あと少しのところが足りない。

そらも

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足りなさその17、 ……ずっとずっと大好きだよ、頼人

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「……は、はぁ……より、と……」
「………」
「…っ、やっぱり寝てる…か…」




身体のそこらかしこを汗やら精液やらでベタベタにさせた俺の視線の先、そんな俺に負けず劣らず無防備な身体の色んなところをドロドロにさせつつも、けれど目を閉じている頼人の顔は……あの20歳の誕生日に初めて酔って眠ってしまった時と変わらず、あどけなさの残る可愛い表情のままで。


「何でこんな…なんにもされてないみたいな顔、してるんだよ……ほんと」


ここまでされてるのにまったく起きないなんて、どれだけ頼人と酒の相性が良い……いや、悪いのか?
結局2回目の宅飲み以降、今日もこうして頼人は酒を2本飲み終わると同時に寝ちゃってるんだから、やっぱり最初のあの時はテンションが上がりすぎてたってだけで、『頼人は酒を2本飲むと酔って寝てしまう』のが真実で正解なのだろうけど。
それに、


「毎回とめようとしても、本当気づいたらいつのまにか2本目の酒を口にしてるんだよな…頼人は。前に自分で言ってたけど『頼人マジック』ってのはあながち間違いでもなくて…俺が知らなかっただけで、頼人はマジにマジシャンなのかもな……なんて、はは」


今からほんの少し前の時間にも起こった、本当に頼人はマジックが使えるのかと思ってしまうくらいに素早いいつのまにかの2本目の酒を手にしてる今までの出来事に対して、冗談交じりで笑うと共に。


「ここまでして起きないとかさ……俺が童貞でヘタレだからって油断してるのか? それとも、誘ってる…とか?
……な訳ないのは、うん…わかってるけども」
「………」


わかってる、どっちもありえないってことは。

俺に彼女がいないってことも、童貞だってことも頼人がとっくに知っているのだとしても、それがどうしたっていうんだ。


知ってたとしても、親友の俺にもうずっと前からそういう意味で想われてるだなんて、きっと……いや1ミリだって頼人は思ったりしてないのだろうから、こうやって俺の前で無邪気に寝てしまうのなんて、当然のことなのだ。


そう、当然のこと……だけど。



「だからって、こんなコトしていい言い訳にはならないよな……ごめん、ごめんな頼人……でも、」



謝りつつ、俺は寝ている頼人の顔にそっと自身の顔を近づけ、その唇に――…


ちゅっ、


「………」
「……っ、はぁ…く、口はやっぱり俺にはハードルが高すぎるっ……いやそもそも勝手にしちゃいけないんだけどさっ…!!」


にはいくらなんでもできなくて、頼人の柔らかい右頬に小さくキスをしてみせたのだった。


キス以上のコトを散々好き勝手にやっておいて今更何言ってんだかって感じだし、実際ほんとの本当は、


「本当は、キス以上の……頼人とセックスがしたいだけの、ただの強姦魔で変態で…最低最悪の男のくせにな、俺は……これじゃ、こんなんじゃ友達同士とか関係なく、頼人に正面切って告白をする資格なんて俺にはもうっ……」
「………」
「ごめんな頼人……っ、でも…もしこのコトが万が一にでも頼人にバレたら、俺はすぐにでも頼人の前から消えてなくなるからっ……だからそれまではどうか、」


そうして俺は、




「どうかもうちょっとだけ、お前の隣にいさせてくれな……ずっとずっと大好きだよ、頼人」




ちゅっと今度は左頬にキスを落としながら、深い眠りに就き何もかもが聞こえていない頼人に、そっと愛の言葉を囁いたのだった。




――俺の好きな男は、あと少しってところが足りない。



「……なんて、お前の今までの天然ぶりや少し抜けている部分を『あと少しってところが足りない』って言ってた俺だけども……でも、頼人から見たらもしかしたら俺のほうこそ『あと少しってところが足りない』そんな男なのかもな」



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