ひろいひろわれ こいこわれ【完結済み】

九條 連

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第9章

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 話が進むにつれ、ヴィンセントの眉間の皺は次第に深くなっていく。最後には片手で目もとを覆って天を仰ぎ、深々と息をついた。

「バカなことを……」

 苦々しげな口調で呻くように呟いた。

「あの、アルフさんのために必死だったんだと思います」
 莉音の言葉に、ヴィンセントは不快さを滲ませて眉根を寄せた。

「莉音、彼女の軽はずみな行動については私からもお詫びしよう。本当に申し訳なかった。彼女にはあらためて私から――」
「アルフさん」

 ヴィンセントのセリフを莉音は遮った。

「レナードさんの持ち株をそっくり譲り受けると、PSグループの経営に口を出せるくらいの力を得られるって、そう聞きました」

 そう切り出した莉音に、ヴィンセントは一瞬、胡乱うろんげな様子を見せた。

「シャーロットさんと結婚して親族になったアルフさんにその権利が与えられれば、アルフさんはPSグループの中で、絶対的な地位と権力が保障されることになる。だからシャーロットさんは、アルフさんのために、なにがなんでも指輪を手に入れようとしてたんだと思います」
「莉音。莉音、待ってくれ、私は――」

 言いかけたヴィンセントは、不意に口を噤んだ。

「いや、とりあえず私の言い分はあとにしよう。それで? 彼女にその話を聞かされて、君はなんと?」

 莉音はヴィンセントの顔をじっと見た。

「アルフさん、そのまえにひとつだけ教えてください。僕は、レナード・スペンサーという人の孫なんですか? 母さんは、その人の娘?」

 莉音の顔をまっすぐに見返したヴィンセントは、やがてはっきりと頷いた。

「そうだ」

 莉音は大きく息を呑んだ。

 これまでどんなにシャーロットから聞かされても、どこか他人事のようで現実味を伴わなかった血縁の話が、ヴィンセントのいまのひと言で、たしかな事実へと変わってしまった。なにより、ヴィンセントはやはり知っていたのだと、そのことに強い衝撃を受けた。
 彼ほどの人間が知らないはずもない。わかっていても、いまのいままで、なぜなにも言ってくれなかったのだろうと、責める気持ちと疑う気持ちが湧いてきてしまう。それがつらかった。

「アルフさんは、僕がだれなのかを知っていて近づいたんだって、今日、シャーロットさんに言われました」

 莉音は、目の前のテーブルにぼんやりと視線を落としたまま呟いた。

「……そっか、知ってたんですね。僕のことも、ばあちゃんや母さんのことも」
「知っていた。なにをどう言ったところで言い訳にしかならないが、それが事実であることは間違いない」

 莉音はテーブルを見つめたまま、そうなんですね、と力なく笑った。
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