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3、夫の不安
夫婦になって一年後、ヴェロニカは子どもを身ごもった。男の子だった。ハロルドによく似て、でも性格はヴェロニカに似ている元気な男の子だ。少々元気すぎて、ヴェロニカはよく雷を落とした。乳母任せでは、到底落ち着きは身につきそうになかった。
「はは。うちの子は元気だなぁ」
子に振り回されながらもハロルドは楽しげであった。彼の新たな一面を見て、ヴェロニカの想いは色褪せることはなく、積み重なってゆく。
その二年後、今度は娘を産んだ。この子も父親譲りの髪色と目をしており、可愛くてたまらなかった。妹に嫉妬した息子が拗ねているのに素早く気づいたハロルドが「おまえは母さんそっくりだな」と揶揄っているのが少し恥ずかしかった。
夫は順調に王宮での地位を高め、最近では王であるジュリアンを諫めることも増えたそうである。流石だと思いながらもヴェロニカはなぜか不安がつきまとった。このまま国王の心情が落ち着けばいい。けれど――
「サンドラ様がご息女を産んだ後、カトリーナ様がご懐妊された」
三人の妃たちのうち、誰が一番早く王子を産むか。母親は無事に子を産むことができるのか。張りつめた空気が王宮を支配していた。
非番の日に帰って来るハロルドの顔にも隠せない疲労が滲み出ており、ヴェロニカは労わるように夫の頬を撫でた。仕事の愚痴をめったに零さない彼が珍しく、国王の人となりについて述べた。
「陛下は繊細な方だ」
愚痴と言うより、不安を述べる感じであった。
「王妃の懐妊にも、本当は動揺していらっしゃる」
「でも……実際に子ができれば、少しは落ち着くんじゃないかしら」
ヴェロニカもそうだった。夫に対する愛は今も変わらないし、嫉妬する気持ちも健在だった。
けれど子どもができたせいか、何をしてでも守ってやらねばという責任感の方が強くなった気がする。夫は自分が欠けた時に役目を果たすもう一人の庇護者であった。そこには信頼があり、同じ運命を共にするような連帯感ができていた。男女の愛とはまた別の感情かもしれない。
とにかく今まで自由勝手に生きてきた王も、子の存在によって少しは変わるのではないか。
「どうだろうな……」
しかしヴェロニカの意見に浮かない表情でハロルドは答えた。
「陛下は物心つく前からすでに子を産むことを期待されていた。それこそ身体も心も未熟な頃から……」
現在ジュリアンはヴェロニカと同じ十九歳である。即位したのは、十四の時であった。それから隣国との外交や国内の情勢など踏まえ、次々と妃を娶っていった。三人の妻たちは彼が選んだのではない。彼を補佐していた宰相たちが決めたことであった。
「彼が本当に必要としているのは、子ではなく、自身を受けて止めてくれる愛情なんだろうな……」
親になりきれないのではないか。ハロルドの表情はそう告げていた。
「生まれたばかりの王女殿下にも、あまり関心がないようだった」
ヴェロニカは何と言っていいかわからなかった。父親が当てにできない分、母親がしっかりせねばならない。辛い立場であろうサンドラとカトリーナに同じ母であるヴェロニカは思いを馳せるのだった。
冬の寒い日であった。王都でも珍しく、雪が積もっていた。
そんな日に、カトリーナの子は産まれた。王子であった。彼女は二番目の妻であり、公爵家の娘。父は宰相である。未来の王が生まれたことで、これからさらに力をつけていくだろう。
ハロルドの不安に反して、ジュリアンも王子の誕生を喜んでいるそうだ。妻のカトリーナに対する寵愛はますます深まった。それがこれで子を産む重圧から解放された安堵からか、妻への愛おしさが生まれたせいか、――わからないけれど、彼はそれから他の女のもとへあまり通わなくなったそうである。
ただカトリーナだけを、彼は可愛がった。
それからまた数度の季節を巡り――
「こらエルドレッド! あなたまた先生の言いつけを破ったわね!」
「ごめんなさい、ははうえ! でも僕、べんきょうがきらいなんです!」
息子は五歳になった。たくさん言葉を話すようになり、その分手を焼いている。でも妹の存在も気にかけるようになり、日々の成長に微笑ましくなる。
「ははうえ。ちちうえは? ちちうえはこんどいつかえってきますか?」
「もうすぐ帰っていらっしゃるわ」
ヴェロニカが言った通り、ハロルドは王宮勤めから帰ってきた。二週間ぶりの帰宅であった。
「ただいま。我が家の王子様とお姫様は元気にしていたかな?」
きゃっきゃとまとわりつく子どもたちの相手をしばらくしていたが、ヴェロニカは疲れているだろうから休ませてあげなさいと後は乳母に任せ、夫には寝室に行くよう言った。
「きみはこないのか」
耳元で内緒話のように囁かれ、ヴェロニカは思わず顔を赤くする。
「行かないわ」
「どうして」
「どうしてって……疲れているんだから、休んだ方がいいわ」
「前はあんなに俺の身体を触っていたじゃないか」
「それはっ!」
一緒においでと言われ、ヴェロニカは怒ったような、困ったような顔で黙り込んで、結局大人しく夫に連行された。
扉が閉まると、ヴェロニカは我慢できず夫の背中に抱きついた。本当はずっと我慢していた。でも子どもたちの手前、二人きりのように振る舞うのは躊躇いがあった。
「……どうしてこんなに遅かったの?」
「すまなかった。陛下が帰るなと、いろいろ仕事をつけて引き留めたんだ」
本当? と心の中で責めて、ますます夫に強くしがみついた。顔を見せてくれと頼まれても、いやとヴェロニカは首を振った。泣いている顔を見られたくなかった。
(どうしてこんなに不安なのかしら)
「ヴェロニカ」
ハロルドがくるりと振り返り、正面からヴェロニカを抱きしめた。
「留守の間、この屋敷を守ってくれてありがとう」
「そんなの、当然じゃない」
「当然をこなすのが、案外難しいんだよ」
夫は軽々とヴェロニカを抱き上げると、寝台の上に一緒になって寝っ転がった。
「服を脱がないと、皺になるわ」
「面倒だな……」
結婚したばかりの頃は几帳面な性格だと思っていた。でも今ではけっこうめんどくさがりやな一面があることを知っている。ヴェロニカは起き上がり、慣れた手つきで夫の上着を脱がせ、皺にならないようハンガーにかけた。
「陛下が、」
後ろから夫が言う。
「サンドラ様とご息女を離宮に移すそうだ」
一瞬手が止まり、それはどういうことだろうと考えた。
「もう、愛していらっしゃらないということ?」
振り返れば、ハロルドは難しい顔をしてこちらを見ていた。
「……わからない。けれど陛下が寝起きする宮殿には、カトリーナ様だけがいる」
カトリーナ様だけ。ヴェロニカは夫の口からその名を聞き、嫌だと思った。聞きたくない。ヴェロニカの顔を見て、ハロルドは口を噤んだ。なんだかひどく苛立って、寝台の上に乗ると、勢いよく夫を押し倒した。
「たとえ仕事の話だとしても、寝室で他の女性の名前を出さないで」
「……ああ、悪かった」
一瞬切なそうに夫の顔が歪む。そんな顔しないでとヴェロニカは怒るよりも悲しくなった。もどかしくて、夫の唇を噛みつくように塞いだ。舌を入れれば、彼は抵抗することなく、ヴェロニカを受け入れる。今日までずっと同じ。
でもヴェロニカはひどく寂しかった。いつまでたっても、心は満たされなかった。
「はは。うちの子は元気だなぁ」
子に振り回されながらもハロルドは楽しげであった。彼の新たな一面を見て、ヴェロニカの想いは色褪せることはなく、積み重なってゆく。
その二年後、今度は娘を産んだ。この子も父親譲りの髪色と目をしており、可愛くてたまらなかった。妹に嫉妬した息子が拗ねているのに素早く気づいたハロルドが「おまえは母さんそっくりだな」と揶揄っているのが少し恥ずかしかった。
夫は順調に王宮での地位を高め、最近では王であるジュリアンを諫めることも増えたそうである。流石だと思いながらもヴェロニカはなぜか不安がつきまとった。このまま国王の心情が落ち着けばいい。けれど――
「サンドラ様がご息女を産んだ後、カトリーナ様がご懐妊された」
三人の妃たちのうち、誰が一番早く王子を産むか。母親は無事に子を産むことができるのか。張りつめた空気が王宮を支配していた。
非番の日に帰って来るハロルドの顔にも隠せない疲労が滲み出ており、ヴェロニカは労わるように夫の頬を撫でた。仕事の愚痴をめったに零さない彼が珍しく、国王の人となりについて述べた。
「陛下は繊細な方だ」
愚痴と言うより、不安を述べる感じであった。
「王妃の懐妊にも、本当は動揺していらっしゃる」
「でも……実際に子ができれば、少しは落ち着くんじゃないかしら」
ヴェロニカもそうだった。夫に対する愛は今も変わらないし、嫉妬する気持ちも健在だった。
けれど子どもができたせいか、何をしてでも守ってやらねばという責任感の方が強くなった気がする。夫は自分が欠けた時に役目を果たすもう一人の庇護者であった。そこには信頼があり、同じ運命を共にするような連帯感ができていた。男女の愛とはまた別の感情かもしれない。
とにかく今まで自由勝手に生きてきた王も、子の存在によって少しは変わるのではないか。
「どうだろうな……」
しかしヴェロニカの意見に浮かない表情でハロルドは答えた。
「陛下は物心つく前からすでに子を産むことを期待されていた。それこそ身体も心も未熟な頃から……」
現在ジュリアンはヴェロニカと同じ十九歳である。即位したのは、十四の時であった。それから隣国との外交や国内の情勢など踏まえ、次々と妃を娶っていった。三人の妻たちは彼が選んだのではない。彼を補佐していた宰相たちが決めたことであった。
「彼が本当に必要としているのは、子ではなく、自身を受けて止めてくれる愛情なんだろうな……」
親になりきれないのではないか。ハロルドの表情はそう告げていた。
「生まれたばかりの王女殿下にも、あまり関心がないようだった」
ヴェロニカは何と言っていいかわからなかった。父親が当てにできない分、母親がしっかりせねばならない。辛い立場であろうサンドラとカトリーナに同じ母であるヴェロニカは思いを馳せるのだった。
冬の寒い日であった。王都でも珍しく、雪が積もっていた。
そんな日に、カトリーナの子は産まれた。王子であった。彼女は二番目の妻であり、公爵家の娘。父は宰相である。未来の王が生まれたことで、これからさらに力をつけていくだろう。
ハロルドの不安に反して、ジュリアンも王子の誕生を喜んでいるそうだ。妻のカトリーナに対する寵愛はますます深まった。それがこれで子を産む重圧から解放された安堵からか、妻への愛おしさが生まれたせいか、――わからないけれど、彼はそれから他の女のもとへあまり通わなくなったそうである。
ただカトリーナだけを、彼は可愛がった。
それからまた数度の季節を巡り――
「こらエルドレッド! あなたまた先生の言いつけを破ったわね!」
「ごめんなさい、ははうえ! でも僕、べんきょうがきらいなんです!」
息子は五歳になった。たくさん言葉を話すようになり、その分手を焼いている。でも妹の存在も気にかけるようになり、日々の成長に微笑ましくなる。
「ははうえ。ちちうえは? ちちうえはこんどいつかえってきますか?」
「もうすぐ帰っていらっしゃるわ」
ヴェロニカが言った通り、ハロルドは王宮勤めから帰ってきた。二週間ぶりの帰宅であった。
「ただいま。我が家の王子様とお姫様は元気にしていたかな?」
きゃっきゃとまとわりつく子どもたちの相手をしばらくしていたが、ヴェロニカは疲れているだろうから休ませてあげなさいと後は乳母に任せ、夫には寝室に行くよう言った。
「きみはこないのか」
耳元で内緒話のように囁かれ、ヴェロニカは思わず顔を赤くする。
「行かないわ」
「どうして」
「どうしてって……疲れているんだから、休んだ方がいいわ」
「前はあんなに俺の身体を触っていたじゃないか」
「それはっ!」
一緒においでと言われ、ヴェロニカは怒ったような、困ったような顔で黙り込んで、結局大人しく夫に連行された。
扉が閉まると、ヴェロニカは我慢できず夫の背中に抱きついた。本当はずっと我慢していた。でも子どもたちの手前、二人きりのように振る舞うのは躊躇いがあった。
「……どうしてこんなに遅かったの?」
「すまなかった。陛下が帰るなと、いろいろ仕事をつけて引き留めたんだ」
本当? と心の中で責めて、ますます夫に強くしがみついた。顔を見せてくれと頼まれても、いやとヴェロニカは首を振った。泣いている顔を見られたくなかった。
(どうしてこんなに不安なのかしら)
「ヴェロニカ」
ハロルドがくるりと振り返り、正面からヴェロニカを抱きしめた。
「留守の間、この屋敷を守ってくれてありがとう」
「そんなの、当然じゃない」
「当然をこなすのが、案外難しいんだよ」
夫は軽々とヴェロニカを抱き上げると、寝台の上に一緒になって寝っ転がった。
「服を脱がないと、皺になるわ」
「面倒だな……」
結婚したばかりの頃は几帳面な性格だと思っていた。でも今ではけっこうめんどくさがりやな一面があることを知っている。ヴェロニカは起き上がり、慣れた手つきで夫の上着を脱がせ、皺にならないようハンガーにかけた。
「陛下が、」
後ろから夫が言う。
「サンドラ様とご息女を離宮に移すそうだ」
一瞬手が止まり、それはどういうことだろうと考えた。
「もう、愛していらっしゃらないということ?」
振り返れば、ハロルドは難しい顔をしてこちらを見ていた。
「……わからない。けれど陛下が寝起きする宮殿には、カトリーナ様だけがいる」
カトリーナ様だけ。ヴェロニカは夫の口からその名を聞き、嫌だと思った。聞きたくない。ヴェロニカの顔を見て、ハロルドは口を噤んだ。なんだかひどく苛立って、寝台の上に乗ると、勢いよく夫を押し倒した。
「たとえ仕事の話だとしても、寝室で他の女性の名前を出さないで」
「……ああ、悪かった」
一瞬切なそうに夫の顔が歪む。そんな顔しないでとヴェロニカは怒るよりも悲しくなった。もどかしくて、夫の唇を噛みつくように塞いだ。舌を入れれば、彼は抵抗することなく、ヴェロニカを受け入れる。今日までずっと同じ。
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