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序章
三
しおりを挟むこれじゃあ道を聞こうにも聞けない……。
しかもこれが最終じゃないか。
かと言ってまた電車に乗るのも家から遠ざかっていくだけだ。
場所によっては明日の仕事に差し支える。
再び乗ろうとしたが思いとどまって踵を返した。
……仕方ない。
小さな改札口に向かいながら、鞄から財布をとりだし中身を確認する。
財布の中は一ヶ月分の食費とほんの少しの小遣い程度。
だがタクシー代にはなるはず…。
家にはつけなくても知ってる場所にたどり着けるなら…。
思って財布をしまう。
頭の片隅で明日から切り詰めるか貯金崩すしかないな~と憂鬱になりながら、人一人通れるほどの改札口を出た。
しんっと静まってしまって、そこに駅員はやはりいない。
完全な無人駅だが、建物自体は綺麗なものだった。
真っ白な汚れ一つない建物…。
そして周りは森、林に囲まれていて、どこから見ても田舎風景だった。
携帯を開いて充電と電波を確認する。
充電は会社で常に充電しているから切れる心配はない。
電波も良好……。
「………………………」
そんなに田舎でもないのかな。
当たり前だけど乗ってたのは新幹線とかじゃないから都内なんだろうけど。
駅の周りだけ木が生い茂っているだけかも知れない。
ん~。
頭をひねる。
改札を出てもあたりは静まり返ってるし、タクシーも見当たらない。
少し歩いてみようかな……。
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