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時代は違えど、夏菜の住む地域も田舎だ。こういうおすそ分け文化によって互いに助け合っているのだろう。どうやらこの土地はあやかしのおかげもあってか、土地そのものは安定しているらしく、大豊作とまではいかないが、食べるに困らない程度に作物が育つのだそうだ。
「それではみなさんの心使いに感謝していただきましょう」
「いただきます」
皆手を合わせ合唱。
本日の朝食は米とみそ汁。和子の持って来た漬物と卵焼き、野菜という献立だ。
「こま。箸の持ち方がおかしいですよ」
千庄は礼儀作法にも厳しい。あやかしの姿は人間には見えないとはいえ、もしこまやもえが人間と遭遇したとしても、ちゃんと一礼をするようにと言っているのだ。向こうからのアクションはもちろんないが、礼節のないあやかしはその先の神様へとなれない。そう千庄が言ったのだ。
ここでまた新たに知ったのが、あやかしにも神クラスへ昇格する事もあるという事だ。それには数々の試練があるそうで、必ずしも全員が全員なれるわけではない。仁にはその素質がない……というよりも本人がそれでいいらしいので、現状あやかしのままのようだ。こまともえはまだ小さいので、将来どうしたかなどはわからないにしても、そういう小さな事をコツコツとしておくに越したことはないそうだ。
その日の午前中は、噂を聞きつけた村の奥様達が風代神社に押し寄せた。夏菜はお茶出しの手伝いをし、その度に「親戚の子です」と言わなくてはいけないので、正直疲れた。だが村の人は来る時に必ずお土産を持参している。そのお土産にこまやもえは「わーい!」と喜んでいた。
庭で採れた西瓜から、夏みかんに梅干しや川魚などなど。夏菜の噂とは別に、千庄はこの村の人達から受け入れられているんだなと思った。
「今日のおやつは貰った西瓜にしましょうね」
貰ってからしばらくの間、桶に張った水の中で冷やしていた西瓜を千庄が切る。近くで見ていたこまともえは目をキラキラさせながら見ている。その度に揺れる尻尾がなんとも可愛らしい。
「ごめんくださーい!」
タイミングがいいのか悪いのか、今度は男性の声が聞こえてきた。
「お、ようやく来たか?」
仁は玄関の方へ向かっていった。どうやら今度の訪問者はあやかしのようだ。
「おーい!京が来たぞ」
「おじゃましますね」
肩まである黒髪はつややかで、その表情は千庄のように柔らかい。線の細い男性は、どちらかというと中性的にも見える。この人物が京なのだ。
「京さんこんにちわ。ちょうど西瓜切ったから食べるかね?」
「いいんですか?」
「これだけあるからね。一人二人増えた所で問題ないよ」
なんだか同じ波長の二人だなと思って夏菜は近くで見ていると、京が夏菜の方を見て目を丸くした。
「もしかして君が別の所から来た子?」
「えっとはい……夏菜と言います」
「僕は京。まさか千庄さん以外の人間で僕達を見れる人がいるなんて、本当に何十年ぶりだろ」
「さぁな。俺はこの土地に来たのは百年くらい前だったからな。少なくとも千庄以外だと一人しかいなかった」
「まぁ、見える方が珍しいからね。もしかしたら夏菜さんにも素質があるのかもしれないしね」
「あ、あの?何言ってるんですか?」
このあやかし会話がまったく理解出来ずにいると、千庄が手をパンパンと叩いた。
「はいはい。難しい話は後。みなさんで西瓜食べましょう」
「それではみなさんの心使いに感謝していただきましょう」
「いただきます」
皆手を合わせ合唱。
本日の朝食は米とみそ汁。和子の持って来た漬物と卵焼き、野菜という献立だ。
「こま。箸の持ち方がおかしいですよ」
千庄は礼儀作法にも厳しい。あやかしの姿は人間には見えないとはいえ、もしこまやもえが人間と遭遇したとしても、ちゃんと一礼をするようにと言っているのだ。向こうからのアクションはもちろんないが、礼節のないあやかしはその先の神様へとなれない。そう千庄が言ったのだ。
ここでまた新たに知ったのが、あやかしにも神クラスへ昇格する事もあるという事だ。それには数々の試練があるそうで、必ずしも全員が全員なれるわけではない。仁にはその素質がない……というよりも本人がそれでいいらしいので、現状あやかしのままのようだ。こまともえはまだ小さいので、将来どうしたかなどはわからないにしても、そういう小さな事をコツコツとしておくに越したことはないそうだ。
その日の午前中は、噂を聞きつけた村の奥様達が風代神社に押し寄せた。夏菜はお茶出しの手伝いをし、その度に「親戚の子です」と言わなくてはいけないので、正直疲れた。だが村の人は来る時に必ずお土産を持参している。そのお土産にこまやもえは「わーい!」と喜んでいた。
庭で採れた西瓜から、夏みかんに梅干しや川魚などなど。夏菜の噂とは別に、千庄はこの村の人達から受け入れられているんだなと思った。
「今日のおやつは貰った西瓜にしましょうね」
貰ってからしばらくの間、桶に張った水の中で冷やしていた西瓜を千庄が切る。近くで見ていたこまともえは目をキラキラさせながら見ている。その度に揺れる尻尾がなんとも可愛らしい。
「ごめんくださーい!」
タイミングがいいのか悪いのか、今度は男性の声が聞こえてきた。
「お、ようやく来たか?」
仁は玄関の方へ向かっていった。どうやら今度の訪問者はあやかしのようだ。
「おーい!京が来たぞ」
「おじゃましますね」
肩まである黒髪はつややかで、その表情は千庄のように柔らかい。線の細い男性は、どちらかというと中性的にも見える。この人物が京なのだ。
「京さんこんにちわ。ちょうど西瓜切ったから食べるかね?」
「いいんですか?」
「これだけあるからね。一人二人増えた所で問題ないよ」
なんだか同じ波長の二人だなと思って夏菜は近くで見ていると、京が夏菜の方を見て目を丸くした。
「もしかして君が別の所から来た子?」
「えっとはい……夏菜と言います」
「僕は京。まさか千庄さん以外の人間で僕達を見れる人がいるなんて、本当に何十年ぶりだろ」
「さぁな。俺はこの土地に来たのは百年くらい前だったからな。少なくとも千庄以外だと一人しかいなかった」
「まぁ、見える方が珍しいからね。もしかしたら夏菜さんにも素質があるのかもしれないしね」
「あ、あの?何言ってるんですか?」
このあやかし会話がまったく理解出来ずにいると、千庄が手をパンパンと叩いた。
「はいはい。難しい話は後。みなさんで西瓜食べましょう」
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