ようこそあやかし屋敷

まぁ

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「うーん……その場所って地図上に表す事が出来る?」
 そう京に問われた仁は「あぁ」と言って、持っていた地図に潰されたという場所に丸を書いていく。するとその場所を見て驚いた。
「成程ね……五芒星というわけか」
「ご、五芒星って陰陽師とかでおなじみのやつですよね?」
「はい。仁の言っていた潰された場所を繋ぐと五芒星になり、その中央にこの神社があるわけです」
 つまり潰された場所はこの風代神社を守る結界というわけだ。人間がそれに気が付いていたかはわからないが、一つでも壊されれば結界は緩む。夏菜のいる時代はその全てが失われているわけだ。
「そりゃ磁場が乱れるわ緩むわだわね」
 みけの言葉に皆が納得した。すると京が話の筋を少し変えた。
「それと絡めて夏菜さんの事を少し話しましょうか」
 この時代に夏菜が来た事は偶然。それはここにいる誰も知っているし、そうだろうと思っている。だが夏菜のルーツについては誰も知らない。どんな答えが出るのか、夏菜自身ドキドキしながら聞いた。
「調べた結果……夏菜さんは一般的な家庭を持った過去しかありませんね」
「えっ?じゃ、じゃあ……私があやかしを見えたりとかいうのはたまたまなんですか?」
「そうなりますね。ですがそれ以外の事で気になる点があります」
「それ以外?」
「はい。夏菜さんは人間寄り……というよりはこちらに近い存在なのです」
 こちらにと言えばあやかし寄りという事だ。だが夏菜は人間の両親の元に生まれた正真正銘の人間だ。あやかしであるわけがない。
「そ、そんな!私は人間ですよ!」
「はい。見た目もその過去も全て人間そのものです。ただ力という意味ではこちら寄りです。夏菜さんにはわからないかもしれませんが、こちらに来てから、夏菜さんの力が日増しに強くなっているのです」
「私……そんな力なんてないです」
 自分は普通の人間で、どこにでもいる女子高生だ。あやかし寄りの力など持つわけがない。そう思って京に反抗したが、仁は「あぁ、そういう目で見たら」と突然言い始めた。
「ずっといたから気が付かなかっただけかもしれないが、言われて見たら確かにな」
「そ、そんな!仁さんまで!」
「別にあやかしになるわけじゃない。その根底は変わらないから安心しろ」
「安心しろって……じゃあそのあやかし寄りっていう力は何の為にあるんですか?」
 その疑問には誰も何も言えなかった。普通の人間がどうしてここまで強いあやかしのちからを持つのか。その答えは誰にも出せない。
「そうじゃ。力があるならいっそあちらの世界に行って確認すればいいのではないか?」
「えっ?」
 せつの言葉に誰もが目を丸くした。
「あちらの世界って……力はあっても人間だぞ。もし戻れなくなったりしたら……」
「だからこその確認じゃないのかえ?人間であっても、力があるならばこちらに戻る事も出来るはずだ」
 ここでうだうだ言っても何も解決はしない。真実を確かめる為にあやかしの世界へ……グッと手に力を入れた夏菜は、戻れなくなる恐怖はあったが、自分の事が何もわからないのも気分がいいものではなかった。
「わ、わかりました!あちらの世界に行きます!」
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