きさらぎ駅

匠と沙耶

十

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夕刻になりその間、待てど暮らせど”はすみ”さんからの返信はなかった。


そんなに早く返事がくるとも思わないけど、ならばいつまで待てと言うのだろう。


待つだけなんて嫌だし、動いてた方が気は紛れる。




「匠、少し出かけてくるね」




怪しまれないように財布と携帯を手に持って、ポケットに押し込む。


女子力ないとは言わないで欲しい…。
このスタイルが一番楽なのだから。


ニコリと不自然にならないように笑む。


匠は何も気付かずに玄関まで見送ってくれた。




「気をつけてね、何かあったら連絡して」




優しい匠。




「暗くなるまでに帰るんだよ？」




子供じみた扱いだけど、私にしてみればそんな行為さえされた記憶があまりなくて嬉しい。




「わかってる、直ぐ帰るよ」




こんなの嘘だ。
帰らない。
私は香織が辿った経路を辿る。




「”はすみ”さんから返信があったら直ぐに教えてね！」




念には念を。
もしきさらぎ駅にいっても連絡はとれるのだから問題ない。



駅に行く途中で充電器を買う予定だし、匠といつでも連絡はとれるようにしておかなきゃ……。



もし返信があれば内容を聞けばいい。
帰って来れた内容を。




大丈夫────。




何も問題ない。