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1.前世の記憶は突然に
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パタンと扉を閉めたあと、ドスドスと足を踏み鳴らし、廊下を歩く。
そんな光景は、本日三度目である。
「ふん、なによ! イチャイチャしちゃって! 当てつけかってえの!」
プリプリしながら廊下を歩く看護師に、前から来た同じ制服を着た看護師があからさまに溜め息を零した。
「まあ、アンジュ。女の子がそのように歩くものではなくてよ」
ピンと背筋を伸ばし、品良く嗜める同僚に、アンジュと呼ばれた少女は眦を吊り上げた。
「分かってるわよ、エレナ! うるさいわね!」
ヒステリックに叫ぶアンジュに、再び息を吐き出した同僚のエレナは、次いで眉を潜めた。
「本当に、黙っていればこの上ない美少女なのに、残念だわ…」
「ちょっと! 聞こえてるわよ!」
「聞こえるように言ったのよ」
悪びれる様子もなく、エレナが言えば、ふんっとそっぽを向いてアンジュが歩き出す。その歩き方は注意を受けたにも関わらず、ドスドスと音を立てるものだった。しかもガニ股というオマケ付きで。
「はあ、もったいないわね。あのガサツな性格が鳴りを潜めれば、嫁の貰い手もあったでしょうに」
「エレナ! 聞こえてるわよ!」
「おまけに地獄耳だし…」
ほとほと呆れ返るエレナではあったが、純粋にアンジュのことを心配していた。
お互いに十八歳になる年頃の娘だが、なかなか話が纏まらず、破談になるばかりのアンジュを、エレナは憂いていたのだ。アンジュ的には一生懸命に婚活を頑張っているようだが、毎回空振りで終わっている。まあそれなりに理由はあるのだが。それでもめげずに年頃の男性に声をかけ続けるアンジュは、ガサツな上に図太かった。
「心根の優しい、いい子なのに、本当に残念だわ」
良い良縁に巡り合うように、祈ることしか出来ないエレナだった。
そんなアンジュに転機が訪れる。それは余りにも唐突で、衝撃的なものだった。
「嘘でしょ……」
そして絶望する。
「アンジュ……これが今の私?」
朝、目が覚めると何故かアンジュは前世の記憶を思い出していた。何の切欠もなく、突然に。
夢で予兆があったわけでもなく、頭を打ったわけでもない。そして今現在の自分の状況に頭を抱えた。
「今世の私も、結婚出来ずに婚活奮闘中とか…。そういう運命なの?」
呆然と呟いたアンジュは、寝台の上で項垂れた。
前世、アンジュの記憶にある、最も新しいものは、婚活の真っ只中の働き盛りのOLだった。もうすぐ四十路を迎えてしまうと、相当に焦っていた記憶が蘇る。両親は既に諦め、『いつになったら結婚するの』なんて言葉も聞かなくなっていた。
街コンに合コン、お見合いまでしてみたが、相手は見つからず、結局未婚のまま生涯を終えたらしい。そこまで思い出して、アンジュは小さく呟いた。
「あれ? 私、どうして死んだんだろう?」
死に際の記憶が一切浮かんでこないことに、アンジュは首を傾げる。そして余りにも思い出せない事柄が多く、困惑した。前世の自分の名前や顔さえも思い出せないことに。
「結婚したいっていう未練が強すぎたのかしらね。そればっかり思い出すわ」
良い雰囲気になった男性は、他の女と結婚したとか、街コンの飲み仲間に気に入った男性がいたが、彼もまた他の女と結婚したとか。そんなくだらない記憶ばかりが蘇ることに、アンジュはウンザリとしてしまう。
「今世こそは……」
そう拳を握るも、すぐに意気消沈してしまう。それはひとえに、アンジュの性格にあった。
『ガサツ』
この一言に尽きるアンジュの性格に、希望が打ち砕かれる。
アンジュが育った国境付近の小さな村は、当然のことながらアンジュの性格を知らない者はいない。だからこそ、少し大きめの町に出て来たのだが、ここでも既にアンジュの『ガサツ』さは知れ渡ってしまっていた。
ドスドスという歩き方に、引き出しは乱暴に開け閉めするせいでいつもバンバンと音を立てている。何かを『揃えて』管理するのが苦手で、カルテを上下逆さまに入れたりもする。要は、そこにあるべき物があればそれで良いというタイプだ。
『白衣の天使』などと呼ばれる看護師をしていながらも、なかなか結婚まで辿り着かないアンジュは、それでも結婚願望は人一倍あるのだ。こんなガサツな女でも、恋に夢見る乙女であった。
「大丈夫、まだやれるわ!」
今の状況は非常に厳しくはあるが、可能性がないわけではない。
何故今、看護師をしているのか、それはこの土地柄にあった。
この町の外れには、大きなダンジョンがある。そのダンジョンはニ年前から魔物が溢れ出る魔物暴走(スタンピード)と呼ばれる現象の予兆が見えていた。そのせいもあり、日々国軍がダンジョンに入り、魔物がこれ以上増えないように討伐をしている。
討伐に向かう国軍の兵士たちは、それなりに怪我をする。怪我をすれば病院に担ぎ込まれるのが常だ。そしてそこに、アンジュは勤めている。
必然的にアンジュはそこで男漁りをすることになった。特に新兵が狙い目だ。
国軍の兵士の配置決めがどのように成されているのかはアンジュには分からないが、そこそこ入れ替わりのある兵士との、新しい出会いは多い。だからといって成就するわけでもなく、今に至っているのだが。
そしてもう一つの救いはアンジュの容姿だ。
アンジュはベットから降りて、鏡台に向かう。そして鏡を覗き込んでマジマジと自分の顔を観察した。
間違いなく美人と言える。それも結構な美人である。
腰まである金の髪は少し癖があるが、艷やかだし、目も大きく鮮やかな青い瞳は印象的だ。
アンジュはグッと拳を握る。
まだ可能性はあるのだ。確かにあるのだ。
「問題は、既に結婚してる人が多いっていう点よね」
この国の婚期は早い。
十六歳で成人を迎えるせいで、その歳になったらすぐに婚姻を結ぶ者が殆どだった。
病院に来た兵士に、手当り次第声をかけまくっていたアンジュだったが、だいたいが既婚者か恋人持ちだ。それにもめげずに日々を過ごしていたが、そろそろ絶望してもおかしくはないところまできている。
「とりあえず、前世の記憶を生かして、頑張ってみましょう!」
誰もいない部屋で一人呟く自分に引きながらも、アンジュは決意を新たにした。
そんな光景は、本日三度目である。
「ふん、なによ! イチャイチャしちゃって! 当てつけかってえの!」
プリプリしながら廊下を歩く看護師に、前から来た同じ制服を着た看護師があからさまに溜め息を零した。
「まあ、アンジュ。女の子がそのように歩くものではなくてよ」
ピンと背筋を伸ばし、品良く嗜める同僚に、アンジュと呼ばれた少女は眦を吊り上げた。
「分かってるわよ、エレナ! うるさいわね!」
ヒステリックに叫ぶアンジュに、再び息を吐き出した同僚のエレナは、次いで眉を潜めた。
「本当に、黙っていればこの上ない美少女なのに、残念だわ…」
「ちょっと! 聞こえてるわよ!」
「聞こえるように言ったのよ」
悪びれる様子もなく、エレナが言えば、ふんっとそっぽを向いてアンジュが歩き出す。その歩き方は注意を受けたにも関わらず、ドスドスと音を立てるものだった。しかもガニ股というオマケ付きで。
「はあ、もったいないわね。あのガサツな性格が鳴りを潜めれば、嫁の貰い手もあったでしょうに」
「エレナ! 聞こえてるわよ!」
「おまけに地獄耳だし…」
ほとほと呆れ返るエレナではあったが、純粋にアンジュのことを心配していた。
お互いに十八歳になる年頃の娘だが、なかなか話が纏まらず、破談になるばかりのアンジュを、エレナは憂いていたのだ。アンジュ的には一生懸命に婚活を頑張っているようだが、毎回空振りで終わっている。まあそれなりに理由はあるのだが。それでもめげずに年頃の男性に声をかけ続けるアンジュは、ガサツな上に図太かった。
「心根の優しい、いい子なのに、本当に残念だわ」
良い良縁に巡り合うように、祈ることしか出来ないエレナだった。
そんなアンジュに転機が訪れる。それは余りにも唐突で、衝撃的なものだった。
「嘘でしょ……」
そして絶望する。
「アンジュ……これが今の私?」
朝、目が覚めると何故かアンジュは前世の記憶を思い出していた。何の切欠もなく、突然に。
夢で予兆があったわけでもなく、頭を打ったわけでもない。そして今現在の自分の状況に頭を抱えた。
「今世の私も、結婚出来ずに婚活奮闘中とか…。そういう運命なの?」
呆然と呟いたアンジュは、寝台の上で項垂れた。
前世、アンジュの記憶にある、最も新しいものは、婚活の真っ只中の働き盛りのOLだった。もうすぐ四十路を迎えてしまうと、相当に焦っていた記憶が蘇る。両親は既に諦め、『いつになったら結婚するの』なんて言葉も聞かなくなっていた。
街コンに合コン、お見合いまでしてみたが、相手は見つからず、結局未婚のまま生涯を終えたらしい。そこまで思い出して、アンジュは小さく呟いた。
「あれ? 私、どうして死んだんだろう?」
死に際の記憶が一切浮かんでこないことに、アンジュは首を傾げる。そして余りにも思い出せない事柄が多く、困惑した。前世の自分の名前や顔さえも思い出せないことに。
「結婚したいっていう未練が強すぎたのかしらね。そればっかり思い出すわ」
良い雰囲気になった男性は、他の女と結婚したとか、街コンの飲み仲間に気に入った男性がいたが、彼もまた他の女と結婚したとか。そんなくだらない記憶ばかりが蘇ることに、アンジュはウンザリとしてしまう。
「今世こそは……」
そう拳を握るも、すぐに意気消沈してしまう。それはひとえに、アンジュの性格にあった。
『ガサツ』
この一言に尽きるアンジュの性格に、希望が打ち砕かれる。
アンジュが育った国境付近の小さな村は、当然のことながらアンジュの性格を知らない者はいない。だからこそ、少し大きめの町に出て来たのだが、ここでも既にアンジュの『ガサツ』さは知れ渡ってしまっていた。
ドスドスという歩き方に、引き出しは乱暴に開け閉めするせいでいつもバンバンと音を立てている。何かを『揃えて』管理するのが苦手で、カルテを上下逆さまに入れたりもする。要は、そこにあるべき物があればそれで良いというタイプだ。
『白衣の天使』などと呼ばれる看護師をしていながらも、なかなか結婚まで辿り着かないアンジュは、それでも結婚願望は人一倍あるのだ。こんなガサツな女でも、恋に夢見る乙女であった。
「大丈夫、まだやれるわ!」
今の状況は非常に厳しくはあるが、可能性がないわけではない。
何故今、看護師をしているのか、それはこの土地柄にあった。
この町の外れには、大きなダンジョンがある。そのダンジョンはニ年前から魔物が溢れ出る魔物暴走(スタンピード)と呼ばれる現象の予兆が見えていた。そのせいもあり、日々国軍がダンジョンに入り、魔物がこれ以上増えないように討伐をしている。
討伐に向かう国軍の兵士たちは、それなりに怪我をする。怪我をすれば病院に担ぎ込まれるのが常だ。そしてそこに、アンジュは勤めている。
必然的にアンジュはそこで男漁りをすることになった。特に新兵が狙い目だ。
国軍の兵士の配置決めがどのように成されているのかはアンジュには分からないが、そこそこ入れ替わりのある兵士との、新しい出会いは多い。だからといって成就するわけでもなく、今に至っているのだが。
そしてもう一つの救いはアンジュの容姿だ。
アンジュはベットから降りて、鏡台に向かう。そして鏡を覗き込んでマジマジと自分の顔を観察した。
間違いなく美人と言える。それも結構な美人である。
腰まである金の髪は少し癖があるが、艷やかだし、目も大きく鮮やかな青い瞳は印象的だ。
アンジュはグッと拳を握る。
まだ可能性はあるのだ。確かにあるのだ。
「問題は、既に結婚してる人が多いっていう点よね」
この国の婚期は早い。
十六歳で成人を迎えるせいで、その歳になったらすぐに婚姻を結ぶ者が殆どだった。
病院に来た兵士に、手当り次第声をかけまくっていたアンジュだったが、だいたいが既婚者か恋人持ちだ。それにもめげずに日々を過ごしていたが、そろそろ絶望してもおかしくはないところまできている。
「とりあえず、前世の記憶を生かして、頑張ってみましょう!」
誰もいない部屋で一人呟く自分に引きながらも、アンジュは決意を新たにした。
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