戦隊ヒーローレッドは異世界でも戦うのがめんどくさい~でも召喚されたものは仕方ないのでしぶしぶ戦うことにしました~

市瀬瑛理

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第二章 新たなメンバーは黄

第34話 頼みごと・3

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「結局はていのいいパシリじゃねーか」

 千紘が呆れたように言いながら隣を見やると、まだ苦笑いを浮かべていた秋斗と目が合う。

 その時だ。
 これまでほとんど聞き役に徹していた律が、おずおず口を開いた。

「困ってるんだったら、助けてあげた方がいいんじゃないですか……?」
「そうだよな!」

 途端に秋斗の顔がぱっと明るくなる。

 秋斗はきっと最初から助けるつもりでいただろう。いつもの行動や性格を考えれば、それくらいのことは千紘にだってすぐわかる。
 律もさすがに正義のヒーローといったところか、困っている人たちを放っておけないようだ。

 二人ともこの辺りの性格はよく似ている。

 そのことが何だかおかしくなってきてしまって、千紘が思わず笑みを零しそうになっていると、今度は秋斗が千紘の方に顔を向けた。

「千紘もいいよな?」
「私だってこんなに頼んでるんだから!」

 リリアも頬を膨らませながら、すかさず言葉を重ねてくる。

 リリアはとても人にものを頼むような態度ではないし、どこか既視感きしかんを覚えなくもないが、こうなったら仕方がない。乗り掛かった舟だ。

「……仕方ねーな」

 千紘が渋々了承するように頷くと、狭い部屋に歓声が上がった。

(ここまで話を聞いておいて、黙って放っておくわけにもいかないよな。魔物退治もどこまでできるかわかんねーけど、やれるだけやってみるか)

 千紘だって本気で見捨てるつもりはない。
 ただ単にリリアの言うことを聞いて、素直に頷くのがしゃくだった。それだけのことである。

 同時に、律を無事に地球へ帰してやらないと、とも考えていた。もちろん秋斗と自分もきちんと地球に帰らなければならない。
 そのためには、どうしてもリリアの言うことを聞く必要がある。悔しいがこればかりはどうにもならないので、もう諦めるしかない。

「やったー!」

 秋斗が嬉しそうに両腕を突き上げる。またこの世界で冒険ができることを心から喜んでいるようだ。

「ここってどんな世界なんですかね?」

 律もどことなく楽しそうなのが、千紘から見てもよくわかる。

「まったく、お子様が二人もいるのかよ……」

 そんな二人の様子に、千紘は小さく呟きながら苦笑を漏らしたのだった。


  ※※※


「これがナロイカ村までの地図じゃ」

 そう言って村長から差し出された、あまり大きくはない地図を受け取った千紘は、さっそくそれをテーブルの上に広げた。

 全員で覗き込むと、すぐさまリリアが地図のある地点を指差しながら口を開く。

「ここがタフリ村。で、タフリ村からナロイカ村まで行くには、さっき話したバルエルの塔を五階から一階まで下りないといけないの」
「塔を下りる?」

 首を傾げながら秋斗が聞き返すと、村長は顎ひげを丁寧に撫でながら大きく頷いた。

「途中が崖になっておってな、その行き来のために作られた塔なのじゃ。塔を通らないとナロイカ村まで行けないようになっておる」
「そうなんですか」

 律も興味津々といった様子で地図を覗き込みながら、村長の話を聞いている。瞳が子供のように輝いて見えるのはきっと気のせいではないはずだ。

「で、塔の中の地図は?」

 テーブルに肘をついた千紘が、リリアと村長を交互に見やりながら問う。
 前回は洞窟内の地図をもらい損ねていたのだ。その反省を生かし、今回はきちんと確認しなければならない。

 しかしその問いに、今度はリリアが首を左右に振った。

「そんなものないわよ」
「は?」

 思わず千紘の口から出た声を気にすることなく、リリアは続ける。

「だって、行商人や旅人が通るだけだもの。別に何かの仕掛けがあるわけでもないし、入り組んでるわけでもないわよ。広くもないし、とにかく行けばわかるわ」

 きっぱりと告げられてしまい、千紘はさすがに「今すぐ塔内部の地図を描け」とまでは言えずに、呆気あっけにとられたままになった。

 どこまでもマイペースな少女に振り回されている気がしないでもないが、今さらそんなことを考えても仕方がない。

 千紘はその場に突っ伏してしまいそうになるのを懸命にこらえながら、大きな溜息をつくのが精一杯だったのである。

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