全身戦隊ゼンタイジャー

まとらまじゅつ

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ACT.1

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 放課後の雨は、制服の裾を重たく湿らせていた。
 空はもうすっかり鉛色で、歩道を打つ水の音だけが、街のざわめきを消している。

「ったく……いきなり降りやがって」

 火ノ宮ユヅキは赤いタイツの脚をぐしゃ、と濡れたアスファルトに踏み出した。スカートの裾が張り付いて、太ももにまとわりつく感触。視線を感じる。向かいから歩いてきた男子高校生が、赤い脚を盗み見ていた。

「そんなに見たいなら、見せてやろーか?」

 啖呵を切りたい衝動を抑えて、彼女は足を早める。羞恥は、既に毎日の一部。ゼンタイジャーに選ばれた時から、脚は「正義を晒す場所」になった。

「だけど、今日は……違う」

 胸騒ぎがする。スマホには、ゼンタイ本部からの連絡。
 “市内にて未確認の敵性エネルギー反応、出現”
 しかもそれは──女子更衣室に現れた、という最悪の場所だった。

教室──午後5時

 青いタイツを穿いた水無月スイは、窓の外の雨を見つめていた。静かで、冷たい空模様。
 そのふくらはぎには、水滴がつうっと伝って落ちていく。スカートの隙間から覗く青が、校舎の蛍光灯に濡れて光っていた。

「スイ、そろそろ行くわよ。ユヅキから集合かかった」

 黒いタイツを履いた少女──黒羽レンカが無言で鞄を肩にかける。
 密着する黒のタイツは、雨で光沢を帯び、指先からつま先までを鋭利に縁取っていた。

女子更衣室──封鎖された聖域

「ここか……っ」

 ナツミの緑のタイツが水たまりを跳ね、廊下に足跡を残す。扉の前に立つと、すでに空気が違っていた。

 そして──その中にいた。

「オマエタチ……ゼンタイ……タイツ……ステキ……ゼンタイニシタイ……ゼンタイニシタイ……!」

 そこに立っていたのは、ゼンタイを模した不気味な怪人、名を『コスリャクシャ』。人間の羞恥心を吸って力を増す、変態を極めた怪物。

 ナツミの脚がすくんだ。

 緑のタイツの太ももが、震える。水で透けて、下着のラインが浮かんでいた。

「うう……こんな姿、こんなトコで……!」

「ナツミ!」

 駆け込んだユヅキが叫んだ。

「恥ずかしくて当たり前だ!けど、見せる覚悟がなきゃ、あたしらが脚に履いてるもんの意味がなくなるだろ!」

 ユヅキは前へ出る。
 スカートをたくし上げ、赤い太ももを雨と汗に濡らしながら突き出した。
 羞恥心が震え、そして、覚悟が発火する。

変身──“全身装着、ゼンタイレッド!”

 「全身装着──ゼンタイレッド!!」

 脚元のタイツが発光する。
 発光は膝へ、太ももへ、腰へ、腹部へ……
 赤いタイツが皮膚に吸いつくように上へと這い上がる。

 胸が、腕が、指先が、顔が──布で包まれていく。

 最後に、頭部を包む布が静かに降りてくる。

 恥ずかしさを包み隠すのではない、
 羞恥を全身に封じ込め、誇りに変えるためのゼンタイ。

 「ゼンタイレッド、出撃……!」

バトル:濡れたゼンタイの戦い

「タイツノナカ、ミセテ……ゼンタイ……ゼンタイ……!」

 コスリャクシャの触手が、ゼンタイレッドに絡みつこうとする。

 が、レッドの脚が火花を撒いて一閃!

「うっせえ変態野郎!このタイツの脚で、ぶっ飛べぇぇぇぇ!!」

 ハイキックが空を切り裂き、怪人の顎を弾き飛ばす。
 ゼンタイ越しの太ももが濡れ光りながら、正義を貫いた。

 「ゼンタイグリーン、遅れて登場ぅぅうっ!!わああ脚びっしょびしょおおおっ!!」
 「ゼンタイブルー、穏やかに制圧しますね……♪」
 「ゼンタイイエロー、美脚の代償は、高くつくのよ♡」
 「ゼンタイブラック……羞恥?知らないわ」

戦闘終了──そして伝説は始まった

 雨が止み、怪人の残骸が煙となって消える。

 全身タイツに包まれた5人の少女たちが、校舎の屋上で並び立った。
 スーツ越しでも、濡れた脚の感触が残っている。

「見せたくて見せてるんじゃねえ。それでも見られるなら、見せてやる。これがあたしたちの──覚悟だ」

「全身戦隊──ゼンタイジャー!」

 こうして、タイツを纏いし羞恥の戦士たちの戦いは、始まったのだった。
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