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5章 イズナバール迷宮編
250話 再び
パシャン──
「ングング……ぷはぁ! 生き返ったぜ」
「ありがとねマーニー、それにリーゼも」
イズナバール湖のほとりで上がる歓喜の声、危機を脱し命ある事を女神と仲間に感謝する声には喜びの感情が溢れている。
夏場の冷たくも心地よい水で3人がゴシゴシと身体を擦ると、見る者が顔を顰めるほどの火傷跡と瘡蓋がポロポロと剥がれ、その内側から瑞々しい肌が現れる。
水面から見事な裸身をさらすモーラとリシェンヌは、元に戻った自分の身体をかき抱きながら安堵の表情を浮かべてリーゼに感謝の言葉を述べると、彼女はそれに微笑みで応える。
「まったく、男ってのは考える事がそれしか無いのかねえ、わざと掴まってただけだってのに、勝手に観念したと思って直ぐにズボンを下ろしやがる」
ザッパァン──!!
2本の血塗れのナイフを握ったマーニーが、同じく返り血に染まった下着姿で水に飛び込みながら毒づくと、久方ぶりの再会に、裸のユアンに擦り寄り甘える。
湖の淵で一人ローブを着たままのリーゼは、そんな4人の姿を見ながら嫉妬と安堵が入り混じった表情を浮かべるも、ユアンの瞳に未だギラついた怒りの感情が燻っているのを見つけ、不安に駆られる。
(どうしてあそこまでユアンはジンに拘るの?)
もう関わらないで欲しい、ジンの手と目が届かないところで今までどおり5人仲良く旅を続ければいい。
出来れば誰かを虐げる事無く、望むなら人に感謝されながら5人で落ち着いた暮らしが出来ればいい──ユアンがジンとぶつかる度にリーゼはそう願っているが、頑として聞き入れないユアンにリーゼの表情は曇る。
『アイツに奪われた全てを取り戻す、そうすれば俺は本当の勇者になれるんだ!!』
(本当の勇者って何? ユアンは私達にとって今でも充分勇者なのに……)
リーゼは知らない、ユアンがジンの事を乗り越えるべき壁であり真の勇者になる為の試練だと、古代迷宮の秘宝の導きをそのように解釈していることを。
そんな中、
──────────!!
「──ん?」
────ドウン!!
「きゃああ!! な、何?」
大地を揺らす衝撃と空気を震わす轟音が鳴り響くと、遥か視線の先、湖の近くの地面からもうもうと土埃が舞っている。
バリバリバリバリバリ!!
『くああああああああ!!』
土埃の中に落雷が落ちると中から、人のものでは無い、体に直接叩きつけられる様な重さを感じさせる声が響き渡る。
感電の危険に4人は急いで水から身体を出すと、煙と声の方を揃って見やる。
そこには、
「──ゆ、ユアン!! ド、ドラゴンが……」
モーラとマーニーがいち早くそれを視界に捕らえ、モーラは全身の獣毛を総毛立たせてユアンの背中に隠れる。
やがて自分の目でその姿を捉えた3人も、驚愕の表情を浮かべて硬直する。
「……ドラゴンが……2体……」
呆然と呟くユアンの言葉は、幸いにもリオンの耳に届く事はなかった──。
──────────────
──────────────
ガキャン!!
『──フン、無駄に硬い鱗よな!』
『そうやって安易に力に頼っているからです、よ!』
ズドドドドド──!!
地面から次々と生えるそれは筍のような円錐形をしており、尖ったその岩石の槍がヴリトラを串刺しにしようと殺到する。
『下らぬ──』
バキャッ──
岩の筍を撫ぜる様にヴリトラの翼がはためくと、リオンの大地の槍は粉々に砕け散る。
『説教をする端で自らは力を使うか……よくよくヤツに毒されおって!』
『アナタよりマシですよ……シンはアナタに憎悪を植えつけた勇者では無いというのに』
『黙れメタリオン!! 我は絶対に許さぬ!! あの下種も、そしてアレと同じ世界より来たシンドゥラ、あやつも!!』
ガシイッ!!
唸りを上げるヴリトラの右手の爪が振るわれるとそれは、メタリオン──リオンの左手に受け止められ、返すリオンの右爪はヴリトラに受け止められる。
手四つの姿勢になった双竜は、上背と素の腕力にアドバンテージのあるリオンが覆い被さりながらヴリトラを押し潰そうとするも、再度の雷がヴリトラ諸共に直撃、力が緩んだスキを逃さずヴリトラはリオンの身体を引き寄せ、その肩口に己の牙を突きたてる!
『あああああああ!!』
ザシュウウ──!!
リオンの硬い鱗に浅く突き立ったヴリトラの牙は、直後にヴヴヴと振動波を発生させると共鳴破壊を引き起こし、大地の魔竜の強固な鱗ごと肩の肉を食い千切る!!
クチャ──クチャ──
『全く、同族の肉は幾ら喰ろうても慣れぬな、不味くてやれぬわ』
『ぐぅ……そこまで堕ちましたか』
『黙れ! 誰が好き好んで友の、同族の肉なぞ喰ろうてきたものか!! 全ては勇者を滅ぼす為、ひいては世界の為!!』
『エステラを恐怖に落としながらよくもそのような世迷言を……』
『黙れえええええ!!』
クワッ──!!
ヴリトラは至近からブレスを見舞うために、大口を開けると首を一瞬仰け反らせる。
────バギャンッ!!
『ガアアアアッ!!』
ブレスを吐くため一瞬硬直するヴリトラに向かって、リオンがお返しとばかりに頭突きを喰らわす。
斜めからカチ上げるような頭突きは、ヴリトラの右顎に並ぶ牙をその硬い鱗で砕き、重量の乗った一撃はヴリトラの頭部を激しく揺らす。
そして右手を振りほどき、渾身の右フックをその首に叩きつけるとヴリトラはその場に倒れこむ。
ドズウウンンン──
『グ、グヌウウウウ!!』
さらにリオンは地上に寝そべるヴリトラに追い討ちで尻尾の一撃を与えると、両翼を広げて浮上し、頭上からブレスを吐く。
ゴオオオオオ!!
リオンのブレスは突風と、それに乗って飛び行く鉱物結晶のような矢の群となってヴリトラに襲い掛かる。
キィン!! ──ブスゥ!!
斥力場で勢いを減じた無数の矢が鱗に弾かれる中、それでも鱗同士の隙間や縫い目をかいくぐるように数本の矢が突き刺さる。
『小賢しい……魔竜の息吹とは全てを滅す為のものよ!!』
ボオオオオオオオオ──!!
ヴリトラは立ち上がりざまに自分の身体にファイアブレスを吐くと、身体に突き刺さった石の矢を溶かし、そのままリオンと真正面からブレスの吐き合いを始める。
やがて、先にブレスの威力が弱まったリオンは、
『──────くっ!!』
身を翻すと翼の羽ばたきでファイアブレスをいなしながら距離を取る。
『フン──身の程を弁えるのだな。これが王と有象無象との差よ』
怯んだリオンに向かって飛び上がろうとするヴリトラだったが、
(そいつはどうかねえ、少なくともリオンの方が見目麗しい上に胸もでかいぜ?)
『シン?』
『シンドゥラか……我が行くまで震えておればよいものを』
シンの念話が両方に届くと、森の向こうから高速で近付く気配に2体ともその動きを止める。そして、
────シュッ!
木々の隙間から躍り出たそれは、胴体は何も着けず平服の、手足に魔道鎧の手甲足甲をはめたシンだった。
「いやあ、多少のサイズ違いはなんとかなるが、流石にリオンほど巨乳でもなけりゃあくびれても無いんでな」
『まったく……シン、アナタと言う人は』
シンのいつものふざけた物言いにリオンは苦笑しながらも、その心に余裕を取り戻す。
反対にヴリトラは憎々しげにシンを睨みつけると、
『完膚なきまでに敗れた虫けらが、数で攻めれば勝てると思うたか!?』
「数の力? バカ言ってんじゃねえ、「仲間と力を合わせ、一つになって」戦うんだよ!!」
『シン……アナタと言う人は』
なぜかリオンのテンションが落ちたように感じられた──。
「邪悪なドラゴンは勇者の手によって滅ぼされました、めでたしめでたし……そう語り継がれるようにチョットだけ本気を出してやるよ、悪のドラゴンさん♪」
『勇者……勇者だと? シィンドゥラアアアアア!!』
(リオン、上を抑えとけ!)
(分かりました……シン、無理だけはしてはいけませんよ)
「当然、チャッチャと倒すさ……風精よ──」
シンは異空間バッグから薬瓶数本とルフトから借り受けた三叉槍を取り出し、ヴリトラに向かって骨に負担のかからない速度で走り出す。
怒りに震えるヴリトラはシンに向き直ると、ブレスの体勢に入るが、それより早くシンの魔法が完成、最大威力の”風爆”によって足元の土砂が眼前に舞い上がる!
『また目くらましか、芸の無い!』
両者の間に舞い上がる大量の土埃ごとシンを焼き殺そうとブレスを吐くヴリトラだが、
ボオオオオオ──!!
『メタリオンか!!』
頭上から降るリオンのファイアブレスによってヴリトラのブレスはその炎を取り込んで威力を増しながらも、方向を逸らされる。
「我、世界に呼びかける、彼方と此方を結ぶ道、繋ぎし門をわが前に、”門”」
────ブゥン
シンの声が微かに響くと、ヴリトラの眼前に漆黒の転移門が現れる。それを察知したヴリトラは、
『こしゃくな!!』
上昇して転移門を超えてやって来る攻撃を回避しようと羽ばたくが、頭上にはリオンがおり、仕方なくヴリトラは少しだけ浮上すると転移門に向かって魔法封じのブレスを吐きかける。
────シュウン。
転移門を消去し、ついでにホバリングの状態で翼をはためかせて土埃を吹き飛ばすヴリトラだったが、
『ヤツは……む!?』
「だからイチイチ遅ぇ……よ!!」
吹き飛ぶ土埃の中、加速剤を飲んだシンの姿は予想以上にヴリトラに肉薄しており、既に空中で静止するヴリトラの直下にまで辿り着いていた。
そしてシンはその場で思い切り踏み込むと、
────バギィ!!
「ぐうおおおっ──喰らえ、”バーストスパイラル”!!」
両足の骨を砕きながら垂直にジャンプしたシンは、ルフトの使った”渦旋撃”と同じ技を繰り出しその穂先をヴリトラの身体に突きたてた!
『──────!! ギャアアアアアアアアアア!!』
上級の回復薬で魔力・体力を一気に回復させたシンはすぐにその場を離脱、リオンの傍らまで上昇すると、
「人の事をいつまでも勇者扱いするわ虫けら呼ばわりするわ、ケツの穴の小さいヤツには”お仕置き”が必要だとは思わないか。なあ、リオン?」
『ガアアアアアアア、キサマ、キサマアアアアアア!!』
シンの槍技はかなりの効果を発揮したのか、ヴリトラはボトボトと滝のように出血をしていた────肛門から。
『シン……本当にアナタと言う人は』
「あんまりケチくさいんで大きくしたったわ♪」
シンの傍らでリオンの巨体がガックリと肩を落としていた。
「ングング……ぷはぁ! 生き返ったぜ」
「ありがとねマーニー、それにリーゼも」
イズナバール湖のほとりで上がる歓喜の声、危機を脱し命ある事を女神と仲間に感謝する声には喜びの感情が溢れている。
夏場の冷たくも心地よい水で3人がゴシゴシと身体を擦ると、見る者が顔を顰めるほどの火傷跡と瘡蓋がポロポロと剥がれ、その内側から瑞々しい肌が現れる。
水面から見事な裸身をさらすモーラとリシェンヌは、元に戻った自分の身体をかき抱きながら安堵の表情を浮かべてリーゼに感謝の言葉を述べると、彼女はそれに微笑みで応える。
「まったく、男ってのは考える事がそれしか無いのかねえ、わざと掴まってただけだってのに、勝手に観念したと思って直ぐにズボンを下ろしやがる」
ザッパァン──!!
2本の血塗れのナイフを握ったマーニーが、同じく返り血に染まった下着姿で水に飛び込みながら毒づくと、久方ぶりの再会に、裸のユアンに擦り寄り甘える。
湖の淵で一人ローブを着たままのリーゼは、そんな4人の姿を見ながら嫉妬と安堵が入り混じった表情を浮かべるも、ユアンの瞳に未だギラついた怒りの感情が燻っているのを見つけ、不安に駆られる。
(どうしてあそこまでユアンはジンに拘るの?)
もう関わらないで欲しい、ジンの手と目が届かないところで今までどおり5人仲良く旅を続ければいい。
出来れば誰かを虐げる事無く、望むなら人に感謝されながら5人で落ち着いた暮らしが出来ればいい──ユアンがジンとぶつかる度にリーゼはそう願っているが、頑として聞き入れないユアンにリーゼの表情は曇る。
『アイツに奪われた全てを取り戻す、そうすれば俺は本当の勇者になれるんだ!!』
(本当の勇者って何? ユアンは私達にとって今でも充分勇者なのに……)
リーゼは知らない、ユアンがジンの事を乗り越えるべき壁であり真の勇者になる為の試練だと、古代迷宮の秘宝の導きをそのように解釈していることを。
そんな中、
──────────!!
「──ん?」
────ドウン!!
「きゃああ!! な、何?」
大地を揺らす衝撃と空気を震わす轟音が鳴り響くと、遥か視線の先、湖の近くの地面からもうもうと土埃が舞っている。
バリバリバリバリバリ!!
『くああああああああ!!』
土埃の中に落雷が落ちると中から、人のものでは無い、体に直接叩きつけられる様な重さを感じさせる声が響き渡る。
感電の危険に4人は急いで水から身体を出すと、煙と声の方を揃って見やる。
そこには、
「──ゆ、ユアン!! ド、ドラゴンが……」
モーラとマーニーがいち早くそれを視界に捕らえ、モーラは全身の獣毛を総毛立たせてユアンの背中に隠れる。
やがて自分の目でその姿を捉えた3人も、驚愕の表情を浮かべて硬直する。
「……ドラゴンが……2体……」
呆然と呟くユアンの言葉は、幸いにもリオンの耳に届く事はなかった──。
──────────────
──────────────
ガキャン!!
『──フン、無駄に硬い鱗よな!』
『そうやって安易に力に頼っているからです、よ!』
ズドドドドド──!!
地面から次々と生えるそれは筍のような円錐形をしており、尖ったその岩石の槍がヴリトラを串刺しにしようと殺到する。
『下らぬ──』
バキャッ──
岩の筍を撫ぜる様にヴリトラの翼がはためくと、リオンの大地の槍は粉々に砕け散る。
『説教をする端で自らは力を使うか……よくよくヤツに毒されおって!』
『アナタよりマシですよ……シンはアナタに憎悪を植えつけた勇者では無いというのに』
『黙れメタリオン!! 我は絶対に許さぬ!! あの下種も、そしてアレと同じ世界より来たシンドゥラ、あやつも!!』
ガシイッ!!
唸りを上げるヴリトラの右手の爪が振るわれるとそれは、メタリオン──リオンの左手に受け止められ、返すリオンの右爪はヴリトラに受け止められる。
手四つの姿勢になった双竜は、上背と素の腕力にアドバンテージのあるリオンが覆い被さりながらヴリトラを押し潰そうとするも、再度の雷がヴリトラ諸共に直撃、力が緩んだスキを逃さずヴリトラはリオンの身体を引き寄せ、その肩口に己の牙を突きたてる!
『あああああああ!!』
ザシュウウ──!!
リオンの硬い鱗に浅く突き立ったヴリトラの牙は、直後にヴヴヴと振動波を発生させると共鳴破壊を引き起こし、大地の魔竜の強固な鱗ごと肩の肉を食い千切る!!
クチャ──クチャ──
『全く、同族の肉は幾ら喰ろうても慣れぬな、不味くてやれぬわ』
『ぐぅ……そこまで堕ちましたか』
『黙れ! 誰が好き好んで友の、同族の肉なぞ喰ろうてきたものか!! 全ては勇者を滅ぼす為、ひいては世界の為!!』
『エステラを恐怖に落としながらよくもそのような世迷言を……』
『黙れえええええ!!』
クワッ──!!
ヴリトラは至近からブレスを見舞うために、大口を開けると首を一瞬仰け反らせる。
────バギャンッ!!
『ガアアアアッ!!』
ブレスを吐くため一瞬硬直するヴリトラに向かって、リオンがお返しとばかりに頭突きを喰らわす。
斜めからカチ上げるような頭突きは、ヴリトラの右顎に並ぶ牙をその硬い鱗で砕き、重量の乗った一撃はヴリトラの頭部を激しく揺らす。
そして右手を振りほどき、渾身の右フックをその首に叩きつけるとヴリトラはその場に倒れこむ。
ドズウウンンン──
『グ、グヌウウウウ!!』
さらにリオンは地上に寝そべるヴリトラに追い討ちで尻尾の一撃を与えると、両翼を広げて浮上し、頭上からブレスを吐く。
ゴオオオオオ!!
リオンのブレスは突風と、それに乗って飛び行く鉱物結晶のような矢の群となってヴリトラに襲い掛かる。
キィン!! ──ブスゥ!!
斥力場で勢いを減じた無数の矢が鱗に弾かれる中、それでも鱗同士の隙間や縫い目をかいくぐるように数本の矢が突き刺さる。
『小賢しい……魔竜の息吹とは全てを滅す為のものよ!!』
ボオオオオオオオオ──!!
ヴリトラは立ち上がりざまに自分の身体にファイアブレスを吐くと、身体に突き刺さった石の矢を溶かし、そのままリオンと真正面からブレスの吐き合いを始める。
やがて、先にブレスの威力が弱まったリオンは、
『──────くっ!!』
身を翻すと翼の羽ばたきでファイアブレスをいなしながら距離を取る。
『フン──身の程を弁えるのだな。これが王と有象無象との差よ』
怯んだリオンに向かって飛び上がろうとするヴリトラだったが、
(そいつはどうかねえ、少なくともリオンの方が見目麗しい上に胸もでかいぜ?)
『シン?』
『シンドゥラか……我が行くまで震えておればよいものを』
シンの念話が両方に届くと、森の向こうから高速で近付く気配に2体ともその動きを止める。そして、
────シュッ!
木々の隙間から躍り出たそれは、胴体は何も着けず平服の、手足に魔道鎧の手甲足甲をはめたシンだった。
「いやあ、多少のサイズ違いはなんとかなるが、流石にリオンほど巨乳でもなけりゃあくびれても無いんでな」
『まったく……シン、アナタと言う人は』
シンのいつものふざけた物言いにリオンは苦笑しながらも、その心に余裕を取り戻す。
反対にヴリトラは憎々しげにシンを睨みつけると、
『完膚なきまでに敗れた虫けらが、数で攻めれば勝てると思うたか!?』
「数の力? バカ言ってんじゃねえ、「仲間と力を合わせ、一つになって」戦うんだよ!!」
『シン……アナタと言う人は』
なぜかリオンのテンションが落ちたように感じられた──。
「邪悪なドラゴンは勇者の手によって滅ぼされました、めでたしめでたし……そう語り継がれるようにチョットだけ本気を出してやるよ、悪のドラゴンさん♪」
『勇者……勇者だと? シィンドゥラアアアアア!!』
(リオン、上を抑えとけ!)
(分かりました……シン、無理だけはしてはいけませんよ)
「当然、チャッチャと倒すさ……風精よ──」
シンは異空間バッグから薬瓶数本とルフトから借り受けた三叉槍を取り出し、ヴリトラに向かって骨に負担のかからない速度で走り出す。
怒りに震えるヴリトラはシンに向き直ると、ブレスの体勢に入るが、それより早くシンの魔法が完成、最大威力の”風爆”によって足元の土砂が眼前に舞い上がる!
『また目くらましか、芸の無い!』
両者の間に舞い上がる大量の土埃ごとシンを焼き殺そうとブレスを吐くヴリトラだが、
ボオオオオオ──!!
『メタリオンか!!』
頭上から降るリオンのファイアブレスによってヴリトラのブレスはその炎を取り込んで威力を増しながらも、方向を逸らされる。
「我、世界に呼びかける、彼方と此方を結ぶ道、繋ぎし門をわが前に、”門”」
────ブゥン
シンの声が微かに響くと、ヴリトラの眼前に漆黒の転移門が現れる。それを察知したヴリトラは、
『こしゃくな!!』
上昇して転移門を超えてやって来る攻撃を回避しようと羽ばたくが、頭上にはリオンがおり、仕方なくヴリトラは少しだけ浮上すると転移門に向かって魔法封じのブレスを吐きかける。
────シュウン。
転移門を消去し、ついでにホバリングの状態で翼をはためかせて土埃を吹き飛ばすヴリトラだったが、
『ヤツは……む!?』
「だからイチイチ遅ぇ……よ!!」
吹き飛ぶ土埃の中、加速剤を飲んだシンの姿は予想以上にヴリトラに肉薄しており、既に空中で静止するヴリトラの直下にまで辿り着いていた。
そしてシンはその場で思い切り踏み込むと、
────バギィ!!
「ぐうおおおっ──喰らえ、”バーストスパイラル”!!」
両足の骨を砕きながら垂直にジャンプしたシンは、ルフトの使った”渦旋撃”と同じ技を繰り出しその穂先をヴリトラの身体に突きたてた!
『──────!! ギャアアアアアアアアアア!!』
上級の回復薬で魔力・体力を一気に回復させたシンはすぐにその場を離脱、リオンの傍らまで上昇すると、
「人の事をいつまでも勇者扱いするわ虫けら呼ばわりするわ、ケツの穴の小さいヤツには”お仕置き”が必要だとは思わないか。なあ、リオン?」
『ガアアアアアアア、キサマ、キサマアアアアアア!!』
シンの槍技はかなりの効果を発揮したのか、ヴリトラはボトボトと滝のように出血をしていた────肛門から。
『シン……本当にアナタと言う人は』
「あんまりケチくさいんで大きくしたったわ♪」
シンの傍らでリオンの巨体がガックリと肩を落としていた。
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