お供え物は、プロテイン

Emi 松原

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オカルトサークルの降霊術 宝石箱編

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「魔物になった動物たちは、本当に力ずくで消さねばならなかったのだろうか? 人間によって無理矢理殺された動物たちだ。俺は恐怖のあまり、力ずくでねじ伏せた。でもそれでは、俺を恐怖対象として排除しようとした周りと同じではないか。だから俺は、この《拳》は、軽々しく使わず、誰かを守るときのみ使うと決めたのだ。もっともっと筋トレをして己を鍛えると誓ったのだ。その誓いを忘れないよう、ここに来たときには、必ずこの木の前に来る」
「そっか。それで、今の優しい虎之助くんになったんだね」
 音羽が、虎之助に向かって微笑んだ。虎之助は、少し驚いた顔をする。
「……俺は、「最強」で「最狂」だと言われているらしい。俺の力の能力が三人の中で一番高いのは、松子も知っての通りだ。だが、俺のやり方は、どうも「最狂」だと言われる。優しいなんて言ったのは、やっすんとヨーくん、松子の他に、音羽が初めてだぞ」
「そう? 私は、松子ちゃんを連れている虎之助くんに話しかけた時から、優しいと思っていたよ? あの時は興奮が勝っちゃっていたけれど。松子ちゃんに対する虎之助くんを見ていてもそうだし、耕也くんの時も、今日も。私が見ている虎之助くんは、いつも優しいよ」
 笑って言った音羽に、虎之助は少し力が抜けたような顔をした。
「長々とつまらない話をしてしまったな。どうもここに来ると、まだ筋肉が弱くなる。もっと筋トレをして、己を鍛えなければ」
「話してくれてありがとう。私、虎之助くんの話が聞けて嬉しかったよ」
《私もよ》
「おーい、二人とも、そろそろおやつだよー!!」
 後ろから聞こえた陽一の声に、二人と松子は、どこかすっきりとした顔で、戻っていったのだった。

※※※

「部長!! この前のオークションで落としたと報告した、これが曰く付きの宝石箱です!! 持つもの誰もが、この箱にとりついている女性の虜になると!! あの本に書いてあった降霊術を使うチャンスです!!」
「おぉ! ナンバー3、よくやったぞ!!」
 部長である秀樹が、ナンバー3と呼んだ部員を褒める。
 このオカルトサークル、そして他校の繋がりがあるオカルトサークルも含めて、部員は全員ナンバーで呼ばれている。
 自分の名には、力があり、他人に利用されてはならない。その考えの元だ。
「後は、生け贄に、満月を待つだけだな。ナンバー2、生け贄の準備はどうなっている?」
「はい、この降霊術の生け贄は、本物の動物でなくとも、動物の形をしたもので良いと記載されているので、すぐに手に入りました」
「ふむ、素晴らしい!! では、満月の夜を待つとしようではないか!!」
 部長と部員の笑い声が、暗い部屋に響き渡ったのだった。

※※※

《そういえば聞こうと思っていたのだけれど、私って曰く付きの人形になるのかしら?》
 ある休みの日、いつもの場所で、安明、陽一、音羽と一緒に虎之助の筋トレを見ながら雑談をしていた松子が聞いた。
「曰く付き……と言えなくはないけれど、曰く付きって言葉は、好ましくないものに対して使うからなぁ……。松子ちゃんは確かに意思と霊力はあるけれど、それが他人に対して悪く作用する訳じゃないしなぁ……」
 陽一が、考え込むようにして首をかしげる。
「松子ちゃんは曰く付きなんかじゃないわよ。だって、私の家で何度も二人で過ごしているけれど、むしろ守られている気がしてとても心地が良いから。……もしかして松子ちゃん、オカルトサークルの人が言ったことを気にしているの?」
 陽一の言葉を聞いて、音羽が心配そうに松子を持ち上げて腕に抱いた。
《気にしているというか、少し気になったの。私のように意思がある人形が全て曰く付きの人形になってしまうのなら、って》
「髪が伸びるだけでも曰く付きって言ってお寺に持ってくる方はいるからね。霊的な何かがあるわけじゃなくて、当時の作り方が関係している場合とかもあるし。持っているだけでよくないことが起きる、曰く付きの物は実在するけれど、そんなに強いものは滅多にないよ」
 安明の言葉に、陽一が頷いた。
「うちの神社にも、お祓いしてくださいって物が持ち込まれることはあるよ。うちが祓うのは、残っていた念だったりだけれど、そういうものにも当てられちゃうからさ」
《曰く付きという名でも、色々理由があるのね》
 松子は納得しているが、音羽はどこか納得いかない様子だ。
「私、怖い番組とか好きで見ちゃうけれど、あくまでエンタメとして好きだからなぁ。松子ちゃんのことも大好きだし、耕也くんの時も、落ち武者さんの時も、解決して欲しいって気持ちが先にあったし……。あ……だからかな、オカルトサークルの人たちのやり方に、なんだか嫌な気持ちになっちゃうのは」
「うん……。僕もそうだよ。でも正直僕が一番嫌だったのは、怖いものは見たいけれど、実際怖い目にあったら助けてくれってタイプ。他人だったら別に気にしないんだけれどね、何かあったときに、僕や《キカイ》と友達だったら助かるからって人もいるからさ……」
 陽一は、少し悲しそうに笑うと、音羽に頷いた。
 そういう人がいるのが悲しい反面、音羽のように、自分たちを利用せず純粋に友人でいてくれる相手がいて嬉しいのだ。それは、安明も同じだった。
「そういえば、満月と筋肉は何か関係があるのか?」
 一人黙々と筋トレをしていた虎之助が、プロテイン作りに入り、会話に加わってくる。突然の満月と筋トレの関係に、全員が首をかしげる。
「秀樹が満月がどうとか言っていたのだ。うちのジムは満月のイベントはないからな」
「えっ、なにそれ。虎之助くん、また何かに誘われたの?」
 音羽が驚いて、虎之助に聞いたが、虎之助はいつもと変わらず、満足そうにプロテインを一気飲みして、それ以上何も答えない。
「満月……。なんだか気になるなぁ……。オカルトサークルのやることだからさ……」
 陽一が、考え込むようにつぶやき、安明もそれに無言で頷く。
「次の満月は……。え、明日? それで何か言われたって、あの人達、本当に何かやるつもりなんじゃ……」
 スマホで調べていた音羽が、不安そうに顔を上げ、陽一と安明を見た。二人も、同意するように頷く。
《でも、明日は学校はお休みでしょ? だったら絡まれることはないんじゃないかしら》
「明日は絡まれないと思うけれど、何かやらかされたら嫌だなぁ。あいつら、俺たち全員の行動パターンまで把握してるんだから」
 安明の大きなため息に、陽一が同意し、音羽は心配そうに松子を抱きしめ虎之助を見たのだった。
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