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45、相手にならない
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「イレーネ!」
何も言えず、互いに黙って見つめ合っていると、後ろから追いかけてきたブルーノに肩を掴まれた。彼はさすがにイレーネが転んで冷静になったのか、心配した声で大丈夫かと尋ねてくる。
だがディートハルトがイレーネの手を握っているのを見ると、怪訝そうな顔をした。
「誰ですか。あなたは」
ディートハルトはちらりとブルーノに目を向ける。相手の怪しむ目つきに動じない、おまえこそ誰だと問いかける冷ややかな眼差しにブルーノは僅かに怯んだ様子だった。ディートハルトはブルーノを一瞥すると、イレーネの手を取ったまま、腰を浮かせる。
「イレーネ。立てるか」
彼女は促されるまま、おずおずと立ち上がった。
ブルーノは見知らぬ男に大人しく従うイレーネの姿に訳がわからない様子だった。
「イレーネ。この男とは知り合いかい」
「それは……」
彼女は何と答えればいいかわからなかった。まさかこんな場所でディートハルトと再会するとは思わず、混乱していた。
(待って。どうして彼はここにいるの……)
用事があって訪れた? 一体何の用で? わざわざこんな遠くまで?
次々と疑問が湧いてくるなかで、何も答えないイレーネにブルーノは苛立ったのか、ディートハルトへと矛先を向けた。
「すみません。僕たち、まだ話の途中なんです。どなたかは存じ上げませんが、彼女から手を離してくれませんか」
そう言ってブルーノは強引にディートハルトからイレーネの手を奪い返そうとした。しかしその前にディートハルトがイレーネをぐいっと引き寄せ、自分の方に抱き寄せてしまう。
「なっ、なにしてるんですか!」
ブルーノは狼狽した。イレーネもまた驚いて声が出なかった。ただ一人、ディートハルトだけが淡々と疑問に答えた。
「先ほどの様子だと、彼女はきみから逃げているように見えたが?」
「そ、それは……」
言葉に詰まったブルーノを、ディートハルトはさらに問い詰めた。
「怯えた様子も見られるし、きみの態度からしても無理矢理連れて行こうとしていたんじゃないか」
「そんなことありません! 俺と彼女は親密な仲なんです!」
大きな声で言い放ったブルーノにイレーネはやめてと叫びたかった。だがディートハルトに抱き寄せられた恐怖から上手く反論できない。それをディートハルトは違うふうに解釈した。
「ほら、今のもそうだ。きみは激昂して、一人で捲し立てるのに対し、彼女の方は一言も話さない。話せない。それはきみが何か弱味を握って彼女を抑えつけようとしている証拠だ。きみの方が立場が上なんだ。普通の、対等な関係ではない」
「そんなこと、」
「ない、というならば、彼女に直接聞いてみよう。その間、きみは黙っていたまえ」
初対面であるのにディートハルトはブルーノを難なくあしらい、自分が会話の主導権を握って進めていく。
「イレーネ。この男はきみのなんだ。恋人か? 婚約者か?」
答えろ、とじっと見下ろされ、イレーネはごくりと唾を飲み込んだ。
「……いいえ。恋人でも婚約者でも何でもありません。ただの他人です」
「イレーネ!」
静かに、とディートハルトは目でブルーノを制すると、「ではなぜきみはこの男に追いかけられていた」と尋ねた。まるで尋問の取り調べだ。
「わたしに……再婚してほしいと言って、でもわたしは……そのつもりは一切ない。もう会いに来ないでほしいと告げても、無理矢理迫ってきたので、だから、怖くなって逃げてきたんです」
「違う! でたらめだ!」
ブルーノはイレーネの方から迫ったのだと、自分で作り上げた嘘を主張した。ディートハルトは今度は黙るよう彼を制しなかった。イレーネもブルーノの言葉などどうでもよかった。ただディートハルトの突き刺さるような視線の方がずっと恐ろしく感じたのだ。
彼はイレーネがすでに結婚していたことに対しては何も言わず、「わかった」と静かに告げた。ブルーノがぱっと顔を輝かせた。
「きみの言い分はここの管轄区である司教に仲裁に入ってもらって、改めて聞かせてもらおう」
「司教に?」
なぜ、とブルーノの顔に困惑が浮かんだ。
「きみと、イレーネの意見に食い違いがあるからだ。どちらの意見が正しいか、双方の主張、そして第三者の意見も交えて決めるのがいい」
要は裁判して決めようとディートハルトは言っているのだ。
「教会で裁かれるのが嫌ならばここの領主に頼んでもいい。ああ、何なら国王に頼むこともできる。彼らは悪人から罰金を取り立てて懐を温かくするのが好きだからな」
金が入るとなれば、喜んで裁判を開いてくれるだろう。
ディートハルトの言葉にブルーノは次第に冷や汗を浮かべ始める。
「そ、そこまでする必要は……」
なぜだ、とディートハルトは鋭く切り込んだ。
「きみは彼女に対して、不当な扱いを受けたのだろう? ならば、それをきちんと明らかにして、改めて彼女に罪を問う必要がある」
「いや、何もそこまでしなくていいんです。これは僕とイレーネの問題なので、」
「いいや、はっきりさせた方がいい」
「ど、どうしてそこまで赤の他人であるあなたが僕たちの問題に首を突っ込むんですか!」
「赤の他人ではない」
「えっ」
イレーネは一体何を言うつもりだとディートハルトの顔を見上げた。
「あ、あなたはイレーネとどういうご関係なのですか」
いつの間にか、ブルーノの口調は敬語になり、ディートハルトを恐れる感情を滲ませていた。ディートハルトは完全にブルーノを御した様子で冷たく言い放った。
「そんなこと、赤の他人であるきみに言う必要はない」
「なっ……」
「それより、どうしてそこまで裁判を拒否する。まるで、そうされると困ると言いたげな態度だ」
「ち、違う。僕はただ、そうなったらイレーネも困るだろうと思ったから……彼女には、子どももいるんです! 大事になったら、その子も可哀想でしょう? 陰で何を言われるかわかったものじゃない。そういう気遣いからです」
「……そうか。子どもがいるんだな……」
ディートハルトの呟きに、同意を得たと思ったのか、ブルーノが「そうなんですよ」と必死で話し続ける。
「まだ六歳なんですよ。父親を亡くしたばかりなのに、毎日教会に通って必死に勉強しています。そんな子が、母親が法廷で裁かれるなんてことを知ったら、心に一生消えない傷を負うはずです。だから、やめておいた方がいいと思います」
ディートハルトはしばし無言になって、やがてわかったと言った。しかしブルーノがほっと胸をなで下ろした瞬間、
「やはりやるべきだ」
とも付け加えた。
「なっ、どうしてです!?」
「どうしても何も、母親が冤罪をかけられているのならば、なおさら無実を証明するべきだ。それが、息子の願いでもあろう」
どうあっても穏便に済ませまいとするディートハルトに、ブルーノは言葉が見つからず、口をパクパクと開けては閉じることしか繰り返せない。
「もし、きみが法廷に立つことを拒否するというならば、決闘してどちらが正しいか決めるしかない」
「決闘!?」
「そうだ。彼女の代わりに、私がきみの相手をする。神は正しい者に味方してくれるはずだから、きみはきっと生き残れるだろう」
ブルーノは恐ろしい怪物でも見たかのようにディートハルトを見つめ、自然と一歩、後ろへ退いていた。
「さぁ、そうと決まれば、司教の所へ行って、さっそく裁判の日取りを決めよう」
ディートハルトが手を差し伸べた瞬間、ブルーノは踵を返し、脱兎のごとく逃げ出した。イレーネのことは見向きもしなかった。
イレーネは普通なら感謝するべきだろう。そしてブルーノが自分から立ち去ってくれたことに深く安堵するべきだった。
しかし彼女はディートハルトと二人きりに取り残されたこの状況の方が、ずっと恐ろしく思うのだった。
何も言えず、互いに黙って見つめ合っていると、後ろから追いかけてきたブルーノに肩を掴まれた。彼はさすがにイレーネが転んで冷静になったのか、心配した声で大丈夫かと尋ねてくる。
だがディートハルトがイレーネの手を握っているのを見ると、怪訝そうな顔をした。
「誰ですか。あなたは」
ディートハルトはちらりとブルーノに目を向ける。相手の怪しむ目つきに動じない、おまえこそ誰だと問いかける冷ややかな眼差しにブルーノは僅かに怯んだ様子だった。ディートハルトはブルーノを一瞥すると、イレーネの手を取ったまま、腰を浮かせる。
「イレーネ。立てるか」
彼女は促されるまま、おずおずと立ち上がった。
ブルーノは見知らぬ男に大人しく従うイレーネの姿に訳がわからない様子だった。
「イレーネ。この男とは知り合いかい」
「それは……」
彼女は何と答えればいいかわからなかった。まさかこんな場所でディートハルトと再会するとは思わず、混乱していた。
(待って。どうして彼はここにいるの……)
用事があって訪れた? 一体何の用で? わざわざこんな遠くまで?
次々と疑問が湧いてくるなかで、何も答えないイレーネにブルーノは苛立ったのか、ディートハルトへと矛先を向けた。
「すみません。僕たち、まだ話の途中なんです。どなたかは存じ上げませんが、彼女から手を離してくれませんか」
そう言ってブルーノは強引にディートハルトからイレーネの手を奪い返そうとした。しかしその前にディートハルトがイレーネをぐいっと引き寄せ、自分の方に抱き寄せてしまう。
「なっ、なにしてるんですか!」
ブルーノは狼狽した。イレーネもまた驚いて声が出なかった。ただ一人、ディートハルトだけが淡々と疑問に答えた。
「先ほどの様子だと、彼女はきみから逃げているように見えたが?」
「そ、それは……」
言葉に詰まったブルーノを、ディートハルトはさらに問い詰めた。
「怯えた様子も見られるし、きみの態度からしても無理矢理連れて行こうとしていたんじゃないか」
「そんなことありません! 俺と彼女は親密な仲なんです!」
大きな声で言い放ったブルーノにイレーネはやめてと叫びたかった。だがディートハルトに抱き寄せられた恐怖から上手く反論できない。それをディートハルトは違うふうに解釈した。
「ほら、今のもそうだ。きみは激昂して、一人で捲し立てるのに対し、彼女の方は一言も話さない。話せない。それはきみが何か弱味を握って彼女を抑えつけようとしている証拠だ。きみの方が立場が上なんだ。普通の、対等な関係ではない」
「そんなこと、」
「ない、というならば、彼女に直接聞いてみよう。その間、きみは黙っていたまえ」
初対面であるのにディートハルトはブルーノを難なくあしらい、自分が会話の主導権を握って進めていく。
「イレーネ。この男はきみのなんだ。恋人か? 婚約者か?」
答えろ、とじっと見下ろされ、イレーネはごくりと唾を飲み込んだ。
「……いいえ。恋人でも婚約者でも何でもありません。ただの他人です」
「イレーネ!」
静かに、とディートハルトは目でブルーノを制すると、「ではなぜきみはこの男に追いかけられていた」と尋ねた。まるで尋問の取り調べだ。
「わたしに……再婚してほしいと言って、でもわたしは……そのつもりは一切ない。もう会いに来ないでほしいと告げても、無理矢理迫ってきたので、だから、怖くなって逃げてきたんです」
「違う! でたらめだ!」
ブルーノはイレーネの方から迫ったのだと、自分で作り上げた嘘を主張した。ディートハルトは今度は黙るよう彼を制しなかった。イレーネもブルーノの言葉などどうでもよかった。ただディートハルトの突き刺さるような視線の方がずっと恐ろしく感じたのだ。
彼はイレーネがすでに結婚していたことに対しては何も言わず、「わかった」と静かに告げた。ブルーノがぱっと顔を輝かせた。
「きみの言い分はここの管轄区である司教に仲裁に入ってもらって、改めて聞かせてもらおう」
「司教に?」
なぜ、とブルーノの顔に困惑が浮かんだ。
「きみと、イレーネの意見に食い違いがあるからだ。どちらの意見が正しいか、双方の主張、そして第三者の意見も交えて決めるのがいい」
要は裁判して決めようとディートハルトは言っているのだ。
「教会で裁かれるのが嫌ならばここの領主に頼んでもいい。ああ、何なら国王に頼むこともできる。彼らは悪人から罰金を取り立てて懐を温かくするのが好きだからな」
金が入るとなれば、喜んで裁判を開いてくれるだろう。
ディートハルトの言葉にブルーノは次第に冷や汗を浮かべ始める。
「そ、そこまでする必要は……」
なぜだ、とディートハルトは鋭く切り込んだ。
「きみは彼女に対して、不当な扱いを受けたのだろう? ならば、それをきちんと明らかにして、改めて彼女に罪を問う必要がある」
「いや、何もそこまでしなくていいんです。これは僕とイレーネの問題なので、」
「いいや、はっきりさせた方がいい」
「ど、どうしてそこまで赤の他人であるあなたが僕たちの問題に首を突っ込むんですか!」
「赤の他人ではない」
「えっ」
イレーネは一体何を言うつもりだとディートハルトの顔を見上げた。
「あ、あなたはイレーネとどういうご関係なのですか」
いつの間にか、ブルーノの口調は敬語になり、ディートハルトを恐れる感情を滲ませていた。ディートハルトは完全にブルーノを御した様子で冷たく言い放った。
「そんなこと、赤の他人であるきみに言う必要はない」
「なっ……」
「それより、どうしてそこまで裁判を拒否する。まるで、そうされると困ると言いたげな態度だ」
「ち、違う。僕はただ、そうなったらイレーネも困るだろうと思ったから……彼女には、子どももいるんです! 大事になったら、その子も可哀想でしょう? 陰で何を言われるかわかったものじゃない。そういう気遣いからです」
「……そうか。子どもがいるんだな……」
ディートハルトの呟きに、同意を得たと思ったのか、ブルーノが「そうなんですよ」と必死で話し続ける。
「まだ六歳なんですよ。父親を亡くしたばかりなのに、毎日教会に通って必死に勉強しています。そんな子が、母親が法廷で裁かれるなんてことを知ったら、心に一生消えない傷を負うはずです。だから、やめておいた方がいいと思います」
ディートハルトはしばし無言になって、やがてわかったと言った。しかしブルーノがほっと胸をなで下ろした瞬間、
「やはりやるべきだ」
とも付け加えた。
「なっ、どうしてです!?」
「どうしても何も、母親が冤罪をかけられているのならば、なおさら無実を証明するべきだ。それが、息子の願いでもあろう」
どうあっても穏便に済ませまいとするディートハルトに、ブルーノは言葉が見つからず、口をパクパクと開けては閉じることしか繰り返せない。
「もし、きみが法廷に立つことを拒否するというならば、決闘してどちらが正しいか決めるしかない」
「決闘!?」
「そうだ。彼女の代わりに、私がきみの相手をする。神は正しい者に味方してくれるはずだから、きみはきっと生き残れるだろう」
ブルーノは恐ろしい怪物でも見たかのようにディートハルトを見つめ、自然と一歩、後ろへ退いていた。
「さぁ、そうと決まれば、司教の所へ行って、さっそく裁判の日取りを決めよう」
ディートハルトが手を差し伸べた瞬間、ブルーノは踵を返し、脱兎のごとく逃げ出した。イレーネのことは見向きもしなかった。
イレーネは普通なら感謝するべきだろう。そしてブルーノが自分から立ち去ってくれたことに深く安堵するべきだった。
しかし彼女はディートハルトと二人きりに取り残されたこの状況の方が、ずっと恐ろしく思うのだった。
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