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第8章
第1話(6)
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不意に、電話の着信音が鳴った。
鳴ったのはローテーブルに置かれていたスマートフォンで、画面を見たシャーロットの顔色が、瞬時に変わった。
通訳の男が差し出したそれを、シャーロットはひったくるように受け取る。そのまま窓ぎわまで移動すると、背を向けて話し出した。
声をひそめて話しているが、あきらかに動揺しているのが伝わってくる口ぶりだった。先程まで喚き散らしていた様子とは、まるで違っている。
話していくうちに、次第に興奮の度合いが強まっていったのだろう。ひそめていたはずの声は徐々に甲高く早口になっていき、身振りを交えてなにごとかを訴えかけるものになっていった。途中で『アルフ』という単語が聞こえたのは、気のせいだろうか。
やがて通話を終えたシャーロットは、振り返るといまいましげに莉音を睨みつけた。そのまま足音も荒く近づいてきて、通訳の男に口早になにごとかを伝える。それを聞いた男は、莉音の腕を取ると強引にどこかへ連れて行こうとした。
「え、あの……っ」
当惑する莉音を男は無言で部屋の隅まで引っ張っていき、目の前のドアを開けると乱暴にその中へと押しこんだ。
「申し訳ありませんが、これから来客があります。あなたはこちらの部屋でじっとしていてください。大切なお客様ですから、決して出てこないように」
わずかによろめきながら振り返った莉音に、男は事務的な口調で告げてドアを閉めた。莉音は茫然とする。莉音が押しこまれたのは、ダブルサイズの寝台がふたつ置かれたベッドルームだった。
しばし閉じられたドアを眺めた後、莉音は諦めて窓ぎわに置かれた丸テーブルまで移動した。テーブルを挟むように二脚置かれた椅子のうちのひとつを引いて腰を下ろす。張りつめていた気が抜けると同時に、深い溜息が漏れた。
これ以上話すことはなにもないのだが、まだ帰ることは許されないらしい。
これまでの経緯をざっと思い返して、またひとつ吐息が漏れる。
携帯を出して時間を確認すれば、すでに夜の九時をまわっていた。そういえば今日は、まだなにも食べていないのだったと思い出し、とりあえず昼間、コンビニで買ったペットボトルのお茶をひと口飲んで、もう一度、大きく息をついた。
さっきからずっと、溜息しか出ない。ためしにボトルを左頬に当ててみるが、完全に常温に戻っているそれを当てても、なんの意味もなさなかった。
今日中に帰れるのかなと憂鬱な気分で思うが、心も身体も疲れきっていて、それすらもどうでもよく思えた。
鳴ったのはローテーブルに置かれていたスマートフォンで、画面を見たシャーロットの顔色が、瞬時に変わった。
通訳の男が差し出したそれを、シャーロットはひったくるように受け取る。そのまま窓ぎわまで移動すると、背を向けて話し出した。
声をひそめて話しているが、あきらかに動揺しているのが伝わってくる口ぶりだった。先程まで喚き散らしていた様子とは、まるで違っている。
話していくうちに、次第に興奮の度合いが強まっていったのだろう。ひそめていたはずの声は徐々に甲高く早口になっていき、身振りを交えてなにごとかを訴えかけるものになっていった。途中で『アルフ』という単語が聞こえたのは、気のせいだろうか。
やがて通話を終えたシャーロットは、振り返るといまいましげに莉音を睨みつけた。そのまま足音も荒く近づいてきて、通訳の男に口早になにごとかを伝える。それを聞いた男は、莉音の腕を取ると強引にどこかへ連れて行こうとした。
「え、あの……っ」
当惑する莉音を男は無言で部屋の隅まで引っ張っていき、目の前のドアを開けると乱暴にその中へと押しこんだ。
「申し訳ありませんが、これから来客があります。あなたはこちらの部屋でじっとしていてください。大切なお客様ですから、決して出てこないように」
わずかによろめきながら振り返った莉音に、男は事務的な口調で告げてドアを閉めた。莉音は茫然とする。莉音が押しこまれたのは、ダブルサイズの寝台がふたつ置かれたベッドルームだった。
しばし閉じられたドアを眺めた後、莉音は諦めて窓ぎわに置かれた丸テーブルまで移動した。テーブルを挟むように二脚置かれた椅子のうちのひとつを引いて腰を下ろす。張りつめていた気が抜けると同時に、深い溜息が漏れた。
これ以上話すことはなにもないのだが、まだ帰ることは許されないらしい。
これまでの経緯をざっと思い返して、またひとつ吐息が漏れる。
携帯を出して時間を確認すれば、すでに夜の九時をまわっていた。そういえば今日は、まだなにも食べていないのだったと思い出し、とりあえず昼間、コンビニで買ったペットボトルのお茶をひと口飲んで、もう一度、大きく息をついた。
さっきからずっと、溜息しか出ない。ためしにボトルを左頬に当ててみるが、完全に常温に戻っているそれを当てても、なんの意味もなさなかった。
今日中に帰れるのかなと憂鬱な気分で思うが、心も身体も疲れきっていて、それすらもどうでもよく思えた。
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