【源次物語】最後の特攻隊員〜未来を生きる君へ〜

OURSKY

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〈過去の悲劇〉

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 1945年1月6日……米軍がフィリピンの首都マニラ奪還のためにルソン島に上陸し、多くの戦車戦を含む激しい陸戦になった。
 日本軍は戦力を「尚武」「振武」「建武」の3集団にわけて防衛態勢に入り、艦砲の砲弾が届かない山岳での持久戦などジャングルの中で「補給なき永久抗戦」を命じられ、飢えや伝染病で餓死者が続出して2月に日本軍守備隊は全滅……
 戦いは終戦まで続いたが、尚武集団9万7000人、振武集団9万2000人、建武集団2万8000人の戦死者を出した。
 
 当時首都のマニラ市内には約70万人の市民が残っており、陸軍司令官は米軍の提案同様に無血開城ならぬ無防備都市宣言をすることを検討していたが、大本営はマニラの放棄には同意せず……
 2月3日にはフィリピン奪回を目指す米軍がマニラに突入し、日本軍は建物に立てこもるなどして1ヵ月に渡り抗戦……
 米軍の砲撃などを受け、マニラ市街戦での日本軍側の死者は約1万2000人に及んだ。

 日本軍の敵は米軍だけではなく……フィリピンゲリラによる日本人狩りで多くの戦友や一般の邦人を殺害された報復として、日本軍は「ゲリラ討伐」とフィリピン人の虐殺を行うようになってしまった。

 小銃で撃ってくる女性、手榴弾を投げる子供……思わぬ攻撃に、やらなかったらやられる……人影が見えたら一般市民だろうが兵隊だろうが先に攻撃しないと撃たれる……という恐怖が先行し、追い詰められた日本軍は益々狂っていった。

 そしてゲリラと一般市民の見分けがつかないからと「外人は全て敵」とみなし、地下に避難していた小さい子供や女性を含む無抵抗な人たちも銃や放火などで惨殺……大勢の女性達をホテルに監禁して暴行……
 日本兵が女性を連れて行こうとするのを止めようとした日本兵もいたが、極限状態の中で自分本位で理性が崩壊したかのような行動をとる者が横行し、本当に酷い戦争犯罪や残虐行為が繰り返された。

 結局、マニラでの日本軍による虐殺とアメリカ軍の砲撃により巻き込まれた一般市民の犠牲者は10万人を超え、市街地中心部は廃墟と化してしまった。

 そんな大変な事になっていたのを知らなかった僕達は、百里原海軍航空隊に戻った後にすぐ特攻隊の編成があった訳でもなく、変わらぬ日常を送っていた。
 しかし2月初旬にヒロ宛ての軍事郵便が届き……それを見た途端、ヒロは青ざめてしゃがみ込んだ。

「大変や……高知の実家、焼けて無くなってもうた……」

「えっ?」

「1月19日にB-29が来て、神田地区の吉野に焼夷弾落としたんやて……クソッ、今まで空襲がなかったから大丈夫やと思うとったのに……」

「え、そこって今は明希子おばさんが住んでるって言ってなかった?」

「せや、実家におって空襲で家は焼けてもうたけど、下の弟も怪我無く生き残って市内の帯屋町商店街の方に移ったらしいんやけど……」

「そうか……何とか大丈夫そうでよかったね」

「ほんまよかったわ……正に続いて明希子おばさんまで死んでもうたらどないしよ思うたわ……ただ……数少ない親父とお袋の思い出の品、全部焼けてもうたんやなって……まあ、しゃあないけどな~アハハハハ」

 乾いた笑い声で話すヒロの横顔は、独りぼっちの少年のように寂しそうな目をしていて……思わずこちらが泣きそうになった。

「ヒロ、無理して笑わないでいいよ」

「実はうちの親父とお袋な…………俺が小さい時に自転車屋やってたんやけど、注文受けた自転車を車で運んどる途中に事故で川に落ちてお袋死んでもうて……親父はどこまで流されたのか分からんくて行方不明になってん……」

「えっ?」

 そう話すヒロは、初めて見る泣き笑いの表情をしていて……
 今まで明るく振る舞っていたのは寂しさの裏返しだったんじゃないかということが、やっと分かった気がした。
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