【源次物語】最後の特攻隊員〜未来を生きる君へ〜

OURSKY

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番外編

〈ずっと叶えたかった夢〉後半

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 これは祖母から聞いた話だが⋯⋯
 祖母の曽祖父母夫妻は曽祖母の旅先だった高知の川で出会ったそうだ。
 車のタイヤに乗った状態で川に流されてきた曽祖父を曽祖母一家が助けたが、記憶喪失で名字しか覚えておらず身元を探したものの見つからず⋯⋯
 仕方なく一緒に埼玉に帰って新たに戸籍を作り、色々お世話しているうちに結婚する仲になったとのことだった。

 晩年高知を訪れた時に昔の記憶が蘇り、戸籍を調べたら家族は亡くなった後だったけれど⋯⋯
 東京にある龍の名前のついたお寺にご先祖様のお墓があるから、隣に篠田の名前でお墓を作り、死後はそこに埋葬して欲しいと遺言を遺したそうだ。 

 つまり、祖母の曽祖父は⋯⋯
 篠田弘光さんの行方不明の父親だった。
 私と篠田さんの祖先は同じで、遠い縁ではあるが血が繋がっていた。

 病室に来た夫に全てを話すと、もう一つの不思議な奇跡の繋がりを聞いて鳥肌が立った。

 運命に引き寄せられたように出会った夫の名字は三田だが、ご先祖様は土浦の食堂で出会って結婚していたなんて⋯⋯

 つまり夫は、本に出てきた三田由香里さんと平井隆之介さんの子孫⋯⋯
 平井さんは源次さんが好きな江戸川散歩先生の息子さんで、実は源次さんと立教大学の頃からすれ違っていた。

 なぜなら江戸川散歩先生は当時、立教大学の隣に住んでいたそうだから⋯⋯
 そして実は立教大学は、祖母も昔、通っていた大学だった。

「全ては偶然じゃなくて必然だったんだね⋯⋯」

 私は、手帳の中に手紙を書いた。

〈最後の特攻隊員だった祖母の命の恩人へ〉

高田さん
祖母を命がけで助けて頂き
本当にありがとうございました
篠田さん
あなたが親友を護り
その親友が私の祖母を護って下さったおかげで
私はいま生きています

あの時、諦めないでいてくれて
未来を信じて下さって
本当にありがとうございました

もうすぐお二人の夢は叶います
不思議な奇跡が出会わせてくれた
最後の特攻隊員の方々に
せめてもの誕生日プレゼントを⋯⋯
~~~~~~~~~~

 私は確かな鼓動が聞こえる、膨らんだ自分のお腹に手を当てて、赤ちゃんに語りかけた。

「あなたの名前決まったよ? 私達の恩人が大好きだった『空』⋯⋯」

「遠い親戚の弘光さんが最後に願い、高田さんも本当はずっと叶えたかったはずの、二人の夢の名前⋯⋯」

 切迫早産で入院している間、ずっと不安だったが⋯⋯
 奇跡的な回復で「もう大丈夫」とお墨付きを貰い、私は退院を許可された。

 ちなみに私の誕生日は高田さんの妹の純奈さんと同じ12月1日だが、お腹の子の予定日は7月7日の七夕だそうだ。
 元々は七夕の日のすれ違いから日中戦争が始まり、その延長線上に太平洋戦争が起こり、日本は大切なものを沢山失ったけれど⋯⋯

 もし本当にこの子が七夕に生まれたら、世界中の国のすれ違った心が一つになって、学校で叶うはずがないと笑われた『世界中の人達が幸せになりますように』という願いも叶う気がした。

 ふと私は昔、祖母が生きていた頃に一緒に行ったお墓参りの帰りに、祖母が何故か隣のお寺のお墓にも手を合わせていたのを思い出した。

「高田さんのお墓だったんだね⋯⋯」

 時を超えた不思議な繋がり⋯⋯
 入院中、「安静にしなくてはいけないから」と読むための本を探しに行った先で、私は運命の本に出会った。

 ネットではあり得なかった不思議な出会い⋯⋯
 本屋や図書館は昔より大分減ったそうだが、無くしてはいけない大切な場所だと思った。

 退院日……病院を出て空を見上げると偶然ツバメが飛んできて、なぜだか祖母が何かを伝えようとしている気がした。
 その時の祖母の声は、私達の『空』が生まれてから知ることになるのだけれど⋯⋯

思いはいつか伝わる
願いはいつか叶う
たとえ今すぐ伝わらなくても
生きているうちに叶わなくても
諦めなければ
願いを託せば
巡り巡って未来の誰かが⋯⋯
たとえ時代や場所が違っても
見上げた『空』が想いを繋いでくれるから⋯⋯

 どんなにすれ違ったり、絶望的なことがあっても、
 お互いを理解しようと歩み寄ること⋯⋯
 いつか届くと信じて思いを伝えること⋯⋯

 何も無くなった場所でも、『明日あすへの希望』を信じて、これから生まれる沢山の奇跡の出会いをくれた人達がいたように⋯⋯
 誰かの幸せを願い、未来の自分を信じて、最後まで生きることを諦めてはいけない⋯⋯と強く思った。

「春、過ぎて⋯⋯香る、心のゆく末は⋯⋯ひろがる、空に⋯⋯光り、かがやく」

 私は、「恩人の篠田へ」と書かれた高田さんの後書きの句を呟きながら⋯⋯
 自分の中に確かに宿る『明日への希望』と『未来を生きる君たちへ』という運命の本を胸に抱いて、真っ直ぐ歩きだした。

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