92 / 93
エピローグ
第2話(1)
しおりを挟む
早瀬夫妻が帰路についたあと、莉音は楽しかった時間の余韻に浸りながらリビングのソファーに腰を下ろした。隣に座るヴィンセントが肩を抱き寄せる。
「今日は疲れただろう。ご苦労様。美味しい料理をたくさんありがとう」
「いいえ、僕もすごく楽しかったです」
言って、莉音はヴィンセントの胸に頭をもたせかけた。
目の前のガラス窓に、星空を映したような見事な夜景がひろがっている。決して見飽きることのない夜の煌めきに、莉音は魅せられたように見入った。
いつも家でやっていることだからと、帰りぎわに早瀬が食器洗いを引き受けてくれて、キッチンはすでにきれいに片付いていた。
作りすぎて食べきれなかったぶんは、お土産にとタッパーに詰めて持ち帰ってもらい、贅沢で充実した時間はあっという間に過ぎていった。
「今日はリサさんと宗太くんにも会えて嬉しかったです」
莉音はヴィンセントに身をもたせかけたまま、ポツリと言った。
「リサさん、すごくチャーミングで、パッと花が咲いたみたいに綺麗で明るくて、素敵な人でした」
「うるさくてびっくりしただろう。昔からあの調子で人一倍賑やかだった」
「僕の母と似てるかも」
莉音はそう言って、ふふっと笑った。
「母さんも、すごく賑やかで明るい人だったから」
「ふたりが出会っていたら、意気投合してたかもしれないな」
間違いなく、と莉音は笑みを深くした。
「宗太くん、ちっちゃくて可愛かったですね。赤ちゃんって、あんなにやわらかくてあったかいんだなって。早瀬さんも、すっかりお父さんの顔になってて」
それから、と莉音は付け加えた。
「アルフさんも、リサさんのまえではお兄さんの顔になってました」
莉音の髪を撫でながら、ヴィンセントはそうかと応じた。
「僕、一人っ子でお父さんもいない家庭環境だったから、リサさんとアルフさん見てて、すごくいいなって思いました」
「うちも父親がいない家庭だったからね。私はリサの兄でありながら、半分、父親の役目を務めてきたところもある」
「いいご兄妹だなって、ちょっと羨ましかったです。仲がよくて、お互い、遠慮なく物を言い合えて」
「莉音には私がいる」
言って、ヴィンセントは身を起こすと莉音の顔を覗きこんだ。
「妹たちも帰って、ふたりきりになった。私も兄の顔から、恋人の顔に戻ろう」
艶めいた眼差しで見つめられて、口唇を奪われる。愛情を注ぎこむような、優しい口づけだった。
「今日は疲れただろう。ご苦労様。美味しい料理をたくさんありがとう」
「いいえ、僕もすごく楽しかったです」
言って、莉音はヴィンセントの胸に頭をもたせかけた。
目の前のガラス窓に、星空を映したような見事な夜景がひろがっている。決して見飽きることのない夜の煌めきに、莉音は魅せられたように見入った。
いつも家でやっていることだからと、帰りぎわに早瀬が食器洗いを引き受けてくれて、キッチンはすでにきれいに片付いていた。
作りすぎて食べきれなかったぶんは、お土産にとタッパーに詰めて持ち帰ってもらい、贅沢で充実した時間はあっという間に過ぎていった。
「今日はリサさんと宗太くんにも会えて嬉しかったです」
莉音はヴィンセントに身をもたせかけたまま、ポツリと言った。
「リサさん、すごくチャーミングで、パッと花が咲いたみたいに綺麗で明るくて、素敵な人でした」
「うるさくてびっくりしただろう。昔からあの調子で人一倍賑やかだった」
「僕の母と似てるかも」
莉音はそう言って、ふふっと笑った。
「母さんも、すごく賑やかで明るい人だったから」
「ふたりが出会っていたら、意気投合してたかもしれないな」
間違いなく、と莉音は笑みを深くした。
「宗太くん、ちっちゃくて可愛かったですね。赤ちゃんって、あんなにやわらかくてあったかいんだなって。早瀬さんも、すっかりお父さんの顔になってて」
それから、と莉音は付け加えた。
「アルフさんも、リサさんのまえではお兄さんの顔になってました」
莉音の髪を撫でながら、ヴィンセントはそうかと応じた。
「僕、一人っ子でお父さんもいない家庭環境だったから、リサさんとアルフさん見てて、すごくいいなって思いました」
「うちも父親がいない家庭だったからね。私はリサの兄でありながら、半分、父親の役目を務めてきたところもある」
「いいご兄妹だなって、ちょっと羨ましかったです。仲がよくて、お互い、遠慮なく物を言い合えて」
「莉音には私がいる」
言って、ヴィンセントは身を起こすと莉音の顔を覗きこんだ。
「妹たちも帰って、ふたりきりになった。私も兄の顔から、恋人の顔に戻ろう」
艶めいた眼差しで見つめられて、口唇を奪われる。愛情を注ぎこむような、優しい口づけだった。
33
あなたにおすすめの小説
ひろいひろわれ こいこわれ ~華燭~
九條 連
BL
さまざまな問題を乗り越え、ヴィンセントの許で穏やかな日常を送る莉音に、ある日、1通のハガキが届く。
それは、母の新盆に合わせて上京する旨を記した、父方の祖父母からの報せだった。
遠く離れた九州の地に住む祖父母の来訪を歓迎する莉音とヴィンセントだったが、ふたりの関係を祖父に知られてしまったことをきっかけに事態は急変する。
莉音と祖父、そして莉音とヴィンセントのあいだにも暗雲が立ちこめ――
『ひろいひろわれ こいこわれ』続編
【完結】最初で最後の恋をしましょう
関鷹親
BL
家族に搾取され続けたフェリチアーノはある日、搾取される事に疲れはて、ついに家族を捨てる決意をする。
そんな中訪れた夜会で、第四王子であるテオドールに出会い意気投合。
恋愛を知らない二人は、利害の一致から期間限定で恋人同士のふりをすることに。
交流をしていく中で、二人は本当の恋に落ちていく。
《ワンコ系王子×幸薄美人》
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
ハヤブサ将軍は身代わりオメガを真摯に愛す
兎騎かなで
BL
言葉足らずな強面アルファ×不憫属性のオメガ……子爵家のニコルは将来子爵を継ぐ予定でいた。だが性別検査でオメガと判明。
優秀なアルファの妹に当主の座を追われ、異形将軍である鳥人の元へ嫁がされることに。
恐れながら領に着くと、将軍は花嫁が別人と知った上で「ここにいてくれ」と言い出し……?
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
辺境の酒場で育った少年が、美貌の伯爵にとろけるほど愛されるまで
月ノ江リオ
BL
◆ウィリアム邸でのひだまり家族な子育て編 始動。不器用な父と、懐いた子どもと愛される十五歳の青年と……な第二部追加◆断章は残酷描写があるので、ご注意ください◆
辺境の酒場で育った十三歳の少年ノアは、八歳年上の若き伯爵ユリウスに見初められ肌を重ねる。
けれど、それは一時の戯れに過ぎなかった。
孤独を抱えた伯爵は女性関係において奔放でありながら、幼い息子を育てる父でもあった。
年齢差、身分差、そして心の距離。
不安定だった二人の関係は年月を経て、やがて蜜月へと移り変わり、交差していく想いは複雑な運命の糸をも巻き込んでいく。
■執筆過程の一部にchatGPT、Claude、Grok BateなどのAIを使用しています。
使用後には、加筆・修正を加えています。
利用規約、出力した文章の著作権に関しては以下のURLをご参照ください。
■GPT
https://openai.com/policies/terms-of-use
■Claude
https://www.anthropic.com/legal/archive/18e81a24-b05e-4bb5-98cc-f96bb54e558b
■Grok Bate
https://grok-ai.app/jp/%E5%88%A9%E7%94%A8%E8%A6%8F%E7%B4%84/
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
見捨てられ勇者はオーガに溺愛されて新妻になりました
おく
BL
目を覚ましたアーネストがいたのは自分たちパーティを壊滅に追い込んだ恐ろしいオーガの家だった。アーネストはなぜか白いエプロンに身を包んだオーガに朝食をふるまわれる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる