1 / 28
1、不安
しおりを挟む
「とても綺麗だ、マリア」
白いヴェール越しに精悍な顔つきをした男――ジークハルト・カリウスが琥珀色の目を細めて言った。花嫁を褒める言葉に、マリアの心臓が跳ねる。
(あなたも、とても素敵です)
暗めの赤い髪に黒の燕尾服のような正装――辺境伯である彼が長としてまとめている騎士団の制服は、とてもよく似合っていた。
隣に立つ自分が気後れしてしまうほどに。
彼は綺麗だと言ってくれたが、本当に変ではないだろうか。
(ううん。大丈夫。メイドや夫人たちも、とても褒めてくださったもの)
それに、と思う。
『あなたはヒルデに似てとても可愛いから、きっと辺境伯様も気に入ってくださるはずよ』
『ああ。ヒルデに似ているから、きっと大丈夫だ』
ストロベリーブロンドの長い髪、ぱっちりとした青い瞳、小さな鼻に、ふっくらとした赤い唇は、マリアを孤児院から引き取って育ててくれたリーデル伯爵夫妻からすると、実の娘であるヒルデに似て大変可愛いらしい容姿と言えるそうだ。
だからこの結婚も上手くいくはずだと信じて疑わず、彼らはマリアを王都から送り出した。
マリアも、育ててもらった今までの恩を返したい。二人の期待に応えたいと思っていた。
でも、いざ花婿となるジークハルトを前にして、神父の唱える夫婦の誓いを耳にして、罪悪感に襲われた。
(わたしで、いいのかな)
本当なら、今ここにいるのはマリアではなく、ヒルデだった。
それなのに……。
「――では、誓いの口づけをなさってください」
白いヴェールを持ち上げられて、ジークハルトに不安そうな表情を見られる。
このままでは本当に夫婦になってしまう。彼を騙したまま……。
そう思ったマリアはとっさに彼の手に触れていた。
「マリア。あなたを絶対に幸せにする」
花嫁の不安を取り除くような、優しく力強い言葉に、マリアは目を見開く。
気がつけば、触れた手をぎゅっと握りしめられて、マリアはジークハルトに口づけされていた。
白いヴェール越しに精悍な顔つきをした男――ジークハルト・カリウスが琥珀色の目を細めて言った。花嫁を褒める言葉に、マリアの心臓が跳ねる。
(あなたも、とても素敵です)
暗めの赤い髪に黒の燕尾服のような正装――辺境伯である彼が長としてまとめている騎士団の制服は、とてもよく似合っていた。
隣に立つ自分が気後れしてしまうほどに。
彼は綺麗だと言ってくれたが、本当に変ではないだろうか。
(ううん。大丈夫。メイドや夫人たちも、とても褒めてくださったもの)
それに、と思う。
『あなたはヒルデに似てとても可愛いから、きっと辺境伯様も気に入ってくださるはずよ』
『ああ。ヒルデに似ているから、きっと大丈夫だ』
ストロベリーブロンドの長い髪、ぱっちりとした青い瞳、小さな鼻に、ふっくらとした赤い唇は、マリアを孤児院から引き取って育ててくれたリーデル伯爵夫妻からすると、実の娘であるヒルデに似て大変可愛いらしい容姿と言えるそうだ。
だからこの結婚も上手くいくはずだと信じて疑わず、彼らはマリアを王都から送り出した。
マリアも、育ててもらった今までの恩を返したい。二人の期待に応えたいと思っていた。
でも、いざ花婿となるジークハルトを前にして、神父の唱える夫婦の誓いを耳にして、罪悪感に襲われた。
(わたしで、いいのかな)
本当なら、今ここにいるのはマリアではなく、ヒルデだった。
それなのに……。
「――では、誓いの口づけをなさってください」
白いヴェールを持ち上げられて、ジークハルトに不安そうな表情を見られる。
このままでは本当に夫婦になってしまう。彼を騙したまま……。
そう思ったマリアはとっさに彼の手に触れていた。
「マリア。あなたを絶対に幸せにする」
花嫁の不安を取り除くような、優しく力強い言葉に、マリアは目を見開く。
気がつけば、触れた手をぎゅっと握りしめられて、マリアはジークハルトに口づけされていた。
964
あなたにおすすめの小説
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
白い結婚を終えて自由に生きてまいります
なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。
忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。
「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」
「白い結婚ですか?」
「実は俺には……他に愛する女性がいる」
それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。
私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた
――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。
ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。
「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」
アロルド、貴方は何を言い出すの?
なにを言っているか、分かっているの?
「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」
私の答えは決まっていた。
受け入れられるはずがない。
自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。
◇◇◇
設定はゆるめです。
とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。
もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!
ローザリンデの第二の人生
梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。
彼には今はもういない想い人がいた。
私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。
けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。
あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。
吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
1/10 HOTランキング1位、恋愛3位ありがとうございます。
悲報!地味系令嬢、学園一のモテ男に「嘘の告白」をされる。
恋せよ恋
恋愛
「君のひたむきさに心打たれた」
学園の王子様、マーロン侯爵令息から突然の告白。
けれどそれは、退屈な優等生である彼が仕掛けた「罰ゲーム」だった。
ターゲットにされたのは、地味で貧乏な子爵令嬢・サブリナ。
彼女は震える声で告白を受け入れるが――眼鏡の奥の瞳は、冷徹に利益を計算していた。
(侯爵家の独占契約……手に入れたも同然だわ!)
実は、サブリナの正体は王都で話題の「エアハート商会」を率いる敏腕マネージャー。
「嘘の告白」をした男と、「嘘の快諾」をした女。
互いに利用し合うつもりが、いつの間にか本気に……?
お互いの本性を隠したまま進む、腹黒×腹黒の騙し合いラブコメディ!
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる