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告白
何も考えらない頭で喫茶店へと戻る途中、グレイと出くわした。いや違う。息を切らせている様子から彼は私を探していたのだ。グレイにかけた心配と迷惑。後先考えず飛び出してきた自分の考えなさ。今さらになって吐き気がしてきた。
「スカーレット。どこへ行っていたんだ」
怒っているような、けれど心配して、無事だとわかってほっとしている表情を彼は浮かべていた。しっかりしろ、と冷静な自分が叱咤する。
「突然飛び出していって申し訳ありません」
まるで何もなかったかのような声と表情でスカーレットは彼に謝った。たとえ心の中が嵐のように荒れ狂っていても、決してそれを表に出そうとは、彼に気づかれることはあってはならなかった。それが、私の最後のプライドだった。
「スカーレット……」
グレイは何か言いたそうだった。当然だ。何があったのか、きちんと説明するべきだった。けれど、今の私にはできなかった。
「次はどちらに参りますの?」
完璧な笑みで微笑んでみせると、それ以上彼は何も言わなかった。それでいい。今度こそ、私の恋は終わったのだから。
翌日、新聞にはアーネストとあの令嬢の結婚のことが取り上げられていた。幸せそうに微笑む二人の写真。知らず知らずのうちに新聞を掴む指先が震えていた。
「お嬢様……」
こちらを気遣うメイドの視線にも、私はにっこりと笑って答えた。心配ばかりさせて、本当に私はだめだ。
「大丈夫よ。かえってスッキリした気分だわ」
テキパキと新聞を畳み終えると、気分を切り替えるように明るく言った。
「今日は誰とも会う予定はないわよね?」
「はい」
「グレイが訪ねて来るのは明日よね?」
はい、とメイドがしっかりと頷き、私は微笑んだ。
「では今日はゆっくりできるわね。私、お庭を少し散歩してくるわ」
それは一人にしてちょうだい、と言っているようなものだった。そして実際その通りで、私は一人になりたかった。
貴族は自身の感情を容易に表に出してはいけない。そう大人に教えられるまでもなく、私は物心つく頃から人前で口を開けて笑ったり、大声で怒鳴り散らすことや嘆き悲しむことをはしたないことだと思っていた。だから今も人目を避けて、わざわざ庭の奥まった、誰にも見つからない場所へと足を運んできた。
一人で泣くために。
「お前は何かあると、いつもここに来るな」
それなのにどうしてこの男はいつもいつも私の邪魔ばかりするのだろうか。
「……どうして、ここにいるの」
今日は来ないはずではないか。
私の疑問に、グレイはそんなことかと肩を竦める。
「今朝の新聞を読んで、お前のことだから一人で泣いているだろうと思って来たんだ」
「そこまでわかっているならば放っておいて下さい」
嫌だね、とグレイは俯く私の顔を容赦なく上げさせた。涙でぼやけて、彼の表情はよくわからない。けれどきっと呆れている。涙を拭おうとするも、その前に腕を掴まれてしまった。
「無理に擦るな」
「では見ないで下さい」
「断る」
なんて人だ。弱っている人間の頼みくらい聞いてもいいじゃないか。
「別に泣き顔くらい見せたっていいだろ。昔からの付き合いなんだから」
「人前で泣くなんてみっともないもの」
ふとこの言葉をいつか以前にも言ったような気がして、グレイが少し笑った。
「昔もそう言って泣いていたな」
どうやら彼も同じことを思ったらしい。
「あの時はたしか……家庭教師に怒られて、とかだったか?」
「……ええ」
思い出した。そうだ。あの時も泣き顔を見られたくなくてここへ駆け込んだのだ。上手くできない自分が悔しくて、でもそんな姿は誰にも見られたくなかったから。
「本当にお前はあの頃と変わらないな」
目を細めて、彼は懐かしそうに言った。
「あなただって変わらないわ。泣いた私を揶揄うためにわざわざ足を運んで」
「失礼なやつだな。俺は心配してお前を探していたんだ」
「どうかしら」
「お前なあ……」
なんてやり取りにも、なぜか泣いてしまいそうになる。グッと唇を噛んで、抑えようとするも涙があふれてくる。
恥ずかしい。情けない。見られてしまった。もうどうすればいいの。ますます唇を強く噛みしめると、グレイの親指がそっと触れた。
「我慢するな。悲しい時は泣いてしまえ」
ずるい。なんだって今日に限ってはそんなに優しいのだ。
――違う。彼はいつだって優しい。
アーネストに婚約破棄されたその日だって、雨の中わざわざ私を探しに来てくれたじゃないか。その後だって私を気にかけて何度も家へ訪ねてきてくれた。自分は少しも興味がないくせに芝居になんか誘って、お茶を飲みに来たとか言いながら私の様子を見に来て。今日だって……。
どうしてそこまでするのだろう。私が好きだから? たとえそうであっても、私にはやっぱり理解できなかった。だって彼がいくら想いを告げてくれても、私はちっとも見向きもしなかったのだから。普通なら、諦めてしまう。
「……昨日、アーネストに会ったんです」
知りたかった。でも素直に聞けない私は、代わりに自分のことを話していた。
「ああ」
グレイは特に驚きはしなかった。それで、と話の続きを待っている。
「新聞に映っていた女性と、それはそれは幸せそうに微笑んでいました」
綺麗な人かはわからない。それは人それぞれの好みで主観だから。けれど魅力的な人だとは思う。私には持てないものを持っている人だった。だから彼は私ではなく彼女を選んだのだ。
「アーネストのあんな表情、初めて見ました。今までずっと付き合ってきたのに、私が見たことのない表情で……それでわかったんです。ああ、彼は恋をしているんだって。彼女のこと、本当に好きで、愛しているんだって。私……あの時ほど自分の存在を消したいと思ったことはなかったです」
「なぜだ」
なぜ? そんなの決まっているじゃないか。我を忘れてアーネストに恋をしていた自分が恥ずかしいから。結局私一人だけが彼に恋をして浮かれていたのだ。彼も私のことが当然好きだと思い込んで、その実一人で舞い上がっていただけ。自分の気持ちを彼に押し付けていただけ!
「好きになんて、ならなければよかった……」
そんなことは不可能だ。気持ちは誰かに強制されるものではない。自分で制御することもできない。わかっている。それでもそう思わずにはいられない。
「俺はそうは思わない」
「あなたの意見なんて関係ありませんっ……!」
首を振りながら俯き、顔を覆った。慰めなんて聞きたくない。
「スカーレット」
跪いて、琥珀色の目が私を見上げる。
「誰かに恋をしているお前は美しかった」
何を言い出すかと思えば、この男はそんなことを言った。思わず手をどけて、彼を見下ろす。
「何が言いたいんですか」
「誰が何と言おうが、スカーレット。お前は美しいということだ。お前に好意を寄せられて嫌な男などこの世にはいるまい」
違う、と声を荒げて否定していた。
「いるわ。いたの。だから彼は私に振り向いてくれなかったの。どうしてそれがわからないの。あなたは馬鹿なの」
「馬鹿なものか。むしろお前を振ったやつの方こそ大馬鹿者だ」
清々しいほど彼は断言した。自分は何も間違ったことは言っていないと、大真面目な表情で。
思えば私の幼馴染は昔からそうだった。自分がこうだと思ったことは、絶対に変えない。呆れるくらい頑固な男だ。
「……あなたぐらいよ。そんなこと言うの」
「ああ、そうかもしれない。お前があいつを見つめ、微笑みかけるたびに、その目が俺に向いて欲しいとずっと思っていた。愛しているとお前に告げたかった」
かあっと頬が熱くなる。彼の耳も髪の色と同じ色に染まっていた。
「もう一度、恋に落ちてくれないか。今度は俺に」
ああ。それはまるで芝居のように完璧な言葉だった。けれど――
「……もう一度、もう一度おっしゃってください。今度はあなたの言葉で」
「お前が好きだ。スカーレット」
単純で、けれど彼らしく真っ直ぐな言葉。ぴったりとはまった感覚に、私はやっぱりこっちがいいやと思った。
「……私も。あなたのことが嫌いではありません」
「お前らしく捻くれた言葉だな」
だが悪くない。
笑いながら立ち上がる幼馴染に、私もまた微笑みながら手を差し伸べた。
「スカーレット。どこへ行っていたんだ」
怒っているような、けれど心配して、無事だとわかってほっとしている表情を彼は浮かべていた。しっかりしろ、と冷静な自分が叱咤する。
「突然飛び出していって申し訳ありません」
まるで何もなかったかのような声と表情でスカーレットは彼に謝った。たとえ心の中が嵐のように荒れ狂っていても、決してそれを表に出そうとは、彼に気づかれることはあってはならなかった。それが、私の最後のプライドだった。
「スカーレット……」
グレイは何か言いたそうだった。当然だ。何があったのか、きちんと説明するべきだった。けれど、今の私にはできなかった。
「次はどちらに参りますの?」
完璧な笑みで微笑んでみせると、それ以上彼は何も言わなかった。それでいい。今度こそ、私の恋は終わったのだから。
翌日、新聞にはアーネストとあの令嬢の結婚のことが取り上げられていた。幸せそうに微笑む二人の写真。知らず知らずのうちに新聞を掴む指先が震えていた。
「お嬢様……」
こちらを気遣うメイドの視線にも、私はにっこりと笑って答えた。心配ばかりさせて、本当に私はだめだ。
「大丈夫よ。かえってスッキリした気分だわ」
テキパキと新聞を畳み終えると、気分を切り替えるように明るく言った。
「今日は誰とも会う予定はないわよね?」
「はい」
「グレイが訪ねて来るのは明日よね?」
はい、とメイドがしっかりと頷き、私は微笑んだ。
「では今日はゆっくりできるわね。私、お庭を少し散歩してくるわ」
それは一人にしてちょうだい、と言っているようなものだった。そして実際その通りで、私は一人になりたかった。
貴族は自身の感情を容易に表に出してはいけない。そう大人に教えられるまでもなく、私は物心つく頃から人前で口を開けて笑ったり、大声で怒鳴り散らすことや嘆き悲しむことをはしたないことだと思っていた。だから今も人目を避けて、わざわざ庭の奥まった、誰にも見つからない場所へと足を運んできた。
一人で泣くために。
「お前は何かあると、いつもここに来るな」
それなのにどうしてこの男はいつもいつも私の邪魔ばかりするのだろうか。
「……どうして、ここにいるの」
今日は来ないはずではないか。
私の疑問に、グレイはそんなことかと肩を竦める。
「今朝の新聞を読んで、お前のことだから一人で泣いているだろうと思って来たんだ」
「そこまでわかっているならば放っておいて下さい」
嫌だね、とグレイは俯く私の顔を容赦なく上げさせた。涙でぼやけて、彼の表情はよくわからない。けれどきっと呆れている。涙を拭おうとするも、その前に腕を掴まれてしまった。
「無理に擦るな」
「では見ないで下さい」
「断る」
なんて人だ。弱っている人間の頼みくらい聞いてもいいじゃないか。
「別に泣き顔くらい見せたっていいだろ。昔からの付き合いなんだから」
「人前で泣くなんてみっともないもの」
ふとこの言葉をいつか以前にも言ったような気がして、グレイが少し笑った。
「昔もそう言って泣いていたな」
どうやら彼も同じことを思ったらしい。
「あの時はたしか……家庭教師に怒られて、とかだったか?」
「……ええ」
思い出した。そうだ。あの時も泣き顔を見られたくなくてここへ駆け込んだのだ。上手くできない自分が悔しくて、でもそんな姿は誰にも見られたくなかったから。
「本当にお前はあの頃と変わらないな」
目を細めて、彼は懐かしそうに言った。
「あなただって変わらないわ。泣いた私を揶揄うためにわざわざ足を運んで」
「失礼なやつだな。俺は心配してお前を探していたんだ」
「どうかしら」
「お前なあ……」
なんてやり取りにも、なぜか泣いてしまいそうになる。グッと唇を噛んで、抑えようとするも涙があふれてくる。
恥ずかしい。情けない。見られてしまった。もうどうすればいいの。ますます唇を強く噛みしめると、グレイの親指がそっと触れた。
「我慢するな。悲しい時は泣いてしまえ」
ずるい。なんだって今日に限ってはそんなに優しいのだ。
――違う。彼はいつだって優しい。
アーネストに婚約破棄されたその日だって、雨の中わざわざ私を探しに来てくれたじゃないか。その後だって私を気にかけて何度も家へ訪ねてきてくれた。自分は少しも興味がないくせに芝居になんか誘って、お茶を飲みに来たとか言いながら私の様子を見に来て。今日だって……。
どうしてそこまでするのだろう。私が好きだから? たとえそうであっても、私にはやっぱり理解できなかった。だって彼がいくら想いを告げてくれても、私はちっとも見向きもしなかったのだから。普通なら、諦めてしまう。
「……昨日、アーネストに会ったんです」
知りたかった。でも素直に聞けない私は、代わりに自分のことを話していた。
「ああ」
グレイは特に驚きはしなかった。それで、と話の続きを待っている。
「新聞に映っていた女性と、それはそれは幸せそうに微笑んでいました」
綺麗な人かはわからない。それは人それぞれの好みで主観だから。けれど魅力的な人だとは思う。私には持てないものを持っている人だった。だから彼は私ではなく彼女を選んだのだ。
「アーネストのあんな表情、初めて見ました。今までずっと付き合ってきたのに、私が見たことのない表情で……それでわかったんです。ああ、彼は恋をしているんだって。彼女のこと、本当に好きで、愛しているんだって。私……あの時ほど自分の存在を消したいと思ったことはなかったです」
「なぜだ」
なぜ? そんなの決まっているじゃないか。我を忘れてアーネストに恋をしていた自分が恥ずかしいから。結局私一人だけが彼に恋をして浮かれていたのだ。彼も私のことが当然好きだと思い込んで、その実一人で舞い上がっていただけ。自分の気持ちを彼に押し付けていただけ!
「好きになんて、ならなければよかった……」
そんなことは不可能だ。気持ちは誰かに強制されるものではない。自分で制御することもできない。わかっている。それでもそう思わずにはいられない。
「俺はそうは思わない」
「あなたの意見なんて関係ありませんっ……!」
首を振りながら俯き、顔を覆った。慰めなんて聞きたくない。
「スカーレット」
跪いて、琥珀色の目が私を見上げる。
「誰かに恋をしているお前は美しかった」
何を言い出すかと思えば、この男はそんなことを言った。思わず手をどけて、彼を見下ろす。
「何が言いたいんですか」
「誰が何と言おうが、スカーレット。お前は美しいということだ。お前に好意を寄せられて嫌な男などこの世にはいるまい」
違う、と声を荒げて否定していた。
「いるわ。いたの。だから彼は私に振り向いてくれなかったの。どうしてそれがわからないの。あなたは馬鹿なの」
「馬鹿なものか。むしろお前を振ったやつの方こそ大馬鹿者だ」
清々しいほど彼は断言した。自分は何も間違ったことは言っていないと、大真面目な表情で。
思えば私の幼馴染は昔からそうだった。自分がこうだと思ったことは、絶対に変えない。呆れるくらい頑固な男だ。
「……あなたぐらいよ。そんなこと言うの」
「ああ、そうかもしれない。お前があいつを見つめ、微笑みかけるたびに、その目が俺に向いて欲しいとずっと思っていた。愛しているとお前に告げたかった」
かあっと頬が熱くなる。彼の耳も髪の色と同じ色に染まっていた。
「もう一度、恋に落ちてくれないか。今度は俺に」
ああ。それはまるで芝居のように完璧な言葉だった。けれど――
「……もう一度、もう一度おっしゃってください。今度はあなたの言葉で」
「お前が好きだ。スカーレット」
単純で、けれど彼らしく真っ直ぐな言葉。ぴったりとはまった感覚に、私はやっぱりこっちがいいやと思った。
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