31 / 47
31、葛藤
「何も、なかったわ」
「嘘だ!」
ヴェロニカの腕を握る手はひどく震えていた。
「ではなぜ先ほど、暗闇の中で俺とわからない時、きみは陛下の名を呟いた」
「それは……」
「以前のきみなら、なぜもっと早く迎えに来なかったと責めるくらいだ。俺の提案にも迷わずのったはずだ」
ハロルドの言う通りだ。少しの前のヴェロニカなら夫を詰り、一刻も早く連れて帰ってと、この部屋を後にしただろう。
「ヴェロニカ。きみは陛下に……」
ハロルドの喉元がごくりと動く。言いかけて、言えない言葉を飲み込んだ。
「あなたが想像しているようなことは何も起きていないわ」
目を逸らさず、はっきり答えると、ハロルドの手がわずかに緩む。ヴェロニカは彼の腕を掴み、自身の首筋へと動かした。
「この傷痕は……」
「陛下に襲われそうになった時、自害しようした傷よ」
ハロルドの目が揺れる。
「自害、だって?」
「そうよ。そうしたら陛下、青ざめた顔でやめろって叫んで、部屋を出て行ったの。その後も同じ感じで脅し続けたら、さすがに襲う気にはなれなくなったみたい」
ハロルドは唖然とした様子でヴェロニカの首筋や顔を何度も見返していたが、やがて顔をくしゃくしゃにして彼女を胸にかき抱いた。
「なんて無茶なことをするんだ!」
「……ごめんなさい。でもあなた以外の男に抱かれるくらいなら、死んでやろうと思ったの」
「だからってこんな……」
ほんとにきみは……と呆れたような声。身体を震わせる夫の背中をヴェロニカは優しく撫でた。
「私が愛しているのはあなただけに決まっているじゃない。それはあなただってよく知っているでしょう?」
「ああ。だが……」
ぎゅっと抱擁が強まった。
「きみと離れて、もう二度と会えないかもしれないと考えると、怖くてたまらなかった……眠ろうとしても、今この瞬間きみが陛下に抱かれているかと思うと、頭がどうにかなりそうだった。陛下のことが憎くてたまらなかった……」
「ハロルド……」
ああ、彼も同じだったのだ。ヴェロニカがハロルドとカトリーナの関係に悩み、眠れぬ夜を過ごしていたように、彼も苦しんでいた。
「……ハロルド。私も同じよ。陛下がカトリーナ様と交換するだなんておっしゃったから……もう私のことなんか忘れてしまって、カトリーナ様と暮らし始めてしまったかもしれないと……」
「そんなことするはずがないだろう!」
「ええ、そうよね。わかっているわ。でもずっとこんな所に閉じ込められていて、助けも来なかったから……つい悪い方ばかりに考えてしまったの」
ごめんなさい、とヴェロニカはハロルドにしがみついた。
「いや、いいんだ。きみがこうして無事だったなら、もうそれだけで……」
「うん。私も……」
カトリーナのことをもう責める気にはなれなかった。詰りたい気持ちも、こうして彼が危険を冒してまで迎えに来てくれたことで、ひどくどうでもいい、ちっぽけな感情に思えたのだ。
過去は過去。大切なのは今ハロルドが誰を選んで、一緒に未来を生きようとしていることじゃないか。
「ヴェロニカ。もう帰ろう。きみを一人ここに置き去りにするなんて、やっぱり俺にはできない」
な? と懇願するように言われた。
「……カトリーナ様は、今どこにいるの?」
なぜそんなことを、というように夫は怪訝そうに眉を寄せた。
「彼女は実家である公爵家にいる。宰相閣下が何度か王宮へ戻るよう説得を試みたそうだが……王のもとへ帰るつもりはないらしい」
「そう……」
無理もない。残される王太子殿下を思い、ヴェロニカは胸を痛めた。こんなことを引き起こしたジュリアンもまた、今はひどく憐れに思えた。
(ハロルドのもとで暮らしているというのも、私を動揺させる嘘だったんだわ……)
「……今ここで私が帰ったら、陛下がどのような行動をとるかわからない。無関係な人を巻き込むのが怖い。大切な人を傷つけられるのが怖い。……取り返しのつかないことを重ねてしまいそうで、今度こそ何もかも失ってしまいそうで……やっぱり正しくないと思う」
ヴェロニカは無意識にジュリアンのことを考えていた。自分の選択で彼が追いつめられることを恐れていた。
「だから私は残る。あの人を信じたい。私を帰すよう説得してみせる。今の彼なら……」
「ヴェロニカ」
ハロルドがゆっくりとヴェロニカを押し倒した。彼も寝台に沈み込む。指を絡ませ、鼻先が触れるほど顔を近づけられた。
「ハロルド?」
「一緒に、死のうか」
「え?」
ヴェロニカは耳を疑った。今夫は何と言った?
「死ぬって……」
「小説でよくあるだろう? 生きている世界で引き裂かれるなら、死後の世界で一緒になろうってやつだ」
「なに、言っているの。冗談はよして」
「冗談じゃない。きみだって、死のうとしたんだろう?」
「それは……」
「このままきみを残していくくらいなら……陛下に奪われるくらいなら、天国だろうと地獄だろうと、とにかく手の届かない場所へ俺がきみを連れていく」
そうすればきみは俺だけのものだ。
ヴェロニカは混乱していた。今まで夫はこんな言葉を――過激とも言える執着心を露わにしたことがなかった。いつだって彼は冷静で、ヴェロニカの愛を受けとめる側だったから。
まるで自分自身を見ているようだった。
(それだけ、不安にさせてしまったんだわ……)
ヴェロニカが思うよりずっと、ハロルドは追いつめられていたのかもしれない。こんなことを考えてしまうくらいに……。
「ヴェロニカ。きみは俺を愛しているんだろう?」
「……ええ。愛しているわ」
「なら……」
彼の大きく、節くれだった掌がヴェロニカの細い首に回される。殺そうとしているのに、撫でるような優しい手つきだった。
(このまま、ハロルドに殺される……)
異常な状態なのにヴェロニカはなぜか恐怖を抱いてなかった。ハロルドは自分を愛している。誰にも渡したくないと思っている。カトリーナと駆け落ちすることはしなかったのに、自分とは死ぬ道を選んでくれた。
ヴェロニカは初めて、胸が満たされた気がした。夫の愛を感じることができた。
(私はこの人になら殺されてもいい……)
そう思って身を委ねようとした瞬間――
「安心してくれ。きみが死んだら、俺もすぐに追いかける」
ハロルドの囁くような言葉にヴェロニカは彼の手から逃れるようもがき、嫌だと口にしていた。彼の身体を逆に押し倒し、上から押さえつけていた。
「ヴェロニカ、何を――」
「私が死んでも、あなたには生きていてほしい」
突然押し倒され、やっぱり死にたくないと拒絶されたハロルドは呆気にとられていた。ヴェロニカも自分の口から出た言葉に内心驚いていた。
(私、ハロルドの幸せを願えるんだ……)
他の女に奪われるくらいなら、一緒に死んでやる。今ハロルドが言ったように自分も夫と同じ考えだと思っていた。
でも、実際に彼の口から後を追うと聞かされ、とっさにだめだと叫ぶ自分がいた。嫌だと拒絶する自分がいた。
ハロルドには生きてほしい。幸せになってほしい。
「あなたが好きだから。愛しているから」
だから一緒には死ねない。
「ヴェロニカ……」
「それに、エルドレッドたちをおいてはいけないわ……」
一瞬でもあの子たちを置き去りにする道を選んだ自分は親失格だ。
「私は絶対にあなた以外のものにならない。最後まで抵抗する。それでも誰かのものにさせられる時は……その時は潔く死を選ぶわ」
それまで絶対に諦めない。
「……きみは本当に、たくましいな」
「そうよ。だからあなたも、私を信じて」
「大人しく帰れと?」
「ええ」
「きみを、おいて」
「必ず帰るわ」
ハロルドは起き上がってヴェロニカを抱きしめた。何かを葛藤するように黙り込んで時間が流れる。
「……もう、だいぶ待ったんだ。これ以上待つことはできない」
「わかった」
ハロルドが提案した期限に、ヴェロニカは了承した。戻って来なければ、その時は今度こそどんな手を使ってでも――たとえ自身の主君を殺す結末になったとしても妻を取り戻すという彼の言葉に。
「ハロルド。もし私に何かあったら、あなたが子どもたちを守って。誰かと再婚しても、きちんと自立できるまでは、そばにいてあげて。ちゃんと愛してあげて」
「……そんなこと考える必要はない」
「もしもの時よ」
わざとお道化たように言っても、彼は笑わなかった。暗い顔をしてヴェロニカを見つめる目は激しい感情を必死に押し留め、今にも泣きそうに見えた。
「ヴェロニカ。約束してくれ。何があっても、絶対に死なないと。生きて俺のもとへ帰って来ると」
約束できないのならば連れて帰る、と言われてヴェロニカは迷った末、頷いた。
「わかったわ」
「ヴェロニカ……」
夫がヴェロニカを引き寄せ、口づけをした。何度も、何度も。貪るように。今この瞬間愛し合っているのは自分たちだと跡を残すように。
そうしてまだ暗いうちに、彼は一人部屋を出て行った。
「嘘だ!」
ヴェロニカの腕を握る手はひどく震えていた。
「ではなぜ先ほど、暗闇の中で俺とわからない時、きみは陛下の名を呟いた」
「それは……」
「以前のきみなら、なぜもっと早く迎えに来なかったと責めるくらいだ。俺の提案にも迷わずのったはずだ」
ハロルドの言う通りだ。少しの前のヴェロニカなら夫を詰り、一刻も早く連れて帰ってと、この部屋を後にしただろう。
「ヴェロニカ。きみは陛下に……」
ハロルドの喉元がごくりと動く。言いかけて、言えない言葉を飲み込んだ。
「あなたが想像しているようなことは何も起きていないわ」
目を逸らさず、はっきり答えると、ハロルドの手がわずかに緩む。ヴェロニカは彼の腕を掴み、自身の首筋へと動かした。
「この傷痕は……」
「陛下に襲われそうになった時、自害しようした傷よ」
ハロルドの目が揺れる。
「自害、だって?」
「そうよ。そうしたら陛下、青ざめた顔でやめろって叫んで、部屋を出て行ったの。その後も同じ感じで脅し続けたら、さすがに襲う気にはなれなくなったみたい」
ハロルドは唖然とした様子でヴェロニカの首筋や顔を何度も見返していたが、やがて顔をくしゃくしゃにして彼女を胸にかき抱いた。
「なんて無茶なことをするんだ!」
「……ごめんなさい。でもあなた以外の男に抱かれるくらいなら、死んでやろうと思ったの」
「だからってこんな……」
ほんとにきみは……と呆れたような声。身体を震わせる夫の背中をヴェロニカは優しく撫でた。
「私が愛しているのはあなただけに決まっているじゃない。それはあなただってよく知っているでしょう?」
「ああ。だが……」
ぎゅっと抱擁が強まった。
「きみと離れて、もう二度と会えないかもしれないと考えると、怖くてたまらなかった……眠ろうとしても、今この瞬間きみが陛下に抱かれているかと思うと、頭がどうにかなりそうだった。陛下のことが憎くてたまらなかった……」
「ハロルド……」
ああ、彼も同じだったのだ。ヴェロニカがハロルドとカトリーナの関係に悩み、眠れぬ夜を過ごしていたように、彼も苦しんでいた。
「……ハロルド。私も同じよ。陛下がカトリーナ様と交換するだなんておっしゃったから……もう私のことなんか忘れてしまって、カトリーナ様と暮らし始めてしまったかもしれないと……」
「そんなことするはずがないだろう!」
「ええ、そうよね。わかっているわ。でもずっとこんな所に閉じ込められていて、助けも来なかったから……つい悪い方ばかりに考えてしまったの」
ごめんなさい、とヴェロニカはハロルドにしがみついた。
「いや、いいんだ。きみがこうして無事だったなら、もうそれだけで……」
「うん。私も……」
カトリーナのことをもう責める気にはなれなかった。詰りたい気持ちも、こうして彼が危険を冒してまで迎えに来てくれたことで、ひどくどうでもいい、ちっぽけな感情に思えたのだ。
過去は過去。大切なのは今ハロルドが誰を選んで、一緒に未来を生きようとしていることじゃないか。
「ヴェロニカ。もう帰ろう。きみを一人ここに置き去りにするなんて、やっぱり俺にはできない」
な? と懇願するように言われた。
「……カトリーナ様は、今どこにいるの?」
なぜそんなことを、というように夫は怪訝そうに眉を寄せた。
「彼女は実家である公爵家にいる。宰相閣下が何度か王宮へ戻るよう説得を試みたそうだが……王のもとへ帰るつもりはないらしい」
「そう……」
無理もない。残される王太子殿下を思い、ヴェロニカは胸を痛めた。こんなことを引き起こしたジュリアンもまた、今はひどく憐れに思えた。
(ハロルドのもとで暮らしているというのも、私を動揺させる嘘だったんだわ……)
「……今ここで私が帰ったら、陛下がどのような行動をとるかわからない。無関係な人を巻き込むのが怖い。大切な人を傷つけられるのが怖い。……取り返しのつかないことを重ねてしまいそうで、今度こそ何もかも失ってしまいそうで……やっぱり正しくないと思う」
ヴェロニカは無意識にジュリアンのことを考えていた。自分の選択で彼が追いつめられることを恐れていた。
「だから私は残る。あの人を信じたい。私を帰すよう説得してみせる。今の彼なら……」
「ヴェロニカ」
ハロルドがゆっくりとヴェロニカを押し倒した。彼も寝台に沈み込む。指を絡ませ、鼻先が触れるほど顔を近づけられた。
「ハロルド?」
「一緒に、死のうか」
「え?」
ヴェロニカは耳を疑った。今夫は何と言った?
「死ぬって……」
「小説でよくあるだろう? 生きている世界で引き裂かれるなら、死後の世界で一緒になろうってやつだ」
「なに、言っているの。冗談はよして」
「冗談じゃない。きみだって、死のうとしたんだろう?」
「それは……」
「このままきみを残していくくらいなら……陛下に奪われるくらいなら、天国だろうと地獄だろうと、とにかく手の届かない場所へ俺がきみを連れていく」
そうすればきみは俺だけのものだ。
ヴェロニカは混乱していた。今まで夫はこんな言葉を――過激とも言える執着心を露わにしたことがなかった。いつだって彼は冷静で、ヴェロニカの愛を受けとめる側だったから。
まるで自分自身を見ているようだった。
(それだけ、不安にさせてしまったんだわ……)
ヴェロニカが思うよりずっと、ハロルドは追いつめられていたのかもしれない。こんなことを考えてしまうくらいに……。
「ヴェロニカ。きみは俺を愛しているんだろう?」
「……ええ。愛しているわ」
「なら……」
彼の大きく、節くれだった掌がヴェロニカの細い首に回される。殺そうとしているのに、撫でるような優しい手つきだった。
(このまま、ハロルドに殺される……)
異常な状態なのにヴェロニカはなぜか恐怖を抱いてなかった。ハロルドは自分を愛している。誰にも渡したくないと思っている。カトリーナと駆け落ちすることはしなかったのに、自分とは死ぬ道を選んでくれた。
ヴェロニカは初めて、胸が満たされた気がした。夫の愛を感じることができた。
(私はこの人になら殺されてもいい……)
そう思って身を委ねようとした瞬間――
「安心してくれ。きみが死んだら、俺もすぐに追いかける」
ハロルドの囁くような言葉にヴェロニカは彼の手から逃れるようもがき、嫌だと口にしていた。彼の身体を逆に押し倒し、上から押さえつけていた。
「ヴェロニカ、何を――」
「私が死んでも、あなたには生きていてほしい」
突然押し倒され、やっぱり死にたくないと拒絶されたハロルドは呆気にとられていた。ヴェロニカも自分の口から出た言葉に内心驚いていた。
(私、ハロルドの幸せを願えるんだ……)
他の女に奪われるくらいなら、一緒に死んでやる。今ハロルドが言ったように自分も夫と同じ考えだと思っていた。
でも、実際に彼の口から後を追うと聞かされ、とっさにだめだと叫ぶ自分がいた。嫌だと拒絶する自分がいた。
ハロルドには生きてほしい。幸せになってほしい。
「あなたが好きだから。愛しているから」
だから一緒には死ねない。
「ヴェロニカ……」
「それに、エルドレッドたちをおいてはいけないわ……」
一瞬でもあの子たちを置き去りにする道を選んだ自分は親失格だ。
「私は絶対にあなた以外のものにならない。最後まで抵抗する。それでも誰かのものにさせられる時は……その時は潔く死を選ぶわ」
それまで絶対に諦めない。
「……きみは本当に、たくましいな」
「そうよ。だからあなたも、私を信じて」
「大人しく帰れと?」
「ええ」
「きみを、おいて」
「必ず帰るわ」
ハロルドは起き上がってヴェロニカを抱きしめた。何かを葛藤するように黙り込んで時間が流れる。
「……もう、だいぶ待ったんだ。これ以上待つことはできない」
「わかった」
ハロルドが提案した期限に、ヴェロニカは了承した。戻って来なければ、その時は今度こそどんな手を使ってでも――たとえ自身の主君を殺す結末になったとしても妻を取り戻すという彼の言葉に。
「ハロルド。もし私に何かあったら、あなたが子どもたちを守って。誰かと再婚しても、きちんと自立できるまでは、そばにいてあげて。ちゃんと愛してあげて」
「……そんなこと考える必要はない」
「もしもの時よ」
わざとお道化たように言っても、彼は笑わなかった。暗い顔をしてヴェロニカを見つめる目は激しい感情を必死に押し留め、今にも泣きそうに見えた。
「ヴェロニカ。約束してくれ。何があっても、絶対に死なないと。生きて俺のもとへ帰って来ると」
約束できないのならば連れて帰る、と言われてヴェロニカは迷った末、頷いた。
「わかったわ」
「ヴェロニカ……」
夫がヴェロニカを引き寄せ、口づけをした。何度も、何度も。貪るように。今この瞬間愛し合っているのは自分たちだと跡を残すように。
そうしてまだ暗いうちに、彼は一人部屋を出て行った。
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)
悪女の最後の手紙
新川 さとし
恋愛
王国を揺るがす地震が続く中、王子の隣に立っていたのは、婚約者ではなかった。
人々から「悪女」と呼ばれた、ひとりの少女。
彼女は笑い、奪い、好き勝手に振る舞っているように見えた。
婚約者である令嬢は、ただ黙って、その光景を見つめるしかなかった。
理由も知らされないまま、少しずつ立場を奪われ、周囲の視線と噂に耐えながら。
やがて地震は収まり、王国には安堵が訪れる。
――その直後、一通の手紙が届く。
それは、世界の見え方を、静かに反転させる手紙だった。
悪女と呼ばれた少女が、誰にも知られぬまま選び取った「最後の選択」を描いた物語。
表紙の作成と、文章の校正にAIを利用しています。
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
いつも隣にいる
はなおくら
恋愛
心の感情を出すのが苦手なリチアには、婚約者がいた。婚約者には幼馴染がおり常にリチアの婚約者の後を追う幼馴染の姿を見ても羨ましいとは思えなかった。しかし次第に婚約者の気持ちを聞くうちに変わる自分がいたのだった。
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
背徳の恋のあとで
ひかり芽衣
恋愛
『愛人を作ることは、家族を維持するために必要なことなのかもしれない』
恋愛小説が好きで純愛を夢見ていた男爵家の一人娘アリーナは、いつの間にかそう考えるようになっていた。
自分が子供を産むまでは……
物心ついた時から愛人に現を抜かす父にかわり、父の仕事までこなす母。母のことを尊敬し真っ直ぐに育ったアリーナは、完璧な母にも唯一弱音を吐ける人物がいることを知る。
母の恋に衝撃を受ける中、予期せぬ相手とのアリーナの初恋。
そして、ずっとアリーナのよき相談相手である図書館管理者との距離も次第に近づいていき……
不倫が身近な存在の今、結婚を、夫婦を、子どもの存在を……あなたはどう考えていますか?
※アリーナの幸せを一緒に見届けて下さると嬉しいです。