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幕間2.セバスチャンの想い(セバスチャン視点)
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オールディス家のご子息であるジェイク様が、恋に落ちられた。
それは余りにも突然で、正直、かなりの衝撃を受けました。
ご相談を受けた時には本当に驚きましたが、とても嬉しくも思いました。
女性不信に陥っていたジェイク様が、ようやく立ち直って、婚姻に前向きになってくださったのですから。
ジェイク様の恋のお相手は、『あの病院』の看護師でした。流石、ジェイク様。見る目は確かです。しかもその相手とは『アンジュ・ベント』さんです。
彼女はまだ就職して半年という浅い経験ながら、あの地獄のような戦場を経験したにも関わらず、職を辞することなく、今もあの病院で就業している強者です。
彼女の同期は、特殊な事情を持っているエレナ・リドリー以外は皆辞めてしまったというのに。
そして彼女は私の弟の命の恩人でもあります。『あの日』私の弟は、間違いなく彼女に救われたのです。
そんな彼女を、オールディス家はきっと歓迎することでしょう。
嬉しく思う反面、まだ女性不信から完全に立ち直っていないだろうジェイク様に、彼女の嫌な部分を挙げてみました。
ですが、そんなことは些事だと言わんばかりに流しておいででした。
幼き頃より戦場へ出ていたジェイク様にとっては、本当になんでもないことなのでしょう。
善は急げと両親へと彼女のことを伝えに行ったジェイク様に、私は後方支援を行いました。
エレナ・リドリー孃がこの国に亡命した際、ジェイク様とハロルド様の婚約者候補として、身辺調査を行ったのですが、そのついでに彼女が勤めるあの病院についても調べました。それが功を奏し、私が渡した『アンジュ・ベント』さんの身辺調査の報告書に目を通した旦那様も奥様も、とても好印象を抱いておられました。
早速彼女に会いたいと、ジェイク様にせっつき、初デートだというのに、両親への顔合わせという苦行を強いられた、彼女の心情はいくばくか。
そして彼女の強い拒絶に、私は初めて後悔いたしました。
ただジェイク様を応援したいがばかりに、彼女の心情を全く汲んでいなかったことに。
今まで、何度か平民との縁談もあり、その度に相手側は歓喜し、媚び諂っていたので勘違いをしてしまったのです。彼女もまた喜んでジェイク様を受け入れるだろうと。積極的にお相手を探していたのですし。
ところが実際は違いました。しかもその拒絶理由は、至極真っ当で、寧ろ今までの縁談で歓喜していた女性たちの方がおかしかったのだと改めて思った程です。だからこそ、婚姻にまで結びつかなかったのですから。
そしてこの『アンジュ・ベント』さんは、今までの女性とは大違いでした。流石、職を辞さなかった強者です。
だからこそ、ジェイク様が惹かれたのかもしれません。流石、ジェイク様。本当に見る目があります。
そんな彼女を、旦那様と奥様も、それはそれは気に入りました。これには私も焦りました。このままでは、彼女の意思を無視して、外堀から埋められてしまいそうです。
思わず私は、彼女に対し悪印象を抱いたと意見を言わせていただきました。ですが旦那様も奥様も取り合ってはいただけません。
実際彼女は、平民とは思えないほどの立ち居振る舞いをしていました。実家が牧場ということもあり、乗馬を嗜むのでしょう、背筋もピンと伸び、実に堂々としていました。
ただ、私の表情は、アンジュ・ベントさんに、酷く嫌悪を抱かれてしまいました。恐らく私はあの時、自分の不甲斐なさを思い知り、険しい顔をしていたのでしょう。それを誤解され、私がアンジュ・ベントさんを嫌っていると勘違いなされたようでした。
あれは本当に堪えました。
いつか弟の命を救って頂いたことへのお礼を言いたいと思っていたので尚更です。
それでもこれから機会はたくさんあると思います。
オールディス家に目をつけられてしまっては、もう逃げられないでしょうから。そう遠くない未来に、彼女にお仕えする日が来ることを楽しみにしながら、今日もオールディス家のために、私は全身全霊で職務を全ういたします。
それは余りにも突然で、正直、かなりの衝撃を受けました。
ご相談を受けた時には本当に驚きましたが、とても嬉しくも思いました。
女性不信に陥っていたジェイク様が、ようやく立ち直って、婚姻に前向きになってくださったのですから。
ジェイク様の恋のお相手は、『あの病院』の看護師でした。流石、ジェイク様。見る目は確かです。しかもその相手とは『アンジュ・ベント』さんです。
彼女はまだ就職して半年という浅い経験ながら、あの地獄のような戦場を経験したにも関わらず、職を辞することなく、今もあの病院で就業している強者です。
彼女の同期は、特殊な事情を持っているエレナ・リドリー以外は皆辞めてしまったというのに。
そして彼女は私の弟の命の恩人でもあります。『あの日』私の弟は、間違いなく彼女に救われたのです。
そんな彼女を、オールディス家はきっと歓迎することでしょう。
嬉しく思う反面、まだ女性不信から完全に立ち直っていないだろうジェイク様に、彼女の嫌な部分を挙げてみました。
ですが、そんなことは些事だと言わんばかりに流しておいででした。
幼き頃より戦場へ出ていたジェイク様にとっては、本当になんでもないことなのでしょう。
善は急げと両親へと彼女のことを伝えに行ったジェイク様に、私は後方支援を行いました。
エレナ・リドリー孃がこの国に亡命した際、ジェイク様とハロルド様の婚約者候補として、身辺調査を行ったのですが、そのついでに彼女が勤めるあの病院についても調べました。それが功を奏し、私が渡した『アンジュ・ベント』さんの身辺調査の報告書に目を通した旦那様も奥様も、とても好印象を抱いておられました。
早速彼女に会いたいと、ジェイク様にせっつき、初デートだというのに、両親への顔合わせという苦行を強いられた、彼女の心情はいくばくか。
そして彼女の強い拒絶に、私は初めて後悔いたしました。
ただジェイク様を応援したいがばかりに、彼女の心情を全く汲んでいなかったことに。
今まで、何度か平民との縁談もあり、その度に相手側は歓喜し、媚び諂っていたので勘違いをしてしまったのです。彼女もまた喜んでジェイク様を受け入れるだろうと。積極的にお相手を探していたのですし。
ところが実際は違いました。しかもその拒絶理由は、至極真っ当で、寧ろ今までの縁談で歓喜していた女性たちの方がおかしかったのだと改めて思った程です。だからこそ、婚姻にまで結びつかなかったのですから。
そしてこの『アンジュ・ベント』さんは、今までの女性とは大違いでした。流石、職を辞さなかった強者です。
だからこそ、ジェイク様が惹かれたのかもしれません。流石、ジェイク様。本当に見る目があります。
そんな彼女を、旦那様と奥様も、それはそれは気に入りました。これには私も焦りました。このままでは、彼女の意思を無視して、外堀から埋められてしまいそうです。
思わず私は、彼女に対し悪印象を抱いたと意見を言わせていただきました。ですが旦那様も奥様も取り合ってはいただけません。
実際彼女は、平民とは思えないほどの立ち居振る舞いをしていました。実家が牧場ということもあり、乗馬を嗜むのでしょう、背筋もピンと伸び、実に堂々としていました。
ただ、私の表情は、アンジュ・ベントさんに、酷く嫌悪を抱かれてしまいました。恐らく私はあの時、自分の不甲斐なさを思い知り、険しい顔をしていたのでしょう。それを誤解され、私がアンジュ・ベントさんを嫌っていると勘違いなされたようでした。
あれは本当に堪えました。
いつか弟の命を救って頂いたことへのお礼を言いたいと思っていたので尚更です。
それでもこれから機会はたくさんあると思います。
オールディス家に目をつけられてしまっては、もう逃げられないでしょうから。そう遠くない未来に、彼女にお仕えする日が来ることを楽しみにしながら、今日もオールディス家のために、私は全身全霊で職務を全ういたします。
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