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4、警告

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「――以上が、おまえが公爵にしたことだ」

 ジョシュア――国王の息子であり、この国の王太子から説明を聞き終え、ブランシュは呆然とした。

(なんて、こと……)

 聴いているうちに、血の気が引く思いがしていた。今も彼が話してくれたことを、拒もうとする自分がいる。

「今の話は、本当なのですか……」

 ブランシュが喉から絞り出すようにそうたずねると、王子は見るからに気分を害したように柳眉を歪ませた。

「私も、嘘であったらよかったと、何度思ったことか」

 こちらを射貫くような瞳に手が震え、呼吸が早くなる。耐え切れず、顔を覆った。

 信じられなかった。信じたくなかった。

 自分が他人の幸せを引き裂いたこと。他人を地獄に突き落とした上で、今の自分がいること。

 いっそまだ目が覚めておらず、悪夢を見ていられたらどれほどよかっただろうか。

「それで、今度はそうやって彼の気を引く気か?」

 どういうことだと王子を見れば、彼は厳しい目をして自分を見据えた。

「父上から命じられたマティアスはおまえと結婚することを決めた。おまえは公爵家へ嫁ぎ、ルメール公爵夫人となった。しかしそこでの生活はおまえが思ったようなものではなく、癇癪を起しては、使用人を怒鳴り、無断で解雇までしようとしていた」

 ブランシュはもう聞きたくないと思った。記憶には一切ないことを、面と向かって聴かされ、それがおまえの本性だったと突き付けられ、ぐらぐらと目の前が揺らいでいく気がした。

「おまえがそのような態度をとるからマティアスは屋敷へ寄りつかなくなり、それにおまえはますます腹を立てた。それでどうにか夫の気を引こうと、公爵邸の庭にあった広い池に、身を沈めたというわけだ」

 なんてはた迷惑な人間なのだろう。

「王族が自死を選ぶことがどれほど周りに影響を与えるか、考えたことがあるか? 世話をしていた侍女や家令が責任を問われ、公爵も周囲から厳しい目に晒された。どんな事情があっても、だ」

 そうしてブランシュの目が覚めるまで、彼らは生き地獄のような気持ちで待ち続けた。

「いっそのことおまえが……」

 さすがにジョシュアはその先を続けることはしなかったが、ブランシュにはわかった。

(いっそのこと、目覚めなければよかったのに……)

「正直、おまえの意識が戻って……記憶を無くしているおまえに混乱している。マティアスはその最たる一人だろう」

 自分を不幸に陥れた女が、死んでくれるかと思ったら、生き延びてしまった。しかも自分たちにやってきたことを綺麗さっぱり忘れているという。

(なによそれ、って思うわよね……)

「私は彼の苦しみをそばでずっと見てきた。臣下として、友人として、彼にこれ以上辛い目に遭って欲しくない。記憶が失ったというふうに演じたいのならば、勝手にするがよい。しかしマティアスを傷つけようとすれば、おまえを今度こそ、私たちは塔に閉じ込めるしかなくなる」

 余計なことはするな、とジョシュアは命じると、ブランシュの返事も確かめずに部屋を後にした。

(これから、どうすればいいの……)

 ブランシュには、何も思いつかなかった。

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