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序章
十六
しおりを挟む……ダイアが言っていたじゃないか。
きさらぎ駅は異次元駅だと。
駅が異次元ならばこの世界も異次元だということ。
電車に乗らなきゃ帰れない。
目の前が真っ暗になった。
携帯が手から滑り落ちる。
頬に涙を伝って、静かに絶望を感じた。
私は帰れないかも知れない。
助かってない。
トンネルを越えただけ。
「…………闇は怖い?」
呆然としてる私に、彼は変わらない笑みをにこやかに向けてくる。
「…………………」
答えられなくて、私は視線を彼に向けたままゴクリと息を飲んだ。
深い闇が彼によく似合う。
外は変わらず闇一色。
なのに、車内は何処も違和感を感じない程に町中を通ってるときと同じくらいに よく見える。
こんな真っ暗なのに……。
外は何も見えないのに。
思えば不振な事ばかり。
「あの場所で…何を?」
「ん?」
呑気に首を傾げて、彼はヘラッと笑った。
とても無邪気な笑み、まるで子供みたい。
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