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5章 イズナバール迷宮編
203話 裏事情 前編
「まあ入りな──」
部屋に入った帝国の密偵はジンの背中を着いて歩き、ルディの横に座るジンの対面に腰を下ろす。
そこにリオンが用意したお茶が差し出され、リオンはそのまま密偵の横に座るのを確認すると、ジンが口火を切る。
「で、アトワルド王国はどうしたんだよ?」
「あそこはお役御免だ。元はアラルコンが王国を攻めるための間諜として潜り込んでいたのがああなってしまったのでな。バラガの一件のおかげで上手く離れられた」
間諜、つまりスパイなど裏の仕事を担う物は永久就職が基本である。
表に出せない情報を持つ人物を自由にする組織などあるはずは無く、組織を離れる時は職務上での、または裏切り者への制裁による死のみである。
そして目の前の密偵はバラガの、より正確を記すならカドモス壊滅に巻き込まれた形でアトワルド王国の組織から抜け出したと話した。
「それで今は子供と子守の監視か、まさか組織内で無能の烙印でも押されたのか?」
「それこそまさかだな、かの猛将アラルコンを、一騎打ちどころか配下の兵諸共に打倒した男と繋がりを持つ人材、しかも個人的にもとくれば引く手数多だとも」
個人的──会話の中で微かに力の入った単語に敏感に反応した野次馬2人の視線がジンに集中する。
「ねえねえジン、凄く興味があるんだけど? その辺詳しく教えてよ!!」
「今夜は長くなりそうですね、お茶請けを用意しますので……」
「頼むからそんな所を掘り下げるな!! ……アンタもこの猛獣どもにエサを与えるんじぇねえよ」
額に手を当てながら唸るジンを見据える密偵は、感情を読み取られないためその顔に薄い微笑みの表情を貼り付けたままでいるが、その瞳の奥に若干の喜悦が混じっている事に、気付く者はいなかった。
本当に茶菓子を取りに席を発ったリオンを放っておいてジンは質問を続ける。
「で、その売れっ子密偵さんが監視対象にしてる子供は何モンなんだ?」
「ああ、あの子は帝国の第2皇子の子で名をエルディ──」
「やっぱテメエわざとかあああ!!」
ジンは密偵の言葉を遮り、ルディをその場に押し倒す。とは言ってもふかふかのソファなので欠片もダメージは無いが。
ルディもジンの予想通りのリアクションにしてやったりの表情を浮かべながら、余裕の態度でジンを見返す。
「若さん、手前この事知っててわざと「エルディ」なんて名乗りやがったな?」
「うぁひゃはひゃ、ほっへほっへ! ……ボクとしても誤算だったんだよ」
「……何が?」
「だ~れも喰いついてくれなかったから……あひゃいあひゃい!!」
いきなり目の前で起きたドタバタに、驚きに眼を丸くするという密偵らしからぬ態度を取っていると、リオンが3人の元に戻ってくる。
ソファに腰を下ろすリオンに密偵が、
「……アレはどういう関係なんだ?」
「若様とジンですか? 見ての通り、仲の良いお二人ですよ」
「あの男と……それはアナタもか?」
密偵の問いにリオンは答えず、胸を突き出すように身を反らしながらツンと澄まし顔になる。答えるまでも無い、そう全身で物語っている。
「………………………………」
わざわざ横に座って無言の圧力をかけたり、どうもリオンは密偵とは仲良くなりたく無いようだ。
「……ジン、だったな今は……あの男とああも親密になれるあたり、あのルディといい貴女といい一体──」
「──優秀な猫とはネズミを多く獲る猫らしいですね。しかし、好奇心の強い猫は長生き出来ない無能なのだとか……帝国のイヌである貴女はどう表現しましょうか?」
ヒュオウ──
密偵の喉元に一瞬だけ冷気が流れると、リオンの冷たい瞳が彼女を射抜く。
その瞳は中心から縦に大きく割れ、それはまるで──。
「……わたしは──私は帝国の目であり耳であり、ともすれば手も口も出すだろう……だが、そのどれも、帝国の不利益になるような事はしない……」
「ジンや私達は帝国の敵になるかもしれませんよ?」
「貴女達の事は知らない……が、あの男の事は知っている。私が言っても笑われるだけだが、誠意を尽くせば正しく応えてくれる、そういう男だ」
全身に圧し掛かるプレッシャーに潰されそうになりながら、密偵はそれだけ言い返すと後は無言でリオンを見つめ返す。その姿は、彼女達の前でジンのくすぐり攻撃によって、キャイキャイと悶えているルディとは実に対照的だった。
ルディの方も呼吸困難一歩手前ではあるが……。
首から下、服の中でジットリと冷や汗が纏わりついて来た頃、ようやくリオンの威圧が解かれ、密偵は安堵に深いため息をつく。
「いいでしょう、彼への正しい理解を認めます。せいぜい彼が帝国と険悪な仲にならないよう尽力する事ですね。とりあえず、今の彼にとって帝国は悪い印象はあっても良い印象はありませんよ? 憎悪には足りませんが」
言い終わったリオンはジンの後頭部に拳を落としてルディを救出すると、ルディと座る位置を入れ替えてジンの隣に座る。
その姿は、彼氏に色目を使う女に警戒する彼女というよりまるで、大好きなお菓子を確保する子供のようだと密偵は感じた。
「痛つつつ、しかしエル坊が第2皇子の子ねえ……つまり、帝国外に流れる噂のたぐいは大嘘って事かい?」
エルの話が本当であれば、我が子に対して立派な理念をもって育てている厳格な父という印象をジン達は思い描いていたのだが、市井に流れる第2皇子の話とはあまりにもかけ離れている。果たしてどちらが本当の姿なのか?
「そうだな、世に流れるカイラス殿下の風聞・醜聞はほぼ嘘だと思ってくれて構わんよ」
この世界に存在する5つの大陸、その中でも最大の面積を誇る中央大陸セントラル。
その中にあって大陸内の全ての国家を属国とし、セントラルを統一支配する巨大国家、ブレイバード帝国。
それは、かつて魔王と魔族の侵攻を防いだ勇者によって建国された千年王国。
カイラス=ブレイバード、28歳、ブレイバード帝国第2皇子。
現皇帝は御年52歳、皇帝の第2夫人の産んだ2人の子の一人であり兄であるカイラス=ブレイバードは、幼い頃から才能の片鱗を示しており、現在は父である皇帝に代わって国家の重要な決断は彼が全て行っている。
しかし、対外的にはそれらは全て伏され、第2皇子は放蕩者との烙印を押されている。
諸外国からの暗殺を恐れての事だとか、凡庸と称される第1皇子を皇帝の座に就かせて自身は裏で帝国を動かしながらも、全ての責任を押し付けて自分は好き勝手に生きる為だとも帝国重鎮の中では噂されてはいるが、その本心は本人にしか分からない。
「ジンと仲良くなれそうだね?」
「若さん、俺は嘘つきは大嫌いですぜ?」
「ジン、それは近親憎悪というヤツですよ」
「……リオン、人を嘘つきみたいに言わないでくれないか」
「貴様はどうして眉根の一つも揺らさずに嘘がつけるのだ?」
周囲のあまりの扱いに打ちひしがれながらも、ジンは話の続きを促す。
イズナバールに来た理由はエルが話したとおりだが、その中でもエルの話していた”叔母上”が大きく関わっていたらしい。
叔母、つまりカイラスの弟嫁──正確にはなる予定──である、アトワルド王国の王女だった女性が、
「エルちゃん、旅に出るなら断然東よ! きっとエルちゃんの運命はそこで大きく動き出すの♪」
などと周りの全ての言葉を押しのけて進言するものだから、それを面白がった第2皇子が採用したという。
「あのお花畑、大陸を越えてまで……」
不思議ちゃんの姿を思い浮かべて頭を抱えるジン、その姿を3人は愉しく眺めながら話は続く。
我が子の為と第2皇子は、側仕えの護衛として騎士団や宮廷魔道士から腕利きを選りすぐり、全員が女性の5人を選抜、そして6人にも知らせていない”監視役”として、自分がつけられたという事だった。
ちなみに護衛が全員女性なのは、エルの一人旅(?)に対する父親の配慮らしい。
「そして予め言っておくが、私は連絡員を使って本国に定期連絡をいれる事になっている、つまり、貴様も、貴様の連れであるこの2人についてもだ」
「ズイブンはっきりと宣言するんだな、口止め、口封じの心配はしないのか?」
「言っただろう? 貴様には手札は全て見せると、密偵・間諜としては褒められた事ではないが、それで貴様の助力が得られる「かもしれない」のであれば幾らでも手の内を晒そう」
丸腰どころか丸裸で姿を晒すような密偵の態度に、ルディは面白そうな表情を浮かべ、リオンは嬉しくなさそうな表情になり、そしてジンはため息をつく。
「……で、報告はどのように?」
「監視対象に深く接触する集団あり、一人は対象の危機を身を挺して守った「ジン」なる男、一人は護衛に選ばれた5人をたった一人で圧倒する「リオン」なる女戦士、そしてもう一人はその2人を護衛に雇っている監視対象によく似た少年。こんな所だ」
「……だとさ、別に構わんだろ?」
2人はジンがそれでいいのならと肯定の意思を示す。特にルディはとても楽しそうだ。
「他に聞きたいことは?」
「そうだな……あのハーレムパーティ、ありゃあなんだ、まさかお前の仕込みか?」
ジンは、ふと気になった疑問を密偵に投げかけると、密偵は首を横に振り、
「あいにく私は無関係だ。むしろ王女の言っていた運命が動き出す、あの言葉に貴様同様関わっているのではないかと思ったほどだよ」
不吉な言葉を吐く彼女に向かってジンは、精一杯の渋面を向ける。
そんなジンを尻目に、今は密偵の横に座っているルディが続きを催促するように服の裾を引っ張る。
「それで、そのハーレムさんの名前は?」
「あの男の名はユアン。かつて「辺境の勇者」と呼ばれた男で、今は悪名高き迷宮荒らしだ──」
部屋に入った帝国の密偵はジンの背中を着いて歩き、ルディの横に座るジンの対面に腰を下ろす。
そこにリオンが用意したお茶が差し出され、リオンはそのまま密偵の横に座るのを確認すると、ジンが口火を切る。
「で、アトワルド王国はどうしたんだよ?」
「あそこはお役御免だ。元はアラルコンが王国を攻めるための間諜として潜り込んでいたのがああなってしまったのでな。バラガの一件のおかげで上手く離れられた」
間諜、つまりスパイなど裏の仕事を担う物は永久就職が基本である。
表に出せない情報を持つ人物を自由にする組織などあるはずは無く、組織を離れる時は職務上での、または裏切り者への制裁による死のみである。
そして目の前の密偵はバラガの、より正確を記すならカドモス壊滅に巻き込まれた形でアトワルド王国の組織から抜け出したと話した。
「それで今は子供と子守の監視か、まさか組織内で無能の烙印でも押されたのか?」
「それこそまさかだな、かの猛将アラルコンを、一騎打ちどころか配下の兵諸共に打倒した男と繋がりを持つ人材、しかも個人的にもとくれば引く手数多だとも」
個人的──会話の中で微かに力の入った単語に敏感に反応した野次馬2人の視線がジンに集中する。
「ねえねえジン、凄く興味があるんだけど? その辺詳しく教えてよ!!」
「今夜は長くなりそうですね、お茶請けを用意しますので……」
「頼むからそんな所を掘り下げるな!! ……アンタもこの猛獣どもにエサを与えるんじぇねえよ」
額に手を当てながら唸るジンを見据える密偵は、感情を読み取られないためその顔に薄い微笑みの表情を貼り付けたままでいるが、その瞳の奥に若干の喜悦が混じっている事に、気付く者はいなかった。
本当に茶菓子を取りに席を発ったリオンを放っておいてジンは質問を続ける。
「で、その売れっ子密偵さんが監視対象にしてる子供は何モンなんだ?」
「ああ、あの子は帝国の第2皇子の子で名をエルディ──」
「やっぱテメエわざとかあああ!!」
ジンは密偵の言葉を遮り、ルディをその場に押し倒す。とは言ってもふかふかのソファなので欠片もダメージは無いが。
ルディもジンの予想通りのリアクションにしてやったりの表情を浮かべながら、余裕の態度でジンを見返す。
「若さん、手前この事知っててわざと「エルディ」なんて名乗りやがったな?」
「うぁひゃはひゃ、ほっへほっへ! ……ボクとしても誤算だったんだよ」
「……何が?」
「だ~れも喰いついてくれなかったから……あひゃいあひゃい!!」
いきなり目の前で起きたドタバタに、驚きに眼を丸くするという密偵らしからぬ態度を取っていると、リオンが3人の元に戻ってくる。
ソファに腰を下ろすリオンに密偵が、
「……アレはどういう関係なんだ?」
「若様とジンですか? 見ての通り、仲の良いお二人ですよ」
「あの男と……それはアナタもか?」
密偵の問いにリオンは答えず、胸を突き出すように身を反らしながらツンと澄まし顔になる。答えるまでも無い、そう全身で物語っている。
「………………………………」
わざわざ横に座って無言の圧力をかけたり、どうもリオンは密偵とは仲良くなりたく無いようだ。
「……ジン、だったな今は……あの男とああも親密になれるあたり、あのルディといい貴女といい一体──」
「──優秀な猫とはネズミを多く獲る猫らしいですね。しかし、好奇心の強い猫は長生き出来ない無能なのだとか……帝国のイヌである貴女はどう表現しましょうか?」
ヒュオウ──
密偵の喉元に一瞬だけ冷気が流れると、リオンの冷たい瞳が彼女を射抜く。
その瞳は中心から縦に大きく割れ、それはまるで──。
「……わたしは──私は帝国の目であり耳であり、ともすれば手も口も出すだろう……だが、そのどれも、帝国の不利益になるような事はしない……」
「ジンや私達は帝国の敵になるかもしれませんよ?」
「貴女達の事は知らない……が、あの男の事は知っている。私が言っても笑われるだけだが、誠意を尽くせば正しく応えてくれる、そういう男だ」
全身に圧し掛かるプレッシャーに潰されそうになりながら、密偵はそれだけ言い返すと後は無言でリオンを見つめ返す。その姿は、彼女達の前でジンのくすぐり攻撃によって、キャイキャイと悶えているルディとは実に対照的だった。
ルディの方も呼吸困難一歩手前ではあるが……。
首から下、服の中でジットリと冷や汗が纏わりついて来た頃、ようやくリオンの威圧が解かれ、密偵は安堵に深いため息をつく。
「いいでしょう、彼への正しい理解を認めます。せいぜい彼が帝国と険悪な仲にならないよう尽力する事ですね。とりあえず、今の彼にとって帝国は悪い印象はあっても良い印象はありませんよ? 憎悪には足りませんが」
言い終わったリオンはジンの後頭部に拳を落としてルディを救出すると、ルディと座る位置を入れ替えてジンの隣に座る。
その姿は、彼氏に色目を使う女に警戒する彼女というよりまるで、大好きなお菓子を確保する子供のようだと密偵は感じた。
「痛つつつ、しかしエル坊が第2皇子の子ねえ……つまり、帝国外に流れる噂のたぐいは大嘘って事かい?」
エルの話が本当であれば、我が子に対して立派な理念をもって育てている厳格な父という印象をジン達は思い描いていたのだが、市井に流れる第2皇子の話とはあまりにもかけ離れている。果たしてどちらが本当の姿なのか?
「そうだな、世に流れるカイラス殿下の風聞・醜聞はほぼ嘘だと思ってくれて構わんよ」
この世界に存在する5つの大陸、その中でも最大の面積を誇る中央大陸セントラル。
その中にあって大陸内の全ての国家を属国とし、セントラルを統一支配する巨大国家、ブレイバード帝国。
それは、かつて魔王と魔族の侵攻を防いだ勇者によって建国された千年王国。
カイラス=ブレイバード、28歳、ブレイバード帝国第2皇子。
現皇帝は御年52歳、皇帝の第2夫人の産んだ2人の子の一人であり兄であるカイラス=ブレイバードは、幼い頃から才能の片鱗を示しており、現在は父である皇帝に代わって国家の重要な決断は彼が全て行っている。
しかし、対外的にはそれらは全て伏され、第2皇子は放蕩者との烙印を押されている。
諸外国からの暗殺を恐れての事だとか、凡庸と称される第1皇子を皇帝の座に就かせて自身は裏で帝国を動かしながらも、全ての責任を押し付けて自分は好き勝手に生きる為だとも帝国重鎮の中では噂されてはいるが、その本心は本人にしか分からない。
「ジンと仲良くなれそうだね?」
「若さん、俺は嘘つきは大嫌いですぜ?」
「ジン、それは近親憎悪というヤツですよ」
「……リオン、人を嘘つきみたいに言わないでくれないか」
「貴様はどうして眉根の一つも揺らさずに嘘がつけるのだ?」
周囲のあまりの扱いに打ちひしがれながらも、ジンは話の続きを促す。
イズナバールに来た理由はエルが話したとおりだが、その中でもエルの話していた”叔母上”が大きく関わっていたらしい。
叔母、つまりカイラスの弟嫁──正確にはなる予定──である、アトワルド王国の王女だった女性が、
「エルちゃん、旅に出るなら断然東よ! きっとエルちゃんの運命はそこで大きく動き出すの♪」
などと周りの全ての言葉を押しのけて進言するものだから、それを面白がった第2皇子が採用したという。
「あのお花畑、大陸を越えてまで……」
不思議ちゃんの姿を思い浮かべて頭を抱えるジン、その姿を3人は愉しく眺めながら話は続く。
我が子の為と第2皇子は、側仕えの護衛として騎士団や宮廷魔道士から腕利きを選りすぐり、全員が女性の5人を選抜、そして6人にも知らせていない”監視役”として、自分がつけられたという事だった。
ちなみに護衛が全員女性なのは、エルの一人旅(?)に対する父親の配慮らしい。
「そして予め言っておくが、私は連絡員を使って本国に定期連絡をいれる事になっている、つまり、貴様も、貴様の連れであるこの2人についてもだ」
「ズイブンはっきりと宣言するんだな、口止め、口封じの心配はしないのか?」
「言っただろう? 貴様には手札は全て見せると、密偵・間諜としては褒められた事ではないが、それで貴様の助力が得られる「かもしれない」のであれば幾らでも手の内を晒そう」
丸腰どころか丸裸で姿を晒すような密偵の態度に、ルディは面白そうな表情を浮かべ、リオンは嬉しくなさそうな表情になり、そしてジンはため息をつく。
「……で、報告はどのように?」
「監視対象に深く接触する集団あり、一人は対象の危機を身を挺して守った「ジン」なる男、一人は護衛に選ばれた5人をたった一人で圧倒する「リオン」なる女戦士、そしてもう一人はその2人を護衛に雇っている監視対象によく似た少年。こんな所だ」
「……だとさ、別に構わんだろ?」
2人はジンがそれでいいのならと肯定の意思を示す。特にルディはとても楽しそうだ。
「他に聞きたいことは?」
「そうだな……あのハーレムパーティ、ありゃあなんだ、まさかお前の仕込みか?」
ジンは、ふと気になった疑問を密偵に投げかけると、密偵は首を横に振り、
「あいにく私は無関係だ。むしろ王女の言っていた運命が動き出す、あの言葉に貴様同様関わっているのではないかと思ったほどだよ」
不吉な言葉を吐く彼女に向かってジンは、精一杯の渋面を向ける。
そんなジンを尻目に、今は密偵の横に座っているルディが続きを催促するように服の裾を引っ張る。
「それで、そのハーレムさんの名前は?」
「あの男の名はユアン。かつて「辺境の勇者」と呼ばれた男で、今は悪名高き迷宮荒らしだ──」
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