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5章 イズナバール迷宮編
212話 夜営にて・中編
「はい、おこんばんは、ちょっとお邪魔しますよ」
ジンはそれだけ言うと、焚き火を囲んで座る彼等の隙間──ルフトの隣に座り、腰のポーチから小瓶を2つ取り出す。
「白湯よりどうせならお茶にしませんか、蜂蜜も有りますよ」
周囲の面々があっけに取られ、または警戒している中ジンはマイペースにヤカンを火から外し、中に乾燥させた茶葉を入れのんびりと待つ。
「ジン──いつから聞いていた?」
「何時頃ですかねぇ……マリーダさんがエルが「多分当たり」だって言った頃かな?」
「……………………………………」
会話の最初から聞いていたと言われ、ルフトは心の中で頭を抱える。
会話に夢中になって気がつかなかったのではない、ジンが側にいる事に気づかないまま、自分達は会議をしていたという事になる。もしもジンが自分達に敵対する意思があったらと思うとルフトは尻尾の凍る思いがした。
だが、それは同時にジンが自分達に対して敵対するつもりが無いという事にもなる、こうして出てきたのであれば、誤解だと言うのであれば、ジンの言い分をここで聞かせてくれるという事でもある。
ルフトは槍に忍ばせた手を上げ、そのまま全員の動きを制すとジンに顔を向ける。
「ジン、最初から聞いていたのなら、どの辺が間違っているのか教えてもらえるだろうか?」
「話しても構いませんが、信じてくれないならわざわざ話す意味が無いんですよねぇ。正直に話したのに裏読みされても迷惑なだけなんで」
「…………………………」
「とまあ、渋ったところで埒が明きませんので話しますが、簡単なことですよ、俺達とエル坊達は本当に偶然ここで出会った、そして俺達は帝国とは無関係、それが真実です」
それだけ話すとジンはヤカンからお茶を注ぎ、蜂蜜を垂らす。
「ん~、アリナスと蜂蜜の香りが混じり合って心が安らぎますねえ。みなさんも、アリナスの茶葉はリラックス効果があるので落ち着きますよ」
「なあジンよ」
「なんですか、ゲンマさん?」
「俺達にその言葉を信じろってのか?」
ゲンマの言葉にジンは、この場にいる全員に向かって宣言するように答える、「信じる必要は無い」と。
ジンの言い分は、間違った認識のままで相手をされても迷惑、それどころか後々そのことが原因で面倒を起こされても困るので、早々に誤解だと話しに来ただけだと。
ただ、それはあくまでこちらからの一方的なものであるから、そこからルフト達がどのような結論を導き出そうとも構わない。その事でジン達と距離をとりたい、関係を断ち切りたい言うのなら早めに言ってくれ、と。
「──なので、俺の言葉をどのように取って頂いても構いませんよ。俺を帝国の間者だと思い込んで警戒するもよし、実はその辺にいる有象無象と変わらん雑魚だと思うも良し、どうぞそちらの責任の元、判断してくださいな」
(それが出来ないから問題なんだろうが──!!)
ルフトやジェリクをはじめ、迷宮の中に潜っているメンバーは当然、情報収集・分析に長けている訳ではない、疑念を持った相手側から無条件で与えられた情報を鵜呑みにする事も、ましてやそこから真意を測ることも出来はしない。
ただ、そういう連中の中には、もっと手っ取り早く自分が信じるに足る情報を手に入れようとする者が出るのはよくある話で──。
────ザッ。
ゲンマの近くに座っていた──恐らくはライゼンから来た精鋭部隊のメンバーであろう──男が立ち上がり、
「──まあなんだ、そういう小難しい駆け引きは無しにしようや」
「……と言うと?」
「簡単な事さ、テメエを締め上げりゃあ色々ハッキリするって話よ」
男は悠然と歩み寄り、その場に座ったまま目も合わそうとせず、ズズズと暢気に茶をすするジンの首を掴むとそのまま片手で吊り上げる。
「オイ!?」
「サモン、止さぬか!!」
「ルフト、テメエは黙ってろ! ゲンマもシュナも、こんなガキに気ぃ使ってんじゃねえよ、たかがレベル63の雑魚だろうが」
サモンと呼ばれた男はジンを、首を掴んだまま顔の前まで持ってくると、睨みを利かせながらドスの聞いた声でジンに向かって告げる。
「よお、とりあえずテメエの知ってる事、洗いざらい話せや。テメエ等の事も、エルとか言うガキの事も」
「……その……前に、1つ……いいですかね?」
それに対してジンは、喉を圧迫されたまま途切れ途切れになりながらもそれだけ喋ると、右手でサモンの手首を掴んで人差し指を食い込ませ、そして──
ツプ────
「──!! あああアアア──!!」
叫び声と共にサモンはその場に倒れこむとゴロゴロとのた打ち回る。
バシャアア──!!
「アアアアツウウウイィィィ──!!」
そして追い討ちをかけるように、ヤカンに入ったアリナスの茶を頭からかぶり、背中を押し付けられて消えた焚き火が、反撃とばかりに燻った火種でサモンの背中を炙る。
「あいにく俺は成人済みでしてね。ちなみにあと2ヶ月で18歳です、ガキ呼ばわりは勘弁願いますよ」
「アアアアアアア!!」
ジンはのたうつサモンの胸を踏みつけると、背中を焼く熱と全身に走る痛みに苦しむ姿を前に悠然と言い放つ。
サモンの悲鳴を聞いた周囲の連中が何事かと近寄ろうとするが、ルフトとジェリクが「何でもない」と制し誰も近づけさせない。
そしてゲンマとシュナ、そして残りの精鋭メンバーは武器に手をかけたまま、ジンの次の行動を注意深く監視する。
張り詰めた空気の中、サモンの悲鳴だけが響き、やがて、
「ジン、仲間の非礼は詫びるわ。だから、せめてその足をどけてくれないかしら?」
「……シュナさん、もしかしてその物言いで詫びになると思ってるとしたらとんでもない勘違いですぜ? まあ、これ以上揉め事を増やしても仕方無いですかね」
ジンは、胸を踏み付けていた足をどかすと、なおも激痛でのたうつサモンの手首を取り、親指を食い込ませる。すると、
「!! ……ァアッ!! ハアッ、ハァ……痛ぅ……」
急に痛みが消えたのか、激痛から解放されたサモンは大きく息を吐くと、そこでやっと思い出したかのように背中の火傷の痛みを訴え出す。
「おいシュナ、早いとこ魔法を!!」
「分かってる──」
戦士でありながら同時に治癒魔法も使いこなす戦巫女のシュナが何やら小声で詠唱をすると、サモンの火傷は見る間に癒えてゆく。
「……大丈夫?」
「あ、ああ……ガキ、手前……」
「サモンさんとやら、あいにくザコはザコなりに色々と引き出しがあるんでねえ……今度は痛みからは解放してあげませんぜ?」
そう言いながらジンは、見せ付けるように右手をワキワキさせて薄ら笑いを浮かべる。
タネを明かせば右手の付け爪に仕込んだ虫刺されと解毒剤を使って見せただけなのだが、事情の分からない者には未知の武術やスキルの類に映ったかも知れない。
心身ともに疲弊して片膝をつくサモンにジンは、目線を合わせるようにしゃがみこみ、諭すように再度話しかける。
「さっきも言いましたがね、俺とエルはこの町で初めて出会いましたし、この町に来た目的も相手とは全く関係が無い、そしてウチの若さんとエル坊は他人の空似、掛け値なしに嘘偽りはありませんぜ。信じる信じないはそちらの勝手ですがね」
確かに嘘ではない、ジンの言葉はどれも真実である。口にした事に関してだけは。
もしもエルの素性について問われれば知っていると答えるだろう、自分達の目的はと問われれば口を噤むだろう。
ただそれは、ジンとエル、両者の関係を否定する為にわざわざ語る必要の無い情報なだけで、それについて問われる前に先手を打って、必要最低限の真実をジンは語っているに過ぎない。
その辺りの狡猾さが最近、ルディやリオンに「ムッツリ詐欺師」などと呼ばれる所以ではあるが、ジンは何気にその呼称が気に入っているので救いが無い。
しかし、そんな真実の言葉を聞いても未だ憎々しげな視線を送ってくるサモンに、ジンは一度だけ満面の笑みを向けて一言、
「──誰に頼まれた?」
「なっ──!?」
ビクン!!
サモンは何かに脅えた様に、ジンの言葉に身体を大きく弾ませることで答える。
「サモン?」
「おいジン、頼まれたって何がだ!?」
「そりゃ勿論、わざと俺に突っかかって問題を起こし、俺と異種混合の関係に亀裂を起こすように目論んだ、それは一体誰の差し金かって意味ですよ。まあ今の反応を見れば後ろ暗い事があるのは一目瞭然ですが」
聞き捨てならない台詞をサラリと吐くジンとは対称的に、ルフト達はギョッとしてサモンを凝視する。ゲンマ達などは信じられないといった表情だ。
「違う、今のは──んぐっ!?」
「往生際が悪いですぜ」
ジンが小さな丸薬をピンと指で弾くとそれは、弁明しようと口を開いたサモンの喉へと消えて行く。
思わずゴクリと飲み込んだサモンに向かってジンは、絶望を告げる。
「今のは遅効性の毒でして、半日も経てば身体が内側から腐った後、苦しみのたうちながら死ぬという恐ろしい代物ですよ、ちなみに解毒薬はこちらです」
「────!?」
ガバッ──!!
散弾薬莢の様な小瓶を指で摘まむジンにサモンが飛びかかるが、火傷と苦痛で疲弊した身では緩慢な動きにしかならず、ジンはそれをヒラリとかわして反対側に逃げる。
「言っときますけど半日ってのは死ぬまでの時間でして、そんな風に激しい動きをすると毒の吸収が速まりますぜ? ──ホラね」
言うが早いか、サモンは急に腹を押えながらその場に蹲る。
すかさず解毒の呪文を唱えようと駆け寄るシュナだが、それをジンは手で制す。
「ジン、止めないで!」
「いい加減、現実を見てくれませんか? ここでコイツに情けをかけた所でダンマリ、もしくは嘘しか喋りませんぜ」
「だけど!!」
「いいから俺に全部任せなさいな──さてサモン、腹が痛いとはいえまだ喋れないほどじゃないだろう?」
「…………………………」
その言葉にサモンは腹を押さえ、脂汗を額に滲ませたまま顔を上げて、憎々しげにジンを睨み付ける。
「誤解だ──」
「ああそれと、俺が聞きたいのはお前の言い訳じゃない、お前の話す内容と俺の握っている情報、誤魔化しが無いかの答えあわせだからな──虚言を弄した時点で解毒薬は無しだ」
「っ──!!」
サモンは下唇を噛みながら悔しそうに唸る。
「それじゃあ質問だ────ユアンとどんな取引をした?」
ジンはそれだけ言うと、焚き火を囲んで座る彼等の隙間──ルフトの隣に座り、腰のポーチから小瓶を2つ取り出す。
「白湯よりどうせならお茶にしませんか、蜂蜜も有りますよ」
周囲の面々があっけに取られ、または警戒している中ジンはマイペースにヤカンを火から外し、中に乾燥させた茶葉を入れのんびりと待つ。
「ジン──いつから聞いていた?」
「何時頃ですかねぇ……マリーダさんがエルが「多分当たり」だって言った頃かな?」
「……………………………………」
会話の最初から聞いていたと言われ、ルフトは心の中で頭を抱える。
会話に夢中になって気がつかなかったのではない、ジンが側にいる事に気づかないまま、自分達は会議をしていたという事になる。もしもジンが自分達に敵対する意思があったらと思うとルフトは尻尾の凍る思いがした。
だが、それは同時にジンが自分達に対して敵対するつもりが無いという事にもなる、こうして出てきたのであれば、誤解だと言うのであれば、ジンの言い分をここで聞かせてくれるという事でもある。
ルフトは槍に忍ばせた手を上げ、そのまま全員の動きを制すとジンに顔を向ける。
「ジン、最初から聞いていたのなら、どの辺が間違っているのか教えてもらえるだろうか?」
「話しても構いませんが、信じてくれないならわざわざ話す意味が無いんですよねぇ。正直に話したのに裏読みされても迷惑なだけなんで」
「…………………………」
「とまあ、渋ったところで埒が明きませんので話しますが、簡単なことですよ、俺達とエル坊達は本当に偶然ここで出会った、そして俺達は帝国とは無関係、それが真実です」
それだけ話すとジンはヤカンからお茶を注ぎ、蜂蜜を垂らす。
「ん~、アリナスと蜂蜜の香りが混じり合って心が安らぎますねえ。みなさんも、アリナスの茶葉はリラックス効果があるので落ち着きますよ」
「なあジンよ」
「なんですか、ゲンマさん?」
「俺達にその言葉を信じろってのか?」
ゲンマの言葉にジンは、この場にいる全員に向かって宣言するように答える、「信じる必要は無い」と。
ジンの言い分は、間違った認識のままで相手をされても迷惑、それどころか後々そのことが原因で面倒を起こされても困るので、早々に誤解だと話しに来ただけだと。
ただ、それはあくまでこちらからの一方的なものであるから、そこからルフト達がどのような結論を導き出そうとも構わない。その事でジン達と距離をとりたい、関係を断ち切りたい言うのなら早めに言ってくれ、と。
「──なので、俺の言葉をどのように取って頂いても構いませんよ。俺を帝国の間者だと思い込んで警戒するもよし、実はその辺にいる有象無象と変わらん雑魚だと思うも良し、どうぞそちらの責任の元、判断してくださいな」
(それが出来ないから問題なんだろうが──!!)
ルフトやジェリクをはじめ、迷宮の中に潜っているメンバーは当然、情報収集・分析に長けている訳ではない、疑念を持った相手側から無条件で与えられた情報を鵜呑みにする事も、ましてやそこから真意を測ることも出来はしない。
ただ、そういう連中の中には、もっと手っ取り早く自分が信じるに足る情報を手に入れようとする者が出るのはよくある話で──。
────ザッ。
ゲンマの近くに座っていた──恐らくはライゼンから来た精鋭部隊のメンバーであろう──男が立ち上がり、
「──まあなんだ、そういう小難しい駆け引きは無しにしようや」
「……と言うと?」
「簡単な事さ、テメエを締め上げりゃあ色々ハッキリするって話よ」
男は悠然と歩み寄り、その場に座ったまま目も合わそうとせず、ズズズと暢気に茶をすするジンの首を掴むとそのまま片手で吊り上げる。
「オイ!?」
「サモン、止さぬか!!」
「ルフト、テメエは黙ってろ! ゲンマもシュナも、こんなガキに気ぃ使ってんじゃねえよ、たかがレベル63の雑魚だろうが」
サモンと呼ばれた男はジンを、首を掴んだまま顔の前まで持ってくると、睨みを利かせながらドスの聞いた声でジンに向かって告げる。
「よお、とりあえずテメエの知ってる事、洗いざらい話せや。テメエ等の事も、エルとか言うガキの事も」
「……その……前に、1つ……いいですかね?」
それに対してジンは、喉を圧迫されたまま途切れ途切れになりながらもそれだけ喋ると、右手でサモンの手首を掴んで人差し指を食い込ませ、そして──
ツプ────
「──!! あああアアア──!!」
叫び声と共にサモンはその場に倒れこむとゴロゴロとのた打ち回る。
バシャアア──!!
「アアアアツウウウイィィィ──!!」
そして追い討ちをかけるように、ヤカンに入ったアリナスの茶を頭からかぶり、背中を押し付けられて消えた焚き火が、反撃とばかりに燻った火種でサモンの背中を炙る。
「あいにく俺は成人済みでしてね。ちなみにあと2ヶ月で18歳です、ガキ呼ばわりは勘弁願いますよ」
「アアアアアアア!!」
ジンはのたうつサモンの胸を踏みつけると、背中を焼く熱と全身に走る痛みに苦しむ姿を前に悠然と言い放つ。
サモンの悲鳴を聞いた周囲の連中が何事かと近寄ろうとするが、ルフトとジェリクが「何でもない」と制し誰も近づけさせない。
そしてゲンマとシュナ、そして残りの精鋭メンバーは武器に手をかけたまま、ジンの次の行動を注意深く監視する。
張り詰めた空気の中、サモンの悲鳴だけが響き、やがて、
「ジン、仲間の非礼は詫びるわ。だから、せめてその足をどけてくれないかしら?」
「……シュナさん、もしかしてその物言いで詫びになると思ってるとしたらとんでもない勘違いですぜ? まあ、これ以上揉め事を増やしても仕方無いですかね」
ジンは、胸を踏み付けていた足をどかすと、なおも激痛でのたうつサモンの手首を取り、親指を食い込ませる。すると、
「!! ……ァアッ!! ハアッ、ハァ……痛ぅ……」
急に痛みが消えたのか、激痛から解放されたサモンは大きく息を吐くと、そこでやっと思い出したかのように背中の火傷の痛みを訴え出す。
「おいシュナ、早いとこ魔法を!!」
「分かってる──」
戦士でありながら同時に治癒魔法も使いこなす戦巫女のシュナが何やら小声で詠唱をすると、サモンの火傷は見る間に癒えてゆく。
「……大丈夫?」
「あ、ああ……ガキ、手前……」
「サモンさんとやら、あいにくザコはザコなりに色々と引き出しがあるんでねえ……今度は痛みからは解放してあげませんぜ?」
そう言いながらジンは、見せ付けるように右手をワキワキさせて薄ら笑いを浮かべる。
タネを明かせば右手の付け爪に仕込んだ虫刺されと解毒剤を使って見せただけなのだが、事情の分からない者には未知の武術やスキルの類に映ったかも知れない。
心身ともに疲弊して片膝をつくサモンにジンは、目線を合わせるようにしゃがみこみ、諭すように再度話しかける。
「さっきも言いましたがね、俺とエルはこの町で初めて出会いましたし、この町に来た目的も相手とは全く関係が無い、そしてウチの若さんとエル坊は他人の空似、掛け値なしに嘘偽りはありませんぜ。信じる信じないはそちらの勝手ですがね」
確かに嘘ではない、ジンの言葉はどれも真実である。口にした事に関してだけは。
もしもエルの素性について問われれば知っていると答えるだろう、自分達の目的はと問われれば口を噤むだろう。
ただそれは、ジンとエル、両者の関係を否定する為にわざわざ語る必要の無い情報なだけで、それについて問われる前に先手を打って、必要最低限の真実をジンは語っているに過ぎない。
その辺りの狡猾さが最近、ルディやリオンに「ムッツリ詐欺師」などと呼ばれる所以ではあるが、ジンは何気にその呼称が気に入っているので救いが無い。
しかし、そんな真実の言葉を聞いても未だ憎々しげな視線を送ってくるサモンに、ジンは一度だけ満面の笑みを向けて一言、
「──誰に頼まれた?」
「なっ──!?」
ビクン!!
サモンは何かに脅えた様に、ジンの言葉に身体を大きく弾ませることで答える。
「サモン?」
「おいジン、頼まれたって何がだ!?」
「そりゃ勿論、わざと俺に突っかかって問題を起こし、俺と異種混合の関係に亀裂を起こすように目論んだ、それは一体誰の差し金かって意味ですよ。まあ今の反応を見れば後ろ暗い事があるのは一目瞭然ですが」
聞き捨てならない台詞をサラリと吐くジンとは対称的に、ルフト達はギョッとしてサモンを凝視する。ゲンマ達などは信じられないといった表情だ。
「違う、今のは──んぐっ!?」
「往生際が悪いですぜ」
ジンが小さな丸薬をピンと指で弾くとそれは、弁明しようと口を開いたサモンの喉へと消えて行く。
思わずゴクリと飲み込んだサモンに向かってジンは、絶望を告げる。
「今のは遅効性の毒でして、半日も経てば身体が内側から腐った後、苦しみのたうちながら死ぬという恐ろしい代物ですよ、ちなみに解毒薬はこちらです」
「────!?」
ガバッ──!!
散弾薬莢の様な小瓶を指で摘まむジンにサモンが飛びかかるが、火傷と苦痛で疲弊した身では緩慢な動きにしかならず、ジンはそれをヒラリとかわして反対側に逃げる。
「言っときますけど半日ってのは死ぬまでの時間でして、そんな風に激しい動きをすると毒の吸収が速まりますぜ? ──ホラね」
言うが早いか、サモンは急に腹を押えながらその場に蹲る。
すかさず解毒の呪文を唱えようと駆け寄るシュナだが、それをジンは手で制す。
「ジン、止めないで!」
「いい加減、現実を見てくれませんか? ここでコイツに情けをかけた所でダンマリ、もしくは嘘しか喋りませんぜ」
「だけど!!」
「いいから俺に全部任せなさいな──さてサモン、腹が痛いとはいえまだ喋れないほどじゃないだろう?」
「…………………………」
その言葉にサモンは腹を押さえ、脂汗を額に滲ませたまま顔を上げて、憎々しげにジンを睨み付ける。
「誤解だ──」
「ああそれと、俺が聞きたいのはお前の言い訳じゃない、お前の話す内容と俺の握っている情報、誤魔化しが無いかの答えあわせだからな──虚言を弄した時点で解毒薬は無しだ」
「っ──!!」
サモンは下唇を噛みながら悔しそうに唸る。
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