ラブレター~ラブレターを貰ったからには君のため、君の敵を全部倒す! それが僕の回答だ!

イチカ

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第三章 1

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 堂島有紗(どうじま ありさ)はこの野々山高校のアイドル的存在で、同時に女子のリーダー格だ。
 彼女はそこらのアイドルさえも田舎娘にしか見えないほどの美貌を持ち、成績も全国レベルで、皆の人望も厚いから生徒会に入っている。
 父親は会社を幾つも経営していて、母親がPTA会長だ。
 どうしてこの毛並みのいい目立つ少女が美咲をいじめていた他のゴミと同調したのか分からない。
 分かりたくもない。
 運命は変わらないから。
 剛は時間が過ぎ、夕闇に翳る教室で待っていた。
 生徒会の会議が終わるのを。
 終わったら有紗は必ず教室に寄る。彼女の荷物が置いてあるからだ。
 美咲はここにきて不安なのか、しきりに彼の前をうろうろしていた。
「大丈夫かな? 堂島さん、結構鋭いから」 
「大丈夫さ」
 剛には自身がある。
 彼と堂島有紗はどんな運命か中学一年の頃から高校まで同じくラスであり、その頃からカースト下だった剛が厄介事を押しつけられると何故か帰宅が遅くなるのに手伝ってくれた。その接触から彼女の性格について、弱点について心当たりがあった。
 中学三年の体育祭だ。
 クラス対抗リレーの際、リレーの選手に選ばれていた足の速いだけの生徒がつまらないことで怪我をした。リレーの寸前に。
 その時堂島はパニックを起こした。
 辺り構わず怒鳴り喚き、この世の終わりのように取り乱した。仕方なく剛が他の生徒に頭を地まで下げて頼んだのだが、その折号泣までして感謝した。
 堂島は突発的な出来事に弱い。
 彼女はいつも何事もなかったように、穏やかに微笑んで万事進めているが、それはあくまでも予定を書き込んだ手帳があってからこそだ。
 いきなり、の自体に冷静さと頭の切れを発揮できはしないだろう。
 それも、『いきなり』命を狙われるのだ。彼女の対処を越えているはずだ。
「大丈夫かなぁ」
 美咲は余程心配なのか、幼い頃のクセである親指の爪を噛む、を再開させている。
「はあー」と剛はわざとらしくため息を吐いた。
「美咲は本当に臆病だなぁ。チキン南蛮め」
「違うよ! わたしは慎重なんだよ! そしてチキン南蛮は美味しいよ」
 案の定噛みついてくるから、指を天井に向ける。
「でもさあ、小学校高学年の山の合宿の時、お寺の和尚さんが怖い話しをしたら夜、トイレに行けなかったじゃん。わざわざ夜中男子部屋まで侵入して俺を起こしたよね」
「あ、あれは……あれは、だって、和尚さんがトイレに出てくる幽霊の話しをしたから……」「で、外で俺の横でトイレしたの? しかも大きい……」
「死んだのよっ!」
 また出た。
「男の子のとなりで野グソしてしまう乙女としてどうなの? の嘉嶋美咲は過去の者! 死んだの。今や転生の最中です! 完全生物になるでしょう!」
 その後、肩たたきのように剛の頭をぽかぽか殴る。
「言わないでしょ、普通! そんな女の子の暗黒歴史忘れてくれるでしょっ! 剛ちゃんは優しさの欠片もない悪魔だー」
「……紙がないから、俺が近くの木の葉っぱ……」
「わーん! コイツ意地悪だー」
 つくづく黒歴史の多い娘だが、とにかく先程までの不安は何とか解消できたようだ。
 ただじとっと睨んでくるのがうっとうしいが。
 ふふ、と剛は笑ってしまい、美咲の目は更に鋭くなる。
 だが彼は彼女の黒歴史を笑ってのではない。
 こうして美咲といる瞬間が幸福で堪らないからだ。
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