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第二章 3
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『あたし、麻美だけど』
すぐに既読が付き、堀内から返信が届く。
『あ? 麻美じゃん、お前どこいんの? 行方不明って騒ぎになってるぜ』
『ぷちっと家出』
『はあ? ウける。なにあったん?』
『それきーて欲しいからさ、これから時間ある?』
『ああ、もうすぐ部活終わるからいいぜ』
『なら旧部室棟のバスケ部の部室きて』
『んだよ、メンドー』
『頼むって』
『そんなに込み入ったハナシ? 有紗もつれてく?』
『それはいい、堀内だけきて』
『なに? もしかしてオレにコクるの?』
『ばーか、じゃあ三〇分後ね』
『おう』
返事を確認して、剛は榎本のスマホをしまう。
準備は整った。
剛は鞄に潜ませたあれを取り出しす。夕暮れの光がギラリと反射した。
荷物検査が無くてよかった。
旧部室棟は野々山高校のグラウンドの隅にある。
まだこの学校の生徒が多く、部活動に励む生徒が今の倍いた頃に使用されていた。
外見は木の建物の連なりであり、それぞれ中はそれなりに広く、部活ごとの用具入れなどがあった。
現在は使われていない。
経年劣化により建物のそこここにひびが入りささくれが出来て危険になったことと、少子化の中なんとか生徒を確保しようとした学校の思惑により、鉄筋コンクリートのテラスのような部室が完成していた。
旧部室棟は取り壊されるのを待つだけの身だ。
だがそれから結構経った。
取り壊しが決まったのは五年前だが、業者の選定や費用などの諸事情により、役目を終えた部室達は農閑期の案山子のようにほっとかれている。
ただし、教師からは、だ。
前述したとおり古くて危険な建物の為に鍵が掛けられていたのだが、いつのまにか解錠されていた。
理由は高校生カップルのお楽しみ場所として使うためだ。
現に堀内などはここの常連であり、幾多の女子生徒を奪ってきた。
剛が旧部室棟を選んだのは、だから彼が油断すると踏んだのだ。
堀内は時間通りにはこなかった。
三〇分後、と榎本のフリをしてメッセージを送ったが、彼が訪れたのは一時間近く経過した頃だ。
この男は万事こうだ。
剛は堀内が旧バスケ部の木扉を引いて中に入ったことを確認すると、美咲と陰から現れた。
「いくよ」と彼女と自分に言い聞かせると、堀内を追って扉に手を伸ばす。
「あ?」
堀内は突如入ってきた剛に怪訝な表情になる。
剛は部室に入ると鞄を持っていない左手ですぐに扉を閉めた。
旧バスケ部は辛うじて人影が認識できるほどの暗さになる。
「なんだおめー? ここはこれから使うんだ、失せろ」
剛は薄く笑う。
「残念だけど榎本は来ないよ、堀内」
「はあ?」堀内の顔が不機嫌に歪む。剛が呼び捨てにしたからだろう。
「何だお前?」
「どうして美咲にあんな事をした?」
剛の肩が怒りに震え、背中の美咲は息を飲む音が聞こえる。
「あんな事? なにそれ?」
堀内はにやにやと笑う。
「榎本を使って着替え途中の美咲を写真に撮り、LINEでみんなに送っただろ!」
「ああ、あれか。ノリだよ」
容易く彼は答えた。人を傷つけたのにゲームの話をしているように容易く。
「ただのその場のノリ。てかさ、いちいちおめーに説明する必要なくね? 何イキってんの?」「あれで美咲がどんな目にあったか知っているのか! 画像はパソコンで拡散され、皆に嘲られたんだ!」
「うっせーな、ノリだってば……あんなのに負ける奴がザコなんだね。何だか知らねーが榎本こないなら行くぜ。メンドー」
「待て」帰ろうとする堀内の前に剛は立ちふさがる。
ち、と舌打ちが上がる。
「お前何なんだよ、最近妙にウゼーじゃん」
どうやら剛の行動が堀内に火をつけたようだ。
「花瓶片づけたり俺達に突っかかったり、勘違いしてねー? このクソ隠キャが」
ぎりり、と剛の奥歯が鳴る。
確信した。堀内修司は反省などしていない。美咲を傷つけたことについて何とも思っていない。
「これ以上イキるとガッコー来れなくするぞ、ええ? それともお前の言う嘉嶋みたいに……」 我慢の限界を越えた。
剛は堀内に殴りかかる。
「剛ちゃん!」美咲が悲鳴のような声を出した。
一撃で床に這い蹲る羽目になったからだ。
「何? お前」剛を殴り倒した堀内はへらへら笑う。
「勝てると思った? ボクちゃん」
剛は立とうとしたが、その前に堀内の革靴が脇腹に刺さる。
「うぐっ」と呼吸が止まった剛は転げ回る。
「辞めて!」美咲が今度こそ悲鳴を上げたが、堀内は構わなかった。
「うらっ、うらっ、うらっ」連続で剛の腹を蹴る。
「テメエみたいなノリの分からない奴は教育しないと行けないんだよ!」
堀内が背後まで足を上げ渾身の一撃を剛に見舞おうとした。瞬間、剛の手が鞄に滑り込む。
すぐに既読が付き、堀内から返信が届く。
『あ? 麻美じゃん、お前どこいんの? 行方不明って騒ぎになってるぜ』
『ぷちっと家出』
『はあ? ウける。なにあったん?』
『それきーて欲しいからさ、これから時間ある?』
『ああ、もうすぐ部活終わるからいいぜ』
『なら旧部室棟のバスケ部の部室きて』
『んだよ、メンドー』
『頼むって』
『そんなに込み入ったハナシ? 有紗もつれてく?』
『それはいい、堀内だけきて』
『なに? もしかしてオレにコクるの?』
『ばーか、じゃあ三〇分後ね』
『おう』
返事を確認して、剛は榎本のスマホをしまう。
準備は整った。
剛は鞄に潜ませたあれを取り出しす。夕暮れの光がギラリと反射した。
荷物検査が無くてよかった。
旧部室棟は野々山高校のグラウンドの隅にある。
まだこの学校の生徒が多く、部活動に励む生徒が今の倍いた頃に使用されていた。
外見は木の建物の連なりであり、それぞれ中はそれなりに広く、部活ごとの用具入れなどがあった。
現在は使われていない。
経年劣化により建物のそこここにひびが入りささくれが出来て危険になったことと、少子化の中なんとか生徒を確保しようとした学校の思惑により、鉄筋コンクリートのテラスのような部室が完成していた。
旧部室棟は取り壊されるのを待つだけの身だ。
だがそれから結構経った。
取り壊しが決まったのは五年前だが、業者の選定や費用などの諸事情により、役目を終えた部室達は農閑期の案山子のようにほっとかれている。
ただし、教師からは、だ。
前述したとおり古くて危険な建物の為に鍵が掛けられていたのだが、いつのまにか解錠されていた。
理由は高校生カップルのお楽しみ場所として使うためだ。
現に堀内などはここの常連であり、幾多の女子生徒を奪ってきた。
剛が旧部室棟を選んだのは、だから彼が油断すると踏んだのだ。
堀内は時間通りにはこなかった。
三〇分後、と榎本のフリをしてメッセージを送ったが、彼が訪れたのは一時間近く経過した頃だ。
この男は万事こうだ。
剛は堀内が旧バスケ部の木扉を引いて中に入ったことを確認すると、美咲と陰から現れた。
「いくよ」と彼女と自分に言い聞かせると、堀内を追って扉に手を伸ばす。
「あ?」
堀内は突如入ってきた剛に怪訝な表情になる。
剛は部室に入ると鞄を持っていない左手ですぐに扉を閉めた。
旧バスケ部は辛うじて人影が認識できるほどの暗さになる。
「なんだおめー? ここはこれから使うんだ、失せろ」
剛は薄く笑う。
「残念だけど榎本は来ないよ、堀内」
「はあ?」堀内の顔が不機嫌に歪む。剛が呼び捨てにしたからだろう。
「何だお前?」
「どうして美咲にあんな事をした?」
剛の肩が怒りに震え、背中の美咲は息を飲む音が聞こえる。
「あんな事? なにそれ?」
堀内はにやにやと笑う。
「榎本を使って着替え途中の美咲を写真に撮り、LINEでみんなに送っただろ!」
「ああ、あれか。ノリだよ」
容易く彼は答えた。人を傷つけたのにゲームの話をしているように容易く。
「ただのその場のノリ。てかさ、いちいちおめーに説明する必要なくね? 何イキってんの?」「あれで美咲がどんな目にあったか知っているのか! 画像はパソコンで拡散され、皆に嘲られたんだ!」
「うっせーな、ノリだってば……あんなのに負ける奴がザコなんだね。何だか知らねーが榎本こないなら行くぜ。メンドー」
「待て」帰ろうとする堀内の前に剛は立ちふさがる。
ち、と舌打ちが上がる。
「お前何なんだよ、最近妙にウゼーじゃん」
どうやら剛の行動が堀内に火をつけたようだ。
「花瓶片づけたり俺達に突っかかったり、勘違いしてねー? このクソ隠キャが」
ぎりり、と剛の奥歯が鳴る。
確信した。堀内修司は反省などしていない。美咲を傷つけたことについて何とも思っていない。
「これ以上イキるとガッコー来れなくするぞ、ええ? それともお前の言う嘉嶋みたいに……」 我慢の限界を越えた。
剛は堀内に殴りかかる。
「剛ちゃん!」美咲が悲鳴のような声を出した。
一撃で床に這い蹲る羽目になったからだ。
「何? お前」剛を殴り倒した堀内はへらへら笑う。
「勝てると思った? ボクちゃん」
剛は立とうとしたが、その前に堀内の革靴が脇腹に刺さる。
「うぐっ」と呼吸が止まった剛は転げ回る。
「辞めて!」美咲が今度こそ悲鳴を上げたが、堀内は構わなかった。
「うらっ、うらっ、うらっ」連続で剛の腹を蹴る。
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