花が招く良縁

まぁ

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 それから二時間居酒屋で盛り上がった三人は時間も時間なのでお開きにする事になった。美奈穂はこれから電車に乗ってホテルまで向わなくてはいけない。洋二の方はもう少し遊ぶからと言って慶を連れて行こうとしていた。
「お前一人で行けよ!俺は美奈穂さん送ってくから!」
「えー!お前いた方がお姉ちゃん達喜ぶのに!」
「やだよ!めんどくさい!」
「あの…私一人で行けますから…」
「いいんですよ!あいついつもあんな感じで俺を連れまわすので」
 ブーブーと文句を言う洋二をほったらかしにして、慶は美奈穂の手を取ってさっさと駅の改札口へ向かった。
(手…)
 恋愛慣れしていない美奈穂にとって、この状況があり得ないものだった。とは言っても慶は気にする事もなくスタスタと美奈穂の前を歩いて行く。
「ホントすみません…なんかご迷惑おかけしましたよね?」
「いや、迷惑かけたのはこっちですよ。あいつ…どうしても美奈穂さんに会いたいって言ってたんで…」
 おそらくは珍しい物見たさなのだろうと心の中で美奈穂は呟いた。
 電車は直ぐに来たので二人は乗り込む。その間もずっと手を握ったままでいる。正直美奈穂の心臓はずっとドキドキしっぱなしだった。
「ホテルは新宿?」
「はい!あの…駅まででいいですから」
「ダメですよ。夜も遅いし、ここは田舎じゃないんですから。ちゃんと送ります」
「はぁ…」
 夜が遅いと言ってもまだ十時を過ぎたところだ。それにこんなのを相手にする輩などそういないと美奈穂は思っていた。だが…今までになかった事なので、こうして男性に気にしてもらえる事がとても嬉しい。窓ガラスに映る自分と慶は傍から見たらどういう関係に見えるだろうか?手を繋いでいるので恋人なのか…?
(いやいや…それはない!)
 相手は今をときめく華道界のプリンス様だ。そんな人物と世間一般どこにでもいる女とは釣り合いが取れない。取れるとしたら…昼間出会ったあのいかにもお嬢様っぽい女の子だろうか?そんな事を考えていた美奈穂の顔を除き込むかのように慶が声をかけてきた。
「美奈穂さん?」
「わっ!はははい!何ですか?」
「もう少しで着きますよ」
「わかりました…」
 いい加減手を放して欲しい…
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