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アイドル王女が呪いのボンデージ鎧を着せられた件 その二

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「全く・・・・・・容疑者どもが、手間をかけさせてくれるわね」

 俺がエレナとライザにボコられたあと。
 事務所に入るなり、そう吐き捨てたのは、ライザ=フォルゲンだった。

 鷹を思わせる鋭いまなざしに、高く通った鼻梁。
 豊かな金髪は、ツインテールに束ねて腰まで伸びている。
 騎士らしく、堂々とした立ち姿なのだが、その性格は、いろんな意味で問題児。

 ――例えば。
 王都主催コンテスト『エロい女剣士ベストテン!』で、三連覇したのを自慢して、銅像まで建てたのだ。

 ちなみに、転んで気を失ったリズ様は、ベッドで寝てもらっている。

「誰が容疑者よ。
 いきなり襲いかかってきたあんたの方が、よっぽど犯罪者じゃない」

 もっともなことを言うエレナに、しかし、ライザは全く悪びれず、

「逃亡を防ぐため、仕方なく不意打ちしたのよ。
 案の定、抵抗したくせに」

「妙な仮面の女が斬りかかってきたら、反撃するに決まってるでしょ!」

 エレナのまなじりが吊り上がる。

「だいたい何よ。あの怪しさ満点のマスクはっ」

「愚かね。そんなこともわかぬとは・・・・・・」 

 ライザは、金髪をサラリとかきあげ、

「王女のお忍びと悟られないための、変装に決まってるでしょう!」

「いや、まあ確かに。
 王女の護衛とは、絶対気づかれないだろうけど」

 俺の言葉に、ライザは満足げにうなずく。

「どうやら納得できたようね」

「納得するかっ! お忍びどころか、目立ちすぎ!
 変装なら、リズ様みたいに、フードを目深にかぶればいいじゃない!」

「そんな野暮ったい格好、私の美意識が耐えられないわ」

「捨ててしまえ! ピンクの蝶仮面に耐える美意識なんてっ」

「――ちょい待ち。それよりも」

 俺は不毛な口ゲンカに待ったをかけて、

「そもそも、王女がどうしてこんなところに?
 それに、俺たちが容疑者って、なんのことだ?」

「フン、とぼけるのもいいかげんにするのね」

 横から口をはさんだ俺を、ライザは、ぎろっ、と睨みつけ、

「リズ様に呪いの下着をつけた容疑に決まってるでしょ!」

『なっ・・・・・・!?』

 俺とエレナの驚きの声がハモったのだった。
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