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スラ犬の決意

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今日もセルヴィスから差し出される

……どうしてこんな事に。
あまりの自分の情けなさに、無い目から涙が零れそうです…。




ことの始まりは3日前。
町に行った次の日の朝、セルヴィスが私の前にしゃがみこみました。

「?」

「スライム。昨日も言ったけど、お前は魔石を摂取しないと生きていけないらしい。」

そうらしいですね。魔石って硬いから、弱っちいスライムがまともに消化できるか甚だ疑問ですけど。

「だからはい、コレ。」

そう言ってセルヴィスがポケットから取り出し目の前に差し出してきたのは、色といい大きさといい、とっても見覚えのある大粒の魔石でした。これを食べろということですか。
───あぁ~見覚えあるはずですね。この深いオレンジと赤と黒が混ざった、小指の爪程の魔石。昔さんざんセルヴィスの為に狩った魔物のですね。
そう、セルヴィスの為に……、……?

「ぴぴぃー!(何でこれを出してくるんですかー!)」

この魔石が採れる魔物はラガールといって体長5m程の割と獰猛な大型魔物です。人間じゃ腕の立つハンターが集団でかかって狩れるかどうかという魔物。昔セルヴィスに聞いたところ、それでも命をかけるくらいには高価なんだとか。…悪魔の私にとっては美味しいお肉ぐらいの価値しかなかったですけど。
セルヴィスも人間の基準では強い方ですが、ラガールを一人で狩れる力は無いはずです。

つまり、これは!
悪魔だった時に私が狩ったラガールの魔石じゃないですか!?

私が集めた魔石や魔物の素材はいつか、いつか!セルヴィスが人の町で生活していく時の為にと集めた物なんですよ!?
あれだけセルヴィスの為に使ってと普段から言っておいたのに。
お嫁さんを迎えて、お家を買って、幸せに幸せに生活していく為のお金にしてと!あれだけ!散々……っ


~~~それをなぜ私なんかの為に差し出してるんですかぁ!!?クズ魔石で十分でしょう!?


……声を出せない以上いくら訴えても伝わらず、とにかく拒否した私。ですがセルヴィスは次々と違う魔石を持ってきました。しかもその全部が私がセルヴィスの為に集めたやつで。
これはセルヴィスの!と断固拒否する私に、とうとうセルヴィスが

「これも気に入らないか。好みかな?森の魔物を自分で狩って片っ端から試すしかないか…?」

……ボソリとそんな事を呟いて。

この森、人間達には魔の森やら死の森やらと呼ばれてるんですよ?しかもそれを教えてくれたのはセルヴィスです。
その森でセルヴィスが一人で魔物を狩るのを許容するか、大人しく目の前の魔石を食べるか。
……私がとれる選択肢は後者しかないじゃないですか。


 。 ゜ 。 〇  。 ゜ 。



そんな事があって3日間。苦渋の選択の結果、セルヴィスの差し出す魔石を大人しく食べていました───が!!

餞別とか遺産とかそんなつもりで残した財産を、よりによって私自身が文字通り食いつぶすとかセルヴィスの保護者失格、情けなさすぎるにも程があります!
幸いにも今の私はかつてと同じように魔法が使えます。攻撃にはあまり向かない中級の水魔法だけですが、水魔法も使い方次第。この3日間、その攻撃方法だって考えて増やしました。


体がスライムだからどうした!!
セルヴィスの負担になるくらいなら、身体がスライムだろうと自分で魔物を狩ってゴハンくらい入手して見せましょう!!
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