一進一退夫婦道

Emi 松原

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その一言の嬉しさ

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「えみは、そういう一言が言えるのが良い」


とある電話を切った際、突然目の前のいっとくさんに言われた。


そういう、と言われてもよくわからなかった私は、何が? と真顔で聞いたところ、つらつらといっとくさんは教えてくれる。


一緒にご飯を食べに行った時には、レジで店員さんに

「美味しかったです!」


フォト婚関係の電話では最後に
「楽しみにしています!」


タクシーでは
「またよろしくお願いします!」


保険会社には
「助かりました~!!」


などなど。


見ていて、必ず最後に一言添えていると言うのだ。

それがとても良い、と。



私は何も考えず言っていたが、つらつらと真顔で言われたら、少し恥ずかしくなった。
それと同時に、ちゃんと見ていてくれてるんだと、とても嬉しくなる。



私からしたら、一言言うのが良い、とその場で言葉で伝えてくれるいっとくさんが「良い」のだ。



一緒にいたら、お互い好きなところを言う機会が減る気がする。

好きだから一緒になったし、結婚前に散々言ったし、分かってるでしょ? という気持ちが何処かにある気がするのだ。



だがいっとくさんは、その場で「良い」とハッキリ、しかもさらりと言ってくれる。
それこそが私にとって「良い」だ。



いっとくさんがいつもその場で、さらっと「良い」ことを言ってくれるエピソードを一つ。



少し前の話になるが、私といっとくさんは1週間に一度の食材買い出しをして、おやつのケーキを買いに行った。

ケーキ屋さんの店員さんが注文をとってくれて、さて支払いしようか、と思った矢先、店員さんの体がぐらりと揺れた。

そのまま、そばにあった机に倒れかかり机のガタンという音を聞いた瞬間、考える前に私の体が動いていた。


店員さんの後ろから、ガッツリ腰をホールド、一気に倒れないように支えて、立てるかどうか確認、休める裏の近くまで支えて歩いた。



という一連の後、私は何事もなかったかのように別の店員さんにお金を支払い、1週間に一度の楽しみであるケーキを受け取り、ウハウハでお店の入り口で待っているいっとくさんの元へ戻る。

この時の私の頭は、ケーキゲットだぜ! の喜びでいっぱいだ。



すると一緒に歩き出したいっとくさんが

「流石、元介護士だな。俺は動けんわ」

と一言。



ケーキをゲットした喜びが、いっとくさんの言葉に対しての喜びに変わった。


介護福祉士として働いていたのは、もう10年前の話だ。


それでもいっとくさんは、私が当時身につけたことを認めてくれていて、咄嗟に動いたことに対して、流石という言葉をくれた。


それも大袈裟に褒めた訳ではなく、当たり前の会話のようにさらりと。


そういうところが、やっぱり「良い」



いっとくさんは、私を大袈裟に褒めはしない。

だけれど当たり前のように「良い」と言ってくれる。


そんないっとくさんが私にとって本当に「良い」のである。

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