花が招く良縁

まぁ

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(そういえば一昨日東京行ってたけど…)
 まさかここで慶の作品と対面できるとは思わなかった。せっかくの記念なのでスマフォで写真撮影をした。すると自分の後ろで日傘をさし、膝くらいまであるシフォンのワンピースを着た、いかにもお嬢様と言った感じの女性がじっと慶の作品を眺めていた。
 あまりじっと見たりじろじろ見たりしてはいけないのだろうが、何分その女性の目はくりっと丸く、髪はふわふわとカールをした薄茶色で、とてもかわいらしい花のあるスラッとした女性だったので、ついつい見てしまう。そんな美奈穂の視線に気が付いた女性はニコッと微笑んだ。
(か…かわいいなぁ…)
 もし慶と並んだら…
(うぅ…美男美女すぎる…めっちゃ絵になるよ…)
 そんな事を考えていると、女性は何もなかったかのようにその場を去った。

―慶さんの作品見ました―

 写真付きのメールを送って来たのは美奈穂だった。そのメールを見てニコッと微笑んだ慶は、家で風香と一緒に縁側で寛いでいた。
「おーい慶!」
 そんなひと時の休息を破ったのは洋二だ。ドタドタと廊下を歩く音に慶は大きなため息を漏らした。
「なんだよ…もしかして仕事?」
「そっ!東京な!」
「はぁ?唐突過ぎるだろ!しかも一昨日行ったばっかなのに…」
「大丈夫!今から行けば夜には着く!」
「そういう問題じゃない!」
 抗議する慶の言葉などまるっきし聞いてはいない。どうやら一昨日の作品を扱ってくれているクライアントが是非に食事をと言ってきたらしい。相手は大手の会社なので無下にも出来ないと洋二は言う。
「はぁ…仕方ないなぁ…」
「あれ?同居してる人は?」
「今日明日はいない。東京にいる」
「そっか!なら東京で落ち合えるな!俺まだその人に会ってないし!」
 洋二の目的はむしろそっちになったようだ。同居を始めてまだ一度も美奈穂に会っていない洋二は、慶が同居すると言った女性にとても興味深々のようだ。洋二が慶の家に来る時は大体昼で、夜に来る事はまずないから、昼間会社に出ている美奈穂にはまだ会った事がなかった。
「俺としては東京…行きたくないんだけど…」
 東京には麗子がいる。親戚が勝手に決めた婚約者に会うつもりは毛ほどもないが、いると知っているので自然と拒絶反応が出る。
「いいからいいから!目的はクライアントさん!そんで同居人なんだから麗子さんに会う事はないよ!多分…」
「なんだよその曖昧な反応…それにお前の目的はどうせ最後だろ!」
 バレた?と舌を出しておどけるマネージャー兼友人にほとほと呆れてしまった。
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