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ハロルド 欠けた温もり
「ヴェロニカは帰さない。あれはもう私のものだ」
ジュリアンはハロルドと公爵の話に耳を貸さなかった。ハロルドが冷静に説得を試みても、我慢できず激昂しても、冷たい眼差しを返すだけであった。
もう、あの優しい少年はどこにもいなかった。
「そなたにはずっと欲しかったものを与えるのだ。ヴェロニカは私がもらってもよかろう」
「ヴェロニカは私の妻です。貴方のものにはなりません」
「カトリーナがいらぬと申すのか」
「彼女は貴方の妻でしょう。それに私が言いたいのはそういうことでありません。カトリーナ様もヴェロニカも、物のように貴方は取り替えようとなさっている。それがどれだけお二人を傷つけるかとも知らずに!」
冷静さを保てない。ハロルドの態度にも、ジュリアンは動じない。それがどうしたという目。どうして伝わらないのだろう。こんなにも自分と彼は分かり合えない関係だったのか。
ハロルドはジュリアンが何を考えているのかわからなかった。まるで全く別の人間を見ているようで心底恐ろしく、不気味に感じた。
そんな彼の心中が伝わったのか、ジュリアンが嗤う。
「まるで化け物を見る目つきだな。私にはそなたたちの方こそ、その類に見えるというのに」
カトリーナとの関係を指しているのだと気づいた。
「陛下。私とカトリーナ様には何の関係もありませんでした。彼女は貴方だけを愛している」
「手紙を送っていたそうだな」
思わぬ反論に、ハロルドは戸惑う。何のことだ、と思った。
「手紙とは何のことでしょうか」
「知らぬ振りをするか。それともかつて愛しい女に送ったことすら忘れたのか」
ようやくカトリーナに宛てた手紙のことを指しているのだと気づいた。
しかしそれはもう何年も前のこと、まだ二人が正式に婚約する前のことである。一緒になれないとわかってからは、すべて捨ててしまった。カトリーナもそうしたはずだ。それをなぜ……。
「カトリーナは後生大事に持っていた。それが答えだろう」
ハロルドは呆然とした。カトリーナがずっとあの日の手紙を持っていた。
(なぜ私からの手紙を今でも……)
『行動には現れていなくとも、心で通じ合っているように見えたのかもしれんぞ』
……カトリーナの心もまた、自分にあったというのか。ハロルドが彼女のことをずっと気にかけていたように。
ジュリアンがいつ手紙の存在を知ったかはわからない。だが公爵の言葉を決定づけるのがその手紙になったかもしれない。ヴェロニカが巻き込まれてしまったことも、すべて。
「……陛下。確かにかつて私はカトリーナ様に手紙を送りました」
「認めるのか。では駆け落ちしようとしたことも、事実なのか」
「はい」
ハロルドは否定せず、はっきり肯定した。ジュリアンの顔が憎々しげに歪められる。その顔を見て、ハロルドの胸もまた痛んだ。
「フィリベール。おまえも知っていたのか」
「いいえ、私は何も。二人が話し合って決めたことでございます」
「そう言えば結婚する前、カトリーナが病で屋敷に療養している時期があったな」
お前も本当は知っていたのだろう、とジュリアンの目は公爵に告げていた。
「いいえ。それはたまたまでございます」
「ふん。あくまでも白を切るつもりか。そなたの演技は実に素晴らしいな」
「……陛下。たしかに私たちは一度そのような話をしました。しかし、カトリーナ様は最後には陛下をお選びになりました。それが答えです」
実際彼女はそれからジュリアンに尽くした。彼の子どもを産んだ。
「過去は過去です。大事なのは、今までずっと彼女が陛下の隣にいたという事実ではありませんか」
自分が知ることができなかった彼女を、ジュリアンは独占してきたのだ。それなのに過去を持ち出して責めるのは、あまりにも狭量な人間だと思った。
ハロルドがそう思うのはジュリアンに対して無意識の嫉妬もあった。今までカトリーナに対する耐え忍んできた気持ちをジュリアンは周囲に気にせず伝えることができる。彼女を愛することができる。
それなのになぜ大切にしない。
なぜあの人を傷つける。
許せない、という怒りがあった。
「カトリーナ様のお気持ちをもっと考えてあげてください」
「……そんなにカトリーナのことを想うのなら、そなたが大事にすればよかろう」
「陛下!」
「話は終わりだ。そなたがカトリーナをもらう代わりに、私はヴェロニカを好きにする」
「ヴェロニカを返してください! 彼女は私の妻です!」
「ヴェロニカがそなたのもとへ帰りたくないと申している」
カッとなる。
「彼女がそんなこと言うはずない!」
「ははっ。今はそうでも、もうしばらくすればわからぬぞ」
もう我慢できなかった。無理矢理手をかけようとしたハロルドに、とっさに公爵が止めに入る。ジュリアンは一際冷たい一瞥をくれた。
「そなたを信用していた自分が、馬鹿みたいだ」
吐き捨てるように言うと、彼は衛兵たちに連れて行くよう命じた。ひとまず出ようと公爵が促すが、ハロルドはその場に踏みとどまり、懇願するようにジュリアンを呼んだ。
「陛下! どうかもう一度お考えください!」
「そなたはもう私の騎士ではない。今後逆らうようであれば、家族も無事とは限らぬぞ」
もう顔を見せるな、とジュリアンは冷たく言い放った。
◇
「失敗したな」
公爵の言葉に、ハロルドも顔を歪めた。
「これからどうする」
「ヴェロニカが匿われている場所を突き止めてください」
「おまえはどうする」
「陛下に意見できる人間を集めて、考えを改めてもらうよう説得してもらいます」
公爵の他にもジュリアンを支えてきた人間はいる。王都から離れて隠棲している、先王にも仕えていた高位貴族の人間。彼らに事情を説明して、なんとか考え直してもらうよう取り計らう。
「すべて話すのか」
「いいえ。要点だけ。ちょっとした夫婦喧嘩をしてしまった、ということにしましょう」
事を大きくすれば、あっという間に噂となり、それこそ取り返しのつかないことになる。頼む相手も慎重に選ぶ必要がる。
それと、とハロルドは付け足す。
「教会の方へも、私と妻の離縁を受け付けないよう根回しを」
「さすがにこんな無理矢理なやり方、司教たちも認めるわけにはいかない」
その言葉に少し安堵する。
やるべきことを考えると、まだ大丈夫だという気がした。
(ヴェロニカ……必ず迎えに行くから……)
だからどうか――せめて無事でいてほしいと願った。
しかしハロルドの期待に反して、事は上手く進まなかった。昔恩義のあった人間に諫められても、ジュリアンは決して耳を傾けようとしなかった。ヴェロニカの居場所も一度突き止められて場所を変えたようで、警備はさらに厳重になった。
ハロルドは近衛騎士の任を解かれ、王宮に居座り続ける理由もなくなった。用がないのなら出て行け、というジュリアンの意思をひしひしと感じる。
(どうすればいい。どうすれば……)
「ハロルド。一度家へ帰ったらどうだ」
寝食も忘れあちこち駆けずり回っているハロルドを見かねて、公爵が無理矢理自宅へと帰させた。
(帰ったところで休めるはずがない)
ヴェロニカのいない屋敷など……。
「ちちうえ!」
家に帰ると、真っ先にエルドレッドが走り寄って抱き着いてきた。膝をついて顔を見ようとすればその前にぎゅっと抱きつかれた。ヴェロニカがいなくなってから、甘えることが増えた。
「ははうえ、まだ病気よくならないの?」
不安なのだろう。母親だけでなく父親まで帰って来ないのではないかと、小さな身体で必死に耐えているのだ。そんな息子が可哀想でたまらず、ハロルドは強く抱きしめた。
「ああ……。でも必ず帰って来るから、もう少しだけ待っていてくれ」
「うん」
ようやく笑顔を見せてくれた息子にほっとし、夕食は食べたのかと尋ねる。まだだというので、一緒にとり、セシリアも交えて久しぶりに家族の団欒を楽しんだ。
眠りにつくまでそばにいてやると、あとは一人寝室に戻った。
(ヴェロニカ……)
子どものことをもっと考えて、家へきちんと帰るべきだった。何も心配ないとそばにいてやるべきだった。
けれどその時間を犠牲にしてでも、早くヴェロニカを連れ戻すべきだとも思った。それがエルドレッドとセシリアのためになるから……。
(いいや、ちがう)
自分がヴェロニカに会いたいのだ。
彼女の元気な声が聞きたい。怒ったような照れた表情が見たい。ハロルド、と嬉しそうに駆け寄ってくる姿が見たい。自分の身体に抱き着いて、大好きだと囁くような声も、うっとりとした表情も、はにかんだ笑顔もすべて――
『ハロルド』
いなくなって初めて気づいた彼女の温もりに、ハロルドは自分の半身を失ったかのような喪失感に襲われていた。
今なんとか正気を保っていられるのは、子どもたちの存在とヴェロニカを何としてでもこの手に取り戻してやるという執念にも似た強い気持ちがあるからだ。
けれどそれも、いつまでもってくれるだろうか。ハロルドが今こうして眠りにつこうとしている間にもヴェロニカはジュリアンのもとで――
「っ」
必死に考えまいとしていたことが頭の中に過り、気が狂いそうになる。
ヴェロニカはジュリアンに抱かれたかもしれない。今まで自分しか知らなかったヴェロニカの身体を無理矢理暴き、夫にしか見せなかった表情をジュリアンも愉しんでいる。
「くそっ!」
いっそジュリアンを殺してしまいたい。そう思うほどに、ハロルドは追いつめられていた。
(どうしてヴェロニカを……)
これがジュリアンの復讐だと言うのか。
(カトリーナ様を手に入れたのは、結局貴方じゃないか。その上ヴェロニカまで奪うというのか……)
許さない。ヴェロニカは自分のものである。離婚など絶対にしない。この手に取り戻す。
彼女がいるべき場所は自分の隣だ。
ジュリアンはハロルドと公爵の話に耳を貸さなかった。ハロルドが冷静に説得を試みても、我慢できず激昂しても、冷たい眼差しを返すだけであった。
もう、あの優しい少年はどこにもいなかった。
「そなたにはずっと欲しかったものを与えるのだ。ヴェロニカは私がもらってもよかろう」
「ヴェロニカは私の妻です。貴方のものにはなりません」
「カトリーナがいらぬと申すのか」
「彼女は貴方の妻でしょう。それに私が言いたいのはそういうことでありません。カトリーナ様もヴェロニカも、物のように貴方は取り替えようとなさっている。それがどれだけお二人を傷つけるかとも知らずに!」
冷静さを保てない。ハロルドの態度にも、ジュリアンは動じない。それがどうしたという目。どうして伝わらないのだろう。こんなにも自分と彼は分かり合えない関係だったのか。
ハロルドはジュリアンが何を考えているのかわからなかった。まるで全く別の人間を見ているようで心底恐ろしく、不気味に感じた。
そんな彼の心中が伝わったのか、ジュリアンが嗤う。
「まるで化け物を見る目つきだな。私にはそなたたちの方こそ、その類に見えるというのに」
カトリーナとの関係を指しているのだと気づいた。
「陛下。私とカトリーナ様には何の関係もありませんでした。彼女は貴方だけを愛している」
「手紙を送っていたそうだな」
思わぬ反論に、ハロルドは戸惑う。何のことだ、と思った。
「手紙とは何のことでしょうか」
「知らぬ振りをするか。それともかつて愛しい女に送ったことすら忘れたのか」
ようやくカトリーナに宛てた手紙のことを指しているのだと気づいた。
しかしそれはもう何年も前のこと、まだ二人が正式に婚約する前のことである。一緒になれないとわかってからは、すべて捨ててしまった。カトリーナもそうしたはずだ。それをなぜ……。
「カトリーナは後生大事に持っていた。それが答えだろう」
ハロルドは呆然とした。カトリーナがずっとあの日の手紙を持っていた。
(なぜ私からの手紙を今でも……)
『行動には現れていなくとも、心で通じ合っているように見えたのかもしれんぞ』
……カトリーナの心もまた、自分にあったというのか。ハロルドが彼女のことをずっと気にかけていたように。
ジュリアンがいつ手紙の存在を知ったかはわからない。だが公爵の言葉を決定づけるのがその手紙になったかもしれない。ヴェロニカが巻き込まれてしまったことも、すべて。
「……陛下。確かにかつて私はカトリーナ様に手紙を送りました」
「認めるのか。では駆け落ちしようとしたことも、事実なのか」
「はい」
ハロルドは否定せず、はっきり肯定した。ジュリアンの顔が憎々しげに歪められる。その顔を見て、ハロルドの胸もまた痛んだ。
「フィリベール。おまえも知っていたのか」
「いいえ、私は何も。二人が話し合って決めたことでございます」
「そう言えば結婚する前、カトリーナが病で屋敷に療養している時期があったな」
お前も本当は知っていたのだろう、とジュリアンの目は公爵に告げていた。
「いいえ。それはたまたまでございます」
「ふん。あくまでも白を切るつもりか。そなたの演技は実に素晴らしいな」
「……陛下。たしかに私たちは一度そのような話をしました。しかし、カトリーナ様は最後には陛下をお選びになりました。それが答えです」
実際彼女はそれからジュリアンに尽くした。彼の子どもを産んだ。
「過去は過去です。大事なのは、今までずっと彼女が陛下の隣にいたという事実ではありませんか」
自分が知ることができなかった彼女を、ジュリアンは独占してきたのだ。それなのに過去を持ち出して責めるのは、あまりにも狭量な人間だと思った。
ハロルドがそう思うのはジュリアンに対して無意識の嫉妬もあった。今までカトリーナに対する耐え忍んできた気持ちをジュリアンは周囲に気にせず伝えることができる。彼女を愛することができる。
それなのになぜ大切にしない。
なぜあの人を傷つける。
許せない、という怒りがあった。
「カトリーナ様のお気持ちをもっと考えてあげてください」
「……そんなにカトリーナのことを想うのなら、そなたが大事にすればよかろう」
「陛下!」
「話は終わりだ。そなたがカトリーナをもらう代わりに、私はヴェロニカを好きにする」
「ヴェロニカを返してください! 彼女は私の妻です!」
「ヴェロニカがそなたのもとへ帰りたくないと申している」
カッとなる。
「彼女がそんなこと言うはずない!」
「ははっ。今はそうでも、もうしばらくすればわからぬぞ」
もう我慢できなかった。無理矢理手をかけようとしたハロルドに、とっさに公爵が止めに入る。ジュリアンは一際冷たい一瞥をくれた。
「そなたを信用していた自分が、馬鹿みたいだ」
吐き捨てるように言うと、彼は衛兵たちに連れて行くよう命じた。ひとまず出ようと公爵が促すが、ハロルドはその場に踏みとどまり、懇願するようにジュリアンを呼んだ。
「陛下! どうかもう一度お考えください!」
「そなたはもう私の騎士ではない。今後逆らうようであれば、家族も無事とは限らぬぞ」
もう顔を見せるな、とジュリアンは冷たく言い放った。
◇
「失敗したな」
公爵の言葉に、ハロルドも顔を歪めた。
「これからどうする」
「ヴェロニカが匿われている場所を突き止めてください」
「おまえはどうする」
「陛下に意見できる人間を集めて、考えを改めてもらうよう説得してもらいます」
公爵の他にもジュリアンを支えてきた人間はいる。王都から離れて隠棲している、先王にも仕えていた高位貴族の人間。彼らに事情を説明して、なんとか考え直してもらうよう取り計らう。
「すべて話すのか」
「いいえ。要点だけ。ちょっとした夫婦喧嘩をしてしまった、ということにしましょう」
事を大きくすれば、あっという間に噂となり、それこそ取り返しのつかないことになる。頼む相手も慎重に選ぶ必要がる。
それと、とハロルドは付け足す。
「教会の方へも、私と妻の離縁を受け付けないよう根回しを」
「さすがにこんな無理矢理なやり方、司教たちも認めるわけにはいかない」
その言葉に少し安堵する。
やるべきことを考えると、まだ大丈夫だという気がした。
(ヴェロニカ……必ず迎えに行くから……)
だからどうか――せめて無事でいてほしいと願った。
しかしハロルドの期待に反して、事は上手く進まなかった。昔恩義のあった人間に諫められても、ジュリアンは決して耳を傾けようとしなかった。ヴェロニカの居場所も一度突き止められて場所を変えたようで、警備はさらに厳重になった。
ハロルドは近衛騎士の任を解かれ、王宮に居座り続ける理由もなくなった。用がないのなら出て行け、というジュリアンの意思をひしひしと感じる。
(どうすればいい。どうすれば……)
「ハロルド。一度家へ帰ったらどうだ」
寝食も忘れあちこち駆けずり回っているハロルドを見かねて、公爵が無理矢理自宅へと帰させた。
(帰ったところで休めるはずがない)
ヴェロニカのいない屋敷など……。
「ちちうえ!」
家に帰ると、真っ先にエルドレッドが走り寄って抱き着いてきた。膝をついて顔を見ようとすればその前にぎゅっと抱きつかれた。ヴェロニカがいなくなってから、甘えることが増えた。
「ははうえ、まだ病気よくならないの?」
不安なのだろう。母親だけでなく父親まで帰って来ないのではないかと、小さな身体で必死に耐えているのだ。そんな息子が可哀想でたまらず、ハロルドは強く抱きしめた。
「ああ……。でも必ず帰って来るから、もう少しだけ待っていてくれ」
「うん」
ようやく笑顔を見せてくれた息子にほっとし、夕食は食べたのかと尋ねる。まだだというので、一緒にとり、セシリアも交えて久しぶりに家族の団欒を楽しんだ。
眠りにつくまでそばにいてやると、あとは一人寝室に戻った。
(ヴェロニカ……)
子どものことをもっと考えて、家へきちんと帰るべきだった。何も心配ないとそばにいてやるべきだった。
けれどその時間を犠牲にしてでも、早くヴェロニカを連れ戻すべきだとも思った。それがエルドレッドとセシリアのためになるから……。
(いいや、ちがう)
自分がヴェロニカに会いたいのだ。
彼女の元気な声が聞きたい。怒ったような照れた表情が見たい。ハロルド、と嬉しそうに駆け寄ってくる姿が見たい。自分の身体に抱き着いて、大好きだと囁くような声も、うっとりとした表情も、はにかんだ笑顔もすべて――
『ハロルド』
いなくなって初めて気づいた彼女の温もりに、ハロルドは自分の半身を失ったかのような喪失感に襲われていた。
今なんとか正気を保っていられるのは、子どもたちの存在とヴェロニカを何としてでもこの手に取り戻してやるという執念にも似た強い気持ちがあるからだ。
けれどそれも、いつまでもってくれるだろうか。ハロルドが今こうして眠りにつこうとしている間にもヴェロニカはジュリアンのもとで――
「っ」
必死に考えまいとしていたことが頭の中に過り、気が狂いそうになる。
ヴェロニカはジュリアンに抱かれたかもしれない。今まで自分しか知らなかったヴェロニカの身体を無理矢理暴き、夫にしか見せなかった表情をジュリアンも愉しんでいる。
「くそっ!」
いっそジュリアンを殺してしまいたい。そう思うほどに、ハロルドは追いつめられていた。
(どうしてヴェロニカを……)
これがジュリアンの復讐だと言うのか。
(カトリーナ様を手に入れたのは、結局貴方じゃないか。その上ヴェロニカまで奪うというのか……)
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