんだけど・・・・・。」
 俺は、栄喜のおかげですぐに慰霊碑の前で見聞きしたことを全部話せた。
「そうか・・・。これで、健人が俺たちより前からここにいることが断定したな。」
「俺、どうしたらいいんだろう?ここの本質も分からない。皆はどんどん上に上がっているのに、俺は・・・・・。それに、これから健人とどう接したら良いのかも・・・。」
「あのさ、今の話を聞いたから、ストレートに全部言うけれど、今日、健人からメールが来たんだよ。」
「なんて?」
「これは、内密にしてほしいんだけれど、自主訓練の様子を見ながら、多分いつも一緒にいたり気の合う人たちでチームでの特別訓練が始まる。俺は、その全部を幸多さんについて勉強することになった。たぶん泉から見たら嫌な思いをさせるかもしれないから、なんとか上手く泉に伝えてほしい・・・ってさ。」
「・・・・。」
「俺から見たら、二人は面白いよ。からかってるわけじゃないぞ。心の奥ではお互いに気にしてるのに、仲良くできない。お互いの意地でな。でもさ、お互いが本気で憎みあってないことは確かだろ?そもそも明さんが帰ってくるって発表があったときから、お前は健人を気にしていたし、健人だって俺を介してお前に不快な思いをさせないようにしてる。まるで恋愛だな。」
「・・・俺はそんな趣味はない!・・・でも、俺はこれからどうすれば・・・。」
「俺が思うに、お前が本当に成長できない人間だったら、とっくに特別訓練から外されていると思う。これは前にも言っただろ?でも、今日の話を聞いて、本当にそうだと思った。明さんは、お前がいることを分かっていたのに健人と話をした。健人への配慮もあったのかもしれないけれど、お前に言った俺以外に言うなって言葉。それってさ、今のお前を明さん達は分かってるんじゃないかな。お前一人で全部抱え込んだら、潰れちまうだろ?だから俺にだけは話していいという意味の言葉を言った。・・・明さんって、怖くて厳しく見えるけれど、個人個人の特性とか性格をよく理解していて訓練していると思うんだ。だから、桜たちに新しいイノセントが出現した。・・・ってことは、お前に対しての自主訓練は、お前をけなすように見えて、実はお前にとって一番良い方法をとっているんじゃないのかと思う。質問は?」
「ない・・・。」
「俺は、本当にお前は今まで通りでいいと思うよ。今みたいに悩んだりしたらいつでも俺が聞くし、それにさ、お前が突っ走ってくれるから、俺たちは冷静になれるんだから。」
「栄喜・・・俺、いつもお前に助けられるな。」
「それはどうも。」
 その時、俺の頭の中に今まで考えたことのなかったことが浮かんだ。
「あのさ、俺はさ・・・ここに入ってから、ずっとお前が話を聞いてくれて、お前なりの答えもくれる。でもさ・・・健人って・・・一人部屋だよな?あいつ・・・一人で辛い時とかさ・・・誰かに頼れてるのかな?」
「さっきの話を聞く限り、誰もいないだろうな。レジェントの三人は今、戦闘も兼ねているから今まで以上に忙しいし、マスターはもってのほか。それに俺と一番話すと言っても、深い所までは話したことない上、俺以外の奴と分析や研究以外のことで話しているのは見たことがない。」
「・・・・・。お前は、もし健人が頼ってきたら、容量オーバーにならないか?」
「変な話だけどさ、俺はそうやって頼ってもらえると嬉しいんだよ。自分なりの答えを出さないといけないと思うから。それってさ、研究者にとって大事なことだと思うんだ。泉のおかげで、俺は周りを冷静に見れる。だからさ、実は俺も泉に助けられてるんだぞ。」
「俺に助けられてる・・・・?」
「そう。だからおあいこ。とりあえず、明日からみんなの自主訓練をしよう。今は立ち止まってても、始まらないからさ。健人のことは、考えすぎず、今まで通り様子を見ればいいと思う。質問は?」
「そう・・だな・・・。」
「じゃあ、おやすみ。」
「おやすみ・・・。」
 栄喜は本当に凄いな。俺が混乱することも、すぐに冷静に判断できる。栄喜が相部屋で、本当によかった。でも、健人は・・・・。慰霊碑の前での健人が目に焼き付いて離れない。そして、健人の両親のこと。休戦のことに黒いイノセントのこと・・・。俺は何も分からない。でも・・・・。
・・・健人は、きっと俺以上に苦しんでいる。それなのに、誰も・・・・・。
俺はしばらく俺なりに一生懸命考えていたけれど、いつの間にか眠りについていた。

 次の日の朝、俺たちはいつものように四人で朝食を食べるとトレーニングルームへ行った。でも、トレーニングルームは満員だった。皆、それぞれに与えられた自主訓練を実行しているみたいだ。それにしても、出遅れた・・・。皆、早いな・・・。空いているのは、イノセントロボのシチュエーションの機械だけだ。
「私は、今はシチュエーションの訓練ができそうだけれど、三人はどうする?」
「俺は、智の訓練を分析しながら見させてもらおうかな。イノセントロボの訓練には、ほとんど携わったことがないから。」
 智と栄喜が言った。
「私・・・・・。外を走ってこようかな・・・・・。もちろん、敷地内だけど・・・。そうしたら、少しは体力と持久力の訓練になるかな・・・・?」
「それは良い考えだな。だったら、この計測器をつけて走ってきてくれ。データに色々記録されるから。昨日のうちに準備をしておいてよかった。」
 桜の言葉に、栄喜が計測器を渡した。
「泉はどうする?」
 栄喜が俺の方を見た。
「どうすると言われても・・・・どうしたらいいんだ・・・?」
 栄喜に聞かれて俺は戸惑った。俺には、三人みたいに具体的な指示は出ていない。体力以外のトレーニングと言われても、反射神経や動体視力のマシーンは人がいっぱいだし、知識を増やせと言われても、元々勉強嫌いな俺はどうすればいいのか分からない。
「だったら、第一研究所の図書資料室の隣にある、映像資料室に行ってみたらどうだ?お前、本を読んで知識を増やすのは難しいだろうけれど、実際の映像だったら分かりやすいし知識にもなるんじゃないか?」
 さすが栄喜だ。俺たちのことをよく分かってくれている。俺は栄喜の言う通りにすることにして、一人で第一研究所へ向かった。
映像資料室なんて所があるのは、知らなかった。俺は結構興味津々で色んな映像を見てみることにした。まず、俺の目に止まったのは、武器の色々な使い方。俺は現役戦闘員だからはっきり分かっているつもりだったけれど、イノセントガンだけで俺が知っている以上に沢山の使い方があった。俺のような基礎的な攻撃から、桜のような色んなシールドに加えて、明さんや幸多さんが見せた技。それにイノセントガンで足場を作って上手く戦えることも知った。イノセントソードも、俺の知らない使い方が沢山あった。いつの間にか俺は夢中で映像を見ていて、栄喜から昼食に行こうと通信があるまで集中していた。こんなに集中して楽しく何かを学んだのは初めてかもしれない。俺は、それを栄喜達に伝えたくて急いで食堂へと向かった。
食堂で、俺たちは自分たちの成果を話していた。智は、新しいイノセントが出現したおかげで、今まで使えなかったロボの機能が使えたことを喜んでいた。栄喜も、初めて真剣にイノセントロボの訓練を分析したせいか、興奮気味に次に何がやりたいか話している。栄喜はちゃんと桜の分析もしていて、機械を使わなくても十分できていると言っていた。桜はそれを聞いて、安心したようだ。人の多いトレーニングルームで訓練するより、一人の方が桜は気が楽だったらしい。そして俺が映像とはいえ資料室で昼まで集中していたことに、三人とも驚いていた。そりゃ・・・自分でもそんなに夢中になるとは思わなかったけれど、栄喜の言った通り俺は難しい本が苦手だから、実際に見て聞いて覚える方が向いてるのかもしれない。栄喜は、俺がなんの資料を見て何を覚えたのか、聞き取りをしてしっかり記録してくれた。俺の気分は少し晴れていた。
食器をかたづけて立ち上がった時、俺は食堂がいつもと全然違うことに気が付いた。いつもは人が集中する時間なのに、あちこちに空席が目立っていた。不思議に思って周りを見ていた俺に、栄喜が少し暗い声で教えてくれた。
「みんな、自主訓練をすることに集中して、サプリを飲んでいるんだ。特別訓練の対象者じゃない人たちも・・・言い方は悪いけれど、もし順位変動があったり訓練に耐えられずここを去る人が出たら、自分が対象者になれるだろ?だからさ、情報取集したりトレーニングしたり・・・食べることは、重要だと思ってないんだろうな。」
「でも、マスターの意向は・・・・。」
「確かにマスターの意向はあるにしても、強制ではないから。サプリを使っちゃいけないとも言われていないし。ただ、俺は今まで通り四人でちゃんと食事をしたいと思う。」
 栄喜が真剣な顔で言った。俺たち三人もその顔を見て真剣に栄喜を見た。
「俺たちは自主訓練が始まった。やることはみんな違うけれど、その成果や思ったことは共有しておいた方が良いと思うんだ。実際の戦場では、お互いの特性や性格・戦い方を知らないと困る事って多いと思うし、何より、一人で根詰めるのは良くないと思う。悩んだときとか壁に当たった時は、俺の分析だけじゃなくて今まで見てきたみんなで解決するのが一番だと思うんだ。質問は?」
「私、栄喜に賛成!私はサポート部隊だから、ちゃんと戦闘員のことを知っておかないと始まらないからさ。明さん達の戦いを見たときに、照さんは明さんを理解していて、完璧なサポートをしてて、本当にすごいと思った。今以上のロボを操ることも大事だけれど、照さんのサポートには、それ以上のものがあったと思うんだ!」
「あの・・・私も。マスターの意向には・・・絶対にちゃんと意味があると思うから。・・・それに・・・私、さすがに一日一人だと・・・・さみしいから・・・・。」
「俺も俺も!!俺、一人だと何も分かんないから。今日だって、栄喜が進めてくれないと映像資料室って所があることすら知らなかったし!」
 俺たちの言葉に、栄喜は笑ってうなずいた。
 俺たちは食堂を出ると、とりあえずトレーニングルームに行ってみて、状況を見てから次の訓練をどうするか考えることにした。俺たちがトレーニングルームに向かっていると、廊下に小さな人だかりができていた。
「何だろう?」
 智が一番に興味を持つ。
 人だかりの中心にいたのは、なんと健人だった。健人、話しやすい人を見つけたのかな?一瞬そう思った俺の耳に、俺にとって衝撃的な言葉が聞こえてきた。
「ねぇねぇ、健人くんって本当に強かったよね。かっこよかった!いつもどんな訓練をしているの?それに、あの明さんに名前で呼ばれるなんて!」
「明さんとは、昔からの知り合いなのか?」
 俺は、明さんの言葉を思い出していた。たぶん、あいつら、興味本位で健人に話しかけているんだ。それは悪いことじゃないのかもしれないけれど、あの現場を見た俺にはなにか・・・怒りみたいな感情が込み上げてきた。俺の足は、勝手に止まっていた。三人も止まって俺を見た。俺は、なにか言ってやろうかと思ったんだけれど、栄喜の行動の方が早かった。栄喜が俺の肩を一瞬叩くと、人だかりに近づいていった。
「健人、ちょうどよかった。今、連絡をとろうと思ってたんだ。ちょっといい?」
「・・・どうした?」
 健人が暗い声で答えた。俺は黙って栄喜の行動を見ていた。栄喜が俺の気持ちを察してくれていることが分かっていたから。
「新人類の新型戦闘機について興味深いことを見つけたんだ。健人の意見が聞きたくて。もちろん、今じゃなくても良いんだけれど。俺的に、結構分析できたと思ってさ。」
 栄喜はそういうと、俺にはチンプンカンプンなデータを小型のパソコンで映し出した。話しかけていた奴らも、戦闘ハイパーだったから全く分からなかったみたいで、みんな黙りこんだ。俺には栄喜が一瞬、健人に目配せをしたように見えた。
「あの・・・ごめん、せっかく話しかけてもらったのに悪いけれど・・・新人類の新型機の研究の方が今は大事だから・・・。」
 健人が、話しかけていた奴らに言った。
「そ・・・そうだよね。なんだか難しいことをしてるんだね、分析・研究部隊って。」
「また、話聞かせてくれよ。」
 健人に話しかけていた奴らは、逃げるようにその場を去った。そいつらが栄喜を睨んだのが分かったから、俺は追いかけてぶん殴ってやろうと思った。けれど、いつの間にかガッチリと智に腕をつかまれていた。
「泉、落ち着いて!せっかく栄喜が健人くんをかばってるんだから!」
 智が小声で俺に言った。智は健人のことを知らないけれど、状況をみて動くのはサポート部隊での訓練の賜物なのかすごいと思う。というより、俺が単純だからかな?
「悪い。実は今の嘘なんだ。俺の勘違いだったら謝るけど、困ってるように見えたから。」
 栄喜が笑顔で健人に言った。
「いや・・・助かった・・・・。」
 健人が、少し下を向きながら答えた。いつも俺と言い合っていた健人だとは思えない。
「じゃ、俺は行くよ。一緒にいないことで何か言われたら、データは送ってもらったとでも言っておいて。そろそろあいつが健人に突っかかってきそうだからさ。」
 栄喜はそう言うと俺を指さした。そして俺たちの方に歩いてくると、無理矢理俺を方向転換させる。俺は健人に突っかかろうなんて思ってなかったけれど、たぶん栄喜が一番良い方法をとってくれたんだと思って、黙って従った。ちらりと健人の方を見ると、黙って俺たちの方を見つめていた。

「何よ、あの人たち!ちょっとあからさますぎると思わない?明さんのこととか、健人くんとの関係はみんな気になってるけど、健人くん困っちゃうじゃん!!」
 健人が見えなくなった時、智が怒って言った。
「それにあいつら、栄喜のことを睨みやがって!今度見たらぶん殴ってやる!!」
 俺も怒っていた。
「・・・ちょっと、場所を変えよう。」
 突然、栄喜が言った。俺たちは突然の言葉に黙って栄喜についていった。
「お、思った通りこっちは空いてるな。」
 栄喜が俺たちを連れてきたのは、戦闘訓練室だった。一人での使用は禁止されているけれど、時々栄喜と使っていた部屋だ。俺たちは栄喜にうながされるままに部屋に入った。
「みんな、自分のプログラムに必死になりすぎている気がするから、こっちは空いていると思ったんだ。あと、泉が映像資料室で見たっていう武器の使い方もここなら実践できるし、それをどう戦闘に使うかも考えられる。そうしたら自然と俺のやるべきことも分かってくる。それに、今の智のイライラした状態じゃロボのシチュエーションをしても良い結果は出せないだろうし、何より泉を一人にしたら何をするか分からないから。質問は?」
「あるに決まってるだろ!なんでお前は怒らないんだよ!あいつら、自分たちのことばかり考えてお前のこと目の敵にしやがって!」
 俺は大きな声で言った。
「ちょ・・・泉・・・。」
 桜が俺を止めようとしたけれど、栄喜がそれを手で制した。
「あのな、お前は俺たち以外とあまり関わっていないし、根本的には優しい奴だから分からないかもしれないけれど、俺は分析・研究部隊ハイパーナンバー1でありながら戦闘部隊のハイパーナンバー2だ。それを、良く思わない人間の方が多いに決まってるだろ。」
「じゃあ、お前・・・今までもああやって睨まれたりしてたのかよ!」
「あれくらい普通。上位20に入っていない一部の人からは、嫌がらせを受けることもある。でも、レジェントっていう上を目指してるのに、そんなのに振り回されてる暇はないだろ。」
「なんで言ってくれないんだよ!そんなのただのひがみじゃないか!!お前がどれだけ努力してきたか、それがどれだけすごいかは、俺が良く知ってる!」
「お前だって、強くなるためならいつも周りなんて気にせず前に出てるだろ。それと一緒。ただ・・・お前が怒ってくれたのは嬉しかったよ。それに、俺もお前はすごいと思うよ。健人が戦闘部隊に入ったら、お前の順位は落ちる。それでも、たぶんお前は健人を妬んで嫌がらせなんかしないだろ。質問は?」
「・・・・・・・。」
 栄喜は、本当に大人だ。同い年とは思えない。俺が子供なのかもしれないけれど。
「じゃあ、とりあえず全員イノセントアームをセットしよう。智も、一応危険だから。それに、智も見ることも大事だしやってみても損はないと思うから。」
 俺と智は栄喜に何も言い返せず、桜は少し安心したように、俺たち四人はイノセントアームをセットした。
 俺はイノセントガンを使って、映像で見た通り色々やってみたんだけれど、どれも上手くいかない。映像では、あんなに簡単そうにやっていたのに・・・。そもそもどうやったら自分から離れた場所にシールドができるのかも分からない。
「なぁ、ちょっと提案なんだけれど、桜が足場を作ってみたらどうだ?」
 パソコンを見ながら俺を分析していた栄喜が言った。
「わ・・・私・・・?」
「そう。泉ってさ、突っ走って攻撃していくタイプだろ?桜はいつも一番近くでシールドを作って泉をサポートしていたし、それに、泉以外も桜は戦闘中に何度もシールドで守ってる。だったら、泉の足場を桜が作って、泉が自由に攻撃できた方がいいんじゃないかと思って。今見ていても泉は攻撃力が強くて防御力は低いから、仮に足場を自分で作れても上手く使えるか分からないから。」
「なるほど!桜と泉の長所を生かして、短所を補い合うんだね!!」
 智が少し興奮気味に言った。
「そう。一人で何もかもできるわけないんだから。実際の戦闘でも、俺たちは一人じゃないし。質問は?」
「・・・分かった。つまり、桜の作った足場を使って、俺は好きに動いていいんだろ?」
「そういうこと。じゃ、桜、あんまり気にしすぎなくていいから、気軽に泉のやろうとしたことをやってみてくれ。」
「う・・・うん・・・。」
 そう言うと桜は、イノセントガンを俺と同じように打った。最初は失敗してたけれど、明らかに俺よりは形になっている。
「なんだか・・・なんとなくコツがつかめてきた気がする・・・。」
 桜がそう言ってもう一度打つと、幸多さんの作った的のように離れた所にシールドができた。
「やった!!桜、すごい!!」
 智が歓声をあげる。少し笑顔になる桜。
「じゃあ、泉。あれを足場に動けるかやってみてくれ。」
 栄喜の言われた通り、俺は桜の作ったシールドまで飛んで行って、方向転換してシールドを足場に反対に飛んだ。俺は驚いた。桜のシールドは壊れなかったばかりか、反対に飛んだ時に明らかにスピードが上がったのが分かった。俺は驚いた顔のまま栄喜達を見た。栄喜はパソコンを見ながら、満足そうにうなずいている。
 俺たちは少し休憩をして、栄喜の意見を聞きながら今後の事を相談することにした。
「俺さ、今日、桜が外に走りに行ったのを見て思ったんだけれど、智のシチュエーションの訓練以外はマシーンじゃなくてもできると思うんだ。俺たち、機械に頼りすぎてたのかもって。桜は敷地内のランニングを継続して、様子を見ながらおもりで負荷をかけたりスピードを調整したら十分持久力と体力がつくと思うし、泉が映像資料室でこれだけ使えることを見つけてくるなんて、正直思わなかった。あと、動体視力や反射神経もこの部屋で実践的にやった方が、効率が良い気がするんだ。一人だったら、できなかったことだな。質問は?」
「・・・質問はないけど、さりげなく失礼だな。」
 俺が少しむくれて言った。
「つまり、今日みたいに午前中は自主訓練をして、午後からはみんなで合わせてみる。それだったら、お昼を食べるときとかに相談もできるし、ここなら気兼ねなく話したり訓練できるね!!良い考え!!」
 智が弾んだ声で言った。
「ただ、今戦闘はレジェントの三人が担当しているといっても、外に行くなら厳重注意な。邪魔しても困るから。」
 栄喜の言葉に、桜がうなずいた。

 それから俺たちは、栄喜のアドバイスを受けながら少しづつできることを増やしていった。栄喜も、自分が何をするべきか見つけたみたいで、夜遅くまで第二研究所にいることもあった。それに栄喜は何度も明さん達の戦闘の映像を見直して、俺たちには出撃命令が出ずに自主訓練プログラムをしている間に、明さん達が戦っている映像もちゃんと見ていた。俺たちは、どんどん連携プレーってやつを増やしていったんだ。一番すごかったのは、桜だったかもしれない。今なら、桜がナンバー1って言われても素直にうなずける。桜は、俺が見つけてきた技を次々にマスターしていった。それに加えて俺のことを良く見ていてくれる桜だから、俺がどんなに好き勝手に動いても完璧にサポートしてくれる。桜は攻撃タイプではない。でも、その桜の助けがあるから俺の攻撃が生きるんだ。俺と桜対、栄喜と智で実際の戦闘訓練もした。智も、シチュエーションの訓練や通常訓練に加えて本当に頑張っていたと思う。
 でも、俺の頭の中にはいつでもここの本質のことがあったし、あれから一度も会ってないけれど健人のことも考えていた。そんな日の夜。いつものように俺たちは部屋に集まっていたんだけれど、栄喜の顔が険しかった。
「どうかしたの?」
 智が心配そうに聞いた。
「あのさ・・・戦闘ハイパーの順位の変動があった。二人・・・ナンバー20から外れて、そのうちの一人は・・・ここを去ったらしい・・・。」
「えっ・・・・?でも、俺たちはまだ個人訓練は始まってないじゃないか・・・。」
「明さん、言ってただろ。個人訓練、どうするか考えるって。それに全員一度にはできないだろ。」
「・・・・こんなに早く、そんなことに・・・・。」
 智と俺、栄喜は黙り込んだ。
「私・・・それで良いのかもしれないと思う・・・・。」
「桜・・・・?」
 俺は、桜の言葉に驚いた。
「私ね・・・実は・・・外を走っているとき・・・訓練が終わった人たちを見たの・・・そしたらね・・・物凄く、訓練の事をお互いのせいにして・・・大ゲンカしてた。」
「・・・・・・。」
 俺たちは桜の言葉を黙って聞いた。
「私ね・・・泉のそばにいたくて・・・応援したくて、ここに来た・・・。そしたら、智と出会って友達になれて、泉のおかげで栄喜くんとも友達になれた・・・。私ね、戦闘は嫌い・・・。でも、ここが大好き。だから・・・今はここの皆を守りたいって思う。地球がたとえ終わりが近くても、それを新人類が早めようとしても、私は・・・三人が・・・大好きだから・・・。だから・・・・この中で憎しみ合って争うのは絶対に違う・・・。」
 桜は、ここの本質を一番理解している。明さんの言葉がよみがえった。桜は、昔から引っ込み思案で俺以外に友達がいなかった。俺も、この性格だから友達と呼べる奴は桜だけしかいなかったかもしれない。そんな桜の本気の言葉。
 ・・・俺は強くなりたい。新人類を倒したい・・・。でも、それはなんでだ?今、俺は戦闘ハイパーナンバー1で・・・・特別訓練の対象者だ。だけど・・・それ以上に、強くなることだけを考えていた前と違って今の皆でいる時間が楽しいのが本音だった。
 俺は・・・いや、俺たちは誰も桜の言葉に答えられなかった。

 マスター室
「・・・一人、去ったわね・・・。」
 春日が悲しそうに言った。
「嘆いてる暇なんてないよ、おねぇ。あのチームは最悪だった。幸多の振り分けの分析は間違いなかった。もし、ここの本質を理解していたら新しいイノセントが出現しただろうし、憎み合うこともなかった。自分の評価しか考えず行動した結果が出ただけ。それより、平和交渉はどうなってるの?」
 明が不機嫌そうに椅子に座っている。その隣で黙って立っている幸多と照。
「・・・・今は・・・何も進まずかしら・・・。でも、明たちのおかげで、新人類達も考えているみたいね。明らかに襲撃の回数も減っているし・・・この先どうなるか・・・。新人類たちは、アース・ライトのメンバー以外の地球人を全員受け入れる代わりに、地球を終わりにするよう要求している。だけど、子供たちはともかく・・・全員が新人類にはならない。そんな要求は認められない。」
「・・・・あたしたちも、本格的に考えといた方がいいってことだね。」
 明はそう言って立ち上がると、マスター室を出ようとした。
「待って、明!それ、どういう意味!?」
「意味なんて一つしかない。ここの本質を実行するのみ。」
 明は振り返りもせずマスター室を出て行った。幸多は黙って春日に頭を下げると明に続く。
「・・・過激なことを考えないでよ・・・明・・・・。」
 春日は、うつむきながらつぶやいた。
「・・・ハーブティーでも入れますね。」
 照が少し悲しそうに笑って言った。

 一人去ったと聞いた次の日の朝、桜は朝の日課として敷地内をジョギングしていた。栄喜に分析してもらっているおかげで、ペースもつかめて手足におもりもつけている。いつものコースを走っていた桜だったが、ふと慰霊碑の前で足を止めた。昨日までなかった綺麗な花かごが慰霊碑の前に置いてあったのだ。慰霊碑の前だけでなく、なんのためにあるのか分からない棒の前にも置いてある。
 桜は慰霊碑の前に近づいて綺麗な花かごを見つめた。こんなに綺麗な花を見るのは、アース・ライトに入って初めてだった。
「・・・なにしてるの?」
 後ろから声がして、桜は慌てて振り返った。そこには健人が立っていた。
「あの・・・・朝のジョギングをしていたら・・・・綺麗な花だと思って・・・・。」
 桜がしどろもどろになりながら言った。
「あぁ、それ、明さんが置いたんだよ。トレーニングルーム、使わないの?」
「えっと・・・みんなが使ってるから・・・私、人が多い所は苦手で・・・外を走るのも気持ちいいし・・・栄喜くんが分析もしてくれてるから・・・・。」
「いつものメンバーで集まってないの?」
 健人が少し暗い声で言った。
「ううん・・・・。お昼からは・・・みんなでご飯を食べながら話し合って・・・戦闘訓練室で・・・その・・・練習したりしてるよ・・・。」
「そうなんだ。仲が良いんだね。」
 桜は、その声に寂しさが混ざっていることに気が付いた。
「あの・・・健人くん・・・・あの・・・もし・・・嫌じゃなかったら・・・その・・・一緒に・・・皆でお昼ご飯食べない?・・・嫌だったらごめんね・・・・。」
「・・・泉達が嫌がるんじゃないか?」
「栄喜くんも、智も、そんな人じゃないよ・・・。それにね・・・・あの・・・気を悪くしないでほしいんだけれど・・・泉もね、本当は、きっと健人くんと仲良くしたいと思っていると思う・・・。でも・・・泉も素直じゃないし・・・言い方も悪いし・・・でもね、ああ見えて・・・泉は本当はとっても優しいんだよ・・・・。」
 健人はじっと桜を見た。
「あの・・・突然ごめんなさい・・・。」
 桜がうつむいて言った。
「いや・・・誘ってくれて嬉しいよ。・・・桜って、本当に泉が好きなんだな。」
 健人の言葉に、真っ赤になる桜。
「私は・・・その・・・泉しか話しかけてくれる人がいなかったから・・・それで・・・その・・・・・。」
「そうなんだ。泉ってそんな一面があるんだ。知らなかった。・・・お昼、本当に行ってもいいかな?」
 健人の言葉に、桜が笑顔になった。
「もちろん・・・。あの・・・泉が失礼なことを言ったらごめんなさい・・・。私と一緒に行ったら・・・栄喜くんと智はすぐに分かってくれると思うから・・・・。」
 桜の言葉に、健人も少し笑ってうなずいた。
 そんな二人の様子を、第二研究所の三階から明がじっと見つめていた。

 いつも通り色んな戦い方の映像を見て、食堂の前で栄喜と智と一緒に桜を待っていた俺は、歩いてくる桜を見て体が固まった。桜が、健人と一緒に来ているうえ、何か話しているようだったから。
「あの・・・朝ね、たまたま健人くんと会って・・・お昼に誘ったの・・・。」
 桜が言った。桜が自分から人を誘うなんて初めてだから驚いたけれど、桜は誰よりも優しいから、きっと何も知らなくても健人の気持ちを考えているんだと分かった。俺はどう反応していいか分からなかった。健人も、俺に突っかかてきていたころが嘘のようにどうしていいか分からない顔をしてる。でも、こんな時に力を発揮するのが栄喜と智だった。
「それは丁度よかった。俺たち、自主訓練プログラムの他に、違うこともしてるからオペレーターの健人の意見も聞いてみたかったんだ。」
 栄喜が言った。
「戦闘部隊にサポート部隊、オペレーターが揃ったね!これって完璧じゃない!?」
 智も笑顔で健人を見て、先導して食堂に入った。健人がちらりと俺を見た。
「なんだよ。俺は文句なんて言ってないだろ。」
 多分、三人のおかげで俺は前のように突っかかったような・・・いや、俺たちの会話らしい言葉が出た。
「泉はいちいち喧嘩を売らなくていいの!さっ、行こう。」
 智が、健人と俺の間に入っていつものように笑顔で言った。健人の顔が、少し明るくなった気がする。俺って、いっつも助けられてばっかだなぁ・・・。なんとなくそう思った。
 俺たち四人は相変わらず頼むものはいつもと同じ。席について、なんとなく健人の方を見ると、健人が頼んでいたのはカレーだった。
「私たちね、いっつも頼むものが同じなの。健人くんは、カレー好きなの?」
 ニコニコしながら智が聞いた。
「好き・・・というか・・・明さんが毎日お昼に食べているのを真似してたら、それが習慣になったんだ。」
「そうなんだ!じゃあ、毎日同じものを頼むのは私たちと一緒だね!お昼ご飯一つとっても性格が出て面白いよね。桜は一つのものを決めるのが苦手だからいつも日替わりだし、栄喜は真面目にバランス。泉は肉ばっかり。私は、やっぱり体型とか気になるからヘルシーなんだ!」
 智・・・本当にすごい。明さんの名前が出たのに、一切それには触れずになおかついつもの俺たちの説明をさり気なくしてる。そんな智だから桜とも仲良くなれたんだろうし、サポート部隊でもナンバー1なんだろうなぁ・・・。最初の特別訓練の後から、なぜか今まで考えなかったみんなの良い所を考えている俺は、少しぼーっとしていた。
「んじゃ、いつも通り食べながら話し合いするか。」
 栄喜が言った。まず智がシミュレーションの訓練のことや、できるようになったこと、どうしても克服できない苦手な事を言う。それを栄喜が片手で記録しながら分析する。いつものパターンだ。
「智は、落ち着いてやれば判断力もあるしロボの操縦自体も俺が見るようになっただけでもかなり腕が上がってる。ただ、やっぱりいつもつまずくのは反射神経に関する所だな。だから、自主訓練プログラムに動体視力があったんだろうな。機械の操縦だから、反射神経より動体視力を鍛えた方が効率がいいってわけ。でも、動体視力も最初にデータをとらせてもらった時よりずいぶん上がってる。これくらいまで上がっていたら、後はオペレーターの指示があればかなり前よりやれると思うけど。質問は?」
 栄喜はいつもはっきりと分析をしてくれる上、俺たちを傷つけない配慮をしながらアドバイスをくれる。
「ちなみに、これが今までの智のデータの記録。」
 そう言いながら栄喜が画面を健人に見せた。
「見て・・・いいのか?」
「むしろ見てほしい。オペレーターも知らないといけないことだし、何よりオペレーターの意見ってかなり大事だと思うから。」
 健人へのフォローもばっちりな栄喜。
「へぇ・・・。すごいな・・・。」
 健人が画面を見ながら言った。
「で、これが桜のデータ。」
 栄喜と健人は一緒に画面を見ている。
「マシーンを全く使ってないのに、ここまで持久力と体力が伸びるなんてすごいと思わないか?他の戦闘隊員と比較したら持久力と体力がないのは事実かもしれないけれど、使える防御の技もかなり増えた。長期戦にならなければ全く問題ないと思うんだ。質問は?」
 健人はじっとデータを見ている。
「で、これが泉のデータ。泉は、攻撃力が高いし考えて動くより突っ走る方が俺たちも動きやすいから、昼からの戦闘訓練所で訓練した方が伸びるんだ。防御力も、低いなりに前よりは上がっているし、連携もかなりとれるようになった。それに、今泉は映像資料室でどんどん知識も増やしてる。それを俺が分析しながら、桜に向いていることや泉に向いているものを練習したり、俺自身はさらにそれを応用できるよう考えたり実践しているんだ。」
 栄喜が俺を見る。
「で、今日は何を見てきたんだ?」
 栄喜の言葉に、俺は黙ってパソコンを見せた。最近俺は、使えると思ったものは許可をとって実際に皆が見れるようにするようになっていた。口で説明しても分からないことが多いし、俺は説明が下手。それに映像を実際見た方が栄喜も分析しやすいから。
「俺は、この攻撃方法だったら練習すればできる気がする。でも、これは映像を見てもどうすればいいのか全く分からない。」
 映像を見ながら、俺は思ったことを言う。
「これ、泉にはできないだろうけど、栄喜にはできそうじゃない?使われているのも、青いイノセントだし。」
「そうだな、応用したら桜も使えるかも。泉の言う通り、攻撃的なものは泉が集中練習をしたらいいかもな。」
「あの・・・私、これ・・・似たことが智にもできる気がする・・・。だって、智はコントロールが上手いし・・・。」
 俺が言ったことに関して、皆も思ったことを言って意見を出し合ってくれる。それを最終的に栄喜がまとめて、午後に戦闘訓練室で何をするかを決めている。
「なぁ、健人。この後時間があったら、俺たちと訓練しないか?泉もさ、最近ちゃんと俺たちの声を聞きながら動くようにもなったし、何より今俺たちができることをオペレーターのお前に見てほしいんだ。実際には、俺たちはお前の言葉で動くんだから。」
 栄喜が笑顔で言った。
「・・・いいのか?俺、邪魔になるんじゃ・・・。」
 不安そうな顔で健人が言った。
・・・俺は、本当の健人を全く知らなかった。いつも言い合いばかりだったし・・・。こんな時、なんて言えばいいんだろう・・・?
「なんで?健人くんは現役のオペレーターじゃん!私たちを一番見て指示をもらってるんだから普通じゃない?」
 智が笑顔で言った。
 健人が俺を見た。救護機で言い合った時の事が嘘のような健人の顔。
・・・・そうか!栄喜の言うように考えすぎることないんだ。普通に、いつも通り、それが一番なんだ。俺には栄喜や智みたいにそれに加えてフォローはできないけど・・・。
 俺は、健人を睨み付けた。
「時間があるならつべこべ言わずに来いよ!俺だって、今でも突っ走ってるけど聞きながら動くことも少しは覚えたんだよ!」
「泉!いちいち喧嘩を売らないでって言ってるでしょ!それも覚えて!」
 智が、いつものように言ってくれる。
「時間ならある。泉、お前が今どれほどなのか見させてもらう。」
 健人が、俺を見ながら言った。
 睨んでいるようにも見えたけれど、俺たちの間に怒りは感じなかった。そう。俺たちはこれでいいんだ。これが、俺たちだから。

 戦闘訓練室で、俺たちが新しいことを練習している間に、栄喜が今までの俺たちの実践の映像やデータを見せながら健人に詳しく説明していた。ちらりと二人を見ると、健人は驚いた顔で栄喜と話をしている。二人とも、自然に話しているようだったから俺はなぜか安心した。俺は、健人と言い合いしかできない。でも、栄喜なら俺の気持ちを楽にしてくれるように健人の気持ちに答えられると思ったから。
「あのね、健人くんに絶対に知っておいてほしいのは、イノセントロボのことを私たちは名前じゃなくて番号で伝え合ってることなんだ。もちろん、泉以外は名前でどういうロボか覚えてるんだけれど、泉ってそういうの覚えるの苦手だから。だから、番号で覚えたら、どのロボが何をしているのか戦闘中でもちゃんと把握できるでしょ?」
 智が健人に明るく話している声が聞こえた。
「これが、試しに俺が泉に指示を送りながら動いてもらった映像。泉には基本好き勝手に動いてもらっているけれど、とっさの時には短く分かりやすく言ったら、かなり動けるようになったんだ。桜に至っては、自己判断で物凄く動けるばかりかいきなりの無茶な指示でも反応できるようになってる。」
 栄喜の声。俺は練習をしている桜を見た。桜は、何も言わずに練習していたけれど顔が笑っていた。俺は、いつもの四人から五人になったようでなんだか嬉しかった。
 晩御飯にも、栄喜が誘って健人は一緒に来た。明日からも一緒に訓練しないかと、栄喜と智が積極的に誘っている。桜も、笑顔でうなずいていた。俺も、自然体になっていた。何も言わずむすっとしてただけだけど、それが俺だから良いんだ。健人は少し嬉しそうな声で明日からも一緒に食堂で食べることと、戦闘訓練室での訓練を一緒にやると言っていた。俺は、勝手に笑顔になりそうな顔を抑えて、むすっとした表情を保っていた。

 消灯後、いつものように栄喜と俺は電気を消してベットに横になった。
「健人のことだけどさ、栄喜って、本当にすごいな。智も桜も・・・。」
「そうか?俺はお前が一番すごいと思うけど。」
「・・・俺が?なんで?」
「お前、明さんと健人の会話を直に聞いて混乱していたのに、今日、明さんが戻ってくる前と変わらない態度をとったじゃないか。健人にとってはそれが一番嬉しいことだと思うけど。質問は?」
「質問どころか、全部分からない。」
「健人は、俺たちの知らない所で色んな人に今までと違う態度をとられていることは間違いない。特別訓練の対象者は健人と仲良くなりたいと思って当然だし、あと少しで上位に入れる人たちも、今の激しい順位変動を見たら自分が入れるかもと思うのは自然だろ。そうなったら、今戦闘に出ていないハイパーがどうやって選ばれるか考えたとき、健人にこびを売るって言ったら言い方が悪いけれど、そうなることも自然な事。お前がレジェントを目指していることはみんな知ってる。その上でのあの特別訓練のことや慰霊碑の前のことがあったのに、お前は変わらない態度をとった。だから、お前はすごいよ。質問は?」
「それは・・・栄喜の言葉のおかげだし、それに栄喜や智、桜がそうできるようにしてくれたから・・・。」
「お前の良い所はさ、いつも俺たちの事を見て、素直にすごいって言ってくれる所だと思うよ。妬んだり、短所を見つけて責めたりしない。お前とあまり関わらない人たちには分からないことだけれど、入隊してからずっと一緒に生活してる俺には分かってる。」
「・・・そうなのか?」
「うん。それでさ、健人のことで内緒話したいんだけど、良い?」
「何?」
「健人の両親のこと、実はこっそり調べてたんだ。第二研究所の資料室には、殉職した人の記録があるから。でもさ、今の俺たちの国って苗字がないから、時間がかかった。」
「苗字って、何?」
「昔あった、名前の前についていた家の名前。地名とかから代々続いてついていたのが苗字。でも、俺たちが産まれる大分前には苗字の制度はなくなっていたんだ。個人を尊重するために。」
「そんなものがあったのか。それで、その苗字ってやつがないのにどうやって分かったんだ?」
「父親の方は、年齢的に当てはまる人物を見てみたんだけれど、該当者が多くて実際の事は分からなった。だけど、母親の方は、自決・・・つまり自殺な。それで分かった。」
 暗くなる、栄喜の声。俺は黙って栄喜の次の言葉を待った。
「あくまで記録に書いてあったことだけれど、休戦になってすぐに、戦争で夫を失ったうえ当時の光景に耐えられずに責任を感じ、自決したっていうオペレーターの女の人が一人いた。多分、その人が健人の母親だと思う。」
「・・・・。詳しく話したと思うけれど・・・健人、慰霊碑の前で泣いてた・・・。」
「休戦になった詳しいことや、そもそも休戦になる前の戦いを俺たちは知らない。第二研究所でも、許可をもらえないと入れない資料室があるんだけれどそこに入る理由もないしな。でもさ、俺、殉職した人たちの記録を見たとき・・・正直その多さに驚いた。明さん達から見たら、俺たちって何も知らない甘い人間なんだろうなって思った。健人は・・・理由は分からないけれどそれを知っている。もちろん、白と黒のイノセントのこともな。」
「・・・みんな、それを知らずに健人に話しかけてるんだな・・・。それって、良いことなのか?」
「良いか悪いかは分からない。でも、俺は俺たちから聞くんじゃなくて、健人が俺たちに自分から話せるまで待つのが良いと思ってる。多分、智と桜も同じ考えだと思う。二人はお前が見た事を知らないけれど、きっと桜は健人の辛い気持ちを察して誘ったんだろうし、智もあえて明さんの話題に触れてなかった。質問は?」
「ない。俺も、そう思う。俺は今まで通り、健人に突っかかった態度で良いんだよな?」
「良いと思うよ。だってさ、二人は前から憎しみ合っての喧嘩じゃなくて本音の言い合いだったから。それって実は、健人が一番自分の心を出してるってことだとも思う。」
「そっか・・・。栄喜がそう言うなら、安心した。」
「それはよかった。じゃあ、そろそろ寝るか。おやすみ。」
「・・・おやすみ。」
 おやすみと言ったものの、俺は全く眠気が来なかった。俺は、考えることが多くて容量オーバーなのかもしれないけれど、今一番考えてることは、なんで俺は強くなってレジェントになりたいのかだ。俺は自分の夢に疑問を持っていた。上から、栄喜の寝息が聞こえ始めた。起こすのも悪いと思った俺は、こっそりと部屋の外に出た。
 部屋の外に出たのはいいけれど、行く場所も決めてなかった俺は、本部の中を適当に歩いていた。その時、トレーニングルームに明かりがついているのが見えた。まだ、みんな自主訓練をしてるんだろうか?疑問に思った俺は、トレーニングルームに入った。
 入った途端、俺の目には一人でイノセントロボのシチュエーションの訓練をしている健人が飛び込んできた。健人も俺に気が付く。
「・・・こんな時間に訓練か?」
 健人が言った。
「別に・・・。お前こそ。」
「最近、朝から人が多いから。・・・それに戦闘部隊じゃない俺が普段ここにいたらおかしいだろ。」
「・・・お前、毎日こんな時間に訓練してるのかよ。」
「毎日じゃない。気分。」
「気分?」
「そう。明さんに気分が乗らないときに訓練をしても意味がないって、昔言われたから。」
「・・・お前、それやってるってことはイノセントロボも扱えるのか?」
 明さんの話題には触れずに俺は言った。
「本物を扱ったのは、訓練の時に少ししかないけど。でもこの訓練は色んなことを同時に訓練できる。戦況を見ながら動きを考えて、それを実行する。このシチュエーションの訓練機械には色んな状況やミッションが組み込んであるから動体視力や反射神経の訓練にもつながる。」
「ふーん。」
 そう言いながら、俺は機械に乗ったままの健人に近づいた。
「これ、使い方教えろよ。」
 唐突に言った俺に、健人は驚いた顔をした。
「・・・なんで?」
 俺は無言で幸多さんからの自主訓練プログラムのメールを見せた。
「これやったら、少しはマシになるかもしれないだろ。でも俺やり方知らないから。だから教えろよ。」
「別に・・・いいけど・・・。」
 俺は、健人と入れ替わって初めてシチュエーションの訓練の機械に乗った。
「まず、どの機体で出撃するのかを決める。初めてなら・・・お前の覚えている言い方で言うと一番だな。」
 健人が、いつもの突っかかった言い方に戻っていたから、俺は少し安心した。でも、もう健人は俺がどうやってロボを覚えているか把握してくれてるんだ。俺はそう思ったけれど顔には出さなかった。
「次に、どんな訓練をするのか決める。ロボの操縦だけなのか、ミッションをするのか、どのレベルのミッションをするのか。まぁ当たり前だけど最初はロボの操縦だけのシチュエーションだな。」
 健人の言う通りに、俺はパネルをタッチしていく。こうして俺は初めてロボの操縦を体験したけれど、一番簡単なことをやっているはずなのに物凄く難しい。操縦だけなのにすぐ墜落したり障害物にぶつかって大破する。
「直接攻撃と違ってロボの大きさや出せる速さ、タイミングを考えながらやらないからこうなるんだ。」
 嫌味に聞こえるように健人が言ったけれど、健人は俺の隣で訓練を見てくれていた。
「そんなこと俺でも分かる!初めてなんだからしょうがないだろ!」
 俺も言い返しながら、もう一度最初から始める。そんな時間がしばらく続いた。
「いい加減、そのくらいで今日は諦めろよ。時間も時間だし。」
 健人に言われて、俺はしぶしぶ機械から降りた。結局俺は、少しは操縦できるようになったもののミッションをできるまでにはまだまだだった。
「悪かったな。お前の訓練の邪魔して。」
 ぶっきらぼうに、俺は言った。
「別に邪魔じゃないけど。俺、ここまで同じ年の奴と自主訓練したの今日が初めてだし。・・・けっこう楽しかったし。じゃあな。」
「なぁ、ちょっと待てよ。」
 部屋から出ようとした健人に、俺は声をかけた。振り向く健人。俺は、栄喜や智みたいに良い言葉も言えないし桜みたいに気持ちを読み取ることもできない。だけど、思ったことをそのまま言いたいと思った。
「あのさ、俺は何も分からない馬鹿だけど、栄喜は良い奴だから!あいつにはどんなことでも相談したら、絶対心が軽くなるから!それに!桜が自分から人を誘ったのは初めてなんだから、明日からもちゃんと俺たちのところに来いよ!智だって楽しみにしてるし!」
 俺はかなり突っかかった言い方で言った。でも、俺にはこういう言い方しかできない。
「泉・・・・・・。・・・・お前はどうなんだよ。」
「何が。」
「俺が行くの、嫌なんじゃないのか?」
「嫌だったらとっくに文句言ってるし、機械の操縦のやり方なんて聞くわけないだろ!」
 そう言った途端、俺はポケットが熱くなるのを感じた。不思議に思ってポケットに手を入れると、イノセントアームが熱くなっていた。なんでだ?壊れたのかと思った俺は慌ててポケットからイノセントアームを出した。
「・・・お前のイノセントアームも熱くなってるのか?」
 健人の言葉に、俺は驚いて健人を見た。健人もいつの間にかイノセントアームを持っていて、不思議そうにしている。
「お前も?」
 俺たちは少しの間無言になった。健人は異常がないか見ているようだったし、俺は見てもそんなこと分からないから黙って健人を見ていた。その時、唐突に俺の頭の中に栄喜が前に言った言葉が浮かんだ。
「なぁ、健人。ちょっと、試しにイノセントアームをセットしてみようぜ。前に、栄喜にも同じことがあったって言ってたんだよ。」
「・・・分かった。」
「イノセントアーム・セット!」
 俺と健人は同時にイノセントアームをセットした。そして戦闘服姿になった健人を見て、俺は驚いた。向こうも俺を見て驚いた顔をしている。
「お前、いつの間に四色もイノセントを使えるようになったんだよ!」
 健人の胸には、前に見たときと違って黄色が追加されていた。
「お前こそ!今日見たときには黄色のイノセントは戦闘服に出てなかったじゃないか!」
 健人の言葉に俺は急いで自分の右胸を見た。確かに黄色い色がついている。俺は、赤と黄色の二色が使えるようになったってことだ。でも、なんでだ?わけのわからないまま健人を見ると、健人も首をかしげていた。健人と目が合う。
「・・・朝、栄喜に聞いてみるのがいいかもな。」
 健人の言葉に俺は黙ってうなずいた。
そのまま俺たちはイノセントアームを解除してトレーニングルームを出ると自分たちの部屋に戻って行った。

「えぇぇぇ!?二人同時に、黄色のイノセントが出たの!?」
 朝ご飯の時に昨日の夜中の事を話したら、智が驚いて大声を出した。
「ちょ・・・ちょっと、いくら人が少ないからって・・・声が大きいよ・・・。」
 桜が智をたしなめたけれど、桜も驚いているのが分かる。
「なぁ、栄喜も同じように紫のイノセントが出たんだろ。なんで俺たちに同時に黄色いイノセントが出たんだよ。」
 栄喜は、話している間ずっと考えているようだった。
「正直分からない。実はさ、桜や智が特別訓練の時にイノセントが出現した時と、俺が紫のイノセントが出現した時には共通点があるんだよ。それは、かなり感情が高ぶっていたと思われること。二人のイノセントが出現した時のことを思い出したらなんとなく分かるだろ?俺も、出現した時は資料を読んでてこれはあれに使えるんじゃないかとか、かなり興奮していたと思うから。でも、話を聞く限り二人はそんなに気持ちが高ぶっていたわけじゃないんだろ?」
「普通にいつも通り会話をしていただけだと思うけど・・・。」
 俺が言った。
「俺もそう思う。」
 健人もそう言いながら栄喜をみてうなずいた。
「だったら、出方は同じでも全く俺と共通点がない。幸多さんに聞くのが一番かもな。教えてくれるかどうかは別にして。自分で考えて調べろって言われそうな気もするけど。」
「あの・・・突然こんなことがあったから驚いてるのは確かなんだけど・・・。ちょっと話は変わるけれど、実は昨日の訓練を見て、俺・・・第二研究所の戦闘シミュレーション訓練室を使う許可をもらえないか幸多さんと明さんに連絡をしようかと思ったんだけど・・・。皆どう思う?」
「なんだよ、その戦闘シミュレーション訓練室って。なにがどう違うんだよ。」
 智と桜は驚いた顔をしていたし、栄喜も考えているような顔で健人を見ていた。俺だけがどういう意味か分かっていないみたいだったから、俺はちょっとむすっとして言った。
「第二研究所の二階にある、そうだな・・・実際に新人類の機体と戦うシミュレーションができる部屋。かなりリアルにできているんだけれど、その部屋を使う条件として、まずオペレーター役になる分析・研究部隊の人間と戦闘部隊の人間、サポート部隊の人間、つまり全部隊のメンバーが揃っていないといけない。」
「それなら、俺たち五人で揃ってるじゃん。」
 栄喜の言葉に、俺が言った。
「揃うだけじゃ意味ないんだよ。第二研究所に行くだけでも許可がないと入れないだろ。つまり、その部屋を使うにはレジェントの人かマスターの正式な許可がいるってこと。許可がないと入る事すらできないんだよ。その部屋を使う許可を出してもらう=そこまでの訓練ができると認められてないといけない。」
 栄喜が言った。
「俺、今の現状と分析結果を報告したら許可が出る気がするんだ・・・。それに、皆かなり新しいことができるようになってるから、より実践的にやった方が良いと思うし、俺もオペレーターとして訓練ができるから。」
「確かに、健人の言う通りだな。一緒に幸多さんの所に行くか?」
 栄喜の言葉に、健人が少しうつむいた。
「あの・・・気を悪くしないでほしいんだけれど、できれば俺一人で連絡したいと思ってるんだ。多分・・・幸多さんは今、明さんが賛成しないと許可をくれないと思うから。その明さんを一番説得できるのは俺だと・・・。」
「なるほど。それなら、昨日送っていないデータと俺の分析結果も健人のパソコンに送るよ。納得してもらうには、データが多くあった方がいいだろ?」
 栄喜の行動は本当に早い。もうパソコンを出して操作している。
「午前中に連絡がついたら、お昼に報告するよ。」
 健人が言った。
「ありがとう、健人くん!じゃあ、私たちはいつも通り午前中は自主訓練するね!」
 智が笑顔で言った。智の笑顔に、健人は安心したようにうなずいた。

 いつもなら映像資料室に行く俺だけど、なぜか今日は気分が乗らなかった。昨日は悩んで外に出たら健人に会うし、訓練をして少し気が紛れたと思ったら二人同時にイノセントが出るし・・・・。そういえば、昨日、健人が気分じゃないときにやっても意味がないって言ってたな・・・。俺は、立ち止まった。丁度そこは、特別訓練が始まる前に俺がよくいた、レジェントの称号が置いてある場所だった。
 俺はここに自分の名前が入ることにずっと憧れて・・・それが夢だった。でも、なぜか今はそう思えない。なんでだろう?俺は、どうすればいいんだろう?
 そんな俺の目に、外で桜が走っている姿が見えた。あのスピードなら、俺ならすぐに追いつける。俺は、急いで外に出て桜を追いかけた。
「よう。一緒に走っていいか?」
「は・・・・はいっ!?・・・い、泉か・・・。驚かせないでよ。」
 桜が言った。
「映像資料室・・・行かないの?」
 走りながら桜が言った。
「気分じゃなかった。」
「走るのは・・・気分なの?」
「分かんない。お前が見えたから来た。」
「・・・・。」
 俺はしばらく黙って桜について走っていたけれど、突然桜が立ち止まった。
「ねぇ、そこにベンチがあるの。毎日走ってたら、見つけたの・・・。ちょっと、座ろう・・・。」
 そう言いながら桜がベンチに向かった。桜、もう疲れたのかな?そう思って俺は桜の隣に座った。そういえば、ドームで生活している時は毎日二人で話してたのに、ここに入隊してからはゆっくり二人で話すことがなかったな。全く疲れていなかった俺は、そんなことを考えていた。
「泉・・・何をそんなに悩んでるの?」
「えっ・・・?」
 桜の突然の言葉に、俺は驚いて桜を見た。
「俺・・・そんなに顔に出るのか?」
「顔には・・・出やすいと思うけれど・・・。泉、今、みんなが思っているより・・・今までにないくらい、何か考えてるんじゃない・・・?」
「・・・・・。」
「小さい時から、ずっと泉を見てたから・・・。だから、言わなくても分かるよ。」
「・・・。俺さ、なんでレジェントを目指してたんだろう。なんでそんなに新人類を倒して、強くなりたかったんだろうって。最近なんでか分からなくなった。」
「特別訓練受けたときに・・・言われたことで?」
 俺は首を横に振った。
「あの後も、強くなりたいって思ってた。今も、本気で強くなりたいとは思ってるんだけど、なんでかが分からない。」
「泉・・・泉さ、なんでここに来たのか覚えてる?」
「えっ・・・?・・・なんでだっけ・・・。皆が、ここに憧れてたし・・・。」
「そう、だからその皆に自分を認めてもらいたくて・・・自分は強いんだって見せたくて・・・泉はここを受けたんだよ。」
 俺は、桜の言葉に何も言えずに黙って桜を見た。
「泉さ・・・ドームにいるとき、喧嘩ばかりして・・・でも、いつも相手は一人じゃなかったから・・・ずっと負けて悔しい想いをしてた。ドームの中の子供たちにとって、アース・ライトっていうのは、悪から地球を守るヒーロー感覚だから・・・。その人たち皆がここを受けるって聞いたとき、絶対に俺の力を認めさせるってここを受けたんだよ。私は・・・泉が受けるって聞いて受けたけど・・・。もし、泉が落ちて、私が受かったら、私はここに来ないつもりだった・・・。結果は・・・分かるでしょ?」
「・・・ああ。俺を馬鹿にした奴らは全員落ちて、俺と桜は受かった。」
「そう。私・・・今でもはっきりと覚えてるんだけど・・・ここに来てからすぐ、泉はレジェントの称号を見て・・・それでね、言ったんだよ。伝説の戦闘員になって、絶対に皆に俺はすごいって認めさせてやる、もう二度と馬鹿にできないように。・・・って。」
「桜・・・よく、そんなこと覚えてるな。」
「だって、私・・・その時はまだ泉としか話してなかったから・・・。」
「俺、そんなこと言ったんだ。」
「そうだよ・・・。でもね、今・・・栄喜くんも、智も、もちろん私も・・・それに、きっと健人くんも、ちゃんと泉を認めてるよ。泉が弱いなんて、思ってないよ。明さんは・・・ここの本質を大事にしているから、そういう意味で弱いって言ったんだと思うし・・・。むしろ・・・泉は今、自分が周りに認めてもらえてるってちゃんと分かってるから・・・だからレジェントっていう称号にこだわらなくなったんじゃない・・・?」
「桜・・・。お前って、本当に俺の事よく見てくれてるよな。俺、ハイパーナンバー1だけど、戦ってるときからいつもお前に助けられてた。特別訓練の時も・・・。あの後から、皆といると、なんだか皆がすごいって今まで以上に思うようになって、でも、嫌な気持ちじゃなくて・・・ずっと皆に助けられてたことに気が付いたっていうか・・・。それに、皆で一緒にいるとき、すごく楽しいって思うんだ。映像資料室で使えそうなものを見つけたら、早く皆に見せたいって・・・。最近本当にそう思う。」
「私も一緒だよ・・・。この前も言ったけれど、私、皆が大好きだから・・・。だから、泉は強くなりたい理由が変わったんだよ、きっと。」
「理由が変わった・・・?」
「うん・・・。さっ、そろそろ走ろう・・・。」
 桜が立ち上がった。
「なぁ、俺、どういうふうに変わったんだ?」
 つられて立ち上がりながら、俺は言った。
「ちゃんと・・・そこは、自分で考えなきゃ・・・。でも・・・私と智の話し合ったことが合ってるなら・・・泉は、もうここの本質を理解してると思うよ・・・。」
 桜が、走り出した。俺は慌てて後を追いかけた。桜は一番知りたいことを教えてはくれなかったけれど、なぜか俺はスッキリしていた。

 幸多のラボ
「ねー!このドレス、すごく可愛い!でも、こっちも捨てがたいな・・・。」
 明がベットの上でうつぶせになってパソコンの画面をつつきながら、幸多に言った。幸多は、いつものようにパソコンを操作している。
「やっぱりゴージャスなのも着たいけれど、シンプルで素朴なのも可愛いし・・・どっちが似合うと思う?」
「どれも似合うと思うから、どれでも問題ない。」
「もー!自分の花嫁さんの衣装なんだから、もうちょっと関心持ってよ。」
 明がむくれて言った。その時、幸多と明のインカムに健人から通信が入った。
「お忙しいところすみません、今、大丈夫ですか?」
「問題ない。どうかしたのか?」
「あの・・・第二研究所の、戦闘シミュレーション訓練室を使う許可がほしいんです。」
「メンバーは?」
 淡々と答える幸多。
「俺に、栄喜、泉、桜、智です。」
「それ、誰の提案?」
 明が、手を止めて不機嫌そうに言った。
「俺です。納得してもらうだけのデータは持っているつもりです。送ろうと思えば、すぐに送る準備はできています。」
「別にデータなんかいらない。そろそろ、その四人の訓練をやろうかと思ってたんだけど。その部屋を使いたいってことは、猶予がほしいか?」
「少しでいいから、ほしいです。」
「何日くらい。」
「三日・・・いや、二日で良いです!」
「そこを使ってさらに猶予までやるんだから、それなりの訓練にしても良いんだよな?」
「はい。分かってます。」
「幸多、すぐに正式な許可を出して入室できるようにして。」
「・・・ありがとうございます!あと・・・教えてもらえるか分からないけれど、聞きたいことがあるんです。」
「それは、自分で調べても分からなかったことか?」
 幸多が言った。
「はい・・・分かりませんでした。」
「一応聞く。なんだ?」
「あの・・・俺と泉に、同時に黄色いイノセントが出現したんです。でも、皆がイノセントを出現させた時と、全く共通点がなくて・・・。」
「・・・・へぇ~。その時、何してた?」
 明が少し楽しそうに、しかし嫌味っぽく言った。
「特に何も・・・。たまたま二人でトレーニングして、帰る前に少し話している最中にイノセントアームが二人同時に熱くなって・・・。それでセットしたら、黄色が追加されていたんです。」
「それはそれは、新しいイノセントの出現おめでとう。あと二色で全色揃うじゃん。」
「あの・・・明さん、俺は理由が・・・。」
「おしえてあげな~い。おしえる気分じゃな~い。気分が乗ったら教えてあげる。」
「・・・分かりました。許可、ありがとうございます。」
「問題ない。もう、今すぐにでも全員入れるようにした。マスターと照にもメール送信済みだ。」
「分かりました。じゃあ、失礼します。」
 通信が切れた。
 明が、パソコンをベットの上に軽く投げると、仰向けになった。
「人って、やっぱりパソコンの分析や研究がいくら進化しても、何が起こるか分からないな。で、その不機嫌な理由は?」
「別に・・・。出現理由くらいあたしにも分かるけれど、なんかなーって。」
「泉に黄色が出現したのが気に食わないか?」
「いや、そっちの方は、案外嬉しいよ。照の言った通り、あいつもここの本質が分かってきたのかなーって。それに、健人とも・・・。・・・一度しか訓練していないのに、まさかこんなに早いとは思わなかったけどね。」
「じゃあ、健人に出現したのが気に食わない?」
「そんなわけないじゃん。ただね、なんて言うんだろう・・・健人は成長したとはいえまだまだ子供だと思ってたのになぁーって。」
「つまり、寂しいんだな。」
「かもね。でも今の状況が状況だから、安心もしてるかも。準備の方はどうなってる?」
「順調。問題ない。」
「・・・あたし一人でもできるよ?」
「そんなことはさせない。お前一人でやるっていうなら、この計画はすぐに中止する。」
「・・・・・。分かったよ・・・・。」
「俺が自分で決めたことだ。罪悪感なんかもつなよ、花嫁さん。」
 明は無言で立ち上がると、パソコンを操作している幸多に後ろから抱き付いた。

「許可、出たんだ!すごいね、健人くん!!」
 昼食を食べながら、智が言った。
「うん・・・。でも・・・あの、ごめん。勝手に言っちゃったんだけれど、明さんがその部屋を使うからにはそれなりの訓練をするって。俺・・・。」
「それだけの訓練が受けられるなんて、むしろありがたい。明さんの訓練でここを去った人がいるのは事実だけれど、明さんの訓練は本格的かつ実践的だ。だから桜と智も新しいイノセントが出現したんだしな。質問は?」
「それに、俺たち、訓練がきついからって辞めるような性格じゃねーだろ。」
 栄喜と俺の言葉に、健人の表情が軽くなった。
「それで、戦闘シミュレーション訓練室で健人はどういう訓練をしたらいいと思う?」
 栄喜が聞いた。
「俺、皆の訓練を見て思ったんだけれど、まず、俺がオペレーターをするだろ?その指示に従って動いてもらうわけだけど、栄喜が戦いながら状況を読める力に優れていると思うから、状況によっては栄喜がとっさに指示を出す。もし、俺との指示が違っても、そこは栄喜の判断で動いていいと思うんだ。それと、俺がすごいと思ったのは、皆が声を掛け合っていたこと。常に声を掛け合えば、信頼関係も連携も強くなるから。だから、あくまで俺と栄喜は作戦指示的な感じで、後はそれぞれの声を聞きながら動くのが一番だと思う。」
「さすが、健人くん!私たちのオペレーターだね!」
 智の言葉に、健人は少し笑顔になったけれど、下を向いた。
「実はさ・・・今言ったことって、休戦になる前には当たり前に行われていたことなんだ・・・。休戦になる前って今より人数も少なかったし、全員が家族っていう考え方が強かったから。でも・・・今は、全く変わったからさ。だから、俺がすごいわけじゃないよ。」
「全員が家族・・・。」
 桜がつぶやいた。
「このメンバーだったら、栄喜が知識豊富の一番上のお兄さんで、健人くんはしっかり者の次男、泉は突っ走りの末っ子って感じだね!私と桜だったら、どっちが上かなぁ?やっぱり、桜?」
 智が明るく言った。その言葉に、健人は一瞬驚いていたようだけれど、嬉しそうにしていた。
 その時、俺たち全員に幸多さんからメールが届いた。内容は、健人以外は同じ。一番最初に特別訓練をした場所で、三日後、四人でチーム訓練をするとのことだった。内容は当日に説明って書いてあった。健人も、内容を教えてくれて、幸多さんについて勉強するから俺たちより早く行って準備するんだって。健人が普通に教えてくれたことが、なんだか嬉しかった。
 昼食が終わった俺たちは、第二研究所に向かった。第二研究所に入るのは、もちろん初めてだ。桜と智も初めてだから、緊張しているのが分かった。
「そんなに緊張しなくても、怖いところではないぞ。」
 栄喜が言ったけれど、厳重にセキュリティチェックなんて聞くだけでもなんだか怖い。そうこうしている間に、第二研究所の前についた。
「もう全員、認証許可は出ているはずだから。まず、ここに手を置いて指紋のチェックな。」
 栄喜の言う通りにする俺。
「戦闘部隊ハイパーナンバー1、泉、指紋認証完了です。次のチェックに移って下さい。」
 俺は、栄喜を見た。
「次は、目な。最後は声。」
 俺は黙ってそれに従った。全員の認証が終わると、扉が開いた。俺たちは二階のチェックも栄喜に従って行うと、恐る恐る中に入った。人数は少なかったけれど、なんだか物凄い、よくわからない機械を使って皆働(はたら)いている。俺はなぜか栄喜に隠れるように進んだ。そして、戦闘シミュレーション訓練室の前に着いた。そこにも認証があったから、本当に第二研究所って厳しいんだと実感する。
 訓練室の中は、いつも俺たちが使っている訓練室より広かった。それに、オペレーターが座る場所もあるし、そこにはパソコンも何台かある。健人が椅子に座った。隣で覗き込む栄喜。
「まず、今までみんなが経験してきた新人類との戦闘より、少しレベルの低いものでやってみたらどうかな。戦闘に勝利することより、声を掛け合って動くことを確実にできた方が良いと思うんだ。栄喜、どう思う?」
「そうだな。智が直接俺たちのサポートに入ることも滅多になかったしな。じゃあ、後の操作とデータの採取は健人に任せる。質問は?」
「ない。じゃあ、みんな、イノセントアームをセットして。」
 健人が言うと、俺たちは全員イノセントアームをセットした。
「訓練、スタートする。」
 健人の言葉と共に風景が変わった。戦闘区域の風景だ。そこから俺たちは、びっくりするくらいリアルな訓練をした。もう新人類の新型機もインプットされていたし、イノセントロボもリアルに感じられる。智も驚いていた。でも、何がすごかったって今までにないくらい戦闘が上手くなったように感じられた。もちろん、それぞれができるようになったことも多いけれど、それ以上にそれを栄喜が応用させたことや健人の声、それに皆の声の掛け合いがこれほど大事だとは思わなかった。
 それから二日間、俺たちはご飯の時以外はこの戦闘シミュレーション訓練室で必死に訓練した。次の訓練がどんなものになるのかは分からなかったけれど、俺たちはやれることを全部やれたと思う。栄喜と健人も、データを見ながら満足そうにうなずいていた。

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