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4章 港湾都市アイラ編
155話 美味しい話
「おお! お待ちしておりましたぞ、貴方が噂の行商人のシン殿ですな!?」
「……いえ、旅の薬師のシンでございます、マーブル様」
「おお、おお、そう言えばそうでしたかな? 話はゼライム様より聞いておりますとも、ささ、入られよ」
アイラの街で最も高級な店や住宅地が広がるエリア、その中でも中心に陣取るレストラン『海竜亭』、シーラッドのみならず国外からも足を運ぶ客のいる高級店。
豪華な内装の店内を過ぎて店の奥、支配人室に通されたシンがソファに座るやいなや、マーブルに頭をテーブルに擦り付ける勢いで下げられる。
「シン殿、いやさシン様! どうぞ、どうぞあの乾物を当店に卸させていただく様、この通り伏してお願い申しまする!!」
──室内に2人きりで良かった──と、シンは本気で思った。
「落ち着いてくださいマーブル様、シーラッドのみならず他国の要人にも知名度・評価の高い貴店にアレを提供するのは大変な栄誉、むしろ当方が頭を下げる立場にございます」
尻尾を振らんばかりの態度で臨む支配人の態度に動じることも無く、世辞も入れつつ自分の武器の価値も理解しているであろうシンの言葉に、頭を上げたマーブルは営業のものでは無いスマイルを浮かべる。
「ふふふ、やはりこの程度では揺らぎもしませぬな。流石はタラスト商会の外部職員」
「誤解ですよ、アレはちょっとした縁で頂いた物、私がかの店の専属などと思われては困りますね」
シンはフカヒレを流通させるにあたってタラスト商会ではなく、このアイラに居を構える商人を選んだ。
単に、地元の商人の方がいざという時に逃げ無さそうだし、コイツまで商会に任せて一強他弱の状況を作りたくなかった為でもある。
なのでシンは、アクセサリー店の店主ザックに、今回の蜂蜜のおかげでお近づきになれた有力商人の伝手を利用して『海竜亭』に話を持ちかけた。
事実、蜂蜜の一件からすでに「外部職員証」にまで情報を手繰られている、あらぬ誤解で地元商人に警戒などされたくないシンだった。
「よろしいので?」
「もちろん交渉内容が芳しくなければ向こうに話を持ちかけますよ。ただ、こちらの商品はこの地の名産にも成り得る一品、出来る事なら同郷の方々に守っていただきたいと思う次第なのです」
「確かに、醤油ベースの特製スープで調理したアレは美味の一言! 当店に話を持ち掛けて下さったゼライム様ほか他国の方にも特別にお出ししたところ、これはいつメニューに載るのか、むしろこの食材を取り扱わせてくれ! などのお言葉を頂いておりまして」
「流石は輸出業と並行して自社の食材を使った高級レストランを商うマーブル様、営業に余念がありませんね」
「お褒め頂き感謝いたします」
ゼライムとはザックから紹介されたアイラの豪商で、他国の大商人とも太いパイプを持つ街の有力者である。
タラスト商会とはライバル関係にあるが、世界中に支店を構えるタラスト商会と違いゼライムはシーラッドにのみ店舗を構え、他国の商人の縄張りを荒らさない事で多方面に友好関係を結んでいる実に健全堅実な商人とも言える。
ゼライムが主に扱っているのは金融と武具関連の為、食品を扱う今回はこのマーブルにお鉢が回ってきたと言う訳である。他者の領分を侵さない経営方針も高い評価を受け、ザックやマーブル他、繋がりを持ちたい商人は多い。
「そういえばマーブル様、その料理、食べたのは男性の方ばかりでしたか?」
「ええ、お出ししたのはゼライム様が他国の方々との商談の合間に、当店に招いて食事の席で、でしたものですから」
「よろしければ、その中でも貴族筋と懇意にされている方に重点的に売り込みをかけるとよろしいかと存じます」
「ほう?」
「男性の方々は気にしなかったかもしれませんが、あれは美容効果に長けており、食べた翌日は肌の張りと潤いがまるで違うのですよ、おそらく一度食べた貴族の奥方などは目の色を変えること請け合いかと」
「!? ──貴重な情報をありがとうございます。今後の取引は勿論の事、仕入れ値にも充分便宜を図らせて頂きますので」
「それについては私ではなく地元の漁師の方々に還元していただければ幸いです。あくまでも私は伝言係、今後も商売そのものに関わる事はございません」
「なるほど……ではそのように。さて、難しい話はこの辺にして食事にいたしましょう、当店の料理人が腕を振るった料理の数々、もちろんシン様のお持ち頂いた食材も調理してございますぞ!」
そんな訳で昼間からかなりのボリュームの料理がテーブルに並んでいる。
その中には勿論フカヒレも用意されており、完璧な形で姿煮が再現されていたりし、シンも大層喜んで食べていた。
余談ではあるが、今回シンが持ち込んだフカヒレは、現在乾燥作業中のサイモンの村のモノではなく、シンが昔作ったものの残りだったりする。
もちろん味に違いはほとんど無く(というか味は無い)、現物が無ければ商談も始まらないとのシンの判断であり、事実、こうやって商人の食いつき具合が尋常ではなかった。
長年魚と一緒に生きてきた漁民達なら、シンよりも上質のフカヒレに仕上げてくれるだろう、シンはそういう期待も込めて特に問題にもしていない。
──後日、乾燥フカヒレの第一弾を調理をしたとき、その予想は良い方向に裏切られる事になる──
食事の間もフカヒレを主とした儲け話の案は続いており、今は味のバリエーションも少ないが取引先の土地に合わせた味付けの開発や、フカヒレのみならず、単一食材に特化した特殊な調味料の開発、そこからより高級路線にシフトしたメニューの開発など、とかく現在の不況をひっくり返すため、外貨獲得の為の話を続けた。
「──いや、大変有意義な時間を過ごせました……しかし意外ですな、シン様はあの執政官殿の元、アイラの財政立て直しの一翼を担っていると伺っておりましたが」
「……誰ですか、そんな奇天烈な噂を流しているのは?」
渋い顔を作るシンを見たマーブルは笑いながら、
「なるほど確かに、噂の、しかも根も葉もない部類のようですね……いえなに、かの御仁の周りから聞こえてくるのはとにかく値下げの一言、売り物は安ければ安いほど住民が幸せに近付くと言わんばかりでしてね」
「お高いお召し物に包まれた口から出る言葉で、これほど相応しくない物も無いですね」
「仰るとおりで」
相場と言うものは良くも悪くもバランスだ、物価が安くなればその分実入りも少なくなり、消費者の購買意欲は薄れてしまう。
逆に物価の波が高きに流れれば、今度は地元を離れて物価の安い外で金を使いたがる。
消費者と言うのはとかく我侭ではあるが、それを上手く転がしてこその商人であり、今の執政官の周りにはこの考えの持ち主が居ないという事なのだろうか? シンは訝しむ。
「お会いして話した事はありますが、執政官様も他者の苦言に耳を傾ける方のようでしたし、補佐官のクレイス様もその様な印象でしたが……」
「いえいえ、そのクレイスと言うのが曲者でして、どうにも今回の音頭をとっているのはあの男らしいのです」
「えっ?」
虚を突かれたシンは思わず驚きの声を上げる。
シンは彼に対し、持論の正当性を頑なに信じる偏執的な印象は受けなかった。
しかし目の前の男は今回の旗振り役は彼だと言っている。
数度顔を合わせ、2~3度言葉を交わした程度のシンよりもよほどやりあったであろう商人の言葉に反論するだけの物をシンは持っていない。
(だとすればアレか……)
シンは彼に対し、生活品の物価は安い方が良いと彼に対して答えた事がある。もしかしたらそれが頭にあるために彼も、シンに対しては温厚な態度をとっているのかも知れない。自分の同類だと思って。
「言われて見れば確かに──」
「歯の卵」の完成品を彼等の元に持ち込み、現在は被験者を使って結果待ちの状態ではあるが、その時もシンが取引価格を金貨50枚で話を進めようとするとあまり良い顔をしてこなかった。
部下の間からも強気すぎる価格設定だと反対意見も出たが、そこまで強気の価格とは言えない、むしろ貴族連中からすればリーズナブルといっても良いほどだ。恐らく最近のデフレ状況に相場意識が薄れているのだと、シンも取り合おうとはしなかった。
結局、需要が一定量確保されればそこから価格競争が始まり適正価格に落ち着く、それまではご祝儀価格と言う事で納得をさせたものの、やはり不満は残っているようだった。
街の財政が潤うのが嫌な筈も無かろうにとも思うが、もしかして何か見落としでもしていないだろうか……? シンは考える。
「マーブル様、補佐官様がよく足を運ぶ店など知りませんか?」
「あの男のですか? そうですな……申し訳ありません、私の知る限りでは……」
「いえ、無理を言って申し訳ありません、その件については私の方でもそれとなく動いてみます。なにより、こちらの商売の足を引っ張ってもらっては困りますからね」
「まさに! ですなぁ……それでシン様?」
「ええ、それではマーブル様の都合さえ付くようでしたら明日にでも」
そして翌日、シンはマーブルを伴って漁村に戻ってくる。
マーブルも、最初アレの原料がガイランシャークのヒレと聞いて驚いたものの、あの味を知っているために忌避感等は無く、むしろサメの被害による不安定な漁獲量問題が解消されるかもとノリ気になっている。
その後、マーブルの提示した金額に目を白黒させているサイモンやナッシュの様子を背後から笑いながら、マーブルがまともな商人だった事に安心したシンは、この件からは完全に手を引くことを決め、別の問題に頭を使う事に。
「……そもそもなんで、そんなに物価を下げたいんだ?」
物価を下げるのはあくまで手段だろう、ならば目的・目標とは果たして何なのか?
一応関わりを持った以上は見てみぬフリ、というのも寝覚めが悪い。
なによりここには、かつて守りたかった人の一人が居る──出来る事なら健やかに過ごしてもらいたい。
「あいにく、只働きは主義に反するんだ。だから──」
シンは厳しい表情を作り、
「どこのどいつか知らんが、馬鹿な事を考えてるようなら、しこたま取り立てさせてもらうぜ?」
物騒な呟きは、誰の耳に届く事も無かった。
「……いえ、旅の薬師のシンでございます、マーブル様」
「おお、おお、そう言えばそうでしたかな? 話はゼライム様より聞いておりますとも、ささ、入られよ」
アイラの街で最も高級な店や住宅地が広がるエリア、その中でも中心に陣取るレストラン『海竜亭』、シーラッドのみならず国外からも足を運ぶ客のいる高級店。
豪華な内装の店内を過ぎて店の奥、支配人室に通されたシンがソファに座るやいなや、マーブルに頭をテーブルに擦り付ける勢いで下げられる。
「シン殿、いやさシン様! どうぞ、どうぞあの乾物を当店に卸させていただく様、この通り伏してお願い申しまする!!」
──室内に2人きりで良かった──と、シンは本気で思った。
「落ち着いてくださいマーブル様、シーラッドのみならず他国の要人にも知名度・評価の高い貴店にアレを提供するのは大変な栄誉、むしろ当方が頭を下げる立場にございます」
尻尾を振らんばかりの態度で臨む支配人の態度に動じることも無く、世辞も入れつつ自分の武器の価値も理解しているであろうシンの言葉に、頭を上げたマーブルは営業のものでは無いスマイルを浮かべる。
「ふふふ、やはりこの程度では揺らぎもしませぬな。流石はタラスト商会の外部職員」
「誤解ですよ、アレはちょっとした縁で頂いた物、私がかの店の専属などと思われては困りますね」
シンはフカヒレを流通させるにあたってタラスト商会ではなく、このアイラに居を構える商人を選んだ。
単に、地元の商人の方がいざという時に逃げ無さそうだし、コイツまで商会に任せて一強他弱の状況を作りたくなかった為でもある。
なのでシンは、アクセサリー店の店主ザックに、今回の蜂蜜のおかげでお近づきになれた有力商人の伝手を利用して『海竜亭』に話を持ちかけた。
事実、蜂蜜の一件からすでに「外部職員証」にまで情報を手繰られている、あらぬ誤解で地元商人に警戒などされたくないシンだった。
「よろしいので?」
「もちろん交渉内容が芳しくなければ向こうに話を持ちかけますよ。ただ、こちらの商品はこの地の名産にも成り得る一品、出来る事なら同郷の方々に守っていただきたいと思う次第なのです」
「確かに、醤油ベースの特製スープで調理したアレは美味の一言! 当店に話を持ち掛けて下さったゼライム様ほか他国の方にも特別にお出ししたところ、これはいつメニューに載るのか、むしろこの食材を取り扱わせてくれ! などのお言葉を頂いておりまして」
「流石は輸出業と並行して自社の食材を使った高級レストランを商うマーブル様、営業に余念がありませんね」
「お褒め頂き感謝いたします」
ゼライムとはザックから紹介されたアイラの豪商で、他国の大商人とも太いパイプを持つ街の有力者である。
タラスト商会とはライバル関係にあるが、世界中に支店を構えるタラスト商会と違いゼライムはシーラッドにのみ店舗を構え、他国の商人の縄張りを荒らさない事で多方面に友好関係を結んでいる実に健全堅実な商人とも言える。
ゼライムが主に扱っているのは金融と武具関連の為、食品を扱う今回はこのマーブルにお鉢が回ってきたと言う訳である。他者の領分を侵さない経営方針も高い評価を受け、ザックやマーブル他、繋がりを持ちたい商人は多い。
「そういえばマーブル様、その料理、食べたのは男性の方ばかりでしたか?」
「ええ、お出ししたのはゼライム様が他国の方々との商談の合間に、当店に招いて食事の席で、でしたものですから」
「よろしければ、その中でも貴族筋と懇意にされている方に重点的に売り込みをかけるとよろしいかと存じます」
「ほう?」
「男性の方々は気にしなかったかもしれませんが、あれは美容効果に長けており、食べた翌日は肌の張りと潤いがまるで違うのですよ、おそらく一度食べた貴族の奥方などは目の色を変えること請け合いかと」
「!? ──貴重な情報をありがとうございます。今後の取引は勿論の事、仕入れ値にも充分便宜を図らせて頂きますので」
「それについては私ではなく地元の漁師の方々に還元していただければ幸いです。あくまでも私は伝言係、今後も商売そのものに関わる事はございません」
「なるほど……ではそのように。さて、難しい話はこの辺にして食事にいたしましょう、当店の料理人が腕を振るった料理の数々、もちろんシン様のお持ち頂いた食材も調理してございますぞ!」
そんな訳で昼間からかなりのボリュームの料理がテーブルに並んでいる。
その中には勿論フカヒレも用意されており、完璧な形で姿煮が再現されていたりし、シンも大層喜んで食べていた。
余談ではあるが、今回シンが持ち込んだフカヒレは、現在乾燥作業中のサイモンの村のモノではなく、シンが昔作ったものの残りだったりする。
もちろん味に違いはほとんど無く(というか味は無い)、現物が無ければ商談も始まらないとのシンの判断であり、事実、こうやって商人の食いつき具合が尋常ではなかった。
長年魚と一緒に生きてきた漁民達なら、シンよりも上質のフカヒレに仕上げてくれるだろう、シンはそういう期待も込めて特に問題にもしていない。
──後日、乾燥フカヒレの第一弾を調理をしたとき、その予想は良い方向に裏切られる事になる──
食事の間もフカヒレを主とした儲け話の案は続いており、今は味のバリエーションも少ないが取引先の土地に合わせた味付けの開発や、フカヒレのみならず、単一食材に特化した特殊な調味料の開発、そこからより高級路線にシフトしたメニューの開発など、とかく現在の不況をひっくり返すため、外貨獲得の為の話を続けた。
「──いや、大変有意義な時間を過ごせました……しかし意外ですな、シン様はあの執政官殿の元、アイラの財政立て直しの一翼を担っていると伺っておりましたが」
「……誰ですか、そんな奇天烈な噂を流しているのは?」
渋い顔を作るシンを見たマーブルは笑いながら、
「なるほど確かに、噂の、しかも根も葉もない部類のようですね……いえなに、かの御仁の周りから聞こえてくるのはとにかく値下げの一言、売り物は安ければ安いほど住民が幸せに近付くと言わんばかりでしてね」
「お高いお召し物に包まれた口から出る言葉で、これほど相応しくない物も無いですね」
「仰るとおりで」
相場と言うものは良くも悪くもバランスだ、物価が安くなればその分実入りも少なくなり、消費者の購買意欲は薄れてしまう。
逆に物価の波が高きに流れれば、今度は地元を離れて物価の安い外で金を使いたがる。
消費者と言うのはとかく我侭ではあるが、それを上手く転がしてこその商人であり、今の執政官の周りにはこの考えの持ち主が居ないという事なのだろうか? シンは訝しむ。
「お会いして話した事はありますが、執政官様も他者の苦言に耳を傾ける方のようでしたし、補佐官のクレイス様もその様な印象でしたが……」
「いえいえ、そのクレイスと言うのが曲者でして、どうにも今回の音頭をとっているのはあの男らしいのです」
「えっ?」
虚を突かれたシンは思わず驚きの声を上げる。
シンは彼に対し、持論の正当性を頑なに信じる偏執的な印象は受けなかった。
しかし目の前の男は今回の旗振り役は彼だと言っている。
数度顔を合わせ、2~3度言葉を交わした程度のシンよりもよほどやりあったであろう商人の言葉に反論するだけの物をシンは持っていない。
(だとすればアレか……)
シンは彼に対し、生活品の物価は安い方が良いと彼に対して答えた事がある。もしかしたらそれが頭にあるために彼も、シンに対しては温厚な態度をとっているのかも知れない。自分の同類だと思って。
「言われて見れば確かに──」
「歯の卵」の完成品を彼等の元に持ち込み、現在は被験者を使って結果待ちの状態ではあるが、その時もシンが取引価格を金貨50枚で話を進めようとするとあまり良い顔をしてこなかった。
部下の間からも強気すぎる価格設定だと反対意見も出たが、そこまで強気の価格とは言えない、むしろ貴族連中からすればリーズナブルといっても良いほどだ。恐らく最近のデフレ状況に相場意識が薄れているのだと、シンも取り合おうとはしなかった。
結局、需要が一定量確保されればそこから価格競争が始まり適正価格に落ち着く、それまではご祝儀価格と言う事で納得をさせたものの、やはり不満は残っているようだった。
街の財政が潤うのが嫌な筈も無かろうにとも思うが、もしかして何か見落としでもしていないだろうか……? シンは考える。
「マーブル様、補佐官様がよく足を運ぶ店など知りませんか?」
「あの男のですか? そうですな……申し訳ありません、私の知る限りでは……」
「いえ、無理を言って申し訳ありません、その件については私の方でもそれとなく動いてみます。なにより、こちらの商売の足を引っ張ってもらっては困りますからね」
「まさに! ですなぁ……それでシン様?」
「ええ、それではマーブル様の都合さえ付くようでしたら明日にでも」
そして翌日、シンはマーブルを伴って漁村に戻ってくる。
マーブルも、最初アレの原料がガイランシャークのヒレと聞いて驚いたものの、あの味を知っているために忌避感等は無く、むしろサメの被害による不安定な漁獲量問題が解消されるかもとノリ気になっている。
その後、マーブルの提示した金額に目を白黒させているサイモンやナッシュの様子を背後から笑いながら、マーブルがまともな商人だった事に安心したシンは、この件からは完全に手を引くことを決め、別の問題に頭を使う事に。
「……そもそもなんで、そんなに物価を下げたいんだ?」
物価を下げるのはあくまで手段だろう、ならば目的・目標とは果たして何なのか?
一応関わりを持った以上は見てみぬフリ、というのも寝覚めが悪い。
なによりここには、かつて守りたかった人の一人が居る──出来る事なら健やかに過ごしてもらいたい。
「あいにく、只働きは主義に反するんだ。だから──」
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