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第5話 冒険の匂い
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「ホームズ、いったいなんのクエストを受注したんだ。」
私たちの元へと戻ってきたホームズは深呼吸して呼吸を整えていた。
なぜ走ってきたのかは容易に想像がつく。
ギルドで客に囲まれたのだろう。
彼は私の前に紙を突き出した。
「薬草採取?」
私は呆然とした。
こんな時間から行くのか?
「ワトソン君、今から薬草を集めに行くぞ!」
彼の輝く目を見て確信した。
ホームズは知的好奇心を満たすためだけにこのクエストを受けたのだと。
何を知りたいのかまでは分からなかったが。
「あ、私も暇だから連れて行ってよ。」
アドラーが後ろからそう言ってきた。
「ホームズ、どうする?」
「別にいいんじゃないだろうか。現地の人はいた方が何かと都合がいい。」
ホームズはそう言ってアドラーに目を向けた。
「ミス・アドラー。では、この町周辺の案内をお願いしてもいいだろうか?」
「ええ!もちろん!!」
アドラーは緑の瞳をキラキラさせながら尻尾をブンブンと振っていた。
「薬草を探しに行くのだったら西門まで戻らないと。」
彼女はそう言いながら歩き始めた。
私とホームズはおとなしく彼女の後ろをついていくことにしたのだった。
もう十分も歩いただろうか、西門が見えてきた。
「ちょっとここで待ってて!」
アドラーはそう言いながら闇へと消えていった。
もう太陽はすっかり褥につき、月が顔を出していた。
「ホームズ、本当にここは不思議な国だな。」
私はアドラーの消えた闇を見ながらそう言った。
「ワトソン君、おそらくだが不思議なのは国ではない。世界だ。」
ホームズはそう言いながらパイプに火をつけていた。
「そういえばホームズ。そのパイプはどこで手に入れたんだ?」
「もともと僕が持っていたものだが?」
確かに、よく見るとそれはホームズがいつも愛用していた木製のパイプだった。
まぁ、私も愛用の銃が懐に入っていたのだからなんの不思議もないのだろう。
「おまたせ!」
気が付いたらアドラーがランタンを持って立っていた。
そしてどうやら着替えてきたらしく服装が狩人のようになっていた。
いや、軍人か?
緑の迷彩服に、茶色のポーチを肩からかけ、背中からはマスケット銃が見えている。
「これくらいの準備は必要だと思うけど、二人ともそれで大丈夫?」
大丈夫じゃない。
間違いなく大丈夫ではないのだ。
「ああ、これでいい。」
私はホームズの顔を二度見してしまった。
何か聞こえてきたが気のせいだろう。
「ホームズ、クエストを変えることはできないのか?」
私は平静を装いながら満面の苦笑いでそう聞いた。
「ああ、変えれない。」
ホームズはいい笑顔でそう言った。
おそらく私の気持ちには気づいているはずだ。
なんといっても彼はシャーロック・ホームズなのだから。
体に出るあらゆる機微を読みとって相手の感情を読み取ることなど朝飯前だ。
「はぁ。」
私はあきらめた。
今までも彼の考えを覆せたことはないのだ。
「それじゃ、出発!」
アドラーはランタンを前に突き出し歩き始めた。
かくして、我々は夜の帳が落ちきった世界へと歩みを進めるのだった。
涼しい風を受け、冒険の匂いを感じ取りながら。
私たちの元へと戻ってきたホームズは深呼吸して呼吸を整えていた。
なぜ走ってきたのかは容易に想像がつく。
ギルドで客に囲まれたのだろう。
彼は私の前に紙を突き出した。
「薬草採取?」
私は呆然とした。
こんな時間から行くのか?
「ワトソン君、今から薬草を集めに行くぞ!」
彼の輝く目を見て確信した。
ホームズは知的好奇心を満たすためだけにこのクエストを受けたのだと。
何を知りたいのかまでは分からなかったが。
「あ、私も暇だから連れて行ってよ。」
アドラーが後ろからそう言ってきた。
「ホームズ、どうする?」
「別にいいんじゃないだろうか。現地の人はいた方が何かと都合がいい。」
ホームズはそう言ってアドラーに目を向けた。
「ミス・アドラー。では、この町周辺の案内をお願いしてもいいだろうか?」
「ええ!もちろん!!」
アドラーは緑の瞳をキラキラさせながら尻尾をブンブンと振っていた。
「薬草を探しに行くのだったら西門まで戻らないと。」
彼女はそう言いながら歩き始めた。
私とホームズはおとなしく彼女の後ろをついていくことにしたのだった。
もう十分も歩いただろうか、西門が見えてきた。
「ちょっとここで待ってて!」
アドラーはそう言いながら闇へと消えていった。
もう太陽はすっかり褥につき、月が顔を出していた。
「ホームズ、本当にここは不思議な国だな。」
私はアドラーの消えた闇を見ながらそう言った。
「ワトソン君、おそらくだが不思議なのは国ではない。世界だ。」
ホームズはそう言いながらパイプに火をつけていた。
「そういえばホームズ。そのパイプはどこで手に入れたんだ?」
「もともと僕が持っていたものだが?」
確かに、よく見るとそれはホームズがいつも愛用していた木製のパイプだった。
まぁ、私も愛用の銃が懐に入っていたのだからなんの不思議もないのだろう。
「おまたせ!」
気が付いたらアドラーがランタンを持って立っていた。
そしてどうやら着替えてきたらしく服装が狩人のようになっていた。
いや、軍人か?
緑の迷彩服に、茶色のポーチを肩からかけ、背中からはマスケット銃が見えている。
「これくらいの準備は必要だと思うけど、二人ともそれで大丈夫?」
大丈夫じゃない。
間違いなく大丈夫ではないのだ。
「ああ、これでいい。」
私はホームズの顔を二度見してしまった。
何か聞こえてきたが気のせいだろう。
「ホームズ、クエストを変えることはできないのか?」
私は平静を装いながら満面の苦笑いでそう聞いた。
「ああ、変えれない。」
ホームズはいい笑顔でそう言った。
おそらく私の気持ちには気づいているはずだ。
なんといっても彼はシャーロック・ホームズなのだから。
体に出るあらゆる機微を読みとって相手の感情を読み取ることなど朝飯前だ。
「はぁ。」
私はあきらめた。
今までも彼の考えを覆せたことはないのだ。
「それじゃ、出発!」
アドラーはランタンを前に突き出し歩き始めた。
かくして、我々は夜の帳が落ちきった世界へと歩みを進めるのだった。
涼しい風を受け、冒険の匂いを感じ取りながら。
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